竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか?

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 『竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか?』(ワニブックス) …… という長ったらしいタイトルの本が本屋の新刊書コーナーに平積みになっていて、何気なく手に取ってパラパラとめくったら面白そうだったので、買った。

 とにかく、竹中平蔵(経済学)&佐藤優(元外務省分析官・作家)という組み合わせが、まず目を引く。

 ともに、一筋縄ではいかない人たちだもんなぁ。
 もちろん、お二方とも当代随一の知識人であることは間違いないけれど、どこか、うさん臭さいというか、生臭さいところがあって、その軽妙なトークにコロリと騙されそうな感じもする。

 でも、「面白さ」っていうのは、そういうものなんだろうと思う。
 どうせ騙すのなら、わくわくと楽しい話法で騙してほしい。
 けっきょく人間は、「騙されるかもしれない」というリスクを取らないかぎり、新しい「知」の領域なんかには踏み込んでいけないのだから。

 で、この本。
 タイトルに「世界経済」という言葉が謳われているとおり、「投資」に興味がある人たちを対象としたものらしい。
 だから、この本の端はしには、「投資の薦め」を呼びかけるところが次々と顔を出す。

 しかし、儲けることが究極の目的ではないという。
 その副産物の方が、むしろ大事。
 佐藤優先生に言わせると、FXなどをやることは、「国際情勢を読んだり、経済状況やカントリーリスクを皮膚感覚で知るにはすごくいい」ことなんだそうだ。
 
 
銅が高くなってきたら、戦争が近い(?)
 
 たとえば、こんな記述がある。
 「ピストルやマシンガンの弾は鉛が原料だが、鉛毒があるので人道的観点から銅を塗らないといけないことになっている。
 そのため、戦争が始まるとなると、大量の弾に銅のコーティングをしなければいけなくなるので、銅の価格が跳ね上がる。(だから銅が高くなり始めたら、戦争が近い?)
 また、戦争の前には食糧の備蓄も必要になるから、小麦の相場にも影響が出る。
 つまり、先物市場の動向を見ていれば、戦争になりそうな局面かどうかが見えてくる」

 … のだそうだ。
 こういう思考方法は、株やFX、先物取引なんかをやっている人たちかれみれば、当たり前すぎる話なのかもしれないけれど、そっちの世界にまったく暗い私などは、「ふぅ~ん !」とひたすら感心するばかり。
 
 
 で、日本経済の将来のことを考えなければならないとき、ぜったい見逃せないテーマとして出てくるのは、中国経済の動向。
 世の経済学者たちが、しきりに問題にしているのは、次の一言。

 「はたして、中国バブルは弾けたのか !? 」

 これに関しては、専門家のなかにもいろいろな見方があるようだが、佐藤優氏&竹中平蔵氏がいうには、「いずれにせよ、今後、中国の成長率が大幅に下がってくることだけは確実」だとか。

 で、そうなった場合、日本はどのような影響を受けるのか?
 ま、普通のニュースでは、「日本企業の多くが中国経済に依存している以上、どこも業績悪化の痛手をこうむることになるでしょう」 … ぐらいのことしかいわないけれど、さすが「インテリジェンス」という問題意識を持って世界情勢を読み解く佐藤優あたりは、ちょっと違った観点からものを言う。
 
 
中国バブルが弾けると、日本に膨大な経済難民が流入(?)
 
 「極端な推測かもしれないが … 」
 と前置きをしながら、佐藤優は、「(中国経済が破綻したら)大量の経済難民が海を渡って日本に流れ込んでくる可能性を否定できない」という。

 現在、中国人の「爆買」などが話題になっているが、爆買などができる人たちは、13億の人口のうちのごく一部。
 それ以上に、中国内部では経済格差が拡大して貧困層が増えており、他方では民族問題も激化している。
 だから、経済バブルが弾けたり、政治的大変動が起きたりすれば、すぐに数100万人単位の移民が日本を目指すだろう、というのが佐藤優の観測なのだ。

 もし、大量の中国人が舟で日本に渡ってきたら、日本はどうなるのか?

 現在日本には、「移民法」というものが確立されていない。
 そのため、移民問題が起こったきは、現時点では、法務省の役人が個人の裁量で、ビザの申請や在留の許可を行っている状態だという。

 しかし、それでは、数100万単位の外国人難民が一挙に日本に押し寄せてきたときは、まったくのお手上が状態になる。

 もし大量の難民が日本に上陸した場合、いちばん予想されそうなことは、彼らが「限界集落」と言われているところに、勝手に住み着いてしまうことだという。

 限界集落の空き家には、いちおうライフラインがまだ通っている。中国の山奥の悲惨な暮らしに比べれば、日本の限界集落は天国。
 だから、中国バブルが弾けた場合、日本の過疎地帯には次々と中国人コミュニティーが形成されるようになり、国内のあちこちに、広大なチャイナビレッジやチャイナタウンが出現する。

 「え~ ! ほんとぉ ?」
 という感じの話だが、そういうことだって現実に起こりうる可能性がないわけではない、と佐藤優は警告する。

 彼は「難民を入れるな」と言っているわけではない。
 「難民が突然押し寄せてきた場合も考えて、日本政府はそれをコントロールする法的整備を行い、具体的に対応できるマニュアルを作っておけ」と注意したいようである。
  
 
中東では、もうIS(イスラム国)どころの騒ぎではなくなってきている
 
 “難民” といえば、シリアの内戦やIS (イスラム国)の台頭で大混乱になっている中東からの難民が、今ヨーロッパを悩ませている。 
 それに関して、トルコが、シリアからEU諸国に入ろうとする難民を自国内にとどめる代わりに、EUに加盟させろと言っているというニュースが伝わってくる。

 しかし、トルコの思惑はもっと複雑であり、我々がニュースから得られる情報などとは違ったところで、中東には大きな地殻変動が起こっている、と佐藤優はいう。

 すなわち、
 「今のトルコのエルドアン大統領にとっては、IS(イスラム国)の台頭は逆にチャンス。トルコは、これを機に中東で影響力を拡大するつもりでいる」
 とか。
 「トルコにすれば、イスラム国よりも、トルコとイラクにまたがって勢力を張っているクルド人たちの方がやっかいな存在。
 つまり、トルコはグルド人たちが自国内にクルド人国家をつくることを恐れ、対ISへの空爆といいながら、10個の爆弾のうちの9発はクルド人居住地区に落としている」
 とも。

 さらにいえば、トルコは、同じイスラム国家ではあっても「シーア派」のイランが勢力を伸ばしてくることを警戒し、それならば、同じ「スンニ派」であるISの方がましだと考えているのだそうだ。
 だから、表向きは欧米と歩調を合わせているようなポーズを取りながら、決してISを殲滅するところまでは追い込まない方針なのだという。

 ISよりもイランの膨張の方を警戒しているのは、サウジアラビアも同じ。
 サウジアラビアもまたトルコと同じ「スンニ派」の国家であるが、彼らも、不倶戴天の敵である「シーア派」のイランより、同じ「スンニ派」のISの方がましと思っている。
 
 だから、中東では、すでにIS問題などをスルーして、「スンニ派」と「シーア派」というイスラム教世界の宗派戦争の方に人々の意識がシフトしているらしいのだ。

 では、「シーア派」の代表的国家であるイランというのは、どういう国なのか?
 
 
イスラム圏で台頭してきている古代帝国復活の夢
 
 イラン人の心の奥底には、自分たちはかつて中東から東ヨーロッパ・北アフリカまで支配した「ペルシャ帝国」の末裔であるというプライドがある。
 ペルシャ帝国といえば、古代社会において、ヨーロッパのギリシャやローマをしのぐ版図を持ち、相当高い文化レベルを構築した国。同じ中東国家であっても、サウジアラビアのような “ラクダに乗った遊牧民(ベドウィン)” なんかとは出自が違うという自負がある。

 そのイランに対抗するもうひとつの大きな勢力が(前述した)トルコ。
 トルコ民族も、15~17世紀にかけて、東ヨーロッパ、西アジア、北アフリカに広大な版図を広げていたオスマン帝国の末裔なのだ。
 だから、トルコ人にも、「欧米列強何するものぞ !」というプライドがある。

 こういう古代~近世に反映した大帝国たちが昔の夢を再びかかげて中東で覇を競うことになったわけ。
 このあたり、日本人にはなかなか理解できない複雑なイスラム国家の歴史問題が絡んでいる。
 
 
トランプ候補は日本の橋下徹にも似ている
 
 目をアメリカに転じて、今の大統領選を見た場合、佐藤優氏たちにとって、ドナルド・トランプ候補というのは、どういう人物に映っているのか。

 キャラクター的にいうと、日本の橋下徹に似ているという。
 歯に衣を着せぬ暴言でメディアの注目を集め、機転の利いた話術で大衆を扇動していくタイプの政治家という意味なのだろう。

 その彼が、もしアメリカの大統領になったとしたら?

 「黄色い日本人を守るために、なんで白人である俺たちアメリカ人が高い軍事費を負担して日本にいなきゃならないんだ?」
 ということを言い続けている人だから、アメリカ軍は沖縄基地から引き上げることに躊躇(ちゅうちょ)しないだろう。
 そうなると、ある意味で、辺野古(へのこ)問題など全部解決してしまう。

 基本的にトランプ氏は、アメリカさえよければ他の国々はどうなってもかまわないという発想の持ち主だから、アメリカ人の身勝手な欲望を “正義” という言葉で正当化する。
 だから、世界情勢とか国際政治など考えたこともない支持者にはすごくウケがいい。
  
 
「ニューヨークって外国だろ?」とトランプ支持者は思っている
 
 佐藤優氏は、トランプ支持者たちのプロフィールをこう紹介する。
 
 「(特に南部のトランプ支持者たちは)、ショッピングモールで3リットルのレギュラーコーラをペットボトルで飲みつつ、大量のポテトチップスを食べ、UFOの存在を信じ、『この前、いつ外国に行ったのか?』と聞かれると、『3年前にニューヨークに行ったかな』と答える。アメリカは『ユナイテッド・ステーツ』の国だから、彼らはニューヨークはもう別の国だと思っている」

 佐藤氏の観測は半分はジョークであるが、実態もそんなものだろうと思っているようだ。
 トランプ支持者の多くは、ある意味では純朴で敬虔なプロテスタントである。
 つまり、人間は神様が創ったものであり、けっして猿なんかから進化したものではない、と確信している。
 
 だから、基本的に “猿に近い東洋人” は生理的に嫌いだし、キリスト教原理主義的な発想が強いから、同じ一神教でも、イスラム教には警戒心を持っている。
 とにかく、見ている世界が狭い。
 もっとも、テレビでしか海を見たことがない人が大半だろうから、無理もないかもしれない。 
 
 
金正恩には原爆と水爆の違いなど分からない(?)
 
 いま世界の注目を集めている北朝鮮という国家についてはどうか。
 世界のメディアは、北朝鮮のアピールをそのまま信じ、北朝鮮がついに「原爆と水爆をともに保有する国家になった」と伝えているが、それって、どのくらい精度の高い情報なのか。

 佐藤氏は「インテリジェンス」という観点で、ロシアの報道などを丹念に裏読みしながら、金正恩(キム・ジョンウン)自身が、実は原爆と水爆の違いなど知らないのではないか? という見方を提示する。

 ここから先は、佐藤氏の推測をそのまま鵜呑みにするのは無理があるような気もするのだが、彼の発言の骨子だけ紹介する。

 「金正恩の取り巻き幹部たちにすれば、実際に水爆を開発することよりも、金正恩に『水爆が完成した』と思わせることの方が大事。
 金正恩は原爆と水爆の技術的・科学的違いなどよくわからないのだから、とにかく大きな爆弾を爆発させて、『成功しました、水爆が完成しました』と報告して、自分たちのクビが飛んでしまう状況をなんとか回避したかったのだろう」
 
 佐藤氏は、つけ加える。
 「(そういう大将を騙すような行為は)北朝鮮の幹部だけが考えたものではなく、日本の一流企業においても、対前年度比でプラスを出さなければいけないからと『チャレンジしろ、工夫しろ』と社長にハッパをかけられて、数字が足りないからといって、幹部たちが粉飾決算するのにも似ている」

 まぁ、面白い話ではあるが、ほんとうはどうなんだろう?
 「水爆が完成した」と、金正恩の取り巻き連中がウソをついたとしても、その配下には膨大な数の科学者集団がいるわけで、どこからかウソが漏れるだろう。
 責任を追及されたときは死罪になるわけだから、幹部連中だって、そんな危ない橋は渡らないのではないか。

 ま、真相は分からないのだけれど、国際情勢も裏からみると、なかなか興味深いものがいっぱい見えてくる。
 
 佐藤優氏らの話は、ほんとうに面白い !
 しかし、面白い裏話というのは、時として、うさん臭く思えたりすることもある。
 「騙されてもいいや」という余裕を持たないと、こういう話は楽しめない。
    
 

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