悲劇のヒロイン

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 2017年の衆議院選挙は、まだ公示前だというのに、およその勝敗が決したような気がする。
 小池新党(希望の党)の予想外の大敗。
 たぶん、そんな決着を迎えそうな気がしてならない。

 もちろん、マスコミはそう予想していない。
 「希望の党」が自公政権を倒すまでには至らなくても、民進党に代わる野党第一党の位置に躍進し、今後も政局を動かす原動力になるだろうと見ている。

 はたしてそうだろうか?
 選挙後に、「希望の党」は “野党第一党” にはとどまるかもしれないが、その政治的存在感は、選挙前に比べると、おそらく相当零落しているはずだ。
 
 そう予想する根拠は、この党の代表に就任した小池百合子氏の人間性にある。

 けっきょく、この人は「他人」を巧みに利用するスキルだけで、ここまで生きてきてしまったのではなかろうか。
 彼女は、常に政界の流れを読み、そのつどそのつどもっとも勢いのある政治家に寄り添うように、転身を繰り返してきた。
 そして、その政治家に陰りが見えたときには、鮮やかに身をひるがえした。
  
 そうやって生き抜いてきた経験から、彼女の顔は「仮面」のような鋼鉄の皮膚に覆われた。 
 だからその微笑は、やはり冷たい。
 どんなに温かそうな笑顔をとりつくろっても、その裏側にある荒涼とした虚無が、ぽとりとこぼれ出てしまうのだ。

 多くのニュース報道で言われるように、彼女には “側近” がいない。
 仲間も、同志もいない。
 周りにいるのは、“家来” だけ。
 そう喝破した評論家がいる。

 若狭勝氏も細野豪志氏も、けっきょく “党員” としては信用されておらず、使用人のように使われたのでないかと、その評論家はいう。

 若狭氏も細野氏も、「希望の党」の立ち上げをまったく知らされていなかった。
 両者とも信頼されていなかったのだ。
 若狭氏などは、「しばらくテレビに出るな」とまで言われたらしい。

 小池女史のワンマンぶりは、都政においても徹底しているらしく、都議団のなかで第一党となった「都民ファーストの会」でも、マスメディアに向けての個々の議員の発言は禁じられていると聞く。
 党のイメージを損ねるような失言が出ることを警戒してのことだろう。

 都政においても国政においても、国民が最終的に選ぶのは議員個人であるはずなのに、「都民ファースト」においても「希望の党」においても、そこに所属する議員個人の “顔” は希薄だ。

 どちらの組織も小池百合子を “頭” とした蛇の胴体に過ぎない。
 すなわち、小池女史の作る組織の構成員には、蛇の体のように “手足” がないのだ。
 
 そういった意味で、大蛇の頭となって、すべてを一人で切り盛りしている小池氏の頭脳はすごいと言わざるを得ない。
 
 ただ、そうとう孤独な頭脳であろう。
 参謀のいない女将軍。
 常に独りぼっちの闘将。
 
 “華やかな女傑” というイメージとはうらはらに、なんとなく悲劇的エンディングが待っていそうな人である。
 
 おそらく、今回の衆院選は、後世「小池の乱」と呼ばれるような騒動として人々に記憶されるだろう。
 そうして、彼女は “安倍一強” に果敢な戦いを挑んだ「反逆のヒロイン」というレジェンドに包まれることになるだろう。

 我々は過去の歴史のなかで、そういう悲劇のヒーロー、ヒロインをたくさん見ている。
 古代ローマ帝国に戦いを挑んで捕虜の憂き目に遭ったパルミラ王国の女王ゼノビア。

 同じく、古代ローマの城門にまで攻め上りながら、最後はローマに追い詰められて毒を仰いで死んだカルタゴのハンニバル。

 あるいは、シーザーに戦いを挑んで処刑になったガリアの若き君主ウェルキンゲトリクス。
 大和政権に果敢に戦いを挑んで俘虜となった蝦夷の長アテルイもそのような人間の1人かもしれない。
 
 たぶん小池氏の名前も、そういう栄光ある敗者の名前として人々の記憶に残るだろう。
 国政でも都政でも、たぶん彼女は何一つ成果を上げられないだろうけれど、最盛期の安倍政権に真っ向から戦いを挑み、安倍をあそこまで追い詰めた “女武人” としての名前を僕らは記憶にとどめることになるだろう。

 10年後、彼女は何をしているのだろうか。
 もちろん、政治家としての命運は尽きているだろうけれど、あれほどメディアを手玉に取ることに長けた人だけに、政治評論家として珍重されているかもしれず、タレントとして重宝されているかもしれない。
 そのとき、彼女のマネージャーとなって、各局のワイドショー出演を管理しているのは、もしかしたら若狭氏かもしれない。
 
  

カテゴリー: コラム&エッセイ   パーマリンク

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