トランプやクルーズの台頭で、アメリカの銃はなくならない

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 アメリカの大統領選が、こんなにも日本で話題になったことは、これまでなかったのではなかろうか。
 その最大の要因は、やはりドナルド・トランプ氏という候補者の存在が大きい。

 ま、ニュースネタとして面白いのである。
 実際に、彼が大統領になったら日本の対米外交などはガラリと変わらざるを得ないだろうから、政府与党や防衛省は大あわてらしいけれど、現段階では、まだトランプが大統領になる可能性は半々だとかいうことで、一般人は今のところ “対岸の火事” 気分でテレビ報道を見ていられる。
 で、ニュースに彼の映像が出て来るたびに、「今度はどんなバカげたことを言うのだろう?」と期待(?)を込めて画面に見入ってしまう。

 … 基本的に、彼はアメリカ国民にとってもエンターテイナーなんだろうと思う。
 おバカで、おマヌケな発言を繰り返しても、どこかで、“それは芸なんだ” と割り切っているような計算も感じられる。
 そのあたり、案外と常識人的なところもあるようで、「困った人」ではあるが、そんなに「怖い人」ではない。

 怖いのは、むしろトランプ氏の対抗馬といわれるテッド・クルーズ候補の方。 
 テレビの報道などによると、彼は、宗教的には “聖書の言葉に忠実な福音派” と呼ばれる信仰体系を持つ人だといわれている。

 つまり、ダーウィンの進化論なんか信じない !
 人間は神が創ったもので、断じてサルなんかから進化したものではない !
 同性婚などもってのほか !
 妊娠中絶などとんでもない ! 
 
 一種の “キリスト教原理主義” といえるもので、心情的には白人至上主義。アメリカの共和党にはこういう気質を持った人が多い。
 で、クルーズ氏自身がそういう信仰体系の持ち主であるばかりでなく、全米に数百万の支持者を持っているという、この福音派宗教支持者の層を掘り起こそうとしているとか。

 ま、そういう政治感覚は、日本人にはちょっと違和感があるのだけれど、そのこと以上に違和感があるのは、今オバマ政権が取り組もうとしている銃規制などにまっこうから反対をしているところ。
 
 
マシンガンにベーコンを巻くクルーズ
 
 テレビでクルーズ候補がつくったといわれる動画サイトが紹介されていたのだが、それを観ていて、ちょっとブルった。
 射撃場で、クルーズ氏がマシンガンを撃つ動画なのだが、なんと銃を撃つ前に、その銃身にベーコンを巻くのである。

 そして、ガンガンガン ! とぶっ放して、熱くなった銃身で焼けたベーコンをクルーズ氏が口に運び、「マシンガン ベーコン !」とうなずいてニッコリするというわけ。

 人殺しの道具で焼いたベーコンを、「うまい」と頬張るセンスが異様。
 ジョークのつもりなんだろうけれど、まったく笑えない。
 メッセージが怖いという以前に、何の知性も工夫も感じられないコンセプトのお粗末さが怖いと思った。

 トランプ対クルーズ。
 この2人が共和党の指名を争うなんて、もう共和党は末期的なんじゃないか?
 つーことは、アメリカそのものが末期的なんじゃないか?

 トランプ氏もクルーズ氏も、共和党の大票田である「全米ライフル協会」から積極的支持を獲得しているのだから、現在オバマ大統領あたりが口にしている「銃規制」の議題などが議会に登ることもあるまい。

 あるテレビ報道を観ていたら、アメリカでは、オバマ大統領が「銃規制」を提案にするたびに、銃の売上げが上がっているという。「規制されたら買いにくくなるから今のうちに買っておこう」と考える人々が増えるらしいのだ。
 だから、ある銃砲店の店長は、「オバマが騒いでくれるほど銃が売れるので助かる。彼は全米一のトップセールスマンだ」
 と皮肉交じりに喜ぶくらいだ。
 
 
アメリカで銃を買いたがる市民の心情
 
 「銃社会」をテーマにしたテレビ番組では、現在アメリカに流布している銃の数は約3億丁だ伝えていた。つまり国民1人が1丁ずつ拳銃を保有しているということになる。

▼ アメリカ映画には銃を優雅に撃つ女優がたくさん登場する

 報道では、アメリカの銃砲店に普通の女性が買いに来るシーンを取材していた。
 「あら、こっちの銃のデザインの方が素敵ね」と女性。
 「ええ、最新型の拳銃で、小さくても威力は増してます」と店員。
 日本人記者が、その女性に、「なぜ銃を買うのですか?」とインタビューしたところ、 
 「だって、もし暴漢に襲われたら、銃を持っていないと危ないでしょ?」
 という答がごく普通に返ってくるぐらいだから、この国の銃が減っていくことはなさそうだ。

 トランプ氏やクルーズ氏は、その銃の国内市場をさらに拡大しようとしている。
 とにかく、この2人の台頭で、アメリカが物騒な国になりそうな気配は濃厚だ。
  
 
CIAやFBI の暗殺の歴史
 
 しかし、アメリカが物騒な国であったことは、今に始まったことでもないかもしれない。
 NHKで、『新・映像の世紀』という番組を連続放映していたが、そのなかの「世界は嘘と秘密に覆われた」という章によると、冷戦の時代に、アメリカの “裏組織” がとんでもないことをやっていたという極秘資料が、最近になって次々と公開されたという。
 

 
 番組では、冷戦時代に、アメリカのFBI (国内捜査機関) とCIA(海外諜報機関)が、自分たちの組織の利権を拡大するために、世界各国の反米政権の要人暗殺やクーデター計画などをこっそりと進めていたことを、内部資料を探り出すことで明らかにした。(余談だが、現在のロシアのプーチン政権も似たようなことをしていそうだ)
 
 で、当時のアメリカのCIA・FBI は、よその国の反米政権をつぶそうとしただけでなく、自国の大統領や政治家・思想家・芸術家であっても、意にそぐわない思想を表明した者には容赦なく暗殺者を差し向けている。
 ケネディ兄弟やキング牧師の暗殺、さらにジョン・レノンの殺害なども、彼らの仕業である疑いは濃い。
  
 トランプ氏やクルーズ氏は、アメリカのそういう暗黒史をもって、「アメリカが偉大だった時代」だという。
 「その時代を取り戻すことが自分の使命だ」とトランプ氏などは公言する。
 
 彼らがいう「偉大なアメリカの時代」というのは、アメリカが第二次大戦に勝利してから、その後の冷戦を勝ち抜くためにCIAやFBI が暗躍した「謀略の時代」を指す。
 
 そして、そういう時代のアメリカの繁栄が、軍事産業の成長によってもたらされてきたことにあえて言及しないか、無視している。
  
  
世界から「戦争」がなくならない理由は
軍事産業が世界経済を支えているからだ

 
 アメリカの軍事産業は、その規模でも売上げ高でも世界的に突出している。
 たとえば、世界の航空機産業のトップを行くロッキード社。
 日本人からみると、この会社は、民間飛行機をつくっている平和産業のように思えるが、(チラッと聞いた話だから間違っていたらご免なさいだが)、この会社の造っている飛行機の7割は、ステルス戦闘機などに代表される軍事用飛行機だという。
 
 同企業は、現在アメリカ国防総省&CIAと特別な関係を持ちながら、航空機のみならず、原子力潜水艦からミサイル、軍事衛星まで開発・製造しているとか。

 特に、「ハッブル」などの天体望遠鏡や宇宙通信システムの開発などは、軍需と民需の分け目がなくなっており、それだけアメリカの広大な産業を支える原動力となっている。

 確か池上彰が解説するテレビ番組であったと思うが、「地球からなぜ戦争がなくならないのか?」という特番をやっていたのを観たことがある。
 答は簡単。
 世界の産業構造が、もう軍事産業を抜きには語れなくなってきたからだ。
 英米を筆頭とする先進国では、産業上の要請から、この世から “戦争” が消えてしまうと困るのだ。

 その番組では、旧ソ連で開発された自動小銃のカラシニコフが、「世界で最も多く使われた軍用銃」として、ギネスの世界記録を更新し続けていることも報道していた。

 構造はシンプルながら、砂漠やジャングルで使用しても、壊れにくく、故障しにくく、扱いやすく、確実に動作するという特徴を持ったカラシニコフは、旧ソ連内で大量生産されたばかりでなく、製造も簡単であったために、世界中にそのコピーが蔓延した。

 劣悪な環境でも模倣品が簡単に製造できることから、単価も安くなり、アフリカや中東の紛争地域ではもどんどん市場を広げ、子供でも簡単に扱えるため、アフリカの内戦地域などではカラシニコフを携えた少年兵が大量に編成された。

 現在、このカラシニコフは、先進国の核兵器保有が、事実上の核戦争抑止力になっている地球上において、実戦で使われる「世界最小の大量破壊兵器」といわれているらしい。
  
 
なぜ、武器は美しいの?
 
 「武器はカネになる」
 そういう思いが人々の意識から消えない以上。「この地球上から戦争がなくなることはありえない」と池上彰が解説するテレビ番組は伝える。

 困ったことではある。
 …… が、番組で紹介されていたいろいろな銃器を見ているうちに、どれも(造形的には)その形がすごく美しいことに気がついた。
 「人殺し」の道具として洗練されていけばいくほど、そのデザインが美しくなっていくのはなぜ?

 それは、見ている我々の意識がいびつなの?
 それとも、兵器というのは、そもそもが「人の血を吸えば吸うほど美しくなっていく」ものなの?

 テレビの報道で、アメリカの銃砲店に銃を買いに来た一般女性が、まるでジュエリーでも眺めるように、新しい銃のデザインにうっとりしていた表情が生々しくよみがえる。
   
 
   
関連記事 「トランプ候補の出現によるアメリカン・ドリームの終焉」
 
参考記事 「竹中先生、これからの『世界経済』について本音を話していいですか?」
   
 

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