仲良し親子はなぜ生まれるのか?

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  「最近の若者たちが変わってきている」
 というような話を、あちらこちらで聞くようになった。
 
 何がどう変わってきたのか?

 「仲良し親子が増えてきた」
 と、みな口をそろえていう。

 BS-TBSの『外国人記者は見た ! 日本 in ザ・ワールド』 という番組(2016年 9月 7日)では、日本で取材活動を続けている外国人ジャーナリストたちが、「日本の親子関係」について語り合うトーク番組が放映されていた。

 途中から観たために、話の流れをよくつかむことができなかったが、議論するためのデータとして提出された調査が面白かった。

 まず、「親と一緒の外出に抵抗がない」と答えた15~19歳の若者の比率は次のとおり。
 男性67.8%
 女性77.0%

 次に、悩んだときの相談相手が母親であると答えた15~19歳の若者は、次のとおり。
 男性17.3%
 女性28.5%。
 (いずれも明治安田生命 生活福祉研究所の2016年 3月調査より)
 
 
日本の親子関係に何が起こっているのか

 この二つのデータを参考にしながら、日本の親子関係の親密さが何に由来するのか、また諸外国に比べてどうなのか、ということが議題になった。
 緻密な分析にまでは至らなかったが、外国人記者たちから見ると、やはり最近の日本の親子は、諸外国に比べてもベタベタしすぎるらしい。
  
 同じようなテーマのトーク番組(BSフジ「プライムニュース」)がその3週間前ぐらいにも行われていて、そこで語られた内容も、母親への依存度を強めている最近の “ママっ子男子” が取り上げられていた。(これについては、以前このブログでも記事にしたことがある)

 60歳を超えた私などからすると、思春期の頃は、親と一緒に外出するということが恥ずかしくてたまらないものだった。
 親と並んで歩いているところを友達などに見られたら、笑い者になってしまうという恐れがあったのだ。
 だから、小学校の高学年ぐらいになると、友人たちもみな一様に、親に対してわざとつれない態度を採るようになっていた。

 それが若者の普遍的な心理だとずっと思い込んできたから、最近の青年たちが母親とのデートを楽しみ、その様子をSNSなどを通じて友人たちに流すという話を聞いたときはびっくりした。
 
 しかし、最近の調査によると、「親との外出に抵抗がない」と答えた若者たちが、男性も女性も約7割いるという。

 若者たちとその親世代の間に、今いったい何が起ころうとしているのだろうか。

 BSフジの『プライムニュース』においては、博報堂の若者研究所の原田曜平氏(写真下)が、最近の若者が親と仲の良い関係を結ぼうとしているのは、一種の “経済活動” だと言っていた。


 
 つまり、長い不景気の時代を経験し、経済的に追い詰められてきた現代の若者は、安定した生活を確保するために、とりあえず「親にパラサイトして窮状をしのごう」としているのだという。

 一方、親も、強く子供に自立をうながすような態度を採れなくなってきているとか。
 というのは、今の親たちは、働き盛りの頃にバブル崩壊を経験し、リストラなどの憂き目に遭った人も多いので、子供に強いことを言えなくなってきた、という理由が一つ。

 もう一つは、子供によっては、自立するのが困難な社会状況も生まれつつあるという。
 
 
子供がホームレスになってしまう世の中

 博報堂の原田氏とともに、『プライム・ニュース』に出演した信田さよ子氏(臨床心理士 原宿カウンセリングセンター)によると、
 「引きこもりがちの子供と向き合う親から相談を受けた場合、昔は “自立しろ” といって子供を家から追い出してしまえばすべてが解決した。
 しかし、現在は、子供を無理やり家から追い出すとホームレスになってしまう時代になりつつある。
 実際に、先進国ではホームレスが若年化してきている。アメリカなどでは、親の援助も社会保障もないまま自立させてしまうと、若者が本当にホームレスになってしまう。日本もそういう状況に近づきつつある」
 とのこと。

 そのため、最近はいつまで経っても親と同居して、家賃や食費を親に依存している若者が増えつつあるのだそうだ。
 ここ数年の話だが、親と同居している未婚の子供たちの数は、20~34歳で48.9%(2012年調べ)、35~44歳で16.7%(2014年調べ)。

 しかし、それを、一概に “子供の甘え” とはいえないとも。
 むしろ、子供たちがしたたかな計算をしている結果だという声も。

 精神科医の香山リカ氏は、最近の若者は損得意識がきわめて高くなっていると指摘する(日経トレンディネット 2013年 4月11日)。
 
 
尾崎豊の歌が理解できない現代っ子

 香山氏は、これまで大学の授業で、毎年生徒たちに尾崎豊の歌を聞かせ、その感想を尋ねてきた。

▼ 溢れる才能と波乱万丈な生き方で、80年代の若者のカリスマとなった尾崎豊。しかし、26歳の若さで突然死を迎える

 尾崎は、「盗んだバイクで走りだす」(15の夜)、「夜の校舎の窓ガラスを壊して回る」(卒業)というように、教師や親に反抗する孤独な若者の心を描くことで、1980年代の若者たちから絶大な支持を得た。

 しかし、今の若者たちは、その尾崎豊の歌を聞いても、
 「なんでそんな損なことをするのか、理解できない」
 というのだそうだ。

 「彼(尾崎豊)は、歌もうまいし、ルックスも良いのだから、もっと賢く生きられたはず。
 なのに、なぜ社会に逆らうような損なメッセージを掲げ、損な生き方をしたのか分からない」

 そういう感想を述べる学生たちに、自分の生活方針をしゃべらせると、「親や社会に反発しても一文の得にもならない」という答が当然のように返ってくるとか。

 それを聞いて、香山リカ氏は、
 「(自分には)お金儲けにとらわれ過ぎるのはあさましいという感覚があったが、今の若者はお金のことをきちんと考え、損をしない生き方をすごく慎重に選んでいるということが分かった」
 とも。
 
 それはやはり、金融庁が小学生にお金の教育をするような時代になってきて、子供たちの間にも、ごく自然に経済感覚が身につくようになってきたからだという。

 そういう時代になると、親でも親戚でも、自分が有利に立てるコネは積極的に利用した方がよいという考えを持つ若者が増えてくるのも当たり前で、利用できる人間関係を得たときは、下手に逆らったり否定したりすると損だという空気が広がるのも当然だという。

 こういう書き方をすると、なんだか今の若者は打算的でずるいという印象が生まれてしまうが、言葉を変えていえば、彼らは「主観にとらわれることなく他人を平等に評価し、協調性も高い」ということになる。
 
 
親と子供が一緒に消費できる商品が強い

 博報堂の原田氏も、「尾崎豊的な生き方は、もう過去のものになっている」という。
 「今の時代は、昔風のヤンキーも姿を消して、マイルドヤンキーになりつつあるし、暴走族も激減している。親や社会に対して突っ張るというのは、もうファッションとしてもイケていないという時代になってきた」とも。

 そういう若者のトレンドになっているのが、“ママっ子男子” 。
 原田氏は、広告系企業の研究所にいるだけあって、このママっ子男子を消費の起爆剤として考えようとしているようだ。

 彼はいう。
 「若い人の消費が伸びないという声はあちらこちらで聞くが、一方では親と子供が一体となって使う商品は強いといわれている。たとえば自動車とか住宅。高額商品ではあっても、親と子供が共同で使えることをアピールできる商品は売れる」
 
 もちろん財布のヒモを緩めるのは親の方であるが、なかでも「孫と遊べる」商品は強いとか。
 マーケットプランナーのなかには、「高齢層が増えていく将来は、3世代消費がメガトレンドになる」という人もいる。 
 もちろん、そのためには財政再建という難しい課題が政府に残されることになるが。
 
 
関連記事 「若者の消費が拡大しない理由」
 
参考記事 「シニアマーケットはなぜ停滞するのか」
 
 

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