エグイ曲を聞くと興奮する

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 エグイ曲を聞くと、異常に興奮する。
 血が騒ぐというやつだ。
 
 昔 … 仕事で、会社のバンを運転しながら、夜の常磐道を降りてきたときのことだ。
 もう少しで首都高に入るというときに、カーラジオが不穏な曲を流し始めた。

 「♪ 俺の話を聞けぇ~ ‼」

 嗄れ声の中年男が叫んでいる。

 「♪ 5分だけでもいい」
 と男は懇願し、最後は、
 「♪ 2分だけでもいい」
 と、どんどん弱気になっていく。

 主人公はスカジャンを着てバイクに乗っている不良らしいが、凄んだツッパリ具合とは裏腹な、愚かで、気弱で、泣きそうになっている風情も漂ってくる。

 ギャグなのかシリアスなのか分からないという、主人公の微妙な立ち位置が新鮮で、音楽が終わってからも、肌に焼きゴテを押しつけられたように、歌のインパクトがしばらく消えることがなかった。

 2002年頃。
 クレイジーケンバンドの『タイガー&ドラゴン』を聞いた最初の体験だった。
 もちろん、曲を流し終えたカーラジオは、もう曲名もアーチスト名も伝えてくれなかった。

 頼りは、「♪ 俺の話を聞け ~ ‼」というフレーズのみ。

 翌日、吉祥寺のCD屋 … あの頃はまだ街にCD屋があった ……そのCD屋を片っ端に回り、店員を捕まえては、「♪ 俺の話を聞け~ ‼」 と声に出して歌った。
 「…… っていう歌を知りませんか?」
 と尋ねるのだが、どの店員も、
 「曲名とか、歌手名とか分かりませんかねぇ?」
 と聞き直してくるだけで、ラチがあかない。

 3軒目のCD屋の店員だけが、じっと私の歌に耳を傾けてくれたのち、
 「それって、…… もしかしたら、クレイジーケンバンドかな …」
 とつぶやいてくれた。

 で、持ってきてくれたのが下のジャケット。

 ウヮアオ ‼
 これこれ ! これに違いない。
 曲を聞かなくても、直感的にこのCDだと思った。

 エグイ ‼
 ジャケットの下品さ、気色悪さが、もう歌の内容を示唆していた。
 一応、視聴させてもらって、すぐ購入。
 家に帰って、完璧に練習し、その翌日ぐらいにはカミさんを連れて、カラオケスナックに歌いに行った。

▼ クレイジーケンバンド 『タイガー&ドラゴン』

  
 この歌の妙味は、歌っている主人公の男と、相手になっている女との距離感にある。

 男は告げる。
 「俺の話を聞けぇ。5分だけでもいい。貸した金のことなど、どうでもいいから」

 しかし、女はそんな男に対して、(おそらく)無表情な視線を向けるだけ。
 男はなおも女に迫る。
 「お前だけに、本当のことを話すから」

 男は何を話そうとするのか。
 「お前が好きだ」という告白なのか。
 それとも、「不良から足を洗うつもりだ」という決意か。
 
 もしかしたら、「俺は日本人じゃないんだ」などというヘビーなカミングアウトかもしれないし、場合によっては、覚醒剤の密輸情報なんかに関するシビアな話かもしれない。
 
 しかし、いずれにせよ、男の思いほどには、女がその話に興味をもっていない気配が歌から伝わってくる。
 女は、男の本音など、ほんとうは聞きたくない。
 そんな重いものをいまさら背負いたくない。

 そのため、男はますます強く「俺の話を聞けぇ!」と叫ばざるを得なくなる。
 2回目のサビでは、なんと「俺の、俺の、俺の … 」と、「俺」が3連呼されるのだが、3連呼しなければならないほど、男が自信を保ち得なくなっていく状況がそこに描かれている。

 うまい ‼
 絶妙な歌詞だ。

 女ともう心が通い合うことがないと悟った主人公は、しかたなく海を見つめる。
 だが、それは「電気クラゲが浮かぶ、どす黒く澱んだ海」でしかない。

 絶望的な状況を暗示しておきながら、主人公を破局の寸前で凍らせたまま “エンド・タイトル” が落ちてくる。
 昭和のグループサウンド風のチープなエンディングで、曲が鮮やかにストンと終了。

 これは紛れもない「文学」である。
 
 
 こういうエグイ曲が大好き。
 YOU TUBEで、バーボン・ストリート・バンドの『極道パワー』を見つけたときも興奮した。


 
 歌の中に出てくる男は、まさに “極道” 。
 トラックよりでっかい外車でやってくる町の鼻つまみ男。

 その怖さと嫌らしさが徹底的に描かれているのだが、そこには、禍々しいパワーだけが秘めている “闇の輝き” に対する賛美がある。

 歌詞はこんな感じだ。

 ♪ 若い野郎をけ散らす、あいつは町の嫌われ者さ
   若い女を冷やかす、あいつは町の鼻つまみ
   誰もとがめられない、怖いあいつの極道パワー

   あいつはトラックよりでっかい外車でやってくる
   胸の金バッチだ、背中の入れ墨か … (聞き取り不能)
   畳の上じゃ死ねない家業なのに

 結局、この歌の良さは、きわめてストレートなブルース進行に基づいたブルースロックであるということに尽きる。
 「音がカッコいい ‼」
 それがこの曲のすべてである。
 
 
 カッコよさでは、『極道パワー』の上を行くかもしれないサウンドを聞かせてくれるのが、『ヘイ・ユー・ブルース』。
 1973年に俳優の左とん平が吹き込んだ和製 “New Soul Music ”。


 
 エグイ曲の極致にありながら、サウンドとしては今聞いてもなんともカッコいい完璧な70年代R&Bテイストの曲である。
 プロデュースはミッキー・カーティス。アレンジは深町純。

 73年といえば、世界的にソウルミュージックの嵐が吹き荒れた時代。
 このサウンドには、そういう時代のエッセンスが凝縮している。

 左とん平バージョンが有名だが、ここでは大槻ケンヂバージョンを紹介。

 「歌」というよりも、「語り」で、しかもその主張は、いかにも70年代風のプロテクトソング的匂いを濃厚に秘めている。
 そうとう “臭い” 歌詞だ。

 そういう意味で、「エグイ」という言葉がストレートに使えそうな曲なのだが、サウンドは最高 ‼
 タイトなリズムセクションと華麗なホーンの絡みが絶妙。
 和風ソウルもいいところまで来ているな … という印象を受ける。
  
 
 エグイ曲といえば、やっぱりクレイジーケンバンドがいちばんその雰囲気をつかむのがうまい。
 次に紹介するのは、『タイガー&ドラゴン』のアルバムに紹介されていた『ヨコスカンショック』。

 

 サウンドとしては、こっちの方が『タイガー&ドラゴン』よりカッコいい。
 なんてって、曲調がもろジェームズ・ブラウンだもんね。

 では、JBサウンドに乗ったエグイ日本語の傑作R&B『ヨコスカン・ショック』を
どうぞ。

 歌詞は次のとおり。

 紫のアクリルのドア。
 その向こうはバリヤバ  アナザーワールド。
 焼け焦げた臭いのする空調。
 厚化粧の女の衣装はショッキング・ピンク
 オレンジ色の水と油がグニョグニョる
 逆光線の渦のその向こうに
 キノコ雲した黒いヘアーがメラメラと燃える。
 
 Shock ! Yokosukan Shock !

 人間歌謡、人間海洋、人間太陽、人間だよ

 Shock ! Yokosukan Shock !

 人間模様、人間供養、人間多様、人間迷う 

 Shock ! Yokosukan Shock !

 手垢まみれの鉄のポールに
 絡まりのけ反るアジアの肉体
 唇型のアクリルのステージ
 見ろよ ! 女の衣装は汗だけ
 野獣のような匂いをさせた
 熱い視線がそこに集まる
 ジャングルの火事、黒いヘアーがメラメラと燃える
 
 Shock ! Yokosukan Shock !
 
 窓越しに光る日米パトランプ
 表通りがやけに騒がしい
 赤とブルーの光の波間に
 血まみれ顔のブラザーがほほ笑む
 ちょうどその頃、浦賀水道では
 国籍不明の潜水艦がヌルッと侵入
 てなガセネタが口から口へ、耳から耳へ
 
 Shock ! Yokosukan Shock !
 
 人間火山、人間登山、人間無残、人間オゾン
 
 Shock ! Yokosukan Shock !
 
 人間魚雷、人間如来、人間古来、人間渡来
 
 Shock ! Yokosukan Shock !
 
 

カテゴリー: 音楽   パーマリンク

エグイ曲を聞くと興奮する への2件のコメント

    • 町田 より:

      >わたなべたつお さん、ようこそ
      イヒヒですねぇ、良いねぇ。立派にエグイです ‼
      怒髪天。
      グループ名も立派にエグイですね。
      それに映像が圧倒的に面白い !

      テイストは同じですよ。
      目指すべきものは似ている。

      ただ、サウンド的に、横山剣とか左とん平とかのエグサの比べると、世代の違いがありそうですね。
      横山剣世代には、ソウルとかロカビリーのテイストがありますね。

      それに対して、怒髪天には良い意味での現代的な軽さがありますね。
      やっぱりパンクとかニューウェーブのロックを経験してきた世代という感じかな。
       

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