レクビィ増田社長インタビュー 

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バンコンとはどういうキャンピングカーか?
 
レクビィ 増田社長 インタビュー 
  
 国産キャンピングカー業界における老舗として、今年創業30周年を迎えたレクビィ。
 同社はファイブスター、カントリークラブといった数多くの歴史あるバンコンをリリースし続けながら、一方では、新ブランドの「RBL(RECVEE BLUE LINE)」を立ち上げるなど、バンコントップビルダーとしてのチャレンジ精神を常に忘れずに、力強く業界を牽引している。
 
 そのレクビィの増田浩一社長(写真下)に、同社の歴史や車作りの精神をうかがうとともに、日本RV協会の会長として見た日本のキャンピングカー産業の進むべき姿を聞く機会を得た。
 

 
《目次》
・ 永遠のロングセラー「ファイブスター」
・ 国産キャンピングカーの可能性を広げたレクビィ
・ 「バンコン」の魅力とは
・ 欧州製キャンピングカーと国産キャンピングカーは何が違うのか
・ 日本人は商品の持っている「季節感」を楽しむ
・ ダウンサイジングの要請から見直された日本のキャンピングカー
・ ファミリー向けキャンピングカーが次世代ユーザーを育てる
・ 「若者の車離れ」説はウソ
・ レンタルキャンピングカー・システムの必要性
 
 
永遠のロングセラー「ファイブスター」

▼ 現行モデルのファイブスター(Hi-King ラグゼ)

【町田】 30周年ということですが、レクビィという会社のスタートがどのようなものであったのか、まずそこからお話をうかがいたいのですが。
【増田】 レクビィの前身は、「バンショップ ロータス名古屋」といいます。それを立ち上げたのが1984年の6月ですから、厳密にいうと、この6月からは31周年目になるわけです(笑)。
 「バンショップ」という名称から分かるとおり、最初はバニングを手掛けていたんですよ。当時はバニングの全盛時代で、我々も若者を相手に、外装にはエアロを付け、内装にはボタン絞りのきらびやかな布地を張ったカスタムカーを製作していました。
 しかし、いずれはバニングだけでは立ちいかなくなるな … という予感はありました。いつかはキャンピングカーというツールを使った「心の時代」が来ると思っていましたね。

【町田】 そのキャンピングカーにシフトしたのはいつ頃からだったんですか。
【増田】 会社を立ち上げて5年ぐらい経って、「ファイブスター」というキャンピングカーを製作してからですね。
 でも、しばらくは両方やっていたんです。バニングは「ロータス名古屋」で販売し、キャンピングカーの方は「レクビィ」という屋号をつくって販売していました。
 
【町田】 ファイブスターというバンコンは、時代に合わせてレイアウトを変えながら、今でもレクビィさんの主力車種として永遠のロングセラーを記録していますけれど、初代のモデルはどんな形だったのですか。
【増田】 初代のものは、前後向きになるセカンドシートと横座りのサードシートでダイネットを組み、その後ろの両サイドにカウンターキャビネットを持つというレイアウトでした。
 そして、そのキャビネットの上にベッドマットを載せれば、そこに2段ベッドができあがるというスタイルだったんですね。それを定番として、しばらく続けていました。
 
▼ 初期のファイブスター

 
【町田】 やはり、定番があると作業効率がよくなりますか?
【増田】 ええ。定番があると見積もりがしやすかったんです。カスタムカーは単品製作が多いので、見積もりだけで半日ぐらいかかったんですね。ハイエースの断面図や平面図を用意して、「ベッドはこの位置ですか? 流しはどこに付けます?」などと相談しながら進めていた見積もりの工程を、定番を用意するようになって相当省けるようになりましたから。
 
【町田】 「ファイブスター」は、レクビィさんの商品名というにとどまらず、広くバンコンの代名詞的な存在として脚光を浴びましたね。市場から高評価を得た理由は、どこにあったのでしょうか。
【増田】 リーズナブルな価格設定ができたということも、成功した理由のひとつでしょうね。
 そもそも「ファイブスター」というのはどういう意味だったかというと、当時キャンプ場の設備の充実度を星マークで評価したことが話題になっていたんです。で、最上級のキャンプ場は五つ星だったんですね。
 五つ星ともなれば、レストランがあって、温水シャワーがあって、セキリュティーを保証するゲートがあって … というように。
 それにならって、我々も魅力的な装備品を五つ選んで、“五つ星” を訴求しようと。
 そこで、ディーゼルエンジン、ダブルエアコン、テレビデオ、2段ベッド、リヤヒーターなど、当時本来ならオプションとなる五つの装備を標準にして、298万円というプライスを掲げたんです。
 
【町田】 なるほど。そのコストパフォーマンスの良さが市場で評価されたわけですね。私がこの業界を知るようになって、25~26年経ちますけれど、最初に名前を覚えたのが、このファイブスターという車でした。めちゃめちゃに人気のあるキャンピングカーだということで。 
【増田】 おかげさまで、「ファイブスター」という名前は、その後しっかりと「レクビィのバンコン」という形で認知されましたね。
 現在は、防水加工されたトイレルームを持つバンコンというスタイルになっていますが、そういうレイアウトの車を見ると、多くのお客様が「ファイブスター」という名前を念頭に浮かべてくださるようなので、ありがたく思っています。
  
▼ ファイブスターの防水ルーム

  
  
国産キャンピングカーの可能性を広げたレクビィ

【町田】 このファイブスターを皮切りに、次々と独創的なバンコンが誕生するようになったわけですが、ハイエースだけでなく、ベンツシャシーも使うなど、レクビィさんのキャンピングカーは、「次に何が出てくるのか?」とワクワクするような刺激がありましたね。
【増田】 基本的なアイデアは、私の兄である増田英樹(現キャンピングカーランド社長)が練りましたけれど、それを市場のニーズに適したような実践的なスタイルにまとめあげるのが僕の仕事でした。

【町田】 トランポ的な要素を先取りしたサライとか、3段ベッドを実現したトリッキーなど、とにかく次々と人の意表を衝くようなバンコンが生まれてくるので、レクビィさんの動向からは目を離すことができませんでした。ベンツのトランスポーターをベースにしたバンコンも、この頃でしたね。
【増田】 「ベンツ・イム・ヴァルト」、「ベンツ・アム・メア」、「ベンツ・アム・ゼー」といった車ですね。当時ヨーロッパ車をベースにした国産キャンピングカーというのは、ほかになかったように思います。

▼ ベンツ・イム・ヴァルト

【町田】 外から見ていると、レクビィさんのバンコンは、どれもみなヒット商品になったという印象が強いのですけれど、ご自身で特に「売れたという手応え」を感じた商品は何だったのですか。
【増田】 やはり、グランドハイエースベースのキャンピングカーですね。
 これはうちだけに限らず、当時のビルダーさんに共通していえることかもしれませんが、やはりあのシャシーは、国産キャンピングカーを製作するどこのビルダーさんにおいても “手応え” のあった車だったと思います。

【町田】 この頃、グラハイベースのキャブコンもリリースされていますね。
【増田】 「グランヴィラ」ですね。あれは、ファーストカスタムさんとのコラボでしたけれど、ファーストさんの「グランドロイヤル」と同じように人気車種となりました。
 もちろん、うちはバンコンメーカーとしての看板も大事なので、グラハイベースでは、「グランプラス」のようなバンコンも開発して、それなりに市場の評価を受けました。

▼ グランプラス

 
  
「バンコン」の魅力とは

【町田】 いま「バンコンメーカー」という言葉が出ましたけれど、バンコンのトップビルダーとしてのレクビィさんから見て、「バンコン」とはどういう性格のキャンピングカーだと思われますか?
【増田】 今から20年ぐらい前までは、バンコンは「エントリーモデル」だと言われていたんです。取り扱いも易しいし、キャブコンや輸入車に比べて、価格帯もリーズナブル。だから、ユーザーがステップアップしていくときの “入門車” として見られることが多かったんですね。
 しかし、実際はエントリーモデルというようなものではなく、それ自体が自己完結的な独立したジャンルであると考えています。その証拠に、バンコンに乗った人が次もまたバンコンを買うケースも多いし、キャブコンに乗っていたユーザーが、家族構成が変わったりしてバンコンに移っていくというケースも多い。それだけバンコンには、キャブコン、バスコン、トレーラーなどとはまた違った魅力があるということなんでしょうね。

【町田】 その魅力を一言でいうと?
【増田】 汎用性が高い。どんな用途にも使える。
 キャブコンとの比較でいえば、キャブコンは確かに装備内容も充実しているし、設計の自由度が高いから、室内空間を効率よく使い切るデザインも追求できるし、それが室内の快適性をも約束する。
 しかし、そのことで、逆に用途が限定されてしまうということもありますよね。ライト/タウンやボンゴベースのライトキャブコンならいざしらず、やはりカムロードクラスになると、通勤や買い物といった日常使いをするにはちょっと大げさ過ぎるし、第一、駐車スペースを選ぶときに支障が出る場合もある。
 それに対して、概してバンコンはオートキャンプのようなアウトドアの需要も満たすし、長距離旅行にも使える。さらには、通勤や買い物などといった日常使いが気楽にできる。

【町田】 マルチユースが可能になるということですね。
【増田】 その “マルチユース” という意味の中には、外観が目立たないということも含まれているんです。
 実は、バンコンを選ばれるお客様の中には、キャブコンや輸入車は目立ちすぎるからいやだと言われる方がけっこういらっしゃるんですね。
 最近の日本人は自己顕示欲が強くなってきたといわれますが、やはりまだまだシャイな人も多い。そういう人の中には、キャンピングカーを買ったことを知られると、「あそこの家は金持ちなんだな」などとウワサされるのがいやだという方もいる。
 その点バンコンならば、内装がどんなに豪華であっても、外観は普通のハイエースやキャラバンとそんなに変わらないので目立たない。だから、ひっそりと駐車場に止めていられるし、どこにでも安心して出かけられる。

【町田】 そういう人は確かに多いですね。逆に「ほら見てくれ! 俺キャンピングカーに乗っているぜ」と見せびらかしたい人もいる(笑)。
【増田】 ほんとうに人の嗜好はさまざまですね。もちろんバンコンユーザーのすべてが目立つことの嫌いなシャイな人というわけではありませんが、「シャイな人でも安心できるバンコン」という評価は、まだ日本では生きています。
 
 
欧州製キャンピングカーと国産キャンピングカーは何が違うのか

【町田】 そのようにバンコン主体でやってこられたレクビィさんが、一時積極的に輸入車を導入されていた時期もありましたよね。あれはいつ頃でしたか。

▼ ランドハンター 6×4

【増田】 1993年ですね。最初に導入したのは、アメリカのランドハンター6×4でした。ダッチダコタベースのマイクロミニですね。
 その2年後ぐらいからヨーロッパ車の「ユーロピオ」と「コロンビア100」を輸入しています。

▼ ユーロピオ

【町田】 あれも画期的でしたね。当時、輸入車専門ディーラーというのはすでにありましたけれど、どちらかというと北米系の車種が中心で、ウエストファリアのバンコンを除けば、欧州車というのはまだそんなに多くはなかったと思います。
【増田】 今では、輸入車といえばヨーロッパ車の方が中心となりましたけれど、あの当時は、ほんとうにヨーロッパ車は少なかったですものね。

【町田】 増田さんがご覧になって、ヨーロッパのキャンピングカーと日本のキャンピングカーを比べると、最大の違いというのは、どこにあると思われますか。
【増田】 うちの商品はバンコン中心なので、それを比べてみますと、ヨーロッパのバンコンはどのメーカーのものも、フロアプランはみな同じなんですよ。
 微妙な差異はあったとしても、基本的に運転席・助手席が回転して、セカンドシートと向かい合う形でダイネットを構成し、スライドドアのすぐ横がキッチン。そしてリヤは固定ダブルベッド。欧州のバンコンの大半がそのレイアウト。
 その理由は、ベース車の構造からくるものもあるでしょうし、伝統的にヨーロッパのキャンピングカーは、バンコンではなく、あくまでもキャブコンを中心に推移してきたということもあるでしょうけれど、基本的に、ヨーロッパ人はそのレイアウトで満足してしまうんですね。

【町田】 日本人は?
【増田】 満足しない(笑)。物理的な理由としては、ヨーロッパのベース車はフィアットにしても、ベンツにしても、プジョーにしても、ワーゲンにおいても、日本のハイエースやキャラバンより概して車体が大きい。
 だから、似たり寄ったりのレイアウトでも、しっかりした機能を持つ装備類がすべて収まってしまう。
 それに対して日本のベース車は、ヨーロッパ車ほど大きくないので、装備類を詰め込むときに、開発者は「何かを採用するために何かを捨てる」という選択を常に迫られることになるんです。 

【町田】 ああ … 。当然開発者のプライオリティーによって、装備類も異なり、レイアウトもさまざまなものが生まれてくると … 。
【増田】 ええ。だから日本のバンコンは、ダイネットシートがベッドを兼ねるような設定が多いんですね。それも、時にはワゴンのように前向きシートになる必要があり、食事のときは後ろ向きになるようなものが好まれる。
 それを満たしたのが、イタリア製のFASP(ファスプ)シートでしたけれど、これはヨーロッパでは日本ほどブームになっていない。なぜなら、向こうのキャンピングカーは居住空間が広いので、椅子は椅子のまま使い、ベッドはベッドのまま使うことが可能だから。

▼ ヨーロッパ製バンコン

 
 
日本人は商品の持っている「季節感」を楽しむ
 
【町田】 やはり、ベース車の違いというのは大きいですね。
【増田】 ボディサイズの大きなシャシーが使えるかどうか、ということは決定的な差かもしれませんね。ハイエースにしろキャラバンにしろ、日本のベース車はフィアットような容量的キャパがないから、バンコンとしてリリースするときは使用目的に応じて異なるレイアウトのものをいくつか並べなければならない。結果、日本のバンコンのフロアプランは特注も入れると100種類以上あるのではないでしょうか。

【町田】 そして、もうこれ以上新しいレイアウトなど出てこないだろうと思っていると、さらに意表を衝いたようなアイデアの車が生まれてくる。
【増田】 それだけ日本のビルダーさんたちは、必死なんだと思います。どんなヒット商品が生まれても、それが永劫に続くことはありえない。すぐ別のメーカーから話題性のある新商品が出てくるから。
 「切磋琢磨」という表現を使うと美しいけれど、バンコンビルダーさんたちは、常に新しいものを開発しなければならないというプレッシャーで胃を痛くしていると思いますよ。

【町田】 ヨーロッパでは、同じレイアウトのままずっと売れ続けるキャンピングカーがいっぱいあるというのに、なぜ日本のマーケットは新しいものを求めたがるのでしょう。
【増田】 そこには、日本人の嗜好の問題も絡むかもしれないですね。
 なにしろ日本人は、目新しいものが好き。実用的な商品を買う場合であっても、そこに「時代感覚が盛り込まれているかどうか」、「心が弾むような新しいギミックが投入されているかどうか」、「色使いや材質感などにトレンドが反映されているかどうか」。そういう目で商品を眺める習慣があるんですね。
 だから、「冷やし中華」や「鍋料理」じゃないけれど、日本には季節商品というものがある。日本は四季の豊かな国ですから、季節の移り変わりを商品を選択するときにも楽しもうとする。

【町田】 ああ、日本人は感受性が繊細ですよね。
【増田】 だから、キャンピングカーを企画するときも、開発者は細かいところにまで神経をつかう(笑)。うちのバンコンでは、流し台に陶器を使っているものもあるんです。それはレクビィという会社の所在地が陶器の産地(瀬戸市)として有名だということもあるんですが、やはり少しでも、日本人の感性に訴えるものを盛り込んでいきたいという気持ちがあるからなんです。
 そんなシンクを使うなんて、日本だけかもしれない(笑)。外国ではシンクはシンク。みな同じステンレス製で満足しているわけだから。

▼ 陶器製シンク

【町田】 さらに、日本人は車内でくつろぐときも、さまざまなアミューズメントを求めますね。テレビ、DVD・ブルーレイプレイヤー、オーディオなど。
【増田】 そこも日本的ですね。日本人は車内だけで自己完結するような空間が好きなんですね。
 もちろんエアコンもそう。高温多湿の日本の夏がそれを必需品にさせているんですが、やはりキャンピングカーといえども、日本人にとっては「家」なんですよ。アウトドアに持ち出せる快適で小さな家。
 なにしろ、5mぐらいのボディのなかで、2段ベッドを設けたり、トイレを付けたり、テレビがあったり、エアコンがあったり … 。雨の日など、外に出なくてもいいように作られている(笑)。

▼ レクビィのフラッグシップモデル「シャングリラ」の内装。家庭用セパレートエアコンが標準装備。ブルーレイ・DVDプレイヤー付きの5.1サラウンドシステムも導入されて、映画鑑賞・音響ルームとしても楽しめる

   
   
ダウンサイジングの要請から見直された日本のキャンピングカー

【町田】 そういう生活感覚は、欧米のユーザーにはないのでしょうか。
【増田】 昔と今では違うと思いますが、昔は小さなボディのなかに一切合財詰め込んでしまう日本のキャンピングカーというのは、向こうのユーザーからみると、「ストレンジ」、ひょっとしたら「クレイジー」という感覚だったかもしれません。
 だから、日本のバンコン … 特に軽キャンピングカーに寝泊まりするというのは、彼らにとっては何かの罰ゲームのようなもの … ギャグの世界の話に思えたでしょうね。

【町田】 それが変わってきているわけですか?
【増田】 変わってきています。というのは、いま欧米のキャンピングカー業界でも化石燃料の枯渇やら温暖化を食い止めようという動きが高まってきて、燃費を意識したような設計にシフトし始めているんです。
 もちろん、そのためにはパワートレーンの見直しも必要でしょうけれど、手っ取り早いのが車のダウンサイジング。大きなボディは燃費が悪い。そういう意識が台頭してきて、彼らなりに軽量・小型ボディのキャンピングカーを模索する傾向が現われてきたんですね。

【町田】 そうなると、そこで日本車に注目が集まる !
【増田】 そう。この2月にオーストラリアで「第3回世界RV会議」というものが開かれたんです。そこで私が日本のキャンピングカー業界の現状報告をプレゼンテーションしたときに、かなり反響があったのが日本の軽キャンピングカーでした。
 もし4~5年前だったら、「日本人はよくこんな “おもちゃ” みたいなキャンピングカーを作るなぁ … 」 というお笑いの対象として見られたでしょうけれど、今回はこれを真剣に受け止めた人が多くて、プレゼンが終わったあとも、その構造やら市場性についてずいぶん質問されました。
 さらに、今年幕張で開かれた「ジャパンキャンピングカーショー2015」の会場においても、ハイマーの営業部長が来日して、日本のキャンピングカーをつぶさに見学したあとに述べた言葉は、「日本の軽キャンピングカーの存在には驚いた」というものだったそうです。世界のハイマーの部長が驚いたということが、こっちにとってはさらに驚きだった(笑)。

▼ 軽キャンピングカー

【町田】 今後、日本車が欧州のキャンピングカー開発にヒントを与えるということがあるんでしょうか。
【増田】 現在の国産キャンピングカーのコンセプトを直接採り入れるということはないでしょう。ベース車も、レギュレーションも、伝統も、使用環境もすべて違いますから。
 ただ、日産で開発されたNV200がロンドンのタクシー車として使われるようになるなど、日本の小型車に対する親近感が高くなっているのは確かですね。
 ヨーロッパでは、そういう小型で高機能な車両に対する関心がだいぶ高まっていて、フランスのネットなどを見ていると、どんどんダウンサイジングが進行していることが分かります。
  
  
ファミリー向けキャンピングカーが次世代ユーザーを育てる

【町田】 それ以外に、日本のキャンピングカーが世界のトレンドとは異なるところはどんなところですか。
【増田】 基本的に、ヨーロッパなどでは、キャンピングカーというのは、リタイヤしたシニア夫婦の乗り物なんですよ。アメリカにおいてもシニアの保有率は高いですよね。
 もちろん、日本も年々そういう傾向が強まっていますが、日本では子供も交えたファミリーユースのキャンピングカーというものが作り続けられているし、またそういうマーケットが確実にある。そこが大きな違いかもしれません。

【町田】 レクビィさんの場合は、確かに、ファミリーで使うのに適したもの、そしてシニア夫婦の旅ぐるまに特化したものと、両方のバランスがうまく図られていますね。
【増田】 たとえば、うちの防水ルームを持った車種として、ファイブスターとカントリークラブという2台のバンコンがありますけれど、これもいちおう用途を明確に分けているつもりなんです。
 どちらも、簡単にベッドメイクできる半常設2段ベッドがあって、ファミリーでも夫婦2人でも使いやすいように企画されていますが、セカンドシートの位置に違いがある。

▼ カントリークラブ

【増田】 カントリークラブの場合は、車体の中央部に一人用のシートが向かい合う対面ダイネットが設定されている。
 つまり、運転席・助手席の空間と、セカンドシートのある空間が完全に独立しているんですね。
 だから、これは夫婦2人用。つまり、運転席に座っていた人々が車を止めてリビング空間に移動したときに快適に使えるようにレイアウトされている。

▼ ファイブスター

【増田】 それに対して、ファイブスターの場合は、フロント席のシートバックを前側に倒し、テーブルをはさんでセカンドシートと向かい合うという、4人用の対面ダイネットが実現している。
 つまり、子供や祖父・祖母を交えた家族が顔を合わせて談笑できるような構造になっているんですね。また、フロントシートとセカンドシートの距離が近いから、走行中もフロントシートに座った家族と、セカンドシートに座った家族との間で会話を交わすことができる。
 
【町田】 移動中に親子や祖父・祖母と交流ができるというのは、考えてみれば大事なことですよね。
【増田】 ええ。日本では実際にそういうニーズが多い。たとえば若夫婦の経済状況がはかばかしくなくても、その親世代はリッチであるという家庭がたくさんある。その場合、祖父がキャンピングカーを購入して、子供や孫と旅行するというケースも出てくる。だから、日本ではファミリーユースのキャンピングカーというものが絶えることがないわけです。

【町田】 なるほど。1台のキャンピングカーが世代を超えて受け継がれていくわけだ。
【増田】 そうなんです。ところが、シニア夫婦の2人旅用車両としてマーケットが固定化されてしまったヨーロッパのキャンピングカーには、ファミリーで使うという発想が希薄。
 そのため、下の世代に広がって行かない。だからヨーロッパのキャンピングカー業界は、いかに若い世代にキャンピングカーを普及させるかということを、いま真剣に考えています。
 「世界RV会議」の会場では、そのことも大きなテーマになったのですが、私は「日本の場合は大丈夫」だと答えたんです(笑)。
 なぜかというと、日本では、子連れのファミリーを対象にしたキャンピングカーもたくさん作られているから。
 つまり、幼い頃に、キャンピングカーを使った旅行の楽しさを知った子供は、成人して自分の家族を持ったときに、絶対自分の子供にも同じ体験をさせてやりたいと思うはず。そのために、我々はファミリー向けのキャンピングカーを作り続けているんだと。
 そう語ったら、外国人たちからかなりの拍手が湧き起りましたね。「日本のキャンピングカー業界は次世代ユーザーのフォローをしっかりと行っている」という評価でした。
 
 
「若者の車離れ」説はウソ

【町田】 ただ、そういう一方で、いま乗用車の世界では “若者の車離れ” が深刻化してきたと言われて久しい状態が続いていますよね。昔のように、車に憧れる若者も少なくなったという話もよく聞きますが。

【増田】 僕は、実際は違うのではないかと考えています。
 というのは、「若者の車離れ」というのは、若者の低所得化が進行してきて、車は買いたいけれど買うお金がないという状況を表しているのではないかという気がするのです。
 もちろん、公共交通機関の発達した東京23区内のようなところでは車を持たない生活も成立するでしょうけれど、地方に行くと、車なしでは生活できない。
 しかし、今の若者はあまりお金がないので、自分がほんとうに欲しい車は買えない。しかたなく、とりあえず走ればいいか … ということで、好きでもない車で妥協してしまう。
 そのため、自分の車に情熱が持てない。車そのものに対しても距離を置こうという心理が働く。
 僕はそういう “惨めな” 気持ちを、若者たちが「車に興味がない」という言葉で表しているんではないかという気がするんですね。
 そして、最近は「車に興味がない」という方が、なんとなくカッコいいと思われるような空気さえ生まれている。たとえば「車はガソリンを無駄遣いするからエコの時代にはふさわしくない」とか、「車はCO2による大気汚染の元凶になる」などとしゃべった方が、少しは利口に思われるかもしれないと考える若者もいるでしょう。でもね、それは本音じゃないという気もしているんですね。

▼ 増田浩一社長

【町田】 確かに、昔は車を持っていないとナンパもできないと言われていた時代があったけれど、今はナンパそのものをしない若者も増えているとか。車だけでなく、「女に興味がない」と言っておいた方がカッコいいという風潮が生まれているんでしょうかね(笑)。
【増田】 それが少子化の原因になっている(笑)。ま、乗用車では仮に “車離れ” が起こったとしても、キャンピングカーは別物と考えています。
 キャンピングカーには、普通の車と違って、人と人のつながりを確かめ合うような力がある。ここ数年のキャンピングカー白書を読んでも、購入動機の筆頭に上がってくるのは、「夫婦の絆を大事にしたかったから」とか、「子供たちとの団らんを実現したかったから」といった答なんです。
 乗用車が、「人を乗せたり、物を積んだりする道具」でしかないような時代が来たとしても、キャンピングカーは子供連れのファミリーやシニア夫婦の絆を深めあう魔法の乗り物であることには変わりない。家族のつながりを大事にしたいと思う人ならば、必ずキャンピングカーというアイテムが心に浮かんでくると信じています。
 
【町田】 そういう「幸せを運ぶアイテム」であるキャンピングカーをもっと普及させようと思ったとき、現状では何がいちばん有効だと思われますか。
 
 
レンタルキャンピングカー・システムの必要性
 
【増田】 いろいろな方法があるとは思うのですが、私が会長を務めている日本RV協会としてやれることを挙げるならば、まずはRVパークのようなインフラの整備。そして、レンタルキャンピングカー・システムの構築ですね。
 これはオーストラリアで開かれた世界RV会議に参加して気づいたことなのですが、オーストラリアやニュージランドでは、思った以上にレンタルキャンピングカーが普及していて驚いたんです。それも、海外から来る観光客にレンタルキャンピングカーを使ってもらえるようなシステムが整備されている。
 日本の場合は、キャンピングカー販売店がレンタルキャンピングカーを管理しているケースもありますが、事業規模としては小さいし、とても “システム” といえるほどの段階に至っていない。
 もし、レンタルキャンピングカーが普及していけば、「キャンピングカーってどんなものだろう?」と興味を抱いている方に、まず乗って試してもらえるだろうし、そこで楽しさが分かってもらえれば、それが購入動機の引き金にならないとは限らない。
 また、年々増える外国人観光客の中には、日本でレンタルキャンピングカーを借りて、自分の好きな場所に行ってみたいと思う人もいるでしょう。そういう外国人たちのキャンピングカーライフをまのあたりにすれば、それを見た日本人たちの心も動かすようになると思うんです。

【町田】 ああ、分かります。日本人は、日本の文化の恩恵にあずかりながら、海外の人に評価されないかぎり見落としてしまうことが多いですものね。日本のアニメや日本食といった文化も、「外人が好きらしいよ」ということで、ようやく日本人たちが見直すようになったわけで、日本のキャンピングカーも、まず外国人たちが面白そうに使っているという光景が実現したときに、多くの日本人に認知されるようになるかもしれないですね。 
 
 
レクビィ HP → http://www.recvee.jp/
 
 
関連記事 「第3回 世界RV会議」
 
参考記事 「レクビィ 『シャングリラ』 」
 
関連記事 「カントリークラブ Hi-King」
  
  

カテゴリー: campingcar   パーマリンク

レクビィ増田社長インタビュー  への6件のコメント

  1. 木挽町 より:

    記事を通じていろいろと勉強させて頂いてます。再来週のビッグサイトでのショーに行きたくなります。記事を読んで予習してからショーに向かえます。シャシが小さめになると、いわゆるカロセリ架装のように、ボデーを比較的簡単に仕上げられる可能性も広がるかも。ボルトだけで組みあがるとか。組み立てを簡単にできれば「架装キット」として流通させることもできるんじゃないかなあ。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      ビックサイトで開かれる「東京キャンピングカーショー」(7月4~5日)は、私も出かけるつもりです。もし、よろしければ、会場のどこかでお会いできるといいですね。

      キャンピングカーの架装キットの件ですが、簡単に組み立てられる架装キットは、昔からありました。現在でもベッドキットのみの販売など、いろいろ出回っています。ハンドメイドの得意な方は、パーツを買い込んでご自分でいろいろ製作しているようですね。

      “カロセリ架装” の実態というのは、不勉強であまりよく知らないのですが、東南アジアなどに出回るピックアップトラック、ワゴンなどを現地で改造した車両のことでしょうか。
      語源がスーパーカーなどをデザインする “カロッツェリア” のことらしいということまではネットで勉強しました(笑)。
      木挽町さんのコメントは、いろいろな知識が入手できてためになります。
       

  2. tsuka より:

    いつもブログを拝見して勉強させていただいております。バンコン購入を検討中で一言でも結構ですので、アドバイスをいただけないかと思いまして、僭越ながら書き込みいたしました。

    平日は子供の送迎等で家内が運転するため、ハイエースの標準ボディのハイルーフをベースとしたバンコンで、前向き7名乗車を条件に次の3車種まで候補を絞りました。レクビィさんの「ポシェット」、RVランドさんの「ランドワゴン・ロゼ」、ビークルさんの「クッチェッタ・ファミーユ」の3つです。親子3世代で1~2泊の小旅行は7名乗車(ホテル泊)、普段の使用やキャンプでは家族4名乗車(車中泊)という使い方を想定しています。現時点の環境で第一印象はポシェットが一番なのですが、子供の成長を考えるとリア2段ベッドの狭さに不満がでてこないか心配です。ベッドの広さならファミーユ、ベッドの広さと荷室の柔軟性を兼ね備えたロゼ、というところまで、素人の私なりの印象がまとまりつつあります。

    色々なバンコンを知り尽くした町田様としての3車種のそれぞれの利点、優れた面がありましたら、教えていただけないでしょうか。さらにこの3車種の他にお勧めのバンコンがありましたらご提案いただけましたら光栄です。どうぞよろしくお願いいたします。

    • 町田 より:

      >tsuka さん、ようこそ
      メール拝読。
      tsuka さんの絞り込みが適切なので、感心いたしました。
      採りあげられた3車種について、すでにtsuka様が研究されたとおり、それぞれ一長一短があり、最終的にはその中のどの車種を選ばれても “みな正解” というような気もいたします。

      ただ、ここでは、レクビィの増田さんにインタビューした関係上、本文記事では省きましたが、「ポシェット」に関するお話もうかがっており、そのときにメモも取っているので、それを簡単にご紹介させていただきます。

      ご存知のとおり、同車は「① 7名乗車で親子3世代の小旅行が可能」、「②普段は4名乗車で、日常使いができる」、「③ 子供の就寝スペースとしてリヤベッドの設置が可能」という3点をしっかり満たしておりますね。
      また、ハイエースのナローボディであるため、取り回しがよく、奥様が運転されるときも、安心できるという利点が加わります。

      問題は、「子供の成長を考えると、リヤ2段ベッドの狭さに不安が出てこないか」ということですが、このリヤベッドは、実は縦方向に延長できるオプション設定があります。

      通常のリヤ2段ベッドをオプションで選ぶと、1000×1500mmというサイズにとどまり、お子様の背が伸びるような年齢になったときは、確かに狭さを感じることになるでしょう。
      しかし、室内幅は1500mmを保ちながら、奥行きも1500mmまで延長できる仕様もオプションとして用意されています。
      これは、サードシートの両サイドにある巾木を、リヤキャビネットのトップの高さに合わせて持ち上げ、それに「受け桟」として支える構造の家具と交換することによって可能となります。

      この構造変更は、購入後にも対応してもらえますので、お子様が大きくなられた頃を見計らって検討することもできます。

      1500×1500mmのリヤベッドが実現できれば、お子様の上背が多少伸びても、しばらくは吸収できるのではないでしょうか。また、お子様が一人の場合は、斜めに寝ることによって、頭と足元のスペースを確保することも可能です。

      また、お子様が、親との旅行に快く付き合ってくれるのは、せいぜい中学ぐらいまでという話もよく聞きます。中学に入れば、部活や友達同士の交流の方に時間を割かれるようになり、親と一緒に旅行する機会が減るということは、あちらこちらのユーザーさんから聞いております。

      ただ、そういうお子様は、(個人的な経験でいうと)、今度は高校生、大学生、あるいは成人してから、再び親と一緒のキャンピングカー旅行に同行するようになりますね。私などは、高校生になった息子の友人たち(全員茶髪でピアス付き)4人を連れて、キャンプ場に行ったりもしていました。全員車内で寝るのは無理なので、彼らにはテントを与えましたが、そういう泊り方が連中にも楽しかったようです。

      そういう時期が訪れるのは、まだ少し先のことになると思いますので、そのときにまた車種の買い替えを検討されてもいいのかもしれません。
       

  3. tsuka より:

    町田様 たいへん丁寧なアドバイスありがとうございました。お出掛け大好きな5歳と2歳半の子供がおりまして、幼児期の子育ての慌ただしさから解放されつつあるのと、ご指摘されましたようにクラブ活動などで親離れするまでの期間を考えると、キャンピングカーは今が買い時!と考えるようになりました。高価な買い物になりますので、自分のライフスタイルと照らし合わせて慎重に選定したいと思います。この度はありがとうございました。

  4. 町田 より:

    >tsuka さん、ようこそ
    ご丁重な返信をいただき、恐縮です。
    ありがとうございました。

    素敵な車選びができることをお祈り申し上げます。

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