ナッツRVがトップに立っている秘密

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《ナッツRV荒木社長インタビュー》 

 生産規模、販売規模、そして、アイデアや技術の革新的提案において、キャンピングカー業界のトップを走り、メディアやユーザーからもリーディングカンパニーとして注目されているナッツRV。
 そのナッツRVの荒木賢治社長に、自社の車作りの哲学、そしてキャンピングカー産業を育成するための取り組み姿勢、未来への提言などをうかがった。

▼ 荒木賢治 社長

ボーダーの開発がナッツRVの方向を定める

【町田】 まずは、ナッツさんがこの業界に関わるようになったきっかけ、及びスタートを飾った思い出のキャンピングカーなどのお話から … 。
【荒木】 私たちのキャンピングカービルダーとして歴史は、16~17年ぐらいだと思いますけれど、1995年(平成7年)から、すでにカスタム系の車両を手掛けていましたので、会社としては20周年を迎えます。
 それ以前にはスポーツカーショップを運営していましたから、「ナッツ」という看板を掲げてからは27年ぐらい経ちます。

【町田】 ということは、自動車関係の仕事はそうとう長く続けて来られたわけですね。
【荒木】 はい。基本的に私たちは、車好きの仲間があつまったというグループだったんです。でも、仕事をやるなら徹底的に極めようという志向が強くて、カスタムカーの時代には、大きな大会でグランプリを獲得したこともあるんですね。
 そこで、次はいよいよキャンピングカー部門に進出しようと決めて、16年ぐらい前に、キャンピングカーの本場であるドイツまで勉強に行ったんです。
 いやぁ、目からウロコでしたね。本場のキャンピングカーは、想像していた以上に進んでいたし、奥も深かった。これは「やりがいのある世界だな」と燃えました。

【町田】 キャンピングカーとしてデビューした最初の車は?
【荒木】 「キャロット」というバンコンです。次に「スピナ」というキャブコンを出しています。しかし、私たちが総力をあげて自社開発を進め、自信を持ってリリースしたのは、グランドハイエースをボディカットした「グランツ」からですね。
 そのころすでにうちは、内装の部署とボディ製造の部署を分けて効率化を進めていましたから、この車はかなり生産しましたし、実際にグランドハイエースベースでは最も売れたのではないかと思っています。

▼ グランツ
 

【町田】 ナッツRVさんのキャンピングカーづくりの中で、成長への大きな転機となった車というのは何ですか?
【荒木】 やっぱり「ボーダー」じゃないでしょうか。各社のグランドハイエースが売れていた時代に、そのベース車がなくなるという話が出てきて、それに代わるものとして、200系ハイエースをボディカットする方向にシフトされたビルダーさんも割といらっしゃったんですよ。
 しかし、一度グラハイまで進んだお客様のなかには、ハイエースでは満足できないという声もあったんですね。そこで、うちは思い切ってコースターをボディカットすることにチャレンジしました。
 もちろん試行錯誤の繰り返しで、開発にはそうとうな苦労を重ねましたけれど、結局、その過程で得たノウハウが、今のナッツを支える力となりましたね。

▼ ボーダー
 

【町田】 確かに、あの車は、メディアからもユーザーからもすごい注目を浴びましたね。
【荒木】 当時、ヨーロッパで最先端モデルがみな使っていたアルミパネルを採用し、パーツにもヨーロッパの最新デザインと最新機能を持ったものをふんだんに導入しましたし、フォルムもカラーリングにも相当こだわったおかげで、市場の評価は高いものになりました。
 このボーダーで確立したアルミ工法やPVC家具などを採用した車が、その後のうちの方向性を決めましたね。
 
 
ヨーロッパ・スタンダードを採り入れた車づくり

【町田】 ナッツRVさんの目指していらっしゃる方向とは、どのようなものなのでしょう?
【荒木】 これまでも、家具にはヨーロッパで普及しているPVC家具を採用していましたし、その他のパーツでも、ヨーロッパ製が多いのですが、今後はさらに、いろんな意味でのヨーロッパ化を目指しています。
 結局、ヨーロッパ車は安全性と軽量化を徹底的に追及しているんですね。そのための研究も努力も重ねている。
 たとえば、もう素材そのものが2年ぐらい前からガラッと変わっているんです。樹脂を主体に、いろいろな化合物を混ぜた新素材が当たり前のように普及しているんですね。それを使うと、捻じれない、曲がらない、ビスをタッピングして抜いても、また同じところにビスが効く。
 我々も、今後はそういう素材を活用するように検討していきます。

【町田】 「検討中」ということは、導入にはまだ多少の時間がかかるということですか?
【荒木】 そういう素材の調達には、コストがかかるんですね。やはりある程度のスケールメリットが追求できるようになっていないと、簡単には手が出せないんです。
 結局、ヨーロッパと日本の車を比較してみて、何が一番違うかというと、生産ボリュームが違うんですね。
 ナッツの生産台数は、国内では最も多い方に入ると思いますが、ヨーロッパの大手メーカーは、その10倍は生産している。私たちもそれくらいの規模にならないと、現在のヨーロッパ車の最新の技術を導入できない。
 しかし、そうも言っていられないので、できるところから “ヨーロッパ化” を進めています。家具も、これからはヨーロッパスタンダードといわれるサイズに全部変えていきます。家具の厚みなども同じにして、共有部品をたくさん使えるようにしていくつもりです。

【町田】 量産化を進めるには、工場の対応力も上げないとならないでしょうね。
【荒木】 そのとおりです。実際に、このほど北九州に新しい工場を設立いたしました。敷地は4千坪。そのなかに、生産設備を集約するだけではなくて、電装系から安全性、軽量化などのすべてテーマを統括する開発部署も置きました。おそらく国内最大規模の工場になったのではないでしょうか。
 そういう集約型の生産設備をしっかり確立することによって、作業の効率化を図り、よりお客様が求めやすい価格帯の車両を提供させていただくというのが、我々の理念なんです。

外国製キャンピングカーと比べた日本車の特徴

【町田】 ナッツさんの場合は、海外にも工場がたくさんありますね。
【荒木】 はい。中国工場のほかに、フィリピンにも工場があります。こういう海外に拠点を設けた理由の一つには、やはり世界に向けて、日本のキャンピングカー文化を発信していきたいというビジョンもあるんですね。
 やはり、日本の国土・風土に適った形で開発されてきた国産キャンピングカーには、それなりのアイデアや技術が育っている。それをベースにしながら、ワールドワイドなノウハウとテクニックを融合させ、より一歩進んだキャンピングカーモデルを作りあげてみたい。
 それが海外雄飛の一つの目的であり、私の夢でもあるんですね。

【町田】 荒木さんが考えていらっしゃる国産キャンピングカーのアドバンテージというものはどんなものなのでしょうか?
【荒木】 やはり日本の乗用車やカメラなどが世界に認知されたように、日本の技術力に対する海外の評価は非常に高い。そこには日本人の熱心さが反映されていると思うんです。
 そもそも、パンを作る機械が家庭の中にまで浸透している国なんて、日本ぐらいのものじゃないでしょうか(笑)。そういうように、日本人は生活を便利にするアイデアを製品化するのが得意ですよね。
 キャンピングカーにおいても、家庭用エアコンやソーラーなどを装着する技術は日本車が突出しています。その部分は、海外のキャンピングカーに比べても自信を持てるところじゃないでしょうか。

【町田】 いろいろな設備投資を積極的に行い、それによって生産効率を上げて、ユーザーにリーズナブルな価格の商品を提供するというのは製造業の王道だとは思いますが、それを可能にするためのマーケットの整備に関しては、どのようにお考えですか。
【荒木】 日本にキャンピングカーが普及させていくためには、やはりインフラの整備が非常に大切だと思っています。現在、RV協会としては「RVパーク」の整備に全力を投入していて、この5月現在で47ヶ所のRVパークが生まれているのですが、これが100を超えるぐらいになってくると、新しいキャンピングカー泊のスタイルが確立されるようになると思うんですね。
 それと同時に、普通の道の駅や高速道路のSA・PA泊においても、マナーをしっかり守ることを条件に、宿泊を合法化していくような働きかけもしていきたい。
 
 
インフラ整備もいずれ我々の手で

【町田】 キャンプ場との提携も大事になるでしょうね。
【荒木】 ええ。キャンプ文化の育成と普及に貢献している「日本オートキャンプ協会」という団体があるのですが、そういう組織とも連携を取り合い、キャンピングカーを活用できる裾野を広げていきたいと思っています。
 さらに、行政とタイアップできるようになれば、話はもっと広がるのではないでしょうか。欧米では、国民の健康推進とレジャー産業育成のために、国家事業としてキャンプ場やRVパークの建設に力を入れている。
 日本はまだそこまで進展していない。しかし、日本の政府も観光事業の育成には非常に力を入れ始めています。それが、過疎化の進んでいる日本の現状を食い止め、地方創生につながるという意識を持ち始めていますね。
 そのためには、我々も、キャンピングカー泊が楽しめるインフラ整備を国にお願いできるような、しっかりしたビジョンを練り、具体的な計画を提示する力を蓄えなければならない。
 それには、国との連携を保って事業計画を推進しているような様々な団体とも交流し、「キャンピングカーによる地域活性化」のモデルケースを具体化しなければならないと思っています。

【町田】 具体的には、どのようなものが想定されますか。
【荒木】 これはまだ個人の構想段階の夢なんですけど、RVパークの整備と同時進行の形で、RV協会なり、あるいは協会に所属している会員単位でもいいのですが、地方に土地を買って、オートキャンプ場なりRVパークなりを建設し、それを直接運営してもいいと思っているんです。
 最初は手作りでもいいでしょうね。そういうことに興味を持ち、時間と資金に余裕がある有志が集まって、キャンプ場を整備し、あるいは温泉を掘ったりして、自分たちで理想のキャンピングカー宿泊施設を作りあげていく。
 そういうムーブメントが顕在化していけば、それが起爆剤となって、本当にキャンピングカーユーザーの希望に沿えるキャンプ場なりRVパークが生まれてくるように思います。

【町田】 なるほど。確かにこれからはRV業界も、ただキャンピングカーをつくって売るだけでなく、インフラ整備も含めたソフトの提案をしていかなければならない段階に来ているということなんでしょうね。
【荒木】 ええ。その通りですね。私たちもそろそりキャンピングカーを売った後のことを真剣に考えなければいけないところにまで来ているように思います。
 だから、私たちの会社も、お客様に対するサービスでも、今までできなかったことを積極的にやっていこう考えているんです。
 たとえば、サービス体制の充実。これはどこの販売店さんでも力を入れているところでしょうけれど、うちは「サービス部」という部署を専門的に設けていますし、それによって、アフターフォローを完璧にこなしていくつもりです。もちろん修理・故障などに対応するだけでなく、車検を受けられる工場を社内に設立します。
 
 
社員には、1ヶ月の長期休暇を取らせることも大事

【町田】 それは素晴らしいですね。
【荒木】 キャンピングカー事業を、「産業」といわれる規模に押し上げるためには、それは当然のことだと思うんですね。
 さらに、うちの営業所にはすべてダンプステーションを設ける企画を進めています。そこで、旅から帰って来られた方がトイレを清掃できるようにする。
 また、うちのユーザーイベントなどには、サービススタッフを連れていって、その場でユーザーの車両の不具合の相談を受け、その場で修理できるようなものなら、それに応じることも考えています。

▼ ナッツRV感謝祭

【町田】 キャンプイベント中に車両修理を受けることなど、これまでの販売店さんは極力避けようとしていましたけどね。
【荒木】 しかし、これからキャンピングカーのさらなる普及を考えると、もうそこまで対応しなければいけないと思うんですよ。
 さらにはですね、うちの会社の社員が、1ヶ月ぐらいの長期休暇が取れるようにすることも検討中です。

【町田】 それはすごい ! キャンピングカー業界のみならず、社会的なニュースとして取り上げらますね。
【荒木】 もちろんすぐには1ヶ月の休暇は無理かもしれませんが、最初は1週間から2週間など、いろいろテストしてみようと思っています。
 なぜ、そのような長期休暇が必要かというと、私たちは遊びのための車を企画・開発しているわけですね。
 ヨーロッパでは、キャンピングカーを使ったロングバケーションが、庶民には当たり前になっています。
 そういうレジャーを楽しむ車をつくりながら、社員が1ヶ月ぐらいの休みがどんなものか知らないと、「キャンピングカーを長期に使う」というイマジネーションを持つことができない。 
 だから、社員がまずキャンピングカーを使って、長期旅行にトライしてみる。そこから、キャンピングカーには何が必要か、どういう作りが大切なのかということを社員にも実感してもらう。
 そうすることによって、はじめて「キャンピングカーづくりのマインド」が我々にも身につくと考えています。 
 
 
ナッツRV HP → http://nutsrv.co.jp/
 
関連記事 「ナッツRV 荒木社長 インタビュー(2012年)」
 
参考記事 「ナッツRV感謝祭 2014」
 
 

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ナッツRVがトップに立っている秘密 への2件のコメント

  1. 木挽町 より:

    勉強になります。ありがとうございます。「ボーダー」はかなり可能性を秘めているように感じました。特に東南アジアでは面白そうですね。アルミ溶接のノウハウや現地作業員の習熟度によってはコスト低減も図れると思いました。キャンピングカーとしての用途ではないのですが、シャシーを悪路走破性能の高いものにすれば密林での国境警備車両や救援車両として活躍できそうですね。6x6のリア2軸でシングルタイヤであれば地雷を踏む危険性を低くできますし、最低地上高を少し上げるだけでも悪路走破性は高められますし、吸排気にも手を加えれば渡渉能力も高まります。前照灯はブラックライトで。東南アジアの現地の国境警備隊や救援隊ではベトナム戦争時代のアメリカ製四駆の中古車を修理しながら使っている状態でしょうし。各国の経済発展とともに装備品のレベルもあがっていくでしょうし。辺境開発などでも大活躍できそうですね。ひとつの市場として魅力がありそうです。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      ああ、なるほど !
      密林での国境警備車両、救援車両としての可能性。
      私自身は、そこまで考えたことはなかったですが、キャンピングカービルダーさんの中には、そういう用途があればそれなりの車両を作り出す技術・ノウハウを持っていらっしゃるところはかなりありそうです。

      現に、ここに登場願ったナッツの荒木社長などはオーストラリアまで出向いて、現地のキャンピングカー事情を研究されています。そこでは軽量化と高速性能を追求するヨーロッパ車とはまったく次元の異なるキャンピングカーニーズがあるのだそうです。

      どういうことかというと、今オーストラリアでは、キャンプ場やRVパークのような管理されたキャンピングカー泊スポットに出向くよりも、道なき道を進んで、文明のかけらも見えないような手つかずの自然の中で過ごすレジャーがブームを呼んでいるとか。

      そういう場所で使うキャンピングカーともなると、悪路走破性を高めるために、足回りもがっちりと固め、タイヤもキャラメルブロックのようなオフロード用。剛性を確保するためにスタビライザーを装着し、ボディ各所はプロテクターで補強されているということでした。

      さすがに、日本ではそのようなキャンピングカーを求める声はありませんが、ニーズがあれば、それに応じた車両をつくることなどは技術的には簡単なことのように思えます。

      考えればいろいろなマーケットがありそうですね。
      木挽町さんのサジェスチョンは、いつも刺激に富んでいます。勉強させてもらうのはこちらの方です。
       

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