ウォーキング ハイ 2

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 基礎体力を回復させるために、ウォーキングを始めたことは前回書いた。
 確かに、それによって、少しずつフィジカルな持続力がよみがえってきた。
 恥ずかしい話だが、それまでは階段を昇るのも億劫だったのだ。

 駅のホームから改札口に上がるときも、目の前に階段があってもそれを避けて、ホームの端にあるエレベーターかエスカレーターを探すような体たらくであった。
 「肺血栓症」という診断が下る前の、階段を昇り切ったときに激しい息切れに襲われていたときの後遺症でもあった。

 が、少しの時間でも歩く習慣を身に付けることによって、「階段を上がることへの苦痛」がかなり緩和されてきた。
 誠に、ウォーキングの効果はありがたいものだと思う。

 
 そんなわけで、目下のところ、“楽しいウォーキング” を持続させるための知恵のようなものに注目している。

 テレビを観ていたら、「ノルディック ウォーキング」というものがブームであるということを知った。
 スキーをするときのように2本のスティック(ポール)を手に持って歩行行動を補助するというトレーニングだという。

 スティックを使うことによって、腕の振りが大きくなり、普通に歩くよりもいっそう運動機能が高まるのだそうだ。
 今はまだ検討中だが、そんなものも今後採り入れていきたいと思っている。
 
 
 ま、そこに至るまでに、現在は「音楽を聞きながら歩く」ということで、ウォーキングの楽しみを持続している。

 前回の記事では、マイケル・ジャクソンの『ビリー・ジーン』などを聞きながら歩くとハイになると書いたが、確かに、あの曲のような四つ打ちのディスコビートは、歩くときのリズムを保つには非常にいい。

 歩行時の気分を盛り上げるために音楽を使うというのは、おそらく人類の歩行の歴史とともに始まったのではないか。

 獲物を求めて遠い狩場まで狩猟に出かけていた原始人たちは、道中、長旅の疲れを克服するように、みんな一斉に歌のようなものを口ずさんでいたのではないかという気がする。
 そもそも行進曲というのは、歩行という行為を景気づけるために発達してきたようなものだ。

 そう考えると、運動を目的としたウォーキングのときに使う音楽には「軍歌」とか「行進曲」もありだ。
 たとえば、旧帝国日本海軍の『月月火水木金金』などは妙な悲壮感もなく、かつあまりイデオロギッシュでもないので、けっこう気楽に聞ける。

▼ 日本海軍の軍歌「月月火水木金金」

  
  
 いろいろな行進曲を拾ってみたけれど、やっぱり自分の歩行のリズムに一番合ったのは次の曲。

▼ 映画『ベンハー』(1959年)より「勝利の行進」

 『ベンハー』という映画は、(Wikipedia を読むと)1907年に最初の映画化が行われ、1925年の映画化で評判を取り、さらに1959年、2003年(アニメ)、2016年と、全部で5回映画化されているという。

 しかし、今日多くの人が『ベンハー』というタイトルでイメージするのは、1959年にチャールストン・ヘストン主演によって映画化されたウィリアム・ワイラー監督の作品だろう。
 私は、この作品を持って、ハリウッド製歴史映画の頂点を成した作品と見なすことをいまだにためらわない。

 興行収入からいっても、観客動員数からいっても、たぶんこの映画を超えるハリウッド作品はたくさんあると思われるが、“華(はな)” という言葉を使えば、これにまさる華やかさと贅沢さとスケール感を持った作品はその後60年経っても現れていない。

 この1959年の『ベンハー』の大成功を追って、その後ハリウッドからたくさんの歴史スペクタクル映画がつくられるようになった。
 この手の映画の大ファンであった私は、その大半を観に行っている。

 以下のような映画は、だいたい公開時に劇場で観ている。

 『トロイのヘレン』(1956年)
 『十戒』(1956年)
 『ソロモンとシバの女王』(1959年)
 『ベンハー』(1959年)
 『スパルタカス』(1960年)
 『アラモ』(1960年)
 『エル・シド』(1961年)
 『キング・オブ・キングス』(1961年)
 『アラビアのロレンス』(1962年)
 『クレオパトラ』(1063年)
 『ローマ帝国の滅亡』(1964年)
 『天地創造』(1966年)
 『ブレイブハート』(1995年)
 『エリザベス』(1998年)
 『グラディエーター』(2000年)
 『アレキサンダー』(2004年)
 『キング・アーサー』(2004年)
 『トロイ』(2004年) 
 『キングダム・オブ・ヘブン』(2005年)
 『ロビン・フッド』(2010年)

 これらのハリウッド製歴史スペクタクル映画のなかでも、1959年の『ベンハー』は、やはり群を抜いている。
 それに多少でも迫るものといえば、1961年の『エル・シド』と2000年の『グラディエーター』ぐらいである。

 ちなみに、以上の映画を私的に順位付けすると、ベスト5は次のようになる。

 ① 『ベンハー』(1959年)
 ② 『グラディエーター』(2000年)
 ③ 『エル・シド』(1961年)
 ④ 『アラビアのロレンス』(1962年)
 ⑤ 『キングダム・オブ・ヘブン』(2005年)

 『ベンハー』を1位に置いたのは、やはり「スペクタクルシーンというのはこういうふうに撮るものだ !」というカメラワークの圧倒的な技量が際立っているからだ。
 たとえば、下は戦車競走が始まる前のパレードシーン。
 (もちろんこのパレードのときの音楽も私のウォーキングBGMのひとつに取り入れている)

▼ 『ベンハー』 戦車競走のパレード

 この画面には、後のCGによるスペクタクルシーンでは表現できないような本物の手触りがある。
 何千人というエキストラを使った群衆シーン。
 ハリボテとはいいつつも、実物大に作られた巧妙なブロンズの巨像。
 おそらく絵であろうと思われるけれど、違和感なく仕上げられた遠くの山の風景。

 何よりも息を吞むのは、一糸乱れぬ足並みでコーナーを回るときのチャリオット(古代型戦車)の動きだ。
 コーナーの内側の馬たちは歩調を小さく取り、コーナーの外側の馬たちは歩調を大きく取り、見事に鼻ヅラを一直線に揃えながらコーナーを回っていく。

 4頭立てチャリオットを操るのは、おそらく古代ローマの実際の騎手たちだってそうとう修練が必要だったと思われるが、それをチャリオットを操る習慣のない現代人たちが、よくまぁここまで練習したものだと思う。

 こういう映像は、ぜったいCGなどで表現することはできない。
 贅沢なのだ。
 生身の人間が何週間もかけて、苦労しながらチャリオットの制御方法を練習し、それにかけた時間とコストがそのまま画面にあらわれている。

 ちなみに、チャリオットレースの映像は下記を。
 歴史スペクタクル映画のいちばんエキサイトシーンは「戦闘シーン」だと相場が決まっているが、この映画は戦闘シーン以上に観客を興奮させる映像があることを実証した。

 特に、プロのスタントマンによる凄絶な転倒シーンもCGでは表現できない。
 今はこういう命を張れるような名スタントマンがいない。

▼ 『ベンハー』 戦車競走シーン 

 あらゆる意味で、『ベンハー』の作品的偉大さは際立っているけれど、しかし、さすがに、映画全体に流れるユダヤ教的なイデオロギーの強さだけはちょっと腹にもたれる。

 この映画のテーマは “キリストの奇跡” を実証するというものなのだが、そういう宗教的なテーマを臆面もなく前面に掲げられたというのも、当時のハリウッド映画界がいかに強大なユダヤ資本のもとに置かれていたことを示すものだといえる。

 話がだいぶ脱線したが、ウォーキングに適した音楽の話に戻る。

 次も映画にまつわる話。
 近代の戦車隊同士の戦いを描いた映画だ。
 
▼ 映画『バルジ大作戦』から「パンツァーリート」

 『バルジ大作戦』(1966年)は、第二次大戦中のヨーロッパにおける連合軍戦車隊と、ナチスドイツ軍の戦車隊の激闘を描いた映画。
 ここで展開しているシーンは、ドイツ軍の西部戦線司令室がある地下壕で、戦車隊の指揮を取るヘスラー大佐とその部下たちが、「戦車兵の歌(パンツァー・リート)」を合唱しているところである。

 この映画の主人公たち(ヘンリー・フォンダやロバート・ライアン)は連合軍の戦車軍団を指揮する人々だから、ドイツ軍のヘスラー大佐(ロバート・ショー)はその “敵役” に当たる。
 しかし、今日『バルジ大作戦』というと、ほとんどの人がこのヘスラー大佐の方を主人公だと勘違いしてしまう。
 それほど、カッコいいのだ。

 では、ヘスラー大佐というのは、どういう人物なのか。 
 敵に対しては冷酷非情。
 部下に対しては厳格。
 「人間の情」という不安定なものを信じるよりも、「機械の正確さ」を好むという、誠に世界最強のティーゲル戦車軍団を率いる将校らしい人物として描かれている。

 そのヘスラー大佐が、ドイツ軍の地下壕の指令室で、新兵を閲兵する。
 戦車の何たるやも知らず、ましてや実戦の経験のない若者たちの顔を見ながら、大佐は「Boys … too many boys」(ガキばかりじゃないか !)と軽蔑したような厳しい視線を向ける。

 すると、ヘスラー大佐の意気を感じた新兵の一人が、おずおずと「パンツァーリート」を歌い出すのだ。
 それに合わせて、新兵たちの合唱が始まる。

 ♪ 嵐でも、雪でも、日の光さすときも、
   うだるような昼、凍えるような夜、
   顔がほこりにまみれようと、我らが心はほがらかに
   我らが戦車、風を切り、突き進む。

 その様子をじっと眺めるヘスラー大佐の表情が次第に変わってくる。
 そして、自分の副官にも「一緒に歌え」と命令し、最後には自分も口を大きく開けて合唱の仲間に加わる。

 つまり、このシーンは、「人間」というものを信じなかったヘスラー大佐が、はじめて新兵たちの「心意気」に触れ、人間同士の連帯が生まれた瞬間をとらえた映像なのだ。
 だから、このシーンは『バルジ大作戦』でももっとも感動的なシーンになっている。

 ヘスラーは敵役だから、最後は連合軍戦車隊の砲撃を受け、自分の戦車の中で火だるまになって死ぬ。
 しかし、彼は重傷を負いながらも、最後まで戦闘をあきらめず、言うことをきかなくなった身体をくねらせながら、戦車の操縦席ににじりよっていく。
 
 そのとき、彼は自分自身を鼓舞するために、かつて新兵たちと歌ったこの「パンツァーリート」を歌いながら燃え尽きていくのである。
 
 そんなわけで、この「パンツァーリート」もまた、私のウォーキングのときの必聴曲となっている。
 これを聞きながら歩いていると、自分が戦車隊を指揮しながら、荒野を走破しているような気分になってくる。

 ウォーキングを続けるコツとは何か。
 それは「物語」を持つことである。

 「健康」のためのとか、「節約」のためとか、そんな実用性ばかりを意識したウォーキングはやがて飽きる。
 それよりも、歩いているときの自分が映画の主役のような気分になれるかどうか。
 そういう感性と想像力がウォーキングを続ける秘訣であるような気がする。
  
  
参考記事 「『バルジ大作戦』 男の子はこんなシーンに泣く」
 
 

カテゴリー: 映画&本, 音楽   パーマリンク

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