「安い」ということは正義か?

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 ここ数日、テレビのニュースを観ていたら、「軽井沢でのスキーバス転落事故」と、「CoCo壱番屋の廃棄カツ転売騒動」が繰り返し流されていた。

 どちらの報道からも、「昔ならありえないような事件が起き始めている」という印象を受けた。
 
 この二つの事件には、共通性がある。
 それは、「安いことが正義である」という風潮がもたらした悲劇である。
 
 バス横転事故は、「激安」を売り物にするために、ツアー会社もバス会社も、法規制も安全管理も無視したままバスを運行させていたことを白日のもとにさらした。
 「廃棄カツ転売騒動」も、法令や安全管理を無視してまでも、コストを下げることが優先されるという業界の闇の部分を明るみに出した。

 どちらも、セコイ。
 極端にモラルが低いことを露呈した、寒気がしそうなセコさがある。

 1990年半ばぐらいから、「失われた20年」という呼称で呼ばれるようになったバブル崩壊後のデフレ時代が日本を襲った。
 それは、ある意味で「物価の上昇」を抑えた “暮らしやすい(?)” 時代でもあったが、その間に、「安い」ことが “市場の正義” となり、「安さ」を追求するあまり、安全性の確保や品質管理などにかけるコストが圧縮されてきた。

 バスの運行や食品管理などは、絶対削ることのできない安全性の確保や品質管理が必要であるにもかかわらず、それを削ってまでも、表示価格の「安さ」が優先されるようになってきたのだ。

 それを求めたのは、実は、われわれ消費者である。
 「安全の確保」にはコストがかかるという意識をわれわれが放棄して、業者に「低価格」のみを求めてきたからである。

 また、消費者のそういう意識を利用して、業者の方も “格安” だけを武器に、同業者同士でシノギを削った。
 こういう競争が続くと、業者同士も、商品の「安全性の確保」を考慮することはバカなことだと思うようになっていくだろう。

 「事故や事件さえ起こらなければ、陰で何をしたっていい」
 この二つの事件にいやな空気が漂うのは、そういう業者たちの “みすぼらしい利益追求” のセコさが臭ってくるからだ。

 テレビやネットでこの事件を知った視聴者たちは、正義の御旗を振って、この業者たちを糾弾するだろう。
 でも、彼らの姿というのは、「安いことが正義だ」という、もう一つの正義を求めた私たちの姿の反映でもあるように思える。
 
 

カテゴリー: コラム&エッセイ   パーマリンク

「安い」ということは正義か? への8件のコメント

  1. 木挽町 より:

    まったく同感。寒気がするって表現がピッタリです。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      本当に、この二つの事件には、どこか「寒気」を感じますね。
      当事者たちが「悪人」であるとか、そういうこととは関係なく、「人間の顔」が見えないという感じですね。

  2. slolocaravan より:

    残念ですがそのとおりだと思います。一時期価格破壊が散々もてはやされましたが、その挙句、最後に笑ったのはだれだったのでしょうか。家電などの製造業は足の引っ張り合いで共倒れ、それに続いて流通業が淘汰され今や寡占状態に。そして、いちばんの受益者であったはずの消費者も、めぐりめぐって経済全般が停滞したために価格破壊の恩恵どころではなくなってしまいました。

    長期的にはだれも儲からない、だれも得をしない過当な価格競争こそ「安いことが正義だ」の弊害であると思わざるをえません。

    • 町田 より:

      >solocaravan さん、ようこそ
      コメント拝読。おっしゃること、いちいち納得です。
      けっきょく、誰も得をしない過当競争が、バブル崩壊後の日本経済を立て直す力を潰してしまったのでしょうね。

      アベノミクスの効果で、「日本経済が復興してきた」という政府筋の話は、いったいどこまで信用できるのか。基本的には大手企業だけがますます力を蓄え、経済格差が広がるだけではないのか? という疑問を払拭しきれません。

      ただ1点、あの “失われた20年” に意味があったとしたら、それは日本がようやく「物」だけではなく、日本食やら観光資源のような「文化」を売るコツを覚えたということかもしれませんね。
       

  3. ふうとふたり旅 より:

    長くなってゴメンなさい

    バブル崩壊後、私どもの業界も倒産と民事再生の嵐。地元も大手10社のうち無傷は2、3社。私どもの業界は販売の大部分を大手販売業社に依存しており、企画から販売方法、仕入価格から販売価格までを相手に握られているという状況でした。致命的なのは、自らの商品の価格を自分でつけられないという情けなさです。
    結局、価格決定権を放棄しては、コストに押されて品質の維持はできません。
    当時、うちは売上の80%を販売業者に依存していたものが数年で20%まで下げることができましたが、ネット販売が追い風となりました。ただ販売に係る宣伝費、マージンなどの総額は変わりません。
    しかし価格決定権を取り戻すことによって、価格に見合った商品の提供ができるのは顧客の満足度も上がるわけで、適正利潤の商売と成り得ます。

    バブル崩壊後の株価低迷で、大企業はそれまで社員や顧客の満足度を企業理念としてきたものを、株主重視へと方向転換して、企業倫理などそっちのけで、あくなき利潤の追求にしのぎを削るようになってしまったような気がします。当然、しわ寄せは消費者と社員です。最近の考えられない不祥事の数々は当然の帰結とおもいます

    量販店などにいきプライベートブランドが急拡大するのを見るにつけ、作らされる下請けの苦労を思ってしまうのは余計なお世話か。

    要は
    作る側の中小企業は、売れる商品開発をして、自らの販路を開拓し価格決定権を取り戻し、無理な品質低下を招かないこと

    買い手の消費者は高い安いは別として、たとえ100円のものでも商品を見極める眼力をつけること。町田さんのおっしゃるように我々消費者が賢くなるしかないですね。
    昔から言うじゃないですか「安物買いの金うしない」でしたっけ。

    あと要の大企業。心のこもらないお詫びの会見見てる限り企業倫理など求めるのは無理でしょう。小学生低学年の子供が叱られてふてくされて頭下げてるのに似てる(^^)

    • 町田 より:

      >ふうとふたり旅さん、ようこそ
      製造から販売、さらには流通の仕組みなどに関して、詳細なレポートをいただき、とても勉強になりました。ありがとうございました。
      やはり、「商品」を売ろうとする場合、価格決定権を持たない限り、品質管理もできない上に、適正利潤も出せないということなんですね。
      そのとおりだと思いました。

      >>「バブル崩壊後の株価低迷で、大企業はそれまで社員や顧客の満足度を企業理念としてきたものを、株主重視へと方向転換してしまった」
      そうですね !
      それはもう世界的な傾向で、日本もその波に呑みこまれてしまったということなんでしょうね。

      >>「作る側の中小企業は、売れる商品開発を行い、自らの販路を開拓し、価格決定権を取り戻すこと」
      (↑)まさに、それこそが今求められている製造業の理念であると思います。
      ただ、おっしゃるように、それは並大抵の苦労ではないことも事実ですね。
      しかし、そういう下請け企業の涙ぐましい努力のようなものは、消費者が絶対支持しないわけがありません。ドラマ(や小説)の『下町ロケット』の高視聴率などは、そういう庶民の気分を代弁しているような気がいたします。

      >>「大企業の心のこもらないお詫びの会見 … 」
      ほんとうに、そういう光景は、テレビで観ていても寒々しい気分にさせてくれます。
      ……「この人たちは、のど元過ぎれば熱さ忘れるのコトワザどおり、ほとぼりがさめると、平気でまた同じことを繰り返すのだろうな」 …という虚しさを覚えます。、
       

  4. かたなねこ より:

    バスの件、国交省の決めた最低運賃を下回っていた・・・ 受注側のバス会社に罰則規定が有ったても発注側にも重い罰則がなければ絵に描いた餅です。
    壱番屋の件、県知事が「壱番屋は被害者でもあるが社会的責任は重い」だって。知事の認可を受けた産廃業者にルール通りに委託した壱番屋。産廃業者の認可書には知事認可って自分の名前書いてあるんじゃないですか?知事さん!

    • 町田 より:

      >かたなねこ さん、ようこそ
      >>「バスの件、国交省の定めた最低運賃を下回っていた」 ……
      まさに、そういうことが平気でまかり通っていたということが、不思議でした。
      しかし、考えてみれば、どこの業界でも同じようなことが陰で進行していたのかもしれませんね。
      >>「知事の認可を受けた産廃業者にルール通りに委託しても、県知事は『壱番屋の社会的責務は重い』という」
      これもほんとうに、聞いていて不思議な気持ちにさせてくれる発言ですね。

      あのカツの不正転売で、売った業者が設けた1枚あたりのカツの儲けは5円だとか。
      1枚5円の儲けのために、消費者の健康や安全を放棄してしまう業者の気持ちに、寒々したものを感じます。
       

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