バンテック京都店オープンとバンテック車の開発思想

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 バンテックの京都店がこの5月にオープンした。
 それにちなんで、同社の佐藤社長に京都店の特徴などをいろいろうかがうことができた。
 取材時間も多く取れたので、新型ジルの開発秘話を含め、バンテックの車作りの思想やその製品的な特徴に関してもいろいろな話題を引き出すことができた。
 その一部をここに紹介したい。

▼ バンテック 佐藤徹 社長
 
 
《目次》
・ RVパークも兼ねるバンテック京都
・ メンテナンスやトイレ処理も可能な “RVパーク”
・ 女性でも気楽に運転できる車両開発
・ 重量バランスがキャンピングカー設計の大きなポイント
・ タイヤの空気圧調整における窒素ガスの効果
・ ダブルタイヤかシングルタイヤか? 車種によって異なるメリット・デメリット
・ 空気圧によって乗り心地も変わる
・ 12V電子レンジの正しい使い方
・ 「ジルを超えるのはジルだけ」
・ NV200をボディカットした “マルチユースビークル”

RVパークも兼ねるバンテック京都

【町田】 この5月15日にバンテックの京都店が誕生したわけですけれど、この直営店の特徴などからお話をうかがいたいと思うのですが。
【佐藤】 ずばりここは「RVパーク(車中泊場)」としての機能を持った展示場として運営していくつもりなんです。
 現在はまだ、お客様の宿泊機能を整備している段階ですが、8月頃からはここでキャンピングカーやミニバンなどで車中泊していただいて、京都見物のベース基地として使ってもらいたいと思っています。
 この展示場は、京都駅の南側にあって、鴨川と桂川の合流地点に位置するという観光には最適の場所なんですよ。店舗から100mぐらいのところには、京都駅や竹田駅に行くバス停があるし、店の隣にはサイクリングロードも整備されていて、その道が京都の中心部まで続いています。
 しかも、展示場からの眺めも落ち着いているし、近くには酒蔵も多い。そういうところで地元の名酒を買い、夜はRVパークに停めたキャンピングカーの中でお酒などを楽しんでもらう。そういう性格を持った “どなたにも使っていただける” 展示場なんです。

▼ バンテック京都店

【町田】 車で訪ねたときのアクセスを少し詳しく教えてもらえませんか。
【佐藤】 名神高速の京都南インターを降りて南に下り、二つ目の「赤池」という信号を右折。そこから約300m。高速を降りてからだいたい3~4分です。Google(グーグル)で「バンテック京都」と打ち込んでもらえば地図も出ます。
 展示場の西側から鴨川の河原に降りることができますし、東隣りは高層マンションで都会のオアシス的な雰囲気です。
 そして、隣の隣が「デイリーヤマザキ」なので、食料品の調達にも困らないですよね(笑)。ご来店の際には「デイリーヤマザキ」のお店を目印にしてもらってもいいかもしれませんね。

【町田】 オフィスもきれいに仕上がりましたね。
【佐藤】 建物そのものは木造なんですが、アウトドア関係のショップにありがちなログハウス調のものではなく、シンプルモダンなカフェのような安らぎを感じられるデザインにしてみました。
 キャンピングカーでキャンプするというと、「土煙が舞ったり、虫が多く出る」というイメージを抱いている方もいらっしゃるんですけど(笑)、そういう方にも気持ちよくご利用いただけると思います。

▼ バンテック京都店オフィス内
 
 
 
メンテナンスやトイレ処理も可能な “RVパーク”

【町田】 泊られた方の車のメンテナンスも引き受けていらっしゃるんですか?
【佐藤】 スタッフができる限りの対応をさせていただきます。もちろん不具合の箇所や難易度を判断した場合に十分にお応えのできない場合もあるでしょうけれど、「メンテ機能を持ったRVパーク(車中泊場)」というのを打ち出していきたいと思っています。

【町田】 そのへんは、やはりビルダー直営RVパークの強みですね。ほかにキャンピングカー販売店が携わる “RVパーク” としての特徴は何でしょう?
【佐藤】 やはり、カセットトイレタンクの洗浄機を設けたいですね。キャンピングカーのトイレを使われるお客様も増えてきていますが、皆さんその掃除に苦労されている。そこをなんとか助けてあげたいと思っています。
 うちとしては「女性も楽に使えるキャンピングカー」というのを目指していますから、トイレ処理の問題は解決してあげたい。
 というのは、いろいろな調査を見ても、しっかりしたトイレ機能を持つキャンピングカーが女性の間では好評なんですね。だから旦那さんが掃除するにしても、手を汚さなくてすむようなシステムを提供していきたいと思っています。

【町田】 なるほど。それはモダンキャンピングカーの大きなテーマかもしれませんね。昔はキャンピングカーもアウトドアライフの延長として捉える傾向が強かったから、泥まみれになるのもいとわない人が多かったけれど、最近は、乗用車で回れるような観光地巡りのツールとして使っていらっしゃるユーザーさんも増えましたからね。車中泊でも、土や砂利の上で寝るという人が少なくなってきたかもしれない。
【佐藤】 そうなんです。今やキャンピングカーはアウトドアのツールにとどまらず、“外に持ち出せるインドア” として、インドア志向の方の旅のパートナーとしても望まれています。特に女性には「手を汚さなくてもいいキャンピングカー」というイメージを求められる方が多いですね。
 最近は、奥様が購入の決定権を持っている夫婦も増えましたし、女性だけでキャンピングカーライフを楽しむ方々も出てきています。だから昔に比べると、女性がキャンピングカーを運転する機会がものすごく増えてきているように思います。 
 
 
女性でも気楽に運転できる車両開発
 
【町田】 女性でも楽に運転できるキャンピングカーの条件というのはどんなものですか? 直感的に、サイズが小さくて、取り回しの良い小型のバンコンなどがイメージに浮かびますが。
【佐藤】 女性が気楽に運転のできるキャンピングカーというと、皆さん「小さな車」というふうに考えがちですが、必ずしもそれだけじゃないんですね。むしろ運転バランスの方が大事。
 サイズというのは、みな運転しているうちに慣れるんですよ。男性だって、乗用車より大きなキャブコンにいきなり乗ったときは、みな例外なく緊張します。しかし、だいたい1日運転すると、そのサイズに慣れる。女性だって、そこは変わらないんですね。

▼ 新型ジル エクステリア(リヤビュー)

【町田】 では、運転しやすいキャンピングカーということで、佐藤さんが考えていらっしゃるものは?
【佐藤】 まずバランスのいい車。漠然とした言い方に聞こえるでしょうけれど(笑)、乗用車からいきなり乗り換えても、運転感覚に違和感のないキャンピングカーということですね。
 それには、さまざまな条件が考えられますが、いちばん大事なことは重心高ですね。キャンピングカーの場合は、居住空間を取らなければならないので、どうしても背高のっぽにならざるを得ない。しかも室内装備類がフロアの上にくるために、重心高が高くなってしまうんですね。そうなると、走行していても揺れが出てきたりして、安定感が損なわれてしまう。
 そこのところを、バンテックはずっと以前から解決しようとしてきた会社なんです。

【町田】 具体的にいうと?
【佐藤】 架装部分では、重量物をできるだけ低い位置に設定しています。
 たとえばバッテリー、水タンク、エアコン。そういう重い物をできるだけ低い位置に落としている。
 うちの車は、装備の割には非常に軽いんですよ。でも快適な居住空間を保証するためには、どうしても重装備にならざるを得ない。サブバッテリーなどは3個ぐらい積んでいる車もありますしね。ルーフエアコンだって屋根に積むのは楽ですけど、重心高が高くなる。あれ一個で50kgありますから。
 だから、そういうものを低い位置に設定するために、フロア設計にはたいへん神経を使っています。
 
 
重量バランスがキャンピングカー設計の大きなポイント

【町田】 そうなると、お客様から個別のフロアプランなどを望まれると非常に苦労することになりますね。
【佐藤】 そうなんです(笑)。お客さんから「固定シートではなく、前後に向きを変えられるシートにできないか」などと相談されると、ちょっと困る(笑)。
 実は、10年ほど前までは、私どもも、前後に向きが変えられるシートを採用していたんですよ。しかし、ほとんどのユーザーさんが2列目と3列目のシートを対面にしたまま使われていたんですね。
 そういうことが分かったので、それなら固定のシートにしてクッションを厚くしたり、座面を広くして乗り心地を良くした方がよいと判断しました。そうすれば、シート本体を軽くできるし、かつ低重心化しやすいという両方のメリットが生まれます。

▼ 新型ジル(ジル5) インテリア

【町田】 なるほど。合理的ですね。
【佐藤】 実は、セカンドシートの中やその下というのは、大きな空間を作りやすい場所なので、重量物を設置する大きなポイントとなるところなんです。
 専門用語で、「マス」という言葉があって、よく「マスを集中させる」という表現をしますが、これは重量物を重心位置に集中させることをいうんです。セカンドシートの下というのは、その「マス」の部分に当たる。
 とにかく、うちのキャンピングカーは、設計当初の状態で、いちばん最適な重量バランスを取るように計算していますから、それを崩すとなると、どうしてもバランスも取りづらくなる。だから、特殊なオーダーはお客様ともよく相談して、私たちの意図も理解してもらうように努めています。

【町田】 重量バランスというのは、車両設計の要(かなめ)ですものね。走行性だけでなく、安全性にも関わるところでしょうから。
【佐藤】 そのとおりです。だから、うちは “転角” というのをも大事にしています。「最大安定傾斜角」のことですね。車を傾斜させても倒れない角度を指す基準なんですが、乗車定員や最大積載量などによって30度とか35度というように基準が変わります。でもうちのキャブコンは、どれもみな35度以上を保っている。コルドバンクスに至っては42度。それ以外の車でも、だいたい40度ぐらいは保っています。

【町田】 それは水なども全部積んだ状態で測った場合ですか?
【佐藤】 清水タンクも満タンにして、乗車定員も全部計算に入れて数値を出します。

【町田】 転角が40度なんていったら、中にいる人にとってはもう横転した感覚と同じでしょ?
【佐藤】 20度ぐらいでも怖いでしょうね(笑)。40度などといったら、中にいる人はみな横転すると思ってあわてるでしょう。

【町田】 それでも大丈夫なくらい重量バランスがいいというわけですね。
【佐藤】 今の話は重心高の話でしたけれど、もうひとつ、前後左右のバランスの問題もあるんですよ。
 左右はもちろんことですが、キャンピングカーの場合大事なのは、前後バランス。
 つまり、前輪にかかる荷重と後輪にかかる荷重を50%対50%ぐらいに持って行く必要があるんですね。キャブコンに採用されるシャシーとして多いカムロードなどの場合は、だいたいリヤに荷重が集中してしまいがちです。だから、リーフ増しなどで対応することが多いのですが、それだと乗り心地が悪くなる。やはり、重量配分を綿密に計算して、ノーマルの状態でも前後に均等に荷重が分散するようにさせていくのが理想ですね。

▼ ベース車のトヨタ・カムロード
 
 
タイヤの空気圧調整における窒素ガスの効果

【町田】 リヤに荷重がかかりすぎると、後輪バーストの問題も出てくるでしょうね。
【佐藤】 ええ。正直にいいますが、実は、昔1.5トンのエルフを使っていた頃、発売後4~5年を経た2WDの車に限ってバーストが多発したことがあったんです。2WDは扁平タイヤだったんですよ。だから空気が抜けても判りにくいということもあったんですね。
 あのときは全車にリコールを出しました。そうとうな出荷台数だったので、その対応にうちの担当者はほぼ1年を費やしましたよ。
 でも、そういうことを経験して、私たちも勉強したために、以降は買ってくださったお客様には、「購入後3年経ったタイヤの場合はヤマが残っていても替え時ですから、点検をしてください」というダイレクトメールを送るようにしました。
 それをやるようになってから、うちの車のバーストはずいぶんなくなりましたね。

【町田】 よくタイヤの空気圧を調整するときに、窒素ガスを封入するといいといいますね。僕のキャンピングカーのタイヤにも窒素ガスを入れていますけれど、実際の効果はどうなんでしょうか。
【佐藤】 あれは効果があると思います。というのは、普通の空気をタイヤに充填するときには、どうしても空気中に含まれている水分も封入されてしまうんですね。当然、湿度の高い日はその水分も多くなる。
 そうなると、気温が上がったりするとその水分も膨張するからタイヤの空気圧にも影響を与えるんですよ。
 キャンピングカーの空気圧は4.5kgとか5kg。場合によっては6kgを指定される車もありますが、水分が膨張すると、それが6.5kgになり、さらには7kgにまで上がる。そうなると、空気の入れ過ぎによるショックバーストというものも生じることがあるんです。
 また、水分が混じれば、タイヤのスチールベルトなどからサビが発生する可能性も出てきますね。

【町田】 窒素ガスはそれを防ぐわけですね。
【佐藤】 ええ、そうです。それ以外のメリットとして、空気圧を長いこと一定に保つという効果もありますね。
 大気の中にはいろいろな物質が混じっていて、分子の小さいものから大きいものまでいろいろある。だからタイヤに普通の空気を入れると、分子の小さいものはゴムを透過して外に逃げてしまう。
 その点、窒素は分子の大きさが同じなので、ゴムを透過しにくい。だから時間が経ってもタイヤ圧があまり変わらない。

ダブルタイヤかシングルタイヤか? 車種によって異なるメリット・デメリット

【町田】 なるほど。さすがにお詳しいですね。… あと、バーストの問題に絡んで、後輪はダブルの方が安心できるということがありますよね。
 自分の乗っているキャンピングカーも後輪がダブルなので、高速道路でバーストしたときも横転せずに、高速を降りたタイヤ店までなんとかたどり着けました。
【佐藤】 もちろん、タイヤの数が多ければ安心できるのですが、そのことだけでタイヤの問題はすべて片付けられないところが悩ましいんですね(笑)。
 たとえば、カムロードも後輪がダブルになっているものが出ているんですが、その取り付け位置が、現状では理想的とはいえないんです。
 というのは、我々が通常ベースシャシーとして使っているカムロードは、リヤがワイドトレッドになっています。
 ワイドトレッドの場合は、後輪タイヤが外側に張り出していると同時に、そのタイヤを保持するためのリーフスプリングも、タイヤと同じように外側に出ています。
 しかし、カムロードのダブルタイヤは、現状ではワイドトレッドではなく、標準トレッドのシングルタイヤの内側にもう一本タイヤを追加したような状態なんです。
 だから、バーストのことだけを考えると、ダブルの方が安心できるのでしょうけれど、カムロードのダブルタイヤは、標準車幅の内側に付いたタイヤのさらにその内側にもう一本ずつタイヤを付けた形になっていて、そのまた内側にリーフスプリングが付いている。
 そういう状態の車では、直進のときはいいのですが、曲がるときに踏ん張りが効かなくなる。
 
【町田】 バンテックさんの場合は、その問題をどのように解決されているんですか?
【佐藤】 うちの場合は、一部の例外を除いて、ダブルタイヤのカムロードを設定していません。
 結局、先ほどの重心高の問題とも絡むのですが、横揺れが大きくなって横転の可能性も出てくることを考えると、ワイドトレッドのシングルタイヤの方が安心できるんですね。

【町田】 「一部の例外」とおっしゃいましたけれど、その車は?
【佐藤】 それはジル・スキップです。あれはもともとカムロードでも標準トレッドの車ですし、車高が2.7m程度しかないから重心も低く、コーナリングでも安定感がある。だからスキップだけにはダブルタイヤが選べるようにしています。

▼ ジル・スキップW(ダブルタイヤ仕様)

  
 
タイヤの空気圧によって乗り心地も変わる

【町田】 ダブルタイヤのものは、空気圧を調整するときに、奥の方のタイヤが面倒ですね。
【佐藤】 そうですね。でも、空気圧は安全性や乗り心地にも関係してくるところなので、小まめにチェックしておいた方がいいことは言うまでもありませんね。
 ただ、許容限度ぎりぎりまで空気を入れる必要のないキャンピングカーもあるんですよ。
 車ごとに推奨される空気圧は違ってくるのですが、概して軽く仕上がっている車の場合は、推奨空気圧を若干少なめにしています。というのは、その方が乗り心地がよくなるんです。
 たとえば、うちのジル・クルーズなどはリヤタイヤは4kgで充分。3.5kgでも余裕があるくらいです。しかし、付いているタイヤは6kgまで入れられるので、マックスまで入れてしまうと、後輪が跳ねてしまって、後ろに乗った人はたいへん(笑)。
 クルーズは、せっかくサスペンション調整をして出している車なので、適正な空気圧の方が乗り心地はよくなります。

【町田】 さすがキャブコンのトップビルダーさんだけあって、いろいろ研究されていますね。
【佐藤】 いえいえ(笑)。あと、キャブコンで皆さん案外知られていないことなんですが、意外と小回りが利くんですね。カムロードのターニングサークル(最小回転半径)は4.9m。実はエスティマのようなミニバンでも6.1mあるんです。それを考えると、キャブコンは意外と取扱いが楽なんですね。
【町田】 女性でも運転できるというのは、そういうところからも来ているんでしょうね。
【佐藤】 キャブコンはバンコンに比べると形がいかめしいから運転が難しそうに思われがちですが、実際に走らせてみると意外と楽。そこはもっと多くの方に知っていただきたい(笑)。 

【町田】 確かに、キャンピングカーに本格的な機能を求めるとしたら、バンコンよりはキャブコンの方が有利なのは否めない。断熱性の問題もあるし、何よりも架装部分の設計の自由度が高いから、いろいろなレイアウトが可能になる。
 ということは、搭載機器類に関しても、オプション類などの選択肢が増えるということですもんね。自分好みの使い勝手が追求できるわけで … 。
【佐藤】 そのとおりです。でも、ユーザーさんのなかには本格的な装備はあっても使わないからシンプルなバンコンの方がいいという方もいらっしゃいますし、キャブコンは目立ち過ぎていやだから、さりげないスタイルのバンコンがいいという方も多い。そのへんは、ユーザーさんによって、好みが分かれるところでしょうね。

▼ 新型ジル(ジル5) キッチン
 
  
 
12V電子レンジの正しい使い方

【町田】 この際だから聞いておきたいのですが、個人的な質問で恐縮なんですけれど、僕のキャブコン(コマンダー)もいちおうバンテックさんの工場から出荷されてきた車なんですよ。それには12Vの電子レンジが付いているんですね。
 これを使うときに、あるキャンピングカー販売店の人は「バッテリーを保護するためにアイドリングでエンジンを回していた方がいい」という方もいらっしゃいますし、反対に「エンジンは切ったおいた方がいい」という方もいる。
 ほんとうはどっちなんですか?
【佐藤】 ああ ……。それはね、エンジンからバッテリーへつなぐときの経路の問題が関与するんですね。
 昔は、うちも「バッテリーからインバーターを介して電子レンジを使うときは、エンジンを止めておいてください」と言っていたんです。
 だけど、時期によっては、「エンジンを回しておいてください」と言っていたときもあったんですよ。
 それは何の違いかというと、走行充電に使っている充電回路の違い。ということは機種によって違ってくるんですね。いつ頃つくった何の車かということで違ってくるんです。

▼ 12V電子レンジ(2002年型コマンダー)

 
【町田】 僕の車の場合は?
【佐藤】 町田さんの車だったら、エンジンを止めておいた方がいいでしょうね。 
 なんで「止めなさい」と言うかというと、実は、あの当時の車に使っていたサブバッテリーは急速充電に弱い上に低い電圧では満充電になりにくいという欠点があったんです。そこで、極力シンプルで効率の良い構造にしていたんですね。
 その手法として、充電回路の途中にヒューズを付けて、一定以上の電気が流れ込もうとしたときは、そのヒューズを飛ばすことで、サブバッテリーを守るようにしていたんです。
 そのため、サブバッテリーが弱っているときに、その電子レンジを使いながら、エンジンを回すと、ものすごい電流がバッテリーに流れ込んで、一瞬のうちにヒューズが飛ぶことがありました。
 だから、あの車を出していたときは、「電子レンジを使うときはエンジンを止めてください」とアドバイスしていたんです。

【町田】 今は?
【佐藤】 今うちで出している車の場合は、もう「どちらでもいいですよ」とご案内しています。好きなときにエンジンを掛けて、好きなときに止めてください」と(笑)。つまり、サブバッテリーの耐久性が上がり、充電回路も強化されたので、適切な制御機能を持つことができるようになったんです。そのため、むずかしいことを言わないですむようになった(笑)。
 要するに、エンジンを掛ければ自動的にバッテリーを充電してくれるわけですから、必ずしも電子レンジを使っているときに充電する必要はないだろうと … 。
 ただ、バッテリーが弱ってくると、電子レンジへの十分な電源供給ができなくなる。そのときは、エンジンをかけてもいい。
 昔はそれをやるとヒューズが飛ぶから、「最初にエンジンを10分ぐらい回して充電し、そのあとに電子レンジを使ってください」と言っていた(笑)。そういう言い方が今は必要なくなったんですね。
【町田】 なるほど。恥ずかしながら、今回やっと疑問が解けた(笑)。

【佐藤】 とにかくキャンピングカーに限らず、自動車のトラブルで一番多いのがバッテリートラブルなんですね。そこで、うちはそれに対する対策も進めています。
【町田】 どういう対策ですか?
【佐藤】 バンテックのキャンピングカー(強化充電システム車)には、今年の2月からセカンドシート付近に「エマージェンシースイッチ」というものを付けているんですよ。
 たとえば、フォグランプやライトの消し忘れなどによって、メインバッテリーが上がってしまったとき、このエマージェシースイッチを約5分ほど押し続けると、サブバッテリーからメインバッテリーに充電されるようになっているんです。
【町田】 それは頼もしいですね。
【佐藤】 ただ、あくまでもサブバッテリーが良好な場合に限られますけどね。もちろん、始動後は万が一のために、バッテリー等に問題がないかどうか、うちの正規代理店で点検を行うことをお薦めしています。
  
  
「ジルを超えるのはジルだけ」
 
【町田】 最後になっちゃいましたけれど、今年の春に出された新型ジルに関して、開発の陣頭指揮を取られた代表者として、苦労話などを少々おうかがいしたいのですが … 。
【佐藤】 “陣頭指揮” などといっても、私は何もしていないですよ(笑)。企画デザインしたはうちの設計陣なんです。
 でも、よくやってくれたと思いますよ。まだ「開発に関わる時期じゃない」と言っているうちから、彼はこっそり手を付け始めて、私に隠れて夜な夜な図面を引いていたようです。
 そんなように、私よりも開発陣の頑張りで作った車なんですが、ただ、開発段階の会議などでは、「ジルという車がどういう車なのか」ということだけは、しっかりとスタッフに理解してもらうように努めました。

▼ 新型ジル(ジル5) エクステリア

【町田】 「どういう車か?」ということで、皆さんに何を伝えたかったのですか?
【佐藤】 とにかくジルには長い歴史があるんですよ。それと、自分たちの口からいうのは照れもありますが、生産累計においても、日本のキャブコンではずっとトップを走り続けています。
 「ジル」という単独車種だけに限定しても、千数百台。520やクルーズ、ノーブルなどのシリーズを入れると、3,500台くらいになります。
 そういう車をモデルチェンジするというのは、とにかく大変重いテーマであるわけです。

【町田】 ジルが登場する前に、キャブコンの販売台数ではトップといわれていたヨコハマモーターセールスさんのロデオでも、販売累計では「1,200台以上」という表現をされているくらいですから。
【佐藤】 ええ。それを超えるキャンピングカーともなると、とにかくモデルチェンジにもそうとう神経をつかう。なにしろ、すでに前モデルの「ジル4」で、我々はジルの完成車を作りあげたつもりでしたので。

【町田】 分かります。新しい魅力をつけ加えなければならないと同時に、ユーザーが「ジルの個性」として認めてきた部分もしっかり練り上げていかなければならない。確かに、たいへんな苦労ですよね。
 まったくの新車開発なら、コンセプトの新しさだけでも訴求力はあるのでしょうけれど、「名車」といわれるまで認知された車の場合は、さらに求められるものが深くなる。
 で、「ジルの伝統」といわれるものを受け継ぐときに、佐藤さんが考えた一番のポイントは何だったんですか。
【佐藤】 初代のジルが出たとき、購入されたお客様から冗談交じりで、「これは欠陥商品だ」と言われたんですよ。「荷物を積むスペースがまったくない」と。
 しかし、よく話を聞くと、「欠点はそれだけしかない」という意味だったんですね。それ以外の部分はパーフェクト。「こんなに快適な旅行を約束してくれるキャンピングカーははじめてだ」というわけです。
 お客様たちが評価してくださったポイントは、具体的には数えきれないぐらいあるのですが、皆様から必ずご指摘いただいたのは、エントランスから一歩室内に入ったときの空間的解放感なんですね。「とても5mボディには見えない」と賞賛されたのです。
 その部分は、どんなに世代が変わっても、ジルのアイデンティティだと思っています。

▼ 新型ジル(ジル5) インテリア

【町田】 今回のジルでは、新しいものと伝統的なものを、どういう形で融合されようと考えられたのですか。
【佐藤】 これに関しては、社内・社外を問わず、ほんとうにいろいろな方のご意見をうかがいました。前モデルのジル4で足りないと思えたところはどこか、520と比べたときはどうか、… などという比較はもちろんのこと、「次の世代のキャンピングカーとして必要なものは何か?」という根本的なテーマに立ち返って討議をくり返しました。
 そして、いろいろな指摘が集まった段階で、設計の担当者に、「できないことを無理してまでやることはない。しかし、ジルとして恥ずかしくないものを目指してほしい」と念を押しました。担当者はそうとう悩んだと思いますが、その期待以上によくまとめてくれたと思いますよ。

【町田】 新しい機能としてつけ加えられたもので、訴求ポイントとなる目玉は?
【佐藤】 ひとつは、前から要望のあったサードシートのリクライニング。それと、セパレート型のルームエアコンの標準化。
 その二つは、ジル5(新型ジル)の必須項目としてはいちばん大きなポイントだったので、満足のいく形に仕上がったと思います。
 あとは、5mボディの車では、エアコンを満足な形で積みたいと思っても積み切れないことも痛感していたので、思い切って5.2mボディ(5160mm)に切り替えました。スタッフの中には、5mのサイズにこだわる者もいたのですが、これは決断でしたね。
【町田】 発表してから半年経ったわけですが、すごい評判ですよね。
【佐藤】 ありがとうございます。今の市場に受け入れてもらったことは、とてもうれしいです。スタッフも苦労が報われてとても喜んでいます。
  
 
NV200をボディカットした “マルチユースビークル”

【町田】 新型ジルと同時に発表されたNV200をボディカットしたキャブコンですが、最後にこれについて一言。 
【佐藤】 これは “キャブコン” というよりも、使う方々の様々な夢を実現するためのベース車という位置づけなんです。
 そういった意味で「マルチユースビークル」といった方が正しいかもしれないですね。
 私たちがお見せするのは、あくまでも架装部分を取り付けていない状態のドンガラ。
 その空間を利用して、車椅子などを載せて移動する介護車両として作り上げてもいいし、移動販売車として架装することも可能。もちろんキャンピングカーとしての用途も十分考慮して開発しています。

▼ NV200 ボディカットモデル

【町田】 バンテックさんがデザインしただけあって、実に流麗なフォルムに仕上がっていますけれど、形状的にはずいぶん斬新な機能が盛り込まれていますよね。たとえば、スライドドアを装備しているところなど … 。
【佐藤】 ええ、スライドドアと同時に、バックドアを設けているところがユニークかもしれませんね。
 これはキャンピングカーベース車として活用する以外に、商用車や介護車両、あるいはトランポとしての用途まで射程に入れているからなんですね。
 スライドドアを設けることによって、狭い駐車場での乗降が楽になるばかりではなく、バックドアを活用すれば、商用バンと同じ機能を持つことになりますから。
 とにかく床面の地上高は54cmと低く、室内高で180cm以上を確保していながら、全体の車高は2m40cm。車高が低いので、リヤから荷物を積み込むのが非常に楽なんです。
 車高が低いということは、一般の住宅用として販売されているカーポートの一番背の高いものの規格内に収まってしまう。だから、どんな用途も満たす車ということになるわけですね。

【町田】 キャブコンとして見ると、かなりコンパクトなので、取扱いも楽でしょうね。
【佐藤】 最小回転半径5.2m。90度旋回できる最小道路幅は3.2mなんです。この車と似たような容積の一般的なワンボックスカーだと、路地幅が3.6mぐらいないと回りきれないんですよ。
 しかし、この車はそういうコーナーを一回で曲がり切ってしまう。狭いところに入り込めるというのもメリットの一つですね。

【町田】 この車を、キャンピングカーとして使いたいという要望が出てきたときは、バンテックさんで架装も手掛けられるわけですか。
【佐藤】 お話いただいた内容をうかがった上で、検討します。ただキャンピングカーに加工する場合は、ある程度何十台とかまとまった需要が見込めるものでないと対応できないかもしれません。
 現在の段階では、特注架装に関しては、単品仕事が得意な業者さんもいらっしゃるので、そういうところを紹介させてもらうことになるかもしれないですね。

【町田】 しかし、いずれはキャンパー仕様にしたときの推奨モデルを提示されるわけでしょ?
【佐藤】 それは考えています。うちのバリエーションの一つとしてライトキャブコンの1モデルを作るつもりでいますから。
 ただそれは年内に出せればいいかな。もう少し先の話になりますね。
【町田】 ぜひ見てみたいですね。
【佐藤】 私もそれは見てみたい(笑)。スライドドアを装備したキャブコンというのは見たことがないので(笑)。
 
バンテックHP → http://www.vantech.jp/
 
  
参考記事 「ジル・ノーブルにかける開発者たちの熱い思い」

参考記事 「幕張ショー バンテックブースの見所」

参考記事 「外国人の見た日本のキャンピングカー」
   
 

カテゴリー: campingcar   パーマリンク

バンテック京都店オープンとバンテック車の開発思想 への5件のコメント

  1. 木挽町 より:

    こういう記事を読んでいると、モノづくりの楽しさも伝わってきますが、同時に、こういうクルマであてもなく走ってみたいなぁと思います。キャンピングカーって独特の魅力がありますね。ひとりで運転してどこかに行ってみたいです(普通は家族とか友人とかと行くのかな?)。ひとりのほうが楽しそうに思えますけど。行き先も時間も決めずに。あー楽しそうだなあ。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      私もまた「キャンピングカーの一人旅」が好きです。仕事柄、取材に使うことが多いので必然的にそうなってしまうということもあるんですが、高速道路のSA・PAで車中泊したり、港の見える駐車場などで夜景を眺めながら、のんびりと70年代ソウルミュージックなどを聞いて、酒など飲んでいるときが幸せです。

      キャンピングカー白書などを見てみると、キャンピングカー旅行の多くはシニア夫婦の二人旅によって占められているようですが、年々一人旅を楽しんでいる人たちも増えてきました。キャンピングカーには、おっしゃるように「あてもなく走って、好きなところで休める」という気楽さがあるから、それが可能なんでしょうね。

      ただ、音楽を聞くとか、DVDやブルーレイの映画を観るとか、なんらかの趣味を持っていないと、車内で一人だけの夜を迎えるのは、いささか退屈かもしれません。
      キャンピングカー旅行のつわものになると、街の居酒屋の駐車場に車を止めて、店の主人に「今晩はたらふく飲み食いするから、朝まで駐車場に車を止めていい?」と聞いて、承諾をもらって居酒屋泊を楽しんでいらっしゃる方もいらっしゃいます。

      ちょうど、今RV協会さんのHPで、「一人旅をどう考えるか」というアンケート調査を行っています。→ http://www.jrva.com/

      もうそろそろアンケートの切り替え時ですから、この調査も終了するはずですが、ユーザーさんたちもキャンピングカーの一人旅には様々な思いがあるようで、なかなか面白いです。

      昔、キャンピングカーの一人旅をテーマに、小説のようなものを書いたことがあります。
      主人公を女性にしてみましたが、内容的には、自分が犬と一緒に道東を一人旅したときの体験がベースになっています。お時間があるときにでも、ご笑覧ください。

      http://campingcar.shumilog.com/2011/12/12/%e3%81%b2%e3%81%a8%e3%82%8a%e6%97%85%e5%90%8c%e5%a3%ab/
       

  2. 木挽町 より:

    読ませて頂きました。独特のムードがあっていいですね。距離感の取り方を探ってる感じがいいですね。縮めるだけの距離感ではなくて別れを寂しくさせないちょうどいい距離感みたいな。追うと逃げる、逃げると追う、みたいな繊細で微妙なもどかしいいい感じ。BGMにはBlue Magicのファルセットが似合うかも。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      過去の拙稿を厚かましくご案内しただけなのに、ご丁寧な感想を添えたメールをいただき、ほんとうにありがとうございました。

      >>「追うと逃げる。逃げると追う」というのは、まさに恋愛における人間心理の基本構造ですよね。おそらくこのダイナミズムが、恋する二人の精神を刺激し合っていくのでしょう。
      そういった意味で、この小説の2人はこれから恋に落ちていくのでしょうね。もっとも、書き終えた私にとっては、作品の外で2人がどんな関係になろうとも関知しませんけれど(笑)。

      >>「Blue Magicのファルセット」。
      分かります、その感じ。
      さすが、70年代SOULに造詣が深い木挽町さんらしいチョイスだと思います。
      あの頃のコーラスグループのバラードは、どれも過去を背負った男女の大人の恋が展開するBGMに適しているように思っているのですが、その良さが理解できるようになるには、リスナーの年輪の積み重ねが必要になるようです。
       

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