アネックス 田中社長 インタビュー

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 昨年創業50周年を迎えた関西のキャンピングカービルダー「アネックス」。
 もちろん、会社が設立された当初からキャンピングカーを製作していたわけではない。
 1964年(昭和39年)に、同社が誕生したときは、別の仕事がメインだった。しかし、その時代から地道な研鑽を積んできたことが、後のキャンピングカー開発の礎(いしずえ)を築くことになる。
 「アネックス50年」の歴史を、現社長である田中昭市さん(写真下)からうかがうことができた。


 
 
【町田】 創業が1964年(昭和39年)ということですが、最初のお仕事はどのようなものだったんですか?
【田中】 父親(現・アネックス会長)が、自動車の修理をする整備工場としてスタートさせた会社なんです。「たなか自動車商会」という屋号でした。
 そのあと、板金塗装の仕事を手がけるようになりました。それで、1976年(昭和51年)には「オートボディショップたなか」に社名変更しています。

【町田】 「オートボディショップたなか」のときに、すでにキャンピングカーを作っていらっしゃいましたよね?
【田中】 ええ。しかし、最初はあくまでも板金・塗装が中心の会社だったんです。その頃は、板金業界に技術革新が起こっていた時代で、どんどん新しい技術や技法が生まれていたんですね。
 そこで、板金の新しい技術を学ぶために、会長を筆頭に、私も含め、うちの主要スタッフがアメリカに勉強しに行ったんです。
 そうしたら、カリフォルニアあたりでカスタムペイントというものが流行っていることを知ったんですね。アメリカンコミックのキャラクターなどをボディいっぱいに描いた車が大人気だったんです。

【町田】 日本でも「バニング」という形で紹介され始めた時期ですね。
【田中】 そうですね。それで、日本でもカスタムペイントをやろうということになって、帰国して、それを始めたんです。
 最初は外板塗装だけだったのですが、お客様から「内装も手がけてほしい」と要望されるようになり、それからカスタムカーの内装を手がけることになりました。
 ただ、最初はそういう車の登録をどうすればいいのか分からなくて、探しているうちに「キャンピングカー」というカテゴリーがあることに気づいたんですよ。そこから、8ナンバーを取るような車両を手がけるようになったんですね。

キャンピングカーをつくり始めてから34年

【町田】 本格的にキャンピングカーを作り始めたのはいつぐらいからですか?
【田中】 キャンピングカーをはじめて手がけたのは、1981年(昭和56年)です。日産キャラバンをベースにボディカットしたモデルでした。それを「大阪オートショー」に出展したことがあります。
【町田】 その時代は、バニングも平行してやっていらっしゃったんですか?
【田中】 そうですね。ちょうどバニングの全盛期でしたから、むしろ、うちもバニングの方が主体でした。
 当時は、どのビルダーさんたちも、バニングのデザインを取り入れた派手な内外装のキャンピングカーを手がけていらっしゃいましたね。内装では、ピンクの布団張りで金色のラメが入ったり … 。
 うちも、そういう製品に自信を持っていましたから、大阪で開かれた国際見本市の会場に自慢のカスタムカーを2台出展したんです。
 そうしたら、何人かの中年の見学者に、こう言われたんですよ。
 「こんな派手派手しい車には乗れない」って。「それよりも、ちゃんと使えるシンクなどを付けて、実用的なキャンピングカーを目指した方がいい」って。

【町田】 それでキャンピングカーの道を?
【田中】 そうです。そういうマーケットがあるのなら、そっちの道も模索してみようと。
 とにかくうちの会長はチャレンジ精神が旺盛なので、新しい仕事を積極的に取り組む姿勢が強かったんですよ(笑)。
 そのキャンピングカーとしての定番モデル1号車が、今年アニバーサリーモデルとしても復活させたコンポーザーだったんです。

▼ 初代コンポーザー

【町田】 初代のコンポーザーはどんな車だったんですか?
【田中】 60系ハイエースを使ったポップアップルーフのバンコンでした。スライドドアを開けると、反対側にキッチンがあるというもので、ドイツのVWキャンパー「ウエストファリア」のレイアウトを意識して作ったものでした。
 しかし、これが最初は全然売れなかったんですよ(笑)。
 売れ出したのはレイアウトを変えてからですね。日本人には、やはりセカンドシートが前・後向きに調節できてサードシートと対面ダイネットを形成できるようなものが好まれるようです。そういうレイアウトを採り入れてから、このコンポーザーが認知されて売れるようになりました。

▼ 今年登場したコンポーザーアニバーサリーモデル(外形)

キャブコン「エディ」で一世を風靡

【町田】 その次にメインとなったモデルは?
【田中】 1992年に開発したノッポというバンコンがあります。これはハイエースにFRP製ハイルーフを架装して、室内高を稼いだ車だったんですね。
 当時は、超ハイルーフ仕様のバンコンに人気が集中していた時代で、このノッポは売れました。もし、この車が売れてくれなかったら、うちはキャンピングカー業界から撤退していたかもしれない。
 結局、このノッポのオーダーがけっこう入るようになったので、うちの工場もようやくキャンピングカー屋らしく見えるようになったんですよ(笑)。だからノッポも、うちにとっては重要な車ですね。

▼ ノッポ

【町田】 キャブコンを手掛けるようになったのは、いつですか?
【田中】 1995年のマックスが最初のモデルですね。
【町田】 キャブコンを始められた動機は?
【田中】 ヨーロッパなどのキャンピングカー先進国では、キャブコンが主流でしたから、日本でもマーケットが成熟してくれば、キャブコンの需要が増えるだろうという判断でした。
 ただ、自社でいきなりキャブコンを製作するのは無理だったので、キャブコンでは第一人者のセキソーボディさんと技術提携してハイドロバック工法を習得し、マックスシリーズを開発できるようになったんです。

【町田】 現在のキャブコンの主要ブランドであるリバティーが登場したのはどのあたりになるのでしょう?
【田中】 リバティは1996年からですね。これはベース車、ボディサイズ、レイアウトなどのバリエーションを増やしながら、リバティNSのような形で現在に至っています。

▼ リバティNS

【町田】 アネックスさんのキャブコンがとにかく一世を風靡したのは、グランドハイエースをボディカットしたEDDY(エディ)でしたね。あれが、登場した2000年という年は、業界もメディアも騒然としましたものね。
【田中】 グランドハイエースをボディカットしたキャブコンの第1号車でしたからね。しかし、企画を練っていたのはファーストカスタムさんの方が早かったんですよ。当時ファーストの佐藤社長が、「実は今度こんな車をつくろうと思っているんだ」といってスケッチを見せてくれたんです。
 それを見て、「わぁ、めちゃめちゃいいいなあ !」と思って、うちでもつくれないかなと取り組んでみたら、結果的にファーストさんより早くできちゃった(笑)。

▼ EDDY(エディ)

【町田】 ボディカットモデルは、一時「剛性が不足しているんではないか?」とか「強度は大丈夫か?」などという議論を呼んだこともありましたけど、自信のほどは?
【田中】 もともとうちは、ボディカットした車からスタートしているんですね。だからボディを切るのははじめてではなかったんです。最初にボディカットしたキャンピングカーは、その後10年経ってもノントラブルだったので、切っても大丈夫だということは分かっていました。

目指すはカリフォルニアキャンパーのような究極のスタイル

【町田】 エディシリーズや、リバティーNSのような流麗なボディカットキャブコンのイメージが鮮烈なので、アネックスさんというとキャブコンメーカーの印象も強いのですが、実はバンコンにおいても、すごく斬新な提案を秘めた先進的なモデルを数々開発されていらっしゃって、バンコンビルダーとしてもユニークなポジションを獲得されていますよね。
【田中】 あれこれと形を変えたものを出しているのは、まだ究極のものを突き止めていないからでしょう(笑)。

【町田】 田中さんの考える究極のものとは?
【田中】 ドイツの代表的なバンコンバージョンの「カリフォルニア」のような車が、キャンピングカーの一つの究極の姿ではないかと考えているのです。
 カリフォルニアは、VW社の純正キャンパーとして販売されていますが、あの車がすごいのは、もう30年か40年ぐらいまったくレイアウトを変えていないところにあるんです。
 スライドドアを開けると、その向こう側がキッチンになっているというスタイルなんですね。ダイネットテーブルを設けないと、ドアを開けたときにものすごく広い空間が現われる。まず、その解放感が心地よいし、荷物の収納スペースにも、ペットの居場所としても機能しているんですね。

▼ 「VWカリフォルニア・コーチ」(1996年)

【町田】 確かに、シンプルだけど、計算され尽くしていますよね。
【田中】 そうなんです。で、ダイネットを構成するときは、ダイネットテーブルをセットして、運転席・助手席を回転させたフロントシートとセカンドシートと向かい合うというスタイル。
 フォルクスワーゲンは、このレイアウトをもう何十年も貫いているんです。車種としては「コンフォート」という車と「ビーチ」という車の2車種があるんですが、それはシンクが付いているか、付いていないかという違いだけ。そういうワンタイプのものを年間6千台とか7千台ぐらいつくっているんですね。

【町田】 カリフォルニアが売れ続けている秘密はどんなところにあるんでしょう?
【田中】 やっぱり、これは相当量の量産が可能でないとつくれない車種なんですよ。
 カリフォルニアのディテールを見ていくと、向こうが100点満点ならば、日本車は50点とか60点ぐらい。もうそれくらい完成度が違うのです。 
 その完成度というのは、家具や装備類の精度とか作り込みなどというレベルの話とは違っているんですね。工業製品としての安定度とか緻密さが徹底しているんですよ。どんなパーツにおいても、金型をしっかり起こして製作されているのが分かるんです。そういうことは、僕らのような日本のビルダーが生産する台数では達成できない。

【町田】 そこを目指していくのは、今の日本のマーケット規模ではむずかしいんでしょうか?
【田中】 そうなんですが、でも、少しずつそれに近づける努力はしていくつもりなんです。
 たとえば、今回のコンポーザーのアニバーサリーモデル。これなどは、型を起こした方がいいところは、どんどん型を起こしているんです。今回のモデルでは、スイッチ周りなどはぜんぶ型を起こしてやっているので、今までのものと比べると、ずいぶんクオリティは上がっていると思います。
 このような型は、このアニバーサリーモデルで使ったような350キャラバンなら流用できるわけで、このような手法は、他の車種でもトライしていきたい。
 それによって、うちのキャンピングカーにも、工業製品的な安定感が備わっていくように思います。
 
 
▼ コンポーザー・アニバーサリーモデル(内装)

参考記事 「2014アネックスキャンプ大会」

参考記事 「NV200キャンパー『R I W』 」

参考記事 「アネックス『NS-F』誕生」
  
 

カテゴリー: campingcar   パーマリンク

アネックス 田中社長 インタビュー への2件のコメント

  1. 木挽町 より:

    あまり専門ではありませんが、読んでいるとかなりおもしろい技術を持っていらっしゃるのが分かります。フレームシャシーの車ならともかく、モノコックの改造はかなり難しいはずですし。いろいろなアイデアや技術に感心します。型をおこすとこからやられている本格派なんですね。装甲車「ブッシュマスター」やハマーベースの装甲車架装などにも充分に応用が利くような気がします。もちろん陸上自衛隊の車両にも。国境警備車両、兵員輸送車両などなど、バニングで培った造作ノウハウを、今後ビジネスとして程度の拡大が見込める分野への架装部品の供給などに広がるとおもしろそうですね。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      おっしゃるように、乗用車メーカーが設計段階で剛性や強度計算を綿密に割り出して設計されるモノコックボディをカットするのは、そうとう難しい技術であるかと思われます。
      キャンピングカービルダーにおいても、そういう作業をこなしながら安全性を確保した車両を開発する力のあるビルダーはそう多くはありません。

      その点、このアネックスさんは、ボディカットモデルをリリースしてきた歴史も古く、しっかりしたノウハウをお持ちです。信頼できるビルダーさんのひとつだと思います。

      キャンピングカービルダーさんが、実は警察車両のような特殊な車を製作するケースはかなり増えています。
      さすがに、自衛隊車両のようなものは、秘密事項が多いのであまり公表されることはありませんが、それに近いものをすでに密かに受注しているところはあるかもしれませんね。

      消防車、警察の指揮カー、災害の後方支援車などを製作していることを公表しているビルダーさんはけっこういらっしゃいます。
      あとは、移動販売車ですかね。
      キャンピングカー製作のノウハウがあれば、それらの特殊車両を手掛けることも簡単なのかもしれません。
       

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