Tグローブという「文化」

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 「Tグローブ」というトレーラーがある。 
 外形デザインを見れば、そのオシャレで可愛らしいラウンドフォルムに、誰もが視線を吸い込まれるだろう。


 
 このトレーラーの原型はアメリカ製。
 「カシータ」というモデルがそのベースになっている。

 だが、他のアメリカントレーラーとは違い、このTグローブには、アメリカの大型トレーラーが持っているような威圧感がない。
 遊園地にあるメリーゴーランドやおとぎ列車のような親しみやすさがあって、若い女性や子供なら、まるで魔法にかけられたかのように、すぅーっと車内に吸い寄せられていくはずだ。

 ちょっとオールデイズ風のポップな雰囲気。
 コーラの甘い香りと、ポップコーンの弾ける音。
 ローラースケートに乗って注文を聞きに来るハンバーガーショップの娘。

 Tグローブには、映画『アメリカン・グラフティー』の画面からこぼれてくるような、そんな「懐かしい時代」の匂いがする。

 いったいどんな人が、このトレーラーを売っているのか。

 松原豪さん。(写真下)

 誰が言ったか、自分で名乗ったのか。
 「hige GOZI」 
 と呼ばれている。
 確かに、おヒゲの似合う顔立ちである。

 松原さんは、トレーラーが商売になると思って、この仕事を始めたわけではない。
 もともとオーナーだったのだ。
 若い頃、米国トレーラーのカシータを買い、野山で遊び、キャンプ場で星を眺め、川のほとりで釣りを楽しんだ。
 使えば使うほど、彼はカシータの魅力にハマっていったが、あまりにも惚れこみ過ぎると、かえって不満も高じてくる。使い勝手をさらに向上させるための自分のアイデアが次々と湧いてくるからだ。

 松原さんが思い描いたアイデアの数々は、カシータ本社にお願いして改良してもらえるようなレベルをはるかに超えてしまった。 
  
 ―― しかし、もしそれが実現できたら、日本で最も素敵なアメリカントレーラーになるかもしれない。
 妄想(?)のような完成形が、頭の中で固まっていく。

 「仕方がない。自分で始めるか」

 彼は、なんと日本の使用環境に適合した “松原バージョン” ともいうべきを企画をカシータ本社に提出。
 さらに、カシータ社の了解をとって、それを日本国内で売り出す契約を交わした。

 そのとき立ち上げた会社名が、「トランキルグローブ(静かなる地球)」。
 商品名は、その社名を縮めて、「Tグローブ」。

 では、松原氏のオリジナルトレーラーである「Tグローブ」の特徴は、どんなところにあるのだろうか。

 「そもそも、Tグローブの原型となったカシータというトレーラーが、非常にユニークな構造になっているんです」
 と、松原さんは語る。

 「このトレーラーを見いていただくと分かると思うんですが、ボディ真ん中を横切る接合面のラインが見えますよね。
 ボディが上下に分断されているのは、実は、この部分だけなんです。
 つまり、ルーフおよびフロアーパンのつなぎ目が、真ん中の “赤道線” 一本に集約され、それ以外は、完全なFRP一体構造になっているんです」

 多くの欧米トレーラーの場合、アルミその他の鋼材やコの字型のブリキ板のフレームの上に、角材とベニヤで構成されたシェルを載せ、その天井と外壁を、FRPかアルミの膜で覆うという工法が採用されている。

 それに対し、このカシータは、外側がまるまる頑丈な貝のフタで覆われたような “FRP製貝殻構造” になっているというわけだ。

 そのため、ボディへの雨水の侵入がない。
 あっても最小限に抑えられる。
 それは、サビや腐食の心配から解放されることであり、メンテナンスの容易さにもつながる。

▼ Tグローブ室内

 松原さんは、カシータのそういう特徴を生かしつつ、その改良版のTグローブに、高温多湿な日本の風土に適合させるためのさまざまな改造を試みた。
 壁の断熱材から床面、絨毯に至るまで、より断熱効果が高く、腐食を避ける仕様に変更し、雨風、雪などの悪天候時にも快適に過ごせる工夫を施したのだ。
 
 電装系も見直し、バッテリーからトランスまで強化した。
 さらには、日本のアウトドアシーンで使うときの路面状況を考慮し、車軸のナックルアームの取り付け角度を変更し、床地上高を10cmアップ。林道などで、ワダチを乗り越えたときに腹をこする心配を除去した。
 また、サイドオーニングも取り付けられるように、壁厚などに厚みを加えて、ボディ強度と剛性を高めた。

 だから、Tグローブは、米国カシータ社のトレーラーのフォルムを身にまといながら、内実はまったく別物といえるほどの改良が施された “完全日本仕様” のスペシャルバージョンなのである。


 それだけの画期的な商品を開発しておきながら、
 「どうです? 凄いでしょ。さぁ、買って !」
 と、けっして彼はあからさまな宣伝はしない。

 キャンピングカーイベントで、このTグローブを展示する松原さんは、せっかくの商品を会場に運んでおきながら、それを隠してしまうがごとくに、お洒落な形をした年代もののテーブルを設置する。
 テーブルの上には、ヴィンテージランタン、クラシカルなケトル、アメリカ製ランチボックス、コーヒーメーカー、お菓子を盛ったバスケットが並ぶ。

 「ピクニックでも始まるのか?」
 と、ブースのセッティングを見ている人たちは、みなそう思うはずだ。

 そう ! パーティーなのだ。
 松原さんは、自分のブースをパーティー会場にしてしまうのだ。
 
 ブースがオープンすると、そこにはTグローブを買ったお客さんたちが、それぞれパンを買い込み、ホームメイドのクッキーを持ち寄り、マロングラッセ、チョコレートを携えて訪れる。

 「今日はね、コーヒー豆をハワイコナにしてみたの。ちょっと飲んでみて」
 訪れるお客さんたちに、松原さんが煎れたてのコーヒーを手渡す。
 
 通りがかった見学者たちは、「何だろう?」と首をかしげる。
 だって、楽しく語り合う人々の陰に隠れてしまい、肝心のTグローブなんて、まったく見えないときもあるからだ。

 「それでいいんです」
 と松原氏はいう。
 
 「はじめての人がトレーラーそのものを見ても、どう使えばいいのかという実感は湧きませんから。
 それよりも、このトレーラーを手に入れれば、こんなに楽しい時間を持てるんだ、という雰囲気を感じてもらうことが大事」
 ということで、彼はユーザーさんたちを招き、その人の旅行先の思い出話を聞き、装備品の使い勝手を尋ね、次回のキャンプ大会の候補地を相談しあったりする。

 そのそばに立ち、なごやかで楽しそうな空気を吸った見学者は、
 「どれどれ。どんなトレーラーなんだ?」
 と、ようやく、立ち並ぶ骨董的な道具類の中に分け入って、実車の中を覗きこむことになる。


 
 あるキャンピングカーイベントで、松原さんと雑談をしているとき、通りがかりの見学ファミリーが、「まぁ、可愛い !」と足を止めたのは、トレーラーではなくテーブルの上に置かれたアメリカ製ランチボックスを見たときだった。

 「ねぇ、これ、どこで買ったんですか?」
 と、ベビーカーを引いた奥様が話しかける。
 「コストコで見つけて … 」
 と答える松原さんの隣に近づいてきた旦那さんが、ようやくトレーラーに視線を向ける。
 「お、このトレーラー、いいなぁ …」
 車好きらしい旦那さんとの間で、今度はけん引するヘッドに関する話が弾む。

 その様子を見ていて思った。
 ―― これは最強の展示スタイルだ。
 
 「物」ではなく、「文化」を売る。
 Tグローブが持っているトレーラー文化を、松原さんは見学者たちに “展示” しているのだ。

 すべての展示車両が、このスタイルを採れるわけではない。
 また、誰もがこの手法で、お客さんとの会話に入っていけるわけではない。

 松原さんだから、できる。
 Tグローブというトレーラーを育て、それがもたらす「充実感」「くつろぎ」「喜び」を味わい尽くしているからこそ、Tグローブの周りに漂う “空気” を作り出すことができるのだ。

 キャンピングカーは、けっきょく「人」である。
 
 
information

有限会社トランキル グローブ
神奈川県鎌倉市極楽寺3-14-14
0467-23-1589 info@tglobe.jp
http://tglobe.jp

Tグローブ 基本データ

全  長 4980mm
全  幅 2070mm
室 内 長 4000mm
室 内 幅 1950mm
室 内 高 1790mm
タイヤサイズ 225/75R-15

■標準装備( 一例)
NASA開発高効率断熱材/最低地上高10㎝アップ車軸/犬ネコ用水拭き可能ビニール絨毯/FRP強化2重床/アルミホイール/シンク/2口 コンロ/8kgLPGタンク取り付け用台座及び金具/3ウェイ47㍑冷蔵庫/電子レンジ収納用棚及びコンセント/電動レンジフード/エアコン(120V昇圧トランス付)/FFヒーター/105Ahディープサイクル・バッテリー×2/45Ahコンバーター/走行充電用配線/外部AC電源入力/12Vコンセント/圧力自動調整式清水電動ポンプ/ 23㍑貯湯式LPG 温水ボイラー/FRP 成形ユニットシャワー室/外部温水シャワー/シティウォーター給水口/60㍑清水タンク/57㍑ブラックタンク/外付清水83㍑タンク/電動給排気温度センサー付ベンチレーター/トイレ用電動ベンチレーター/外部収納庫/ダブルベッド(1200×1970mm)/シングルベッド(620×1970mm)/一般水道接続キット他
■オプション(一例)
サイドオーニング/電動フロントジャッキ/電動ドーリー他

なお、走行中のTグローブの動画は、下記をどうぞ

関連記事 「T グローブ (T-GLOBE)の世界」
 
 
「キャンピングカースーパーガイド2015」 発売中
定価 700円+税 756円


  
発売 日版IPS 東京都文京区湯島1-3-4 TEL:03-5802-1859
発行 自動車週報社 
   
  

カテゴリー: campingcar   パーマリンク

Tグローブという「文化」 への5件のコメント

  1. クボトモ より:

    究極の情緒。まさにこれは究極。欲しくなりました。

    • 町田 より:

      >クボトモさん、ようこそ
      日本のRV文化は、ともすればハード寄りになり過ぎているきらいがありますけれど、やはりRVも人間が関わることなので、そのRVを使ったときに、どういう世界を味わうことができるのか、という精神面のインフォメーションもこれからは必要になっていくのだろうと思います。
      Tグローブを開発された松原さんという方は、そこのところに気づいていらっしゃるんでしょうね。
      「キャンピングカーは、けっきょく『人』である」
      というのは、そういう意味を込めた1行のつもりでした。
       

  2. 木挽町 より:

    これ。かっこいいですね。大きさもちょうどよさそう。床のタイルカーペットが雰囲気があってなかなかかっこいいと思いました。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      そうなんですよね、内装もお洒落なトレーラーです。

      床のデザインももちろん、その他のシート地の素材感などもいい感じです。
      温かみがありますよね。

  3. Jay Kuro より:

    はじめまして。素敵な記事拝見しました。

    昨日ビッグサイトのキャンピングカーショーに行きました。別のモデル目当てで出掛けたのですが、なんだか一角他とは違う雰囲気のブースがありました。丁度上でおっしゃっているような感じ。そしてそこにあったのが古いT.Globe。これ、売り物じゃないよねとか言いながら、その外観に魅かれました。

    ソコにいらしたのが、松原さんだったのでしょうか。中見ていいですかと出展者らしき男性に声を掛けたら、どうぞ、靴は脱いでくださいね…。アメリカインディアン調のブランケットに覆われた室内、じっくり拝見しました。それ以上の会話はナシ。売る気はないみたいだ、という印象でした。

    なのに、あっという間に、我が家ではT.Globeが購入第一候補トレーラーになりました。実際買えるかどうかはわかりませんが、これから色々情報を集めてみようと考えています。

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