NTBの「SINOBI」と「ASAKAZE」

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黒いボディの圧倒的な存在感

 2017年の2月初旬に幕張で開かれた「ジャパンキャンピングカーショー」の会場で、ひときわ来場者の視線を集めた1台の車があった。
 
 装甲車を思わせる直線基調のフォルム。
 精悍なフロントフェイス。
 闇よりも深い黒に塗られたボディが、旺盛なエネルギー感をはらんで見学者を圧倒する。
 見るからに、「ただものではない !」と思わせる威容だ。

 この “黒い悪魔” の名は「SINOBI (しのび)」。

 なるほど !
 日本の「忍者」をイメージした車名なのだから、黒装束なのはよく分かった。
 だけど、この黒 …… 、こっそり活動する忍者にしては、ちょっと目立ちすぎじゃね?
  
  
あえて内装を省いたモデルを展示
  
 「SINOBI」は、いすゞビィーカム(Be-cam)をベース車にして、従来のキャブコン製作とはまったく異なる開発思想で取り組んできたNTB(日本特種ボディー株式会社)の新型車である。
 つまり、「SAKURA(さくら)」、「ASAKAZE(あさかぜ)」に続くキャブコンの第3弾としてリリースされた車で、基本的には、先に開発された「ASAKAZE」の性格を受け継ぐ車だ。

▼ 「SAKURA」

▼ 「ASAKAZE」

 が、「ASAKAZE」ゆずりであるのは、そのベース車がビィーカムの2.0t ワイドであるというところまで。
 中身はまったく違う。
 というか、「SINOBI」には、中身がない !
 ショー会場でこのキャブコンの車内を覗き込むと、そこにはガランとした空洞が待ち受けているだけだった。

 ショーの開催までに内装が間に合わなった新型車の場合、ときどき室内がドンガラのまま展示される車がある。
 しかし、どうやらそれとは違うようだ。

 「SINOBI」に秘められた “忍術” の真意を、NTBの蜂谷慎吾社長(写真下)に尋ねてみた。

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完全オーダーメイドの「SINOBI」

【町田】 ずばりお聞きしますが、この「SINOBI」に内装が組み込まれていないのは、どういう理由からなのでしょう?
【蜂谷】 この車は、お客様から完全オーダーをいただいて、そこから内装を組み上げていく車なんです。
 つまり、完全ワンオフ車。住宅でいえば “注文建築” ですね。
 そのため、先入観を払しょくするために、あえて内装を省いているんですよ。

【町田】 それにしても、黒い塗装の外装がすごいインパクトをみなぎらせていますね。
【蜂谷】 ちょっとどぎついくらいのところを、わざと狙ってみようかと(笑)。ただ、厳密にいうと「黒」ではないんですよ。
 ショー会場のような屋内では「黒」に見えてしまうかもしれませんが、実はグリーンメタリック塗装です。明るい陽射しのもとに置くと、実に鮮やかなグリーンメタとリアルカーボンのコントラストが美しく映えます。


【町田】 それにしても、大胆な色使いですね。
【蜂谷】 目立つようなカラーにしたのは、外板色も自由に選べるということを訴求したかったんですね。現在の「SINOBI」は、オプションとなるグリーンメタの塗装仕上げになっていますが、標準色は「ASAKAZE」や「SAKURA」に使っている白です。またオプションでカーボンを貼ることもできます。

【町田】 カーボンを貼るとどうなるんですか?
【蜂谷】 強度が増すんですね。窯に入れて焼くドライカーボンにすると、さらに強度が上がるんですが、広い部分をカバーするとなると、釜で焼くことはできないので、一部だけになりますが。


 
【町田】 なるほど。ところで、なぜ “完全ワンオフ車” という設定にしたのですか?
【蜂谷】 やはり従来のキャブコンでは物足りないと思われるお客様がいっぱいいらっしゃるからなんですね。
 走行性能、安全性という車両としての基礎的なところから、レイアウト、電装系のシステム、種々の搭載機器など、キャンピングカーに対する自分の理想像を思い描いていらっしゃるお客様はけっこういらっしゃいます。
 そういう方々のニーズを汲むとなると、どうしても完全オーダー車にならざるを得ないんですね。

【町田】 御社が2年前に出された「SAKURA」は、そのあたりのニーズを満たそうという意図で開発されたものでしたよね。

▼ 「SAKURA」

【蜂谷】 そうです。「SAKURA」などは、それなりにお客様からの要望を受け入れるスタンスで臨んでいます。
 ただ、「SAKURA」などの基本レイアウトは、われわれNTBが考えるもっとも使いやすいものなんですね。「ASAKAZE」もそうです。われわれからすれば、それらの基本レイアウトや仕様は、ベストであるという自負はあります。
 それでも、ご自分の頭の中にすでに理想のキャンピングカーのイメージを組み立てていらっしゃる方は、既存のキャブコンの仕様では満足されないんですね。

【町田】 そういうリクエストに応えるために用意された車種が「SINOBI」であると?
【蜂谷】 そうです。「SINOBI」は、お客様自らが自分自身にとって使いやすいレイアウトや仕様を実現するためのモデルなんですね。
 われわれNTBは、そういうお客様のご要望をしっかり聞き入れて、車検上や安全性に問題がないかどうかを一点一点ずつ確認しながら、お客様の「夢の車」を実現させるサポートをさせていただくということになります。
  
  
内装サンプルは「ASAKAZE」を参考にしてほしい

【町田】 でも、まったく “叩き台” がないと、いくら理想の仕様が頭のなかにあっても、それを施行者にうまく伝えられない人もいるんじゃないですか?
【蜂谷】 そういう方に「ASAKAZE」の内装を見ていただきたいんですね。それをサンプルにして、具体的に「どこをどう変更したいのか」というリクエストやアイデアを頂戴できれば、われわれも作業しやすいですから。

▼ 「ASAKAZE」外形

▼ 「ASAKAZE」内装

 
【町田】 具体的にどういうリクエストが出てきそうですか?
【蜂谷】 「SINOBI」の全高を見ていただくとお分かりになると思うのですが、「ASAKAZE」よりもルーフが15cmかさ上げされているんですよ。
 それはなぜかというと、床を高くしたいというリクエストが出てきたときに対応するためなんですね。
 床を高くすれば、たとえば床暖房などを組み込むこともできます。
 現在のところ、まだどのような床暖房システムがいいのか検討中ですが、電気式のものや温水式のものなど、いろいろ試験を重ねている最中です。

【町田】 では、掘りごたつ仕様などもできそうですね。
【蜂谷】 できます。床を畳仕様にして、中央に掘りごたつを設定するなどということも可能です。 
 また、長旅になると、ランドリーなどない地方を旅しなければならないこともあるでしょうから、そういうときのために小型のドラム式洗濯機を搭載するといったようなアイデアもあります。
 
 
リチウムイオンバッテリーの実用化も間近
 
【町田】 そういう場合の電源は?
【蜂谷】 リチウムイオンバッテリーを計画しています。まだ公表できないのですが、マイナス20℃ぐらいの場所でも問題なく充電できるような高性能リチウムイオンバッテリーを考えています。すでにキャンピングカー以外の分野では実績のあるものですけどね。

【町田】 「SINOBI」は、「ASAKAZE」のスペシャルバージョンという位置づけだということですが、それに先行する「SAKURA」と「ASAKAZE」の関係は、どういうように考えればいいのでしょうか?
【蜂谷】 「ASAKAZE」は、「SAKURA」の “強化バージョン” といってもいいのかもしれませんね。

▼ 「ASAKAZE」外形

 
【町田】 どこが強化されたのですか?
【蜂谷】 一言でいえば、許容荷重ですね。同じいすゞビィーカムでも、「SAKURA」は1.5 t シャシーで、「ASAKAZE」は2.0 t ですから、「ASAKAZE」の許容荷重はそうとう増えています。

【町田】 どのくらい増えたといえるんでしょう?
【蜂谷】 500kgは増えてますね。その分、架装できる内容物がそうとう豊かになりました。
【町田】 たとえば?
【蜂谷】 鉛バッテリーなども、「SAKURA」では100Ahのものを四つ入れていたんですが、「ASAKAZE」では、190Ahのものを四つ入れられるようになりました。
 それもできるだけ床の下の方に搭載して、低重心を心掛けるとともに、左右に振り分けて、重量バランスを取るようにしてあります。
 
▼「ASAKAZE」外形

  
  
「ASAKAZE」の内装がハイグレードになった秘密

【町田】 そのようにしてバッテリー容量が上がってくると、電気の消費量にもゆとりが出てくるわけですね。
【蜂谷】 そうですね。バッテリーを普通に使っていれば、空になるまで使い切ることが少なくなるので、安心感は増したと思います。
 「SAKURA」の場合は、100Ahが四つでしたから、2日ぐらい使い込むと、少し走行充電して電気を溜めなければなりませんでした。しかし、「ASAKAZE」では2泊3日ぐらい大丈夫になりました。

▼「ASAKAZE」内装



 
【町田】 許容荷重が増したことによって、ほかにどんなメリットが生まれましたか?
 
【蜂谷】 家具などの質感を高めることが可能になりましたね。たとえば「SAKURA」では、いくらシャシーにビィーカムを使ったとしても、搭載機器で許容荷重がいっぱいになってしまったら意味がないわけですから、家具にもなるべく重いものを使いたくなかったんですよ。
 たとえば家具扉に「曲げ合板」などを使えば質感が高くなることは分かっていたのですが、「曲げ合板」は重量があるので、「SAKURA」では多用できなかったんですね。
 しかし、「ASAKAZE」ではビィーカムの2.0 t ワイドシャシーになったので、多少重量が増えても質感の高い家具を投入できるようになりました。

【町田】 いやぁ、ほんとうに「ASAKAZE」の内装は素晴らしいです。ものすごく高級感がありますね。

【蜂谷】 ありがとうございます。「ASAKAZE」では、家具類にどういうLED照明を当てていけば高級ホテルのようなグレード感が出るのか、そういうところにもかなり気をつかいました。
 たとえば、キッチンの人工大理石の天板を照明で透かせて、ほわっと浮かんで見えるように設定するとか。

▼ 「ASAKAZE」内装

【町田】 その試みは成功しているように思えます。「SINOBI」の内装を考えるときに、「ASAKAZE」がサンプルになるのだとしたら、「SINOBI」の内装デザインにもそうとうグレードの高いものが現れてきそうですね。

【蜂谷】 基本的に、この車はフルオーダーになりますから、お客様からご指定をいただければ、ヨットなどに使われるチーク材とか、後はほんとうに普通のルートでは入手が難しくなっている高級木材などで家具を作ることもできます。
 シートなども、高級車に使われるコノリーレザーを取り寄せることも可能です。
 また「SINOBI」1号車では、熱などに弱いといわれるPVC家具ではなく、自動車用に開発された現時点では最高と目される新素材による家具製作も試みるつもりです。

【町田】 いやか、ほんとうに楽しみにですねぇ。次の機会には、ぜひ内装を見てみたいと思いました。
 
 
…………………………………………………………………………
海外雄飛も射程に入れて

 「SINOBI」に関しては、その開発の陣頭指揮を執られたNTBの江田敏夫会長(写真下)にもお話をうかがうことができた。
 この車にかける江田会長の熱い胸の内を聞いた。

【町田】 「SINOBI」というのは、忍者のことですよね。忍者といえば、いま外国人観光客に絶大な人気を誇っています。NTBさんの場合は、これまで自社製品に、「SAKURA(桜)」、「ASAKAZE(朝風)」というように外国人にも解る日本語の名前を付けてきています。
 そこには、海外の人の目を意識したキャンピングカーを作っているというお気持ちがあるのでしょうか?

【江田】 いずれは海外マーケットに打って出てみたいという夢はあります。日本にも欧米のモーターホームに負けないしっかりしたキャンピングカーがあるよ、ということを、海外の人に訴えてみたいですね。
 もちろんハードの面で、外国製モーターホームと比べても遜色のないものを作っているという自信はあります。
 しかし、それだけでなく、私は日本の「文化」を売りたいんですね。
  
  
日本文化のエッセンスを盛り込んだキャブコン
 
【町田】 日本の「文化」を売るというのは、どういう意味でしょうか?
【江田】 たとえば、日本に来られた欧米の観光客を見ていると、みな浅草に行って、伝統的な日本の団扇とか、扇子だとか、人力車などを見て面白がっているんですね。
 要は、昔からある日本の風物がエキゾチックに感じられるのでしょうね。
 だから、この「SINOBI」に関しても、思い切って伝統文化のテイストを盛り込んだ仕様を作ってみて、それをプレゼンしたいと思っています。

▼ 「ASAKAZEI」内装

【町田】 それは、どんなデザインになるのでしょう?
【江田】 室内を畳にして、襖(ふすま)を置いて、そこに写楽の役者絵や広重の「東海道五十三次」のようなものを描いたっていいと思っています。
 そして、日本文化の神髄は「静けさ」にあるということを訴えてみたい。

【町田】 静けさ …… ?
【江田】 アメリカのモーターホームなどは、エアコンを駆動するときにジェネレーターを焚いたりしますよね。
 しかし、私どもが開発しているキャブコンに搭載しているクーラーシステムでは音がしない。そういう電装システムを確立しているからですね。
 そういった排ガスも出ないし、騒音も出ないエアコンシステムは、もちろん「エコロジー」という観点から訴求することも可能なんですが、私はそれを「静けさ」を尊ぶ日本文化の精神という点から訴えたい。
 「古池やカワズ飛び込む水の音」という、あの松尾芭蕉の句に込められた静寂と清涼感を外国人に感じさせたい(笑)。

【町田】 面白いですねぇ !
【江田】 そういう方向を目指して、より洗練されたキャブコンが誕生したら、私はそれに「MIYABI(雅)」というネーミングを授けて、そのときこそ海外に持っていきたい。そんな夢を抱いています。
  
NTB(日本特種ボディー)HP URL :http://www.ntbcamp.com/

 
 
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