トーメン自動車「スミティ」

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - トーメン自動車「スミティ」
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed

 
こんなキャンピングカーもあったんだ !(第2回)
    
 
日本のいすゞシャシーを採用した
カナダ製モーターホーム

  
TJ-A781 スミティ
輸入元 トーメン自動車
1995年情報 
 
 
 1995年に、輸入モーターホームの大手商社であったトーメン自動車が企画した画期的なクラスAモーターホームがあった。
 「TJ-A781 スミティ」といった。
 
 

 
 
 この車が、なぜ画期的だったかというと、おそらくわが国のモーターホームの歴史において、初の “完璧” な日本仕様の輸入車が生まれたからだ。

 まず、当時の日本仕様を謳える大きな条件の一つに、左エントランスドアを採用できるかどうかという難問があったが、同車はこれを難なく実現している。
 電装系やLPGシステムにおいても、国内基準を満たす改良が施されたし、搭載する電気製品もすべてパナソニックなどの国産家電であった。

 さらに日本の道路事情を考慮して、全幅も 2m30に切り詰められ、全長も 8m10と、当時の輸入車サイズとしてはそれほど大きくなり過ぎない長さに抑えられた。

 だが、最大のトピックスは、この車のベースシャシーが日本製トラックであったことだ。
 いすゞNPR/W4。
 
 残された資料には、はっきりとそう記録されている。
 私は、不勉強なので、このベース車のことをよく知らないのだが、たぶん当時米国いすゞで製作されたトラックの1車種だと思われる。
 いすゞ自動車は、1972年にすでに米国へピックアップトラックを輸出を始めており、1975年には北米に生産拠点を設立しているので、1995年当時に北米でいすゞ系トラックシャシーを調達するのは、そんなに難しいことではなかっただろう。

 このいすゞシャシーを使った狙いはどこにあったのか?
 最大の理由は、輸入モーターホームのダウンサイジングだったといわれている。 

 この時代から、北米のモーターホームは巨大化を進めていた。
 そうなると、そのままのサイズでは、日本に導入できないものも出てくる。
 「全長12.0m以下、全幅2.5m以下」というのが日本の道路運送車両法で決められた公道を走れる車の条件だが、北米モーターホームの場合は、このサイズを優に超えるものが増え始め、特にクラスAではその傾向を強めていた。
 トーメンが米国いすゞのシャシーをベース車に選んだのは、日本を走れるクラスAを実現しようという狙いがあってのことだった。
 
 こうして実現したスミティ。
 残された写真を見るかぎり、外形フォルムも美しいし、内装も洒落ている。
 
 


 
 
 実際に製作を手掛けたビルダーはどこだったのか?

 なんと、当時北米でも最も信頼できるモーターホームを製作していたトリプルEカナダ社である。
 このような大手ビルダーが、日本専用機種を手掛けるということ自体がまれなことであったが、トーメン自動車がトリプルE社の国内代理店を務め、実質的にトリプルEのマーケットを広げたという実績があったから、トーメンからの依頼があれば、トリプルEとしても、そのリクエストに応えるのはやぶさかではなかっただろう。

 こんな “夢” のような日本専用クラスAが生まれたというのに、なぜかこの車が日本マーケットに華々しく進出したという話を、その後聞くことはなかった。
 実際にユーザーの手元に渡ったのかどうかも、私にはよく分からない。
 
 もし、市場でそれなりの評価を得られた車だったとしたら、ネットにもその記録が刻印されても良さそうなものだが、「TJ-A781 スミティ」という検索ワードだけでは、詳しい情報にたどり着くことはできなかった。

 日本での市場を広げられなかった理由はどこにあったのだろう。
 
 たぶん、この時期あたりから、輸入車の「日本仕様」というものの価値が相対的低くなったせいかもしれない。
 左エントランスとか、日本製家電を搭載するといった仕様変更よりも、車体自体を製作している海外のビルダーが、それまでいかに安定した商品を供給してきたかということが問われ始めていたのである。

 トリプルE社というのは、ビルダーとしての実績はカナダのナンバー1である。
 しかし、いすゞシャシーを使ったモーターホームというのははじめてのケースであり、当時の日本の輸入車愛好家たちには、実験的なプロトタイプとしてしか見なされなかった可能性がある。

 動力性能も、北米系シャシーには届かなかった。
 スミティの最高出力は135ps。
 フォードE350あたりのシャシーを使った北米モーターホームがのきなみ230psを出していたのに比べると、パワーユニットとしても見劣りした。

 また、搭載装備も(言葉は悪いが)やや時代錯誤的なところがあった。
 深めのバスタブが付いたシャワールームが設定され、「万が一お湯がこぼれても、シャワー室床のドレインで排出できる構造になっているので、リビングまで水が溢れることがない」というのが “売り” の一つになっていたが、世界に冠たる温泉大国である日本で、ほんとうに「深めのバスタブを持ったシャワー室」が必要であったかどうか。

 日本の使用環境に適したものが一から開発できたのだとしたら、その装備に費やすスペースと機能を、もっと他の装備に変えられなかったのではないかとすら思う。

 しかし、この意欲は大いに評価しなければならない。
 “完璧なる日本仕様” は輸入モーターホームを手掛ける商社なら、いつかは実現したかった「夢」だったろうし、資金をかけて開発したせいもあり、ビジュアル的なインパクトもそれなりに備わっていたと思う。

 だが、この車が登場した1995年というのは、年明けに阪神大震災が起こり、それに続いてオウム真理教による地下鉄サリン事件などが起こった年だった。
 バブル崩壊後の経済低迷期に輪をかけて、その二つの事件は、暗い雲に覆われた「先行き不透明感」を国民にもたらすことになった。
 
 誰もが “夢のモーターホーム” などに振り向いている気分になれなかったかもしれない。
 そう思うと、生まれた時期の不幸を嘆くしかない車であったともいえる。
  
 
TJ-A781 スミティ  information

ベース車両 いすずNPR/W 4
エンジン形式 直 4 ディーゼルターボ
排気量 3900cc
最高出力 135ps
ミッション 4速AT
駆動形式 2WD(FR)

全長8100mm/全幅2300mm/全高3130mm
コーチビルダー トリプルEカナダ社
乗車10名/就寝 6名
当時の車両価格 1180万円

標準装備(一例)
アームレスト付き回転式運転席・助手席/オーバーヘッドバンクベッド/左側乗降ドア/2ドア冷蔵庫(3way 170㍑)/電子レンジオーブン/温水器(LPG燃焼式 27㍑)/バスタブ付きシャワールーム/ジェネレーター(6.0kW ホンダ or 4.0kWオナン)/給水タンク(170㍑)/ブラックタンク(130㍑)/グレイタンク(130㍑)/LPGタンク(10kg×2)他
 
 
こんなキャンピングカーもあったんだ ! 

「レブコン6×4」
 
 

カテゴリー: campingcar   パーマリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">