トイファクトリー藤井社長インタビュー

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 日本国内のキャンピングカービルダーながら、海外でも高い評価を受けて、いま世界に羽ばたこうとしているトイファクトリー。
 同社は、現在「トイファクトリーインターナショナル」という別会社も運営するようになり、それによって海外戦略も練り始めている。
 日本のキャンピングカーが、いよいよ世界に雄飛する時代が来るのか。
 トイファクトリーの藤井昭文社長に、そのあたりの夢を語ってもらう機会を得た。


 
トイファクトリーの車がトヨタ純正車両として海外に進出

【町田】 まず、「トイファクトリーインターナショナル」という会社の設立に関しておうかがいしたいのですが。
【藤井】 この会社は、トイファクトリーのキャンピングカーや特殊車両を設計、開発、生産するための会社でもあるんですが、もう一つの大きな役割が、トヨタ自動車さんのサプライヤーとしての役目を果たすためのものなんです。
 現在トヨタ自動車さんが海外に輸出している回診医療車 … アフリカの難民などを支援するための僻地医療などに使うドクターカーですね、… それを弊社が製作しているんですよ。
 そのほか、中東の富裕な人たち向けのVIPカーなどもありますが、そのような特装車を製作し、「トヨタ純正車両」という形で海外向け車両の製作するための会社が「トイファクトリーインターナショナル」となります。

【町田】 それはすごい役目を仰せつかりましたね。こういうケースはこのキャンピングカー業界でははじめてのことですか?
【藤井】 いえ、スポットで製作していた業者さんはいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、そのようなシチュエーションの車両は、輸出を行う際、並行車扱いにならざるを得ないですね。
 その点、私たちが製作するものは、トヨタが正規に送り出す純正車両となりますので、世界各地のトヨタディーラーでも保障やメンテナンスが受けられます。
 やはり、正規の「トヨタ・ブランド」となれば、現地での信頼も非常に大きいですし、使われるお客様も安心されます。アフリカでも、中東でも、「トヨタ」といえば、「故障しない」「どこでも修理できる」という認知が広まっていますから。

【町田】 でも、そういうトヨタさんのサプライヤーになるには、ずいぶん厳しい審査があったのではないですか?
【藤井】 いろいろな課題をクリアできるようになるまで何年もかかり、正直、厳しかったですね。
 配線から家具の仕上げに至るまで「トヨタ基準」の高い壁があり、今までキャンピングカービルダーとして行なってきたことをはるかに超える厳しい基準をクリアする必要がありました。
 その基準というのも、実務的なことだけでなく、質感などにもこだわりを持たなければなりません。たとえば、家具の表面やエッジの部分なども、品質管理の担当者が手のひらで入念に表面を撫でられるんですよ。そして、「女性や子供が触っても違和感のないような手触りが大切」とおっしゃるんですね。
 
 
厳しい“トヨタ基準”をクリアするため課題

【町田】 そういう課題をクリアしていくと、トイさんのキャンピングカーづくりもレベルアップしていくことになりますね。
【藤井】 もちろんそうなります。今回製作したランドティピーのアニバーサリーモデルの天井、壁の内装材には金型を製作して樹脂成型材を製作しました。
 従来ですと、国産キャンピングカーの内張りには生地を貼るのが一般的だったのですが、ヨーロッパの大手メーカーが製作するバンコンバージョンの内装材は樹脂材が使用されています。
 それだと、従来の工法に比べ、汚れも拭き取れますし、臭いもつきません。見た目においてもカチッとした工業製品的な安定感が生まれます。今後トヨタブランドの車両を製作する以上、工業製品としての均質性は大切になりますから。さらに、製造に費やす時間も短縮できます。
 トヨタサプライヤーになることによって、生産量の拡大が必要となったため、スケールメリットも追求できるようになりました。

【町田】 それは大きいですね。パーツの仕入れも大量になるでしょうから、そこでもコスト削減が図れる。
【藤井】 はい。10年程前でしたら、海外のパーツメーカーとの交渉でも、スケールメリットが追求できなければ、相手もなかなか首を縦に振ってくれませんでした。しかし、今はコンテナ単位ぐらいの交渉が出来るようになり、その苦労が少なくなりました。
 さらに、海外のパーツメーカーから「コラボレーションをしよう」と声をかけてくれるので、うれしいですね。
 
【町田】 そもそも、トヨタさんのサプライヤーとして認められるようになったきっかけは何だったんですか?
【藤井】 ハイエースを製作する会社にトヨタグループの「岐阜車体工業」さんという会社があります。その会社が、当時ハイエーススーパーハイルーフのデモカー製作するにあたり、国内の様々なキャンピングビルダーに製作する会社を打診されていたんですね。そこで最後まで残ったのが、地元にある弊社だったということなんです。
 おかげさまで、私たちが手掛けた車両が高い評価をいただきまして、親会社の「トヨタ車体」様からもお声を掛けていただくようになりました。
 その後、当時の取締役社長が私たちの本社まで来場され、それから沖縄工場で品質検査を受け、現在の海外向け特装車の製作サプライヤーにつながりました。昨年の6月にはプレス発表も行い、トヨタグループの一員として締結したわけです。

【町田】 海外向け特装車の生産規模はどのくらいなんですか?
【藤井】 まだスタートしたばかりですが、年間100台の生産を目指しています。世界中のトヨタディーラーから販売されるきっかけをいただいたわけですから、頑張ります !!
 
  
ヨーロッパ人が認めたデザインセンス
 
【町田】 キャンピングカーの話に戻りますけれど、藤井さんが今後トイファクトリーとして開発していく車両には、どんなイメージを抱いていらっしゃるんですか?
【藤井】 やっぱり、ビジョンとしては、ここ数年のうちにヨーロッパのキャンピングカーメーカーに追いつくような車を出していきたいですね。
 そのため、先ほどの内装材の樹脂成型ではないですけれど、日本から諸外国に輸出できるような海外基準の車両を製作して行きたいと思っています。

【町田】 確かに、トイさんの車は、すでにヨーロッパ車の匂いがありますものね。
【藤井】 ありがとうございます。以前、トレーラーメーカーのフェントの役員の方が、うちのアルタモーダを見て、「バンコンの造りはすでにヨーロッパ車と並んでいるね」とおっしゃってくださったので、それがうちの開発部の自信にも繋がりましたね。
 実は、ヨーロッパ車が多く採用しているスイッチメーカーの製品をうちのキャンピングカーに採用したとき、その話題がヨーロッパのモーターホームメーカー間で配布される雑誌に写真付で紹介されたんです。
 それが、おそらく海外の雑誌にはじめて掲載された日本のバンコンになると思います。

【町田】 それはどんな車だったんですか?
【藤井】 それがアルタモーダですね。聞いた話ですけど、それまではヨーロッパのパーツメーカーは、日本のキャンピングカーをあまり認めていなかったんですよ。日本だけでなく、韓国も中国も含めたアジアの車に対して好印象を抱いていなかったらしいんです。
 しかし、「トイのバンコンはヨーロッパ車の水準だ」という評価を得られまして、イタリアのメーカーからの推薦もあり、はじめて日本のバンコンを雑誌に採りあげてくれたようです。
 
▼ アルタモーダ室内

【町田】 それは名誉なことですね。そういうデザインセンスを養うのに、やはりヨーロッパに拠点を持たれたことは大きかったですか?
【藤井】 大きかったですね。やはり海外に拠点を持つと、現地の人とのコミュニケーションも密になりますよね。人と人のつながりにも、プライベートな絆が生まれるようになります。
 そうなると、そのような友人を介してヨーロッパのメーカーやサプライヤーを回ると、とてもフレンドリーな空気が生まれるんですね。やっぱり、スーツを着てかしこまった商社マンと一緒に訪れるときとは明らかに違う空気が流れます。
 「こいつは日本でキャンピングカーをつくっているヤツでさぁ」
 … みたいなノリで会話がスタートすると、お願いごともスムーズに聞いてもらえるんですね。

【町田】 そうなると、海外のキャンピングカー事情にまつわる情報量も増えますものね。
【藤井】 はい。それで、思った以上にヨーロッパの方が「メイド・イン・ジャパン」という肩書に信頼を持っていることに改めて気づきましたね。
 もう乗用車では、完全にトヨタ、日産、ホンダなどの日本ブランドが強さを発揮していますから、日本製キャンピングカーが海外に出ていくことも夢じゃないな … と思うようになりました。

【町田】 でも、海外で売るとなると、レギュレーションの違いが問題となってくるんじゃないですか?
【藤井】 確かに今は、ヨーロッパやオーストラリアなどユーロ5とか、ユーロ6など海外の排ガス基準と日本の基準はかなり異なっていますが、そのような問題は次第に解消していく気がしています。つまり、今が過渡期ではないでしょうか。
 というのは、ハイブリッド車や電気自動車が当たり前のように普及する時代になり、トヨタさんなども水素カーの開発を行っていますよね。
 そうなると、レギュレーションを統一してワールド規格を確立しないと、今後のマーケットの広がりが期待できなくなると思うんです。
 そういう時代が来れば、たとえばトヨタや日産の車両が、ストレートにヨーロッパで販売されるようになるかもしれません。
 私たちは、現在トヨタ純正となる車両を製作しているわけですから、それに呼応する形で海外に出ていくことも可能になると思っています。
 
 
理想のベース車が現われればキャブコンもリリース

【町田】 いやぁ、壮大な話になってきましたね。そうなると、ベース車次第でいつでも海外に出ていけると。
【藤井】 はい。バンコンからバスコンはもちろん、実はキャブコンも何度もトライしています。世に出していないんですが、キャブコンもすでに3台ほど試作車をつくっているんです。
 それは、低重心設計を心掛けたもので、前・後軸荷重もしっかり確保できるように重量バランスにも配慮したものです。
 実際に、取引先のキャンピングカー販売店の社長さんやスタッフさんにも高速道路を運転していただき、その安定感には驚きの言葉を頂戴しました。 

【町田】 なぜ、それを市販するまでには踏み切らなかったんですか?
【藤井】 やっぱり、私たちの走行感覚では、まだ未完であると思わざるを得なかったんですね。
 それはシャシー側の問題ですが、やっぱりヨーロッパのキャブコンだったら、たとえば120~130kmぐらいの巡航でも片手で運転できるくらい余裕があり安定感があります。
 私たちは一時ヨーロッパメーカーのクナウス社のキャブコンも扱っていましたから、社員もみなその感覚を解っています。
 そのため、キャブコンに関しては焦らず、じっくりと取り組むつもりです。たとえば、現在でいえばフィアットのデュカトぐらいの安定感あるシャシーが出でこないかぎり、まだ時期尚早だと判断しています。
 しかし、理想のシャシーが登場すれば、私たちはいつでもすぐ対応できる準備はあります。
 
 
幼いころから旅行といえば「車中泊」

【町田】 とても面白い話になってきましたけれど、そもそも藤井さんがキャンピングカーの世界に参入されるようになったきっかけは、どんなところにあったのですか?
【藤井】 きっかけはですね ……、ずいぶん昔の話になりますが、もともと私の父親がハンドメイドのキャンピングカーを趣味で製作していまして、それで家族旅行をしてたんですね。
【町田】 へぇー! いくつぐらいのとき?
【藤井】 僕が5~6歳の頃ですから、1970年代の後半の頃でしょうかね。父親は、職人として内装業を営んでいましたから、手先が器用で、車の中を改造することなどはお手の物だったんです。
 当時、丸目4灯のキャラバンがありましたけれど、その中に絨毯を敷いて、ベッドを組み込んで。シンクやテレビ台まで付けていました。
 キャラバンのあとは、ファーゴになって、さらに70系ハイエースになり、けっきょく全部で4~5台つくりましたね。
 
【町田】 内装パーツの入手先は?
【藤井】 当時、まだキャンピングカーのパーツ屋さんもなかったんですよ。だから全部家庭用のものを流用して … 。シンクなどは家で使うものをぶった切って、小さくしてから溶接したりしていました。

【町田】 ハンドメイドキャンピングカーなどが脚光を浴びる以前の話ですね。
【藤井】 はい。うちの場合は、その頃から、旅行といえば、今で言う車中泊が当たり前だったので、後年、友人たちが国民宿舎とか旅館に泊まっていることを知ってびっくりしたことがありました(笑)。

【町田】 「三つ子の魂百まで」という感じの話ですね(笑)。それで、自分でキャンピングカーをつくり始めたのは?
【藤井】 親父がキャンピングカーをつくっていた最後のころ … 私は中学生でしたけれど、もう製作を手伝っていましたね。
 それ以降は、ランクルの60に自分で作ったベッドキットなどを組み込んで、旅行したりしていました。
 このとき、ランクルに付けたベッドキットを近所の4WD専門店の方が認めてくださって、そのお客様用のものまで作るようになったんですね。キャンピングカー製作の技術をビルダーで修行するというのは当たり前の話で、お恥ずかしいのですけど …… (笑)。

【町田】 実際に、キャンピングカービルダーを志したのは、いつぐらいのときだったんですか?
【藤井】 22~23歳ぐらいですね。当時、名古屋で開かれたキャンピングカーショーを見に行ったんですが、そのイベントというのは、全国の有名なビルダーさんの車が一堂に会するという触れ込みだったのですね。
 それが数にして100台くらい。そのとき「日本中からキャンピングカーが集まってもせいぜい100台かぁ … 」と思ったのが、「自分でも参入できるかな … 」 と思ったきっかけの一つでしたね。
 でも、キャンピングカー屋を始めるには資金がいると感じて、まず資本金を集めることに専念するようになったんです。

【町田】 どのようなことを始められたんですか?
【藤井】 長距離トラックのドライバーになり、後に魚を運ぶ仕事を始めました。当時はバブルの頃で、けっこう良い稼ぎになりました。2年で1,500万円ぐらい貯めました。
 このとき、トラックを運転しながら、その車内で寝泊まりしたこともいい経験になりましたね。エンジンの放射熱で暑くなった運転席で寝ることは相当シンドイことだとか、外からの音がうるさいものだとか、様々なことを感じました。
 
 
「トイファクトリー」の誕生

【町田】 「トイファクトリー」を創設したのはいくつのときですか。
【藤井】 24歳のときですね。資金も一応調達できたので、思い切ってデビューすることにしました。
【町田】 1号車はどんな車だったんでしょう?
【藤井】 リンドバークというバンコンでした。でも、これは売れなくてね(笑)。「トイファクトリー」という看板を掲げて店を開いても、月に1台も売れなかったときもありました、近所の人が、「可哀そうだから」といって、1台買ってくれました(笑)。
 トイファクトリーとしての個性が打ち出せたのは、次のティピーからでしたね。

【町田】 今のランドティピーが生まれる前のプロトタイプのようなモデルですね。
【藤井】 そうです。でも、これは自分としては新しいものにチャレンジしたキャンピングカーだったんです。
 といいますのは、まずセンターシンクというレイアウトが当時としては非常に珍しかった。その時代のバンコンは、たいていバックドアを跳ね上げたところにシンクがありました。
 しかし、実際に自分でハンドメイドのキャンピングカーをつくって旅をしていても、旅行先でリヤドアを開けて使うということがあまりなかったんですよ。車内が丸見えですもんね。
 それよりも、横のスライドドアを開けたときに、正面にキッチンがあった方が便利だし、リヤ側は普通のバンと同様にラゲッジスペースにした方が使いやすいのではないかと思いました。

【町田】 業界の反応はどうだったんですか?
【藤井】 「こんな地味な車は売れないよ」と言われました(笑)。
【町田】 地味 … ?
【藤井】 当時のキャンピングカーは、まだカスタムカーのテイストが残っていた時代で、照明がシャンデリアだったり、壁も厚い生地を張ってボタンで止めるような内装でした。
 私は、ヨットやボートの内装を手掛ける工房に在籍したこともありましたから、船の内装の実用性や機能性を追求したかったのですが、それはまだ当時のキャンピングカー業界では認めてもらえなかったんですね。「派手につくらないと駄目だよ」みたいな(笑)。
 
 
トイの思想を確立させた三つのキャンピングカー
  
【町田】 実用性と機能性といえば、ティピーのあとに出たランドティピーでもっと徹底させていますね。
【藤井】 ええ。とにかく遊びの道具をいっぱい積んで、かつゆったりと寝られるというコンセプトを追求したかったものですから、ランドティピーでは常設2段ベッドを組み込んでみました。それによって、後にバンコンの一つのスタンダードといわれるようなレイアウトが実現したと思います。
 結局このランドティピーが、私たちの車づくりの原点になりましたね。

▼ ランドティピー

【町田】 そのようなエポックメイキングな車というのは、ほかにありますか?
【藤井】 うちにとって大事な車は、3台あるんです。ランドティピーはもちろんその1台ですが、他にはトイズボックス。そして、ミラノスタイルですね。

【町田】 トイズボックスが登場したのは、10年ぐらい前ですか?
【藤井】 そうですね。2004年か、2005年ぐらいのビックサイトのショーだったと思います。これは、とにかく遊びのギアをたくさん載せて、野に山に出かけるというトランポ的な要素をふんだんに取り入れた車でした。
 そういった意味で、8ナンバー登録のキャンピングカーではないのですが、やはり若い人にも関心を持ってもらうことによって、少しでもキャンピングカー人口の裾野を広げたいという気持ちがありました。

▼ トイズボックス

【町田】 確かに、ショーのディスプレイでも、自転車やミニバイクを載せたり、サーフボードを吊り下げたりして、遊びのギアであることを訴えていましたね。
【藤井】 それが功を奏したのでしょうね。1回のショーで20数台のオーダーをもらったこともあって、私たちが驚いたくらいです。
 その次に、私たちにとって新しい提案ができたと思える車が、ミラノスタイルです。この車ではバンコンで初のアクリル2重窓を取り付けてみました。
 やはり、バンコンは、ボディにどれだけ断熱材を仕込んでも、窓面積の広いガラス窓があるかぎり、断熱効果も徹底しない。それをなんとかクリアしたかったんですね。
 結局、この車からGT、バーデンと続くトイファクトリーの新しいバンコンデザインの流れが生まれたと思っています。

▼ ミラノスタイルのアクリル2重窓

【町田】 トイさんがリリースされるキャンピングカーは、トイズボックスのような若者向けから、バーデンのようなシニアの落ち着いた “くるま旅” 仕様車まで、非常に幅広いところに特徴がありますね。
【藤井】 特定の年齢層にターゲットを絞った車両開発というのは特にやってこなかったですね。
 というのは、いい車を求める人は年齢差など意識していないと思うのです。
 この業界が、一時「団塊の世代」を中心に車両開発を進めていた時代がありまして、私たちも高年齢層向けの企画を進めたこともありましたが、ある団塊世代のお客様からこう言われたんですよ。
 「そんなものは要らないよ。それよりも、若い世代向けのカッコいい車をつくってくれるのなら、そっちに乗りたい」
 それを聞いて、「なるほどな。団塊世代のニーズというのは、そういうもんなんだな。わざわざ自分から年寄り臭い車に乗る人はいないよな」と納得しましたね。
  
  
ソーラーシステムによる自然エネルギーへの関心

【町田】 ミラノスタイルの話が出ましたけれど、キャンピングカーのルーフに、アタッチメントとセットになったソーラーシステムを搭載して、グッドデザイン賞を獲得したのもその頃ですか?
【藤井】 そうです。そのシステムを搭載したミラノスタイルのデビューが2008年ですから、受賞したのはその翌年ですね。
 それまで、キャンピングカーの冷暖房は、インバーターを介して12Vを100Vに変換させるか、もしくはキャンプ場などのAC電源に頼るしかなかったわけですね。
 でも、それだけでは不具合が生じることあるし、十分な効果も得られないので、皆さん仕方なくアイドリングに頼るか、ジェネレーターを回していたのですね。
 しかし、環境問題をテーマにした議論が社会的に巻き起こっている時代に、化石燃料をむやみに消費して大気まで汚染させるようなキャンピングカーづくりには疑問がありました。
 そこで、ソーラーパネルによる太陽光発電システムをなんとかキャンピングカーにも採り入れられないだろうか、と考えたのです。

▼ グッドデザイン賞を獲得したソーラーシステム

 
【町田】 それまでもソーラーパネルを搭載したキャンピングカーもいくつか登場はしていましたけれど、それをボディと一体化させて、デザイン的にもまとまったものをつくったのは、トイさんがはじめてですよね。
【藤井】 ええ。あれも、単なる見ためを追求しただけではなかったんですね。車という振動の激しい乗り物に搭載するためには、土台をしっかりさせなくてはいけない。さらに雨・風への対策も考えなければならないだろうと、さまざまな構成要素を追求した上で、あのスタイルが生まれたわけです。
 これも、偶然ですけど、家庭用ソーラーを開発していたシャープの社長さんと知り合うことができまして、後には会長さんにもご理解いただき、シャープという大メーカー様のサポートを得ることができたのが成功の要因となりましたね。
 
 
「断熱」対策ぬきにキャンピングカー製作は語れない
 
【町田】 藤井さんは、この業界のなかではかなりエコロジーを意識した車両開発を進めていらっしゃると思うのですが、その動機は?
【藤井】 私は、高校生の頃から環境運動などに参加していました。岐阜の田舎に育ったものですから、近くに長良川とか木曽川といった清流があったんです。
 しかし、そういう河川はどこでもダム、ダム、ダム…とダムや堰ができていって、どんどん汚染されていったんですね。自然破壊といってもいろいろなものがありますが、私の場合は、そういう河川の自然破壊が進んでいくのを哀しい思いで眺めていたという体験があったからでしょうね。
 とにかく、自然の力を信じるという気持ちが、どこか私にはありますね。
【町田】 なるほど。それでエココンシャスな太陽光発電システムなどにも関心を強めてきたということなんですね。
【藤井】 キャンピングカーの場合、冷暖房、電子レンジに関わる電気消費がいちばん大きいんですよ。その消費量を少なくするためには、今いったような自然エネルギーを採り入れるシステムは不可欠ですけど、あとはやっぱり「断熱」ですね。

【町田】 トイさんはデビューした当初から、とにかく断熱に対しては “神経質” と思えるほどのこだわりを貫かれてきましたよね。
【藤井】 はい。とにかく、ランクルを改造して車中泊をしていた頃から、キャンピングカーは、暑さと寒さの対策をしっかり講じておかないと使えないという自覚がありましたから、断熱だけは徹底させたかったんですね。
 特に、小さな子供やワンちゃんを連れて旅行するときは、断熱されていないキャンピングカーだと、まず子供やワンちゃんがダメージを受けてしまいます。そんなことも、自分が家族を連れて車中泊を重ねているうちに身についてきたことですね。 

【町田】 やっぱり、キャンピングカーの設計というのは、そういう実体験から生まれてくるんでしょうね。
【藤井】 その通りなんです。キャンピングカーを開発する者にとっては、やはり自分でキャンピングカーを使っていることがいちばんの武器になりますね。
 結局、お客様が何に困っていらっしゃるのか。何を改良してほしいと思われているのか。何を期待されているのか …。そういうことは、まず売る側の人間が自分で乗ってみて、長距離を走り、キャンプ場やスキー場で泊ってみるという体験がないと理解できないと思います。
 また、そうして行かないと、お客様にも提案はできない。
 今トイファクトリーは「遊びクリエイト・カンパニー」というキャッチを謳って、お客様に遊びの提案を投げているところなんですが、そういう提案も、やはり自分でキャンピングカーを使ってみない限り生まれてこないように思えます。
 うちの社員もそういうことをよく理解しているので、みな自社製品を買って、遊んでいます。
   
  
トイファクトリー直営キャンプ場がまもなくオープン

【藤井】 実は、今キャンプ場の整備も始めているんですよ。遊びの提案の一つとして、ヨーロッパメーカーみたいにお客様の声に向けてアンテナを張れるように遊ぶためのフィールドづくりも大事だと考えているんですね。
【町田】 場所はどこですか?
【藤井】 中央自動車道の「土岐インター」から10分もかからないぐらいの場所で、うちの本社からも10~15分ぐらいのところです。
 前々からキャンプ場を持ちたかったので、いろいろ物件を探していたんですよ。そうしたら、会社の近くに閉鎖したキャンプ場があるという情報を得たので、見に行ったんです。
 中を覗いていると、たまたま通りかかったその土地の所有者に偶然出会いましてね。その方もキャンピングカーを持っていらっしゃる方だったので、トントン拍子に話が進みました。

【町田】 でも、よくそんなに願ってもないような物件が、会社の近くいにありましたね。
【藤井】 ええ。閉鎖していたキャンプ場だったから気づかなかったんですね。そこは、すぐ下に人工湖がありまして、眺めもいいし、カヌーなどで遊ぶこともできます。池の周りを歩くとちょうど7km。トレッキングにも最適です。
 だから、やがてはカヌーやマウンテンバイクの専門家を招待したりして、アウトドアを楽しむ講習会のようなものを企画していきたいんです。子供たちに「自然教室」を開くために、いま我々スタッフもネーチャースクールの資格を取ったりしているところです。

【町田】 オープンはいつですか?
【藤井】 今センターハウスなどを改装しているところなので、5月頃から使えると思うのですが、ただ最初の1年は、トイファクトリーのユーザーさんやその仲間の方々だけに無料開放するつもりです。
 キャンプ場の運営で儲からないのは分かっていますが、お客様たちには、トイファクトリーの仲間同士が知り合える場所を提供して行きたいんですね。
 
 
将来はプライベートジェットの内装も

【町田】 建設的なビジョンに満ち溢れるお話をたくさんうかがうことができましたが、最後に10年後、20年後のトイファクトリーがどんな会社になっているか、その予想を一言。
【藤井】 これは、ほんとうに夢でしかない話かもしれませんけれど、将来はキャンピングカーだけでなく、プライベートジェットの内装を手掛けるような仕事も進められたらいいな、と思っています。

【町田】 「空」に雄飛ですか !
【藤井】 もう3年くらい前の話になりますが、ロサンゼルスに行ったときに、そこでプライベートジェットの製作・販売で3割ぐらいのシェアを持っている会社の社長さんとお会いする機会があったんですね。
 その人も、最初はキャンピングカーをつくっていて、その後プライベートジェットの世界に参入して行った方でしたけれど、もう客層が違うんですよ。タイガー・ウッズやジョニー・デップが顧客なんですね。
 訪れたときには、ちょうどそういうセレブの飛行機がメンテナンスに入っているところでした。

【町田】 なんとまぁ、華やかな世界 !
【藤井】 「君もやればいいのに」と、彼が言うわけですよ。アジアには大富豪がたくさんいると。だけど日本人はなかなかその世界には参入しない。おかげで我々は日本の上空を飛び越して、700万円もかかるプライベートジェットのメンテナンスのためにクルーを派遣できているって。
 で、私たちの生産拠点のひとつに沖縄があるという話を聞き、彼は身を乗り出してきたんですね。
 「沖縄空港の近くに格納庫を造って、そこでプライベートジェットをやればものすごく地の利もいい」と。
 今後、ホンダジェットのように、日本の企業も航空機産業に手を染めていくことになるでしょうから、そうなればその内装を手掛ける会社も必要になってくる。
 そのときに名乗りを挙げてもいいかな、ぐらいには思っているんですけどね(笑)。
 実際に地元の岐阜や東海地方は、ボーイング社787の機体の35%を製造する航空特区なんですよ。三菱MRJもすぐそこで製作しています。だから夢は膨らみます。
 ま、これはまだ雲の上のような話に過ぎないんですけど … 。
【町田】 いえいえ、トイさんなら十分にその務めをこなせる力はあると思いますよ。そのときが楽しみです。
   
  
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トイファクトリー藤井社長インタビュー への2件のコメント

  1. 木挽町 より:

    新ブログ移行ありがとうございました。トヨタのものづくりはサプライヤー各社の徹底的な品質管理とコスト低減や工程管理が見事ですね。乾いた雑巾を絞ると言われていますが、まさにそれを実行できるところがトヨタの強さでしょうか。クルマの断熱や内装については非常に難しいエリアでしょう。冷凍はそれほど難しくないのですが、チルド温度帯を保つためにはかなり高度な技術が必要になると聞いたことがあります。航空機の内装では、発泡剤の微妙な組み合わせでまったく違った性能になるそうです。住宅建材からの応用技術がほとんどだそうですが、クルマ独自の問題も解決せねばならず、エンジニアは日々格闘しているようです。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      新ブログにお越しいただき、ありがとうございます。

      かつて … 20年ぐらい前ですけど、トヨタ自動車さんのPR誌を編集しておりましたので、サプライヤーさんにも取材する機会がありました。
      トヨタさんの品質管理に対する徹底ぶりは、その頃からたくさん聞いております。やっぱりすごい会社ですね。「世界のトヨタ」ですから。

      木挽町さんは、お仕事柄なのでしょうけれど、自動車の原理や機構に対する豊富な知識をお持ちのようですね。いつも勉強になります。

      航空機の内装は住宅建材からの応用技術がほとんどとのこと。
      ここに紹介したトイファクトリーさんは、そもそもが住宅建材の素材などに関して緻密な研究をされて、その知識と経験をキャンピングカーに生かしたという経歴をお持ちですから、航空機の内装に関しても、内心はけっこう自信があるのかもしれませんね。
       

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