ニートRV「ウィネベーゴ・フューズ」

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「フューズ」に見る “融合” の思想

 北米モーターホームにまったく新しい風が吹き始めた。
 長らくアメリカンモーターホームのカットウェイシャシーとして使われていたフォード・エコノラインがフェイドアウトしていったなかで、その後継機種として位置づけられたフォード・トランジット(350HD)がいま圧倒的な存在感を示し始めている。

 そのトランジットをベースに開発された新世代モーターホームの筆頭が、「ウィネベーゴ・フューズ(Winnebago Fuse)」である。

▼ 「フューズ」エクステリア

 米国ウィネベーゴ社によって開発されたこのクラスCモーターホームがアメリカでデビューしたのは、今から1年半ほど前。
 日本においては、昨年12月に、ウィネベーゴ社の正規代理店である(株)ニートRVの内覧会にてお披露目され、2017年2月の「ジャパンキャンピングカーショー」(幕張)で国内デビューを飾った。

▼ 「フューズ」インテリア

 「フューズ」という車名に込められた意味は何だったのか?

 ジャズやロック、ソウル、ポップスなどが融合した音楽を “フュージョン” と呼ぶように、「フューズ」とは、異なるものが溶け合って融合した状態を指す。
 名前に込められた意味をたどっていけば、開発者たちがこのモーターホームに込めた “思想” のようなものが浮かび上がってくる。
 
 すなわち、「アメリカンモーターホーム文化」と、「ヨーロッパRV技術」の融合。
 「革新的テクノロジー」と、「伝統回帰デザイン」の融合。
 そして、「誠実なエコ志向」と、「奔放な遊び心」の融合。

 そのような、それぞれベクトルの異なる個性が、「ウィネベーゴ・フューズ」という一つの完成度の高い “作品” に収れんしていくのを見てしまうと、まさに目の前で奇跡が起こったような気分になる。

▼「フューズ」エクステリア スライドアウトルーム

 
 
ついにディーゼルエンジンを採用
 
 では、突出した個性同士が融合し、より高次な技術的表現に昇華した具体例を見てみよう。

 まず、エンジン。
 “パワーストローク” というニックネームを持つ高性能エンジンが採用されている。
 3200cc ・直列5気筒
 コモンレール・ターボディ-ゼルエンジン
 最高出力137kW(185ps)/3000rpm
 最大トルク474Nm(48.4kg-m)/1500~2500rpm
  
 スペックこそエコノラインに及ばないものの、注目すべき点が一つ。
 もうガソリン車ではないのだ。

 ここに至るまでの道のりは長かった。
 ヨーロッパでは乗用車から商用車、RVに至るまでディーゼルエンジンが主流になってきているというのに、これまでアメリカ人はずっとガソリンエンジンにこだわり続けてきたからだ。

 この「フューズ」が生まれる前、ウィネベーゴ社は、欧州車のフィアット・デュカトの派生形であるクライスラー・ラム・プロマスター3500をベースにした「トレンド」というクラスCと、「トラバト」というクラスBを発売していた。

▼ ウィネベーゴ「トレンド」

 「トレンド」、「トラバト」のエンジンはガソリン。
 本来がディーゼルエンジンのデュカトベースでありながら、わざわざガソリンエンジンに換装して使っていたのである。

 それは、長い間、原油を安価に手に入れることができたアメリカの消費構造がもたらした “習慣” であったが、たぶんに、快楽・快適を愛するアメリカ人の生理から来るものもあった。
 すなわち、アメリカ人は、「エコ」とか「燃費」を意識してディーゼルを選ぶヨーロッパ人の “我慢を強いられる文化” よりも、ガソリン車の “スカッとさわやか” な運転感覚の方を好んだのである。

 しかし、フォート・トランジットでは、ついにパワーユニットを、欧州のディーゼル車では当たり前となっているコモンレールディーゼルエンジンに替えた。
 このエンジンは、排気ガス規制への対応のために生まれてきたような性格を持っており、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)などの排出量を低レベルに抑えているところに特徴がある。
 
 
アメリカ人はやはりFR車が好き
 
 このように、環境問題にシビアなスタンスを取るヨーロッパ流エンジンを採り入れながらも、トランジットは、一方ではアメ車らしい豪快な乗り味を忘れなかった。駆動方式には、車体の下でプロペラシャフトが回転していく力動感をみなぎらせたFRが選ばれたのだ。

 やはり、アメリカ人は、前輪が大地を引っかいて前進するようなFFよりも、後ろから力強く車体を押していくFRの乗り味が好きなのだろう。

 また、コーチ部分の架装重量が増えすぎると、FF車はフロントタイヤに掛かるトラクションが減って路面との摩擦係数も少なくなるため、駆動力が不安定になりがち。
 そのため、雪道などではFRより不利になる場合もある。
 FR車にこだわったのは、自動車大国アメリカのこだわりでもあったのだ。

 ここにパワートレーンにおける「アメリカ人の嗜好」と「ヨーロッパ技術」の融合が見えてくる。

▼ 「フューズ」フロントフェイス

 それはトランジットの “顔” にも表れている。
 エコノライン(写真下)の角ばったボンネット形状に比べ、トランジットはノーズがスラントしているため、どこかセミキャブオーバー風のフロントマスクに見える。
 しかし、ボンネット内部にはしっかりと縦置きエンジンが貫かれている。

▼ エコノラインのエクステリア(ウィネベーゴ・アスペクト)

 「フューズ」の縦置きエンジンというのも、アメリカ人好みだ。
 それはFRとの相性が良いからだ。
 前述したことに関連するが、FRならばFFに比べて前後の重量配分が安定し、その分、自然な乗り味が得られる。
 これもアメリカ人らしい嗜好といえるだろう。

 また、後輪がダブルタイヤになっていることも、耐荷重性能を上げることにつながり、トランジットのモーターホームシャシーとしての信頼性を高めることに貢献している。
 
 
運転席はトラックではなく乗用車
  
 運転席まわりの “光景” も変わった。
 インパネのデザインは、トラックではなく、もう乗用車である。
 ステアリングなどは、スポーツカーを思わせるほど、小径だ。
 
▼ 「フューズ」のインパネデザイン

 
 さらに、助手席には回転ベースが採用され、23Tなどでは、ヨーロッパ車のように、テーブルを挟んでセカンドシートと向き合う対面ダイネットを形成することもできる。 

 トランジットに搭載された先進技術は、これにとどまらない。
 たとえば「レーンキーピングシステム」。
 これは、運転中、気づかぬうちに進路から外れ、うっかり道路の白線を踏むとステアリングが微振動を発して警告する安全装置だ。
 また、登坂中に、ブレーキペダルからアクセルペダルに踏みかえる際、ペダルを一瞬離しても、坂道における停止状態をキープする「ヒルスタートアシスト」も組み込まれている。
 
 
内装はアメリカントラディショナル
 
 繊細にして、大胆。
 アメリカ的な磊落(らいらく)さと、ヨーロッパ的な緻密さを “融合” させたこの「トランジット」というベースシャシーに、ウィネベーゴ社は、またそのキャラクターにぴったりの内装を創造した。

 一言でいえば「ネオ・クラシック」。
 ニートRVの広報媒体によると、
 「アメリカン・トラディショナル」。
“古き良き時代にさかのぼった” といってもよいくらいの復古調デザインが強調されているという。

▼ 「フューズ」インテリア

 このことは、アメリカンモーターホームでありながら、ヨーロッパデザインを強く意識した「ウィネベーゴ・トレンド」(写真下)などと比べると分かりやすい。
 「トレンド」では、プラスチック家具などを採用し、無機質な合理性を強調したデザインが採り入れられていたが、「フューズ」では、アーリーアメリカンカラーの木目家具を主体とした温かい内装テイストが復活した。

▼ 「トレンド」インテリア
 
 
 
クラシカルではあるが、レトロではない
 
 しかし、「フューズ」の内装はクラシカルではあるが、レトロではない。
 デザインにおける「アメリカ回帰」は、しばしばレトロの方向に走っていくことが多いのだが、「フューズ」はレトロの対極にある「格調」を重視している。

 「レトロ」のベースとなるものはポップ感覚(↓)である。

▼ ポップ感覚に満ちた愛らしい形のティアドロップ型のトレーラーなどの人気が復活しているのも、レトロ感覚

 しかし、デザイン上の懐古趣味にはもう一つあり、それが「ネオ・クラシック」だ。古代ギリシャ建築を模したホワイトハウスの建物のようなデザインといっていい。

 では、「フューズ」の伝統回帰は、具体的にどのようなところに現れているのか?

▼ オーバーヘッドキャビネット

 たとえば、オーバーヘッドキャビネット。
 扉が引き戸だ。
 日本人にはなじみのある家具形状といってもいいが、最近モーターホームの世界では、このようなスライドドアは影を潜めていた。
 従来のキャビネットドアは、ラウンドした扉部分をポンと押すだけで自動的に開く構造のものが主流であった。
 しかし、「フューズ」では、それをあえて昔風のスライドドアに戻している。収納作業の安定感を取り戻す意味と同時に、クラシカルな意匠の格調を重んじた配慮といえる。

▼ 「フューズ」のキッチン

 キッチン周りのデザインも、テーマは “融合” 。
 アートっぽい弧を描く不定形の2口コンロは、完全にヨーロッパ風。
 カランの首がフレキシブルに曲がるフォーセットの形状もヨーロッパ調。
 それでいて、実用的な深さを保ったシンクは、アメリカンモーターホームの美点をそのまま継承している。
 
 
個性的なフロアプラン
 
▼ ニートRVが導入した「フューズ」のレイアウトは2パターン。上が23A。下が23T。23Aは前側のリビング部分がスライドアウトして延長されるタイプ。23Tは、リヤ側のベッドスペースがスライドアウトして広がるタイプ。



  
 ▼ 23Aのレイアウトでは、リヤにスライディングドアで仕切られるトイレ・シャワーコンパートメントが配置される。シャワーパンが広いので、散歩から帰ってきた大型犬などの足を洗ったりするときに楽だ。

 ▼ 2ドア冷蔵庫はノアコールド製の静音型。モーターなどの可動部分がないRV専用タイプだ(3ウェイ 150㍑)。

 ▼ 23Aのリビング。ベッドメイクすると、幅810mmのベッドで二つ生まれる。左側のベッドは、延長マットを埋め込むと全長2030mmまでサイズアップする。

 ▼ マットレスの下には、「フロリー・デラックス・スリープシステム」と名付けられた “快眠を約束する” 構造のベッドシステムが採用されている。

 ▼ キッチンキャビネットと床の間に、空間が設けられている。この隙間に足の指先を入れられるようになっており、キッチンの立ち仕事が続いたときに生じる腰痛などの原因を取り除くようになっている。


 
 
Make America Great Again
  
 「フューズ」で追求されたクラシカル志向は、ウィネベーゴ社に限ったことなのだろうか。
 ニートRVの猪俣慶喜取締役によると、「伝統回帰」は最近のアメリカンモーターホーム全体の傾向だという。

▼ ニートRV 猪俣取締役

 「ウィネベーゴも “トレンド” においては、ヨーロッパ車を意識したFF車をベースのモーターホームに手を染めましたが、やはりアメリカ人は伝統的なFRのフォードシャシーに乗りたいんですよ。
 内装も、“トレンド” のような近未来的でクールな意匠よりも、人のぬくもりを感じさせる温かいデザインの方が好まれる。アメリカ人の生活感覚というのは、建国以来変わらないといえば変わらないのです」

 「アメリカ人の伝統回帰」といえば、すぐ連想されるのはトランプ大統領の掲げた「Make America Great Again(偉大なるアメリカの復活)」という言葉だろう。
 この言葉に共感した人たちが国民の半数近くにのぼったからこそ、彼は大統領になれた。

 このトランプ氏の掲げる “アメリカの復活” と、最近のモーターホームの伝統回帰は、どこかで通底しているものがある。

 われわれ日本人は、トランプ支持者の思想傾向を、ともすれば「保守化、右傾化、民族差別化」などというレッテルを貼って、あたかも政治現象のように捉えがちだが、アメリカ人の伝統回帰というのは、そんな尖ったものでも狂信的なものでもないのかもしれない。
 
 それは、かつてのアメリカ国民が、西部劇ヒーローのジョン・ウェイン(写真下)に憬れたような、ごくごく単純な「強いもの、頼りがいがあるものが好き」という悪意のないマッチョ信仰にすぎない。
 

 
アメリカのピックアップトラックブーム

 アメリカ人の無邪気なマッチョ信仰を示す例として、こんなものもある。

 2016年に、アメリカの女性を対象にし、「どういう車に乗っている男性が魅力的か?」と尋ねる調査が行われたという。
 その結果、「ピックアップトラックに乗った男性」という答が32%を獲得して、27%の「スポーツカーに乗った男性」を上回ったらしい。
 車がなければ移動も生活もできないアメリカでは、ピックアップトラックを持っている男は「頼りがいがある」と見なされる傾向が強いのだとか。

▼ アメリカのピックアップトラック

 ちなみに、「魅力的な男性が乗る車」をブランド別に集計すると、1位が「フォード」(16%)、2位が「シボレー」(13%)、3位が「ポルシェ」(11%)だったとのこと。
 
 リーマンショックによって壊滅的に落ち込んだアメリカの自動車販売は、その後順調に回復し、現在は年間1,750万台まで伸びてきたという。
 それをけん引したのはピックアップトラックであるらしい。2016年9月のデータによると、アメリカの自動車販売の51%がピックアップトラックを含むライトトラックだったそうだ。

 モーターホームシャシーにおけるフォード・トランジットの人気は、そういう “フォードトラックブーム” をも反映しているのかもしれない。
 
 
ウィベーゴ・フューズWF423A 概要
 
【ベース車】 フォード・トランジット350HD
【乗車定員/就寝定員】 4名/4名
【全長/全幅/全高】 7,350mm/2,320mm/3,110mm
【排気量】 3,200cc
【最高出力】  137kW(185ps)/3000rpm
【最大トルク】 474Nm(48.4kg-m)/1500~2500rpm
【ミッション】 6速AT
【駆動方式】 2WD FR
【燃料】 軽油
【車両本体価格】 13,500,000円(税抜き) 
【主要装備】 エアコン/冷蔵庫(3ウェイ)/ガス式FFヒーター/給水タンク(102㍑)/ブラックタンク(162㍑)/グレータンク(155㍑)/ビルトイン調理器具/温水シャワー/サブバッテリー/電動サイドオーニング/外部電源/ルーフベンチれーたー/ルーフエアコン/マリントイレ/遮光カーテン/ツインベッド/外部収納庫(654㍑)他

ニートRV URL:http://www.neatrv.com/

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