ギャラクシーというキャンピングカーの思い出 第2回

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 ○月○日

 欲しいキャンピングカーとして、とりあえずギャラクシーに狙いを定め、販売しているグローバルまで現車を見に行くことにした。
 
 グローバル本社は当時愛知県の豊橋にあったが、幸いなことに、東京の国立に東京ショールームがあった。
 車に乗っても、自分の家から30分ぐらいの場所だったので、ある日曜日、カミさんと子供を連れてドライブがてらに訪れることにした。

▼ 昔東京・国立にあった 「グローバル東京展示場」

 出たばかりのコンポⅡとギャラクシーの間に、グローバル国立展示場の田代さん(現・タコス社長)が立っていた。

▼ 現 「TACOS」 社長の田代さん(若い頃)

 私は、ちょっとだけキャンピングカーを知っているごく普通のお客を装って、田代さんの前に立ち、
 「なるほど、これが新しいコンポⅡね。あ、窓が小さくなったんだ。バンク部は今度はベッドになったのか … 」
 … なんて、(実は記事を書いているからよく知っていたけれど) “素人の客” に成りすまして楽しんでいた。

 そうしたら、田代さんに、
 「ひょっとしたら、『キャンパーニュース』の町田さん?」
 と見破られてしまった。

 あっけなく “素人の客遊び” は終わった。

 「実はギャラクシーが欲しいと思って見にきたんです」
 そう言うと、「あ、ぜひ!」と、田代さんの顔が輝いた。

 「値段についてはいろいろ考えさせてもらいます。だからぜひ! できれば試乗記なんか『キャンパーニュース』に連載してもらえれば … 」
 田代さんがそう言う。

 試乗記なんか書くのはやぶさかではない。
 こっちだって書きたい。
 だけど、まだ自分のキャンピングカーに乗ったこともなければ、使ったこともない。
 何をどう書けばいいの? … と、こちらが聞きたくなってしまうのをグッとこらえて、「試乗期はまぁ、そのうちに … 」と口を濁す。

 「ギャラクシーを買いたい気持ちはもちろんあるのですが、いろいろ解決しなければならない問題があって、もう少し時間をください」

 とりあえず、その日そういって立ち去った。
 
 
 購入資金の問題
 駐車場の問題

 いざとなると、やはりハードルは高い。

 ま、金はなんとかなる。
 それまでアパート暮らしを続けていたが、その頃からアパートを引き払い、実家に潜り込んで、使い手のいなかった2階を改造して暮らすようになっていたから、アパートの家賃が浮くようになったのだ。

 それまでは、月10万の家賃を右から左へと払っていたわけだから、それを思えば、月々10万までのローンなら支払う自信はある。

 問題は駐車場だった。
 これがない。
 5m×2mの枠を超える駐車場が近くにない。

 やっぱり無理かな … 。
 そのときは、それほど熱心に駐車場を探す気にはならなかった。

 車両価格470万なり … という買い物は、(当時の自分にとっては、… 今でも変わらないが)、けっこう冒険である。
 それだけまとまった金が出ていくことに対して、やはり不安の方が大きい。

 だから、1日のうちに、「買おう!」という気持ちの高揚と、「無理だよ」という諦めの境地が交互に訪れる。

 諦めの境地になりかけたとき、「駐車場がない」ということが “冒険” を避ける口実になりそうで、秘かにホッとしたりもした。

 つまり、「仕事として必要だ!」と、大見得を切ってみたものの、ある程度まとまった金が出ていくということは、やはり人を不安に気持ちに落とし込むものだ。

 しばらく様子見 …… 。
 別に自分がオーナーにならなくたって、キャンピングカーの記事は書ける。
 そういう気分になることもあったし、事実その通りだった。
 
 
 ○月○日

 それからしばらく経った。
 2月の晴海のキャンピングカーショーで、また田代さんに会った。
 (当時ビックサイトでも幕張でもキャンピングカーショーはなかった)

 展示してあるギャラクシーの中で、田代さんと雑談した。

 「買う気になりました?」
 … なんていう話は全然出ない。
 売る気があんのかなぁ … とこっちが心配になってしまう。

 雑談が終わって、田代さんと別れ、遠くからギャラクシーを振り返った。

 そのとき、ふと、 「あ、キャンピングカーって美しい乗り物だな」とはじめて思った。
 それまでは、どうしても生活の匂いを引きずる所帯じみた車という印象を吹っ切れなかった。

 外形デザインも、この時代は「機能優先」が露骨に伝わる無骨なものが多く、シルエットそのものをうっとり眺めるようなものは、まだ誕生していなかった。

 しかし、その日はキャンピングカーが違って感じられた。
 特に、初春の夕暮れの光を浴びてたたずんでいたギャラクシーはとてもカッコよく見えた。
 壁面の圧倒的ボリュームが、なんだかやたら新鮮に見えるのだ。
 乗用車とも違い、ただのオフローダーとも違う不思議な造形美がそこに生まれているように感じた。
 すべて格好から入る私には、もうそれだけで十分だった。

▼ ギャラクシーⅢ

 やっぱりギャラクシーを買うベェ! 

 その日から、秘かに本腰を入れて購入を検討し始めた。

 まず、サイズの調査。
 全幅が2mを超えると(ギャラクシーは2m10だ)、これは一般道を運転したときどんな感じなのか。
 全長が5mを超えると(ギャラクシーは5m60だ)、右左折のときに、どれだけリヤのオーバーハングが問題になるのか。
 
 そういうチェックポイントを、紙に書き出してみた。

 内装においても、しかり。
 ギャラクシーにはトイレ・シャワーが付いているが、それがどれだけ便利なものか(あるいはどれだけ不用のものか)、使うときはどんなふうに使うのか、その研究も必須項目。

 バックアイモニターだって、昼、夜間、それも照明の多いところ、少ないところで、見え方が違ってくる。
 明かりがまったく見えない田舎の山道でのバックは、はたしてどうなんだ?
 そんなことに思いめぐらしてみると、チェック項目は、どんどん増えていく。

 ○月○日

 3月。ギャラクシーの情報をもっと集めたくて国立のグローバル展示場に遊びに行った。
 偶然ギャラクシーの1号車のオーナーという人が来店していた。
 車検に出していたギャラクシーを引き取りに来たのだという。

 田代さんの説明によると、その人は、レコードジャケットの写真を専門に撮るカメラマンだという。

 年齢不詳。
 家族構成不詳。
 長髪のストレートヘアに、アゴヒゲ・クチヒゲ。
 どこか新興宗教の教祖っぽい雰囲気を漂わせた人だと思いながら、その人の話を聞いた。

 ギャラクシーの扱いでは、どこを気をつければいいか。

 彼曰く。
 やはり、リヤのオーバーハングが “災いの元” になるという。
 なにしろハンドルを切っていくと、はじめは車輪どおりにリヤも動いていくのだが、途中から突然キュっとケツを振るらしい。
 そのため、右左折のとき、隣の車線から飛び出そうとする車にケツを当ててしまうというのである。

 やっぱりこれだけの車体になると、そうとう気合いを入れて挑まないと移動はシンドイとか。
 またバックのときは、いちいち降りて後方を確認しなければならないという。

 バックアイモニターの話も出たが、その人は付けない方がいいという主義。
 なぜなら、付けると、いちいち降りて後方確認をするなどという作業が面倒くさくなり、かえって事故のもとになるという。

 たいへんなのは洗車とワックスがけ。
 やはり一日仕事になるそうだ。
 ワックスなど一回で一缶なくなる。洗車は風呂掃除用のモップを使うとか。

 悩みのタネはやはり駐車場問題で、あれだけの大きさを置かせてもらえる駐車場はなかなかないという。
 幸い、その人の場合は、100台置ける広大な駐車場を持つおおらかな地主の駐車場が探せたとか。
 料金は(当時)月4万円。

 それでも、そこを探すまで、いろいろな駐車場を転々とした。
 なにしろ現物を見ると、たいていの管理人は、「これは駄目だ!」と嫌な顔をする。

 そこでクルマを見せる前に「ハイラックスです」と嘘をついて借りてしまい、管理人が見て、眉をしかめたら、
 「ちょっと改造しちゃったから、少し後ろが変な形で … 」
 などといって、ボリボリ頭を掻きながらニコニコする作戦で通してきたという。

 ギャラクシーの利点はやっぱり4駆だという。
 多少のぬかるみでもスタックしてしまうキャンピングカーが多い中で、4WDのギャラクシーはまず安心。
 乗用車が上がれないようなぬかるんだ坂でも、この車はじわじわと登り詰めてしまうらしい。

 もうひとつのメリットは、後輪のダブルタイヤ。
 後輪四つのうち1本がパンクしても、とりあえずタイヤショップまでは、だましだまし走っていける、とカメラマン氏はいう。
 また、架装物や積載物の荷重を分散することになるので、タイヤ1本にかかる負担が少ない。

 このときは、無邪気に「ああ … なるほど」と思って聞いた。

 前回の記事でも書いたが、実はこのクルマの場合、そのダブルタイヤが問題だったのだ。
 
 架装重量の増大分を受けるために、グローバル独自で組んだダブルタイヤだったが、その改造のために、逆にアクスルシャフトに過度な負荷がかかり、シャフトが折れるという危険性を内包したクルマだったのだ。

 それによる事故もやがて起こるようになるのだが、このとき、まだ我々はそのことを知らない。

 基本的には、ベースシャシーの対荷重を無視して重量物をたくさん積載するような架装の問題に帰結するのだが、当時、まだそれによる事故も起こっておらず、国産ビルダーの「車両重量」に関する意識も低かった。

 だから、このときは、足回りを “増しリーフ” や強化ショックで補強するというような話題になって、そっちの方で盛り上がった。

 いま思うと、まだまだキャンピングカーの普及率も低かったのだ。
 ギャラクシーという車も、まだそれほど多く造られていなかった。
 当時のビルダーは、まだ展示車さえ十分に整えることができず、グローバルが東京で展示会を開くときは、かならずそのカメラマン氏の車両が展示会に借りだされたという。

 当日、その後の話はキャンピングカーにテレビをつけるかつけないかという議論になった。

 「テレビは邪道かもしれないですけど、子供のいる家庭ではテレビは必需品。子供たちに好きな番組を見させておけば、その時間帯だけでも親がのんびりできますし … 」
 という田代さんに対し、カメラマン氏は反論。

 「それは、親父のプロデュース能力がないということを告白しちゃったようなもの。だって、せっかく旅行して知らない景色を楽しめるのに、なぜテレビが必要なんですか? 
 俺なんかカメラが仕事でも、プライベートな旅行にカメラなんて持っていったことがないですよ」
 という。
 なるほど…と思えるような話が続いた。

 目当てのキャンピングカーを詳しく知るには、 「ショップに何度も顔を出して、そのクルマのオーナーから使い勝手を聞いてみろ」というアドバイスがよくなされるが、確かに、ショップに入り浸っているお客さんの話を聞くことは、買いたいクルマのチェックポイントを見極める意味でも大事なことかもしれない、と思った。

(続く)
 
  

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