年末は映画三昧

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シネマ漂流(映画感想記) No.5

『ゴジラの逆襲』 他
『提督の艦隊』
『猿の惑星 新世紀』
 
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ゴジラ映画の記念すべき初期作品
『ゴジラの逆襲』

 年末は、28日に自分の部屋を掃除して以来、夜はぐだぐだと酒を飲みながら、テレビを観たり、ハードディスクに取り溜めた録画を鑑賞している。

 録画を観るのは、主にWOWOWなどで放映された映画のたぐい。
 “ゴジラシリーズ” をやっていたので、時間の許すかぎり観ていたが、初期のものと、後期のものを比べると、特撮技術がどんどん高度になっていくのが分かった。ゴジラの体形が回を追うごとに洗練されてきて、バランスが良くなっていくのだ。

 しかし、面白いのは、映像が緻密になっていくに従って、ゴジラの怖さが薄れていくことだった。

 あれって、何なのだろう。
 第1作目の『ゴジラ』、2作目の『ゴジラの逆襲』あたりに漂っていた “荒ぶる神” のような恐ろしいゴジラが、次第にただの “巨大怪獣” に成り下がっていくのは、観ていて少しさびしい。 

 初期のゴジラ映画は、現在のCGで処理された画像のものと比べると、お粗末なくらい稚拙。
 ゴジラの足で踏みつぶされていく街並みが、みなペーパークラフトの模型みたいなチープ感を漂わせている。

▼ ゴジラ第1作目

 なのに、初期のゴジラの存在感は、後期のゴジラシリーズに比べて圧倒的に際立っている。
 フィルムがモノクロのせいもあるかもしれない。
 灰色に彩られた街並みの上空に、闇よりも濃いゴジラのシルエットが浮かび上がるだけで、鳥肌が立つような恐怖感が襲ってくる。

▼ ゴジラ第1作目

 
 当時、この映画を観た子供たちが、しばらくの間、悪夢にうなされたという話を聞いたことがあるが、それもよく分かるのだ。

 第1作目の『ゴジラ』が公開されたのは、1954年。
 2作目の『ゴジラの逆襲』は1955年。
 当時、私はまだ4歳か5歳。
 どちらもリアルタイムでは見逃している。
 しかし、もし、この映画を幼い頃に映画館で観ていたら、私もまた悪夢にうなされる夜を経験していただろう。

▼ ゴジラの逆襲

 1950年代に作られたゴジラ映画はこの2本だけだが、今あらためてそれを観ると、やはり戦争の影を感じないわけにはいかない。
 上陸したゴジラの難を避けるために逃げ惑う人々の姿は、B29の空襲に脅える日本人たちの姿を彷彿とさせるし、ゴジラが去った後に広がる焦土と化した東京や大阪は、それこそ原爆で街を失った広島や長崎の情景につながる。

 太平洋戦争が終わったのは、1945年。
 『ゴジラ』が企画されたのは、そのわずか10年後だ。

 だから、この映画の制作陣のなかには、空襲や原爆の被害を皮膚感覚として記憶していた人々がたくさんいたのだろう。
 そのときに感じた彼らの恐怖や悲哀が、そっくりそのまま初期ゴジラ映画に取り込まれていると感じた。
 おそらく、初期のゴジラが怖いのは、そういう制作スタッフの原体験が反映されているからに違いない。

 戦争の記憶が遠のくに従って、ゴジラシリーズは純粋な娯楽映画に移行していく。その分、怖さも薄れて行く。

 それにしても、ゴジラシリーズに登場する自衛隊は、まったく学習能力に欠けている。
 上陸する海岸に戦車を並べ、しきりに戦車砲をゴジラに浴びせかけるのだけれど、ゴジラが砲弾などにはびくともしないことは、初期の2作品で実証されている。
 なのに、後期のゴジラ映画でも、ゴジラが上陸するときは、自衛隊はあいかわらず戦車で迎え撃とうとする。
 案の定、ゴジラは蚊に刺されたぐらいの創傷しか受けない。

 2作目では、ピストルでゴジラを撃っている警官もいた。
 その警官は、きっと1作目の映画を観ていなかったのだろう。
 
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帆船の映画には美学がある
『提督の艦隊』
 
 
 歴史ものが好きなので、洋画では『提督の艦隊』というオランダ映画を面白く観た。
 17世紀に、イギリス艦隊と覇を争ったオランダのデ・ロイテルという実在の海軍総督を主人公にした歴史映画で、帆船同士の海戦が主要な見せ場となる。

▼ 映画『提督の艦隊』

 
 この時代の帆船の姿は、ハリウッド映画の『パイレーツ・オブ・カリビアン』などでおなじみの人も多いだろうけれど、やっぱり美しい。
 船体の容積に比べ、頭上高く張りめぐらされる帆の部分が大き過ぎるので、構図上、ちょっと安定感に欠けるのだけれど、そのアンバランスな感じが心地よい緊張感を生み出していて、カッコいい。

 第二次大戦の頃の帝国海軍の長門も、頭上高くそびえる艦橋が、船体のバランスを崩すほど威容を誇っていて、やっぱりカッコいいと思った。

▼ 戦艦「長門」

 この日本海軍独特の艦橋を “バコダマスト” などとも呼ぶらしいが、確かに東南アジアの仏教寺院の雰囲気あり。
 実用性はどうなのか詳しいことは分からないけれど、こういう船の上に天守閣を盛り上げたような造形は、その不安定さが逆に独特の美学を確立している。
 
  
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人間はなぜ猿に支配されてしまうのか?
『猿の惑星 新世紀』

 年末のテレビでは、『スターウォーズ フォースの覚醒』のCMをさんざん見た。
 CMに登場するヒロインのレイを演じる女の子(デイジー・リドリー 写真下)が可愛いので、久しぶりに映画館に足を運んで、「観てもいいかな … 」ぐらいには思った。
 … けど、実はあんまり “スターウォーズ的世界観” というものが、好きになれない。

 ファンが圧倒的に多い映画だけに、下手な批判を下すと多くの支持者から怒られそうだが、基本的に、鮮やかなくらい(?)シンプルな勧善懲悪がテーマになっているので、観ていると、退屈で仕方がない。
 
 もちろんシリーズの全作を観たわけではないから、偏見に満ちた独断に過ぎないことは分かっているが、基本的に “お子様を喜ばせる映画” に過ぎないと思っている。

 ハリウッド超大作映画が、近年お子様志向になってきたのは、それなりの理由があるようだ。
 映画評論家の町山智浩さんによると、今のハリウッド映画の超大作になると、制作費だけで、小さな国の国家予算的な規模になるという。

 その資金を回収するためには、とにかく公開前にあらゆるメディアを駆使して話題づくりを重ね、大量宣伝効果によって観客動員数を確保しなければならない。
 それには、映画好きの大人だけを相手にしているわけにはいかず、“大人も子供も楽しめる” という条件が必須となる。
 当然、映画の内容も、お子様が理解できるレベルの単純なテーマにならざるを得ない。
  
 それに比べると、同じSF映画シリーズでも、『猿の惑星』シリーズはすごい !
 大人の鑑賞に堪える作りになっている。
 特に、最新作の『猿の惑星 新世紀』は、単なるエンターティメントの枠組みを超えた “哲学” の領域に踏み込んでいる。

 「進化した知能を持った猿の群れと、人間の集団は、はたして共存できるのか?」
 そういう設定そのものが、もう、ものすごく知的である。

 そのテーマには、さまざまなアナロジーが成立する。
 「宗教の異なる民族同士は、共存できるのか?」
 「文明の異なる異民族間に、共通理解領域は存在するのか?」

 『猿の惑星』を通じて、われわれは、いま世界を揺るがせているテロ問題に触れることも可能だ。
 仲間を守ろうとする善意が、なぜ敵対者に対する容赦ない弾圧に変わってしまうのか。
“憎しみの連鎖” というのは、どういうボタンに掛け違いから生じるのか?

 『猿の惑星 新世紀』を観ていると、わくわく、どきどき、はらはらしながらも、いつのまにか “人間存在” の不可思議さにまで思考が及んでいく。
 
 人間の心に巣くう「偏見」や「差別」。
 それが生じるきっかけは、驚くほど単純だが、いちど生まれた「偏見」や「差別」は、人間の被害妄想や優越感と絡み合い、実に複雑な動きを見せ始める。
 『猿の惑星』シリーズに共通したテーマは、「差別」が生まれることの不思議さと、そのやっかいさである。

 それに比べると、『スターウォーズ』シリーズは、基本的に、「猿の立場になったら人間は皆殺しにしてもかまわない」、「人間の立場に立ったなら猿は殲滅してしまってもかまわない」という発想の映画である。

 『スターウォーズ』で、唯一その存在が魅力的なのは、ダースベイダー(写真下)だけであるというのも困ったものだ。

 世界が『スターウォーズ』的世界観に浸されていくのを観ていると、なんだか辛い気分になっていく。

 でも、そういう映画があってこそ、『猿の惑星』がその対比として面白いと思えるのだから、文句を言ってもしょうがないけどね。

 2015年も、いよいよ今日で終わり。
 今年1年、このブログをご愛読いただいた方々に感謝いたします。
 それでは、良いお年を。
  
 

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年末は映画三昧 への2件のコメント

  1. 田濃 孝司 より:

    明けましておめでとうございます
    旧年中は 大変お世話になりました
    新年を犬吠埼で迎へ 今日は 栃木県「袋田の滝」を見学します
    本年も宜しくお願いします

    • 町田 より:

      >田濃孝司さん、ようこそ
      せっかくのご挨拶のコメントをいただき、返信がたいへん遅くなったことをお詫びもうしあげます。
      犬吠埼、栃木の「袋田の滝」、みな関東の有名な観光地ですね。
      さぞや楽しまれたことでしょう。
      今後とも、よろしくお願いもうしあげます。

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