清水国明さんの「レスキューRVパーク」

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 東日本大震災(2011年3月)のような、突然の巨大災害に見舞われたとき、住むべき住居を失った人たちに、とりあえず雨風をしのげる仮設住宅を提供することが急務となる。

 その仮設住宅として、移動・設置が容易なトレーラーハウスを用意して、災害時に備えながら、平時は、そのトレーラーハウスを防災訓練やサバイバルキャンプを実習をするときの拠点として活用するという新しいタイプのプロジェクトが発足した。

 その名も「レスキューRVパーク」。
 歌手・タレントとして活躍し、アウトドア愛好家としても知られる清水国明さんが提唱したもので、その発足を祝うオープニングセレモニーが2015年11月30日に、清水さんが開設している山梨県の「森と湖の楽園」で行われた。
 
 
▼ オープニングセレモニーで、報道関係者を含む約80名の来賓の前で挨拶する清水国明氏

▼ マスコミ各社や各地方の自治体の長、行政担当者、企業経営者なども式典に参列

 
 
 「レスキューRVパーク」とは、すなわち “レスキュー・ビークル・パーク” の意味。

 このプロジェクトで採用されることになったトレーラーハウスは、定置して使われることを前提に開発された商品だが、構造上シャシーと車輪を伴っているため、北米の基準では「RV(レクリエーショナル・ビークル)」のカテゴリーに属する。
 そのため、この「レスキューRVパーク」の “RV” には、「レスキュー・ビークル」と「レクリエーショナル・ビークル」という二つの意味が含まれる。
 
 
▼ 今回設置されたトレーラーハウスの一例

 
 
 今回の「レスキューRVパーク」は、日本RV協会が進めている「RVパーク(レクリエーショナル・ビークル・パーク)構想」とは異なるものの、平常時にはトレーラーハウスをレクリエーショナル施設としても活用できるという意味において、両者には共通点がある。

 この「レスキューRVパーク」構想は、米国の「FEAM(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)が作成した “トレーラーハウスを活用した被災地支援と防災のシステム” をモデルにしたもので、「その日本版を提案したい」と清水国明氏は語る。

 2005年に、巨大ハリケーンの「カトリーナ」がアメリカ南部を襲ったとき、アメリカでは住居を失った人々を救済するためにトレーラーハウスやキャンピングトレーラーが動員され、被災者の簡易仮設住宅として活躍したという事例があり、清水氏が提案する「レスキューRVパーク」もそのシステムを参考にしている。

 似たようなプロジェクトはすでに日本でも試みられているが、今回の「レスキューRVパーク」においては、システムを安定的に継続させるため、「ソーシャルビジネス」という概念を導入したところが新しいものになっている。

 「ソーシャルビジネス」とは、少子高齢化や引きこもり問題、ニートや障害者などの支援など、現代社会が抱えるさまざまな課題をビジネスの手法で解決していく活動を意味し、この「レスキューRVパーク」においては、災害時の救援活動および防災訓練の拠点構築をビジネスのスタイルで遂行することになる。

 具体的には、投資家がまず「レスキュービークル」としてのトレーラーハウスを購入。それを、(今回の例を採れば)「株式会社レスキュービークルパーク」という会社が預かって運営管理を行い、災害が生じたときは、そのトレーラーハウスを移動させて支援活動を発動する。
 また、管理運営会社は、平常時にはトレーラーハウスをレクリエーショナルビークルとして活用し、その収益を投資者に回収してもらう。

 その場合、投資家は回収した投資金額をトレーラーハウスの購入に再投資し、管理会社は利益の最大化を目指さず、社会的課題を解決することを優先する。
 そうすることによって、災害時の支援活動が、安定して継続的に維持されると清水国明氏は説明する。
 

▼ 清水国明氏

 
 
 もちろん、平常時にレクリエーショナル施設として解放されたトレーラーハウスも、災害発生時には被災地に搬送されることになるため、余暇活動として利用するときは多少の制限を受けることになる。
 ただ、トレーラーハウスを非常時に搬送することに関しては、その切り替えをスムーズに処理するためのノウハウを構築中であり、平時の利用者がトラブルに巻き込まれる可能性は低いと関係者はみる。

 清水氏は、今回レスキューRVパーク第1号としてスタートした「レスキュービークルパーク河口湖」を皮切りに全国展開を目指しており、全国100ヶ所ぐらいの同施設が生まれるように運動していくという。

 そのため、河口湖におけるレスキューRVパークでは、社会の認知度を高めるために、これまで継続してきた各企業の防災訓練セミナーなどもさらに強化し、今回災害救援用に設置されたトレーラーハウスも、各企業から派遣された研修員の宿泊施設として有効に活用していく方針で臨んでいる。

 また、清水氏は山梨学院大学の客員教授として、災害時の対応および防災への心構えなどを講義するとともに、同大学の生徒を100人ずつ合宿させて “サバイバルキャンプ” などを体験させているが、今回導入されたトレーラーハウスは、そのような活動の宿泊拠点としても使われることになる。
 
 
▼ 当日のトークセミナーが行われた会場風景

 
  
 では、トレーラーハウスというものは、いったいどのような構造になっているのだろうか。
  
▼ レスキュービークルパーク河口湖には、11棟のトレーラーハウスが設置された

 
 
 これまで日本に導入されてきたトレーラーハウスは、主に米国製のものが多かったが、今回採用されたものは国内企業の「カンバーランドジャパン」製品。日本人設計による緻密な作り込みと品質の均質化を保証する “ジャパンスペック” が特徴となっている。 
 
 サイズやレイアウトは多岐にわたり、ベッドとリビングスペースだけに限定されたシンプルなものから、トイレ・シャワー機能やキッチン機能を盛り込んだ高機能型のものまでさまざま。
 
 
▼ シンプル装備型の例

▼ 高機能型の例(下の写真の上はキッチン付きのリビングスペース、
その下は同トレーラーハウス内のトイレ・シャワー室)



 
 
 装備内容はそれぞれ異なっていても、ボディ部分の構造はみな同じで、床下・壁・天井には100mmの断熱材が充填され、戸外から襲ってくる暑さ・寒さをシャットアウト。
 強度や剛性もしっかり確保されているので、「住宅」として扱った場合の耐用年数は35年程度。水道設備などのライフラインが故障したとしても、その修理などは地元の業者でほぼ解決してしまうとか。

 建築確認も特に取る必要がないので、建物の設置が禁じられている国定公園内に設ける案内所などにも使うことができる。
 
 災害が発生して、これらのトレーラーハウスが現地に救援活動におもむくときの所要時間は、約1時間。
 まず、ウッドデッキ部分を切り離し、次に電気などのライフラインを取り外す。その間にけん引する車両を準備。
 こうして、連絡が入った1時間後には、トレーラーハウスが次々と被災地に向かうことになる。 
  
  
 今回のオープンセレモニーには、各地方の自治体の長や行政担当者、企業経営者などが多数出席したが、その方々は、このようなトレーラーハウスを活用する「災害時出動型RVパーク」の誕生をどう感じたのだろうか。

 この「レスキューRVパークの提案に名乗りを挙げてもいい」と評価するのは、三重県のキャンプ場「伊勢志摩エバーグレイズ」の代表を務める松本寛さんだ。
 
 「こういうシステムが日本全国に普及していけば、災害時の準備になるばかりではなく、新しいコミュニティー運営の実践的ノウハウを獲得する場として活用できる」
 と松本さんは語る。
 「アメリカでは、こういうトレーラーハウスを集めた施設が老人たちのコミュニティーを形成するきっかけを作っており、そこでは、生まれも育ちも異なる老人たちが相互支援を行いながら生活している。
 彼らのそういう生き方を学ぶことは、地震や津波などで住む家を失った日本人たちが寄り集まったときのコミュティー構築のノウハウを身に付けることに繋がる。今回のレスキューRVパークは、その実践的な訓練の場として活用できるのではないか」
  
 また、B.C.ヴァーノンという北米製モーターホームの中古販売・修理を中心業務に据えている「トレックス・ガーデン」の代表者戸川聰氏は、次のように見る。
 
 「レスキューRVパークのような構想は、国や自治体に任せていると、その実現に漕ぎつけるまでに非常に長い時間を要することになる。こういう施設は、熱い情熱と高い理想を掲げ、かつビジネスとしての採算をしっかり計算できる民間人が始めないかぎり実現しない。そのモデルケースを提示したという意味で非常に高く評価できる」

 このように、今回のミーティングに参加した人は、おおむねこのレスキューRVパークを諸手を挙げて歓迎し、期待を寄せているようだ。
  
 
▼「森と湖の楽園」看板

 
 
 また、同パークが開設された「森と湖の楽園」そのものも、集客効果を高めるためのリニューアルを2015年の5月に終えたばかり。
 「THE THIRD PARK KAWAGUCHI-LAKE」という名称で、オーベルジュスタイル(宿泊施設を備えたレストラン)として、魅力的なメニューを揃えている。

 それが、アメリカンスタイルのバーベキューを楽しめる「MEAT MAGIC(ミートマジック)」という場内のレストラン。
 ここでは、地元「甲州ワインビーフ」などの贅沢な食材を中心とする特製バーベキューメニューが取り揃えられており、スタッフが絶妙な火加減と味付けをした熟成肉(エイジングミート)を調理し、お客が自ら焼くことなく、その素晴らしい味を堪能できるようになっている。
 
 
▼ ミートマジック

▼ ピザも焼ける大窯で、厳選された熟成肉も焼き上げる

▼ 場内には「ドームハウス」のような様々な宿泊施設も用意されている

 
 
 このように、11月30日にスタートした「レスキューRVパーク」は、これまでのRV(レクリエーショナル・ビークル)の機能に「レスキュー」という意味を盛り込んだ新しいライフスタイルを創造するシステムとして、今後さまざまなメディアに注目されることになりそうだ。
  
  
「レスキュービークルパーク河口湖」(森と湖の楽園内)
山梨県南都留郡富士河口湖町小立5606
問い合わせ 0555-73-4116
URL http://www.workshopresort.com
  
 
※ なお、本ブログ記事は、清水国明さんのブログにも採りあげていただきました。
   ↓
  日本初!災害出動型レスキューRVパーク発足しました!
  
  

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清水国明さんの「レスキューRVパーク」 への8件のコメント

  1. より:

    これは素晴らしい取り組みですね!
    私も独立して以降、こういったRVとソーシャルビジネスを組み合わせる方向性も可能性として考えていたところだったのでとても参考になります。(土地も原資も無いですが(汗))

    • 町田 より:

      >雷さん、ようこそ
      ソーシャルビジネスというのは、十分に評価されるべき考え方であるように思います。
      やはり、「ビジネス」である以上、無責任なことはできませんし、失敗したときには責任を取らなければなりませんから、それが志を掲げ続けるモチベーションになると思います。
      それと、「人」を動かすだけなら、「情」に訴えるだけである程度の成果は出るかもしれませんが、「レスキュー」というのは、「人」と同時に「物」も動かさなければなりませんから、やはり原資は必要になるでしょうね。
       

  2. 松本 寛 より:

    私どもも以前より勉強しておりましたシステムがとうとう日本に出現いたしましたね!
    もちろん、誰しも災害は望むものではありませんが、私も神戸で被災いたしました。忘れることはできません。町田さんにお会いできお話をうかがうことができました。
    ありがとうございました。

    • 町田 より:

      >松本 寛さん、ようこそ
      メールをいただけるなど、思いもよらぬことで、とてもうれしく思います。
      オープニングセレモニーのときは、たいへんお世話になりました。
      松本さんのお話、アメリカ人のメンタリティーが形成されてくるまでの洞察など、とても興味深く拝聴。勉強になりました。
      今後ともよろしくお願い申し上げます。
       

  3. 木挽町 より:

    機動性を活かした取り組みはおもしろいですね。造水車、発電車、医療車、通信車、入浴車、炊飯車、工作車などと組み合わせて編隊運用できるとさらに能力を発揮できるのでしょうね。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      さすがに、素晴らしいところに着眼されていますね。
      実は、このセレモニーを取材した折に、給水車、発電車などとのリンクが可能かどうか、話を聞いております。

      電気関係は、発電機、ソーラーなどの活用を射程にいれておけば、それほど問題はないそうです。
      また、調理などの熱源においては、LPGが使えれば支障はないし、トレーラーハウスのタイプが I H クッキングに対応するものなら、電気さえ確保できれば問題はないということでした。

      やっかいなのは、やはり水のようですね。
      飲料や煮炊き用の水も用意しなければならないし、手や顔を洗う水も必要となると、かなり大量の水が確保されないとならないそうです。
      給水車の助けが借りられれば支障はないそうですが、それがうまくいかないときは、トレーラーハウス自体に容量のある清水タンクを組み込み、水を満タンにして出動すれば、とりあえずの水は確保できるとのことでした。

      入浴車、炊飯車などと協力できるようでしたら、災害支援も内容もかなり満たされることになるでしょうけれど、トレーラーハウスの中には風呂、キッチンなどを組み込んだものもありますので、そういうタイプを用意しておけば問題はないようですね。
       

  4. motor-home より:

    町田さん、アメリカでのハリケーン”カトリーナ”の時に多くのトレーラーハウスが列車で被災地に運ばれたといった事例から、日本でもこういったスタイルで根付かせていきたい!といった清水国明さんをはじめとする皆さんの行動に感銘を受けました。戸川さんがおっしゃっていたように“民の力で官を動かす”事例としても成功し、日本でもアメリカのこのような文化も根付いていって欲しいですね。

    • 町田 より:

      >motor-home さん、ようこそ
      今回のトークセミナーにおいても、災害対策において、なぜ「官」の対応が遅れ気味になるのかというテーマが出ていましたね。
      そこで、清水さんのような「民」からスタートするというのは大事なことであるように思います。
      「官」というのは、「民」の成功事例を参考にして対策の企画を練るようなところもあるようですから、まずこの清水さんの試みを成功させることが大きな鍵になりそうですね。
       

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