ノスタルジック街道ルート66

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 「ルート66」という言葉を聞いて、なにがしかの感慨を覚えるのは、主に今60代の人々だろう。

 ルート66は、1920年代頃にアメリカを横断する国道として整備され、1980年代に廃線となるまで、60年にわたってアメリカの大動脈として利用されていた道だ。

 1960年代に、コルベットに乗る2人の若者が、そのルート66をたどって冒険ドライブを繰り返すテレビドラマが大ヒット。日本にも上陸し、当時の日本人にも、広大なアメリカを自分の車で横断してみたいという夢を与えた。


 ドラマの放映に呼応して、タイトル曲も大ヒット。
 ナット・キングコールのほか、ジョージ・マハリスの歌も大当たり。
 さらには、ザ・ローリングストーンズのレパートリーにも加えられるなど、ジャズ系、ロックンロール系などさまざまなバージョンが生まれた。

▼ George Maharis 『Route 66』

 そんなこともあって、60代のシニアのなかには、この「ルート66」という言葉の響きからとても懐かしいものを感じる人も多いのではなかろうか。

 歌にドラマに取り上げられたルート66は、まさに近代アメリカの繁栄の象徴であったが、より便利なインターステート・フリーウェイの普及によって幹線道路としての役割を終えることになり、1980年代中頃に廃線となった。

 しかし、近年観光道路として再整備され、再びノスタルジックな気分をよみがえらせる観光施設として脚光を浴びている。

 私は、2008年にレンタルモーターホームを借りて、こルート66の一部を走ったことがある。
 そのとき、キングマンの町などでは、すでに “ルート66観光” を意識したミュージアムや土産物店がたくさん並んでいた。

▼ キングマンの『ルート66』ミュージアム

 つい最近、NHKのBS放送で、そのルート66が観光道路として再評価されてきた様子を伝えるドキュメントビデオが放映された。
 番組そのものは、2001年に制作されたものらしい。

 しかし、トランプ次期大統領の登場などで変貌を遂げているアメリカを考えるきっかけとなりそうだと判断したのか、NHKはこの番組を再度取り上げる気になったようだ。
 タイトルは、
 『ノスタルジックハイウェイ ~アメリカ ルート66をゆく~』。


 
 とても美しいドキュメント番組であった。
 何よりも、ルート66が走っているアメリカ大陸の光景が素晴らしかった。

 しかし、それだけでなく、ルート66が現役バリバリの時代に、そこを行き来した古いアメ車の映像が素敵だった。





  
 このルート66の沿道には、少年時代に、この道路を行きかう車を見ながら成長していったたくさんの人々が今も暮らしている。
 当時、西へ向かう大排気量のスポーツカーの雄姿や、東へ向かう長距離トラックの群れを目で追うことは、繫栄するアメリカの生きた姿を眺めることだった。

 その時代に活躍したアメ車を集めてきては、販売する人(↓)がいる。

 その中の1台(↓)をきれいにレストアして、今でもルート66を走るのが唯一の楽しみだとか。

 別の町では、ルート66を観光道路として復活させようと、地元民とバンド(↓)を結成し、週末に自分たちの演奏を披露する老人たちがいる。

 さらに別の町では、映画『バクダッド・カフェ』に感動し、このエリアでカフェを開業して、地元民との交流を図る女性店主も登場。
 休日ともなると、近所の住民がその店に集まり、昼間からビールを飲みながら、ドミノゲームに興じる。



 ルート66が通っている州は次の八つ。
 イリノイ
 ミズーリ
 カンザス
 オクラホマ
 テキサス
 ニューメキシコ
 アリゾナ
 カリフォルニア

 アメリカ中西部といっていいのだろうか。その多くは海を持たない内陸の州である。
 いわば、我々日本人が昔 “西部劇” の舞台として馴染んだ州。
 住民の多くはいまだにカウボーイのようなテンガロンハットをかぶり、西部劇に出てくる町のバーを思わせるカフェで、昔なじみの友人たちと談笑する。

 彼らの腕は頑丈で太い。
 そして、胴回りも大きい。
 それはハンバーガーのようなファストフードの日常的摂取やコカ・コーラの大量吸収が生み出した体形のようにも思える。
 

 2000年代に入った頃、アメリカ人たちは食生活を見直し、ダイエットに励んでいるという情報を耳にしたことがあったが、それは東海岸の大都市に住む一部の人々の話だったのかもしれない。
 2008年に私が渡米したとき、実際に目にした中西部の住民たちは、男女とも、太鼓腹を鷹揚に突き出して町を闊歩する人々ばかりだった。
 そして、みなけっこうタバコも吸っていた。

 それを見ただけでも、彼らが、東海岸の知的エリートたちや西海岸の進歩的な風土に馴染んだ人々とは異質の生活を送っていることが分った。

 ある意味、彼らこそ、生粋のアメリカ白人。
 そして、今回の大統領選挙で、トランプ氏を支持した人たちの原型でもある。

 番組のなかで、彼らは口々にこう言った。
 「昔はよかった。ルート66が繁栄していた時代はね」

 そのルート66がさびれていく光景と、彼らの仕事がなくなり、生活が厳しさを増していく様子は、彼らの頭のなかではセットになっている。
 
 日本の自動車産業の興隆を背景に、斜陽になっていくアメリカの自動車産業。
 それに伴い、ルート66を行き交っていた鉄鋼などの資材配達のトラック便も少なくなる。

 利用客でにぎわったドライブイン、モーテル、カフェなども客足が遠のき、沿道の町は、ドアも窓も閉めたままのゴーストタウンに近づいていった。

 しかし、2000年代に入ると、若い頃にテレビドラマの『ルート66』を観て育ったベビー・ブーマーたちが、リタイヤ後の遊び方の一つとして、なつかしの “ルート66ドライブ” を始めるようになった。

 沿道の町でも、それらの客を対象に観光整備に力を入れる自治体が登場するようになる。
 このドキュメントビデオが撮られた2001年頃というのは、ちょうどそういう時期に当たる。

 だから、このドキュメントに登場する人々の表情は明るい。
 往年の輝きが戻ることを信じて疑わない人たちの笑顔はチャーミングだ。
 彼らは口々に、ルート66が昔の繁栄を取り戻す夢を語る。

 それは、「偉大なアメリカの復活」を謳うトランプ氏のキャッチである「Make America Great Again」に呼応している。

 事実、ルート66が通るアメリカの八つの州のうちの5州、すなわちミズーリ、カンザス、オクラホマ、テキサス、アリゾナは、大統領選のときにクリントン氏ではなくトランプ氏を支持し、その勝利に貢献している。

 われわれ日本人の多くは、来年からスタートするトランプ政権に不安を感じている。
 だから日本の知識人たちは、トランプの政策を「保護主義」だとか「反知性主義」だとか、「差別主義」、「非寛容」などと非難しているが、アメリカのトランプ支持者たちの素顔を見てしまうと、そのような一面的な理解でレッテルを貼ることにためらいが生まれる。

 少なくとも、NHKドキュメント『ルート66』に登場し、ルート66にノスタルジックな思いを馳せる人々の純朴そうで、優しそうで、温かい表情を見ていると、仮に彼らが熱烈な「トランプ支持」を口にしたとしても、たぶん面と向かって反論などできないはずだ。

 「Make America Great Again」

 この言葉がはらむ本当の意味を、われわれ日本人は実感できない。
 トランプ氏の魔法の言葉の真意は、まさに、ルート66の喪失を心の空洞として捉える人々の胸に内に分け入っていかなければ分からない。

 だが、このことは、日本で今起こっていることと照らし合わせてみると、案外見えてくるものがある。

 今の日本にも、昭和30年代(1950年~1960年)を理想の時代だと捉える風潮が生まれている。
 たとえば、ACジャパンの『ライバルは、1964年』というCMでは、屈託なく笑っている植木等(クレイジー・キャッツ)の白黒写真を掲げ、
 「笑顔でも、夢の大きさでも。人を思いやる気持ちでも。あの頃の日本人に、ぜったい負けるな」
 と謳っている。

 これは、平成20年代に生きる我々を応援しているようで、実際には昭和30年代へのオマージュになっている。
 そして、そのことに対し、当時の生活を知っている年寄り世代だけでなく、当時を知らない若い世代も共感している様子が見て取れる。

 「過去は偉大だ」
 とする風潮は世界的に広まっている。

 私は、そのことの是非をここでは問わない。
 ただ、過去を称賛することが “ウルウルする” ことの条件になりつつある今の風潮は、いったい何を語ろうとしているのか。
 私自身は、そのことを注意深く見守っていきたいと思っている。
 

参考記事 「ルート66伝説 (モーターホームでアメリカを走る 5)」
 
 
  

カテゴリー: コラム&エッセイ   パーマリンク

ノスタルジック街道ルート66 への2件のコメント

  1. motor-home より:

    町田さん

    1年の締めくくりの投稿がルート66とは何とも嬉しいです。 『ノスタルジックハイウェイ ~アメリカ ルート66をゆく~』を見逃してしまったことが悔やまれます。。。

    一般的なメディアが発信するアメリカや旅行会社のパッケージツアーで見ることのできるアメリカと、ルート66沿いで生活しているアメリカ人って本当別世界のようでしたね。こういった人たちが選んだ来年からのトランプ政権、ビジネスマン出身としてのトランプのパフォーマンスに期待ですね。

    良いお年をお迎えください、

  2. 町田 より:

    >motor-home さん、ようこそ
    旧年中はお世話になりました。
    楽しい思い出をいろいろとありがとうございます。

    ルート66の旅、また行きたいですね。
    それにはレンタルモーターホームでの旅が一番ですね。
    本年もよろしくお願い申し上げます。

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