米中戦争が起これば、中国が勝つ ?

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 5年に1回の中国共産党大会が開かれ、習近平主席の独裁的権限が一層強化されたようだ。

 

 習近平主席は、大会中の演説において、
 「2050年までには社会主義国家としての “強国” となり、世界に大きな影響力を持つ」
 と強調し、
 「中国人民軍を世界一流の戦闘集団に変革する」とも宣言したらしい。

 こういうあからさまな “国威発揚” 宣言は、憲法に自衛隊の名前を明記するかしないかというだけで国論が割れるような日本では考えにくいことだが、そのような戦闘的膨張政策が、世界のリーダーたちの今のトレンドなのかもしれない。

 特に、アジア・ユーラシアの国家元首たちは、みな一様に独裁権を強化し、古代帝国の栄光を回復しようとしている。
 ロシア帝国の新ツァーリとして君臨するプーチン首相。
 オスマン帝国のスルタン復興を夢見るエルドゥアン大統領。
 そして、秦、漢、唐、明、清という歴代中華帝国の皇帝の道を歩み始めた習近平主席。

 しかし、その本気度において、やっぱり中国は突出している。
 なにしろ、中国には、アジア諸国の “帝王” としてふるまってきた3000年の歴史がある。他の新帝国は、その歴史の古さにおいて中国に及ばないのだ。

 習近平主席も最近はそれを意識しており、毛沢東皇帝を祖とする “中国共産党王朝” の新皇帝としての権威付けに腐心するようになった。

 中国と北朝鮮の関係がぎくしゃくしてきたのは、中国がアメリカのプレッシャーを受けていやいや北朝鮮に圧力をかけているというよりも、習近平氏が、「東アジアに二つの王朝はそろそろ要らない」と思い始めたからだろう。
 事実、中国の方がアメリカよりも先に北朝鮮に軍事介入するのではないかという、という観測もある。

 中国の世界制覇構想は、北朝鮮などと違って、統治のビジョンが明確である。
 どの政策も、すでに過去に実験済みのプロジェクトばかりだ。
 「一帯一路」という経済圏構想は、まさに漢・唐の時代に西域経営を目指した古代シルクロードの再現だし、東シナ海への進出は、明代の武将である鄭和(ていわ)が意図した海洋国家構想の現代版である。

 中国の東シナ海や南シナ海への膨張政策は、日本のみならずベトナムやフィリピンでも懸念されているが、実は、基本的に中国には「他国に侵略する」という発想が乏しい。
 侵略というのは、占領すべき土地をあらかじめ “他国の領土” と認めることが前提だが、そもそも中国においては、伝統的に “他国” という概念が希薄である。
 要は「中華思想」。
 すなわち、自分自身が常に “世界” の中心(中華)を占めているのであり、中心から外れているエリアは、単なる “周縁” に過ぎないのだ。

 中国にとって、文化や言語を異にする周辺諸国は、中国と対等な独立国ではなく、いずれは中国文化を学ばせ、“中国の徳” を統治理念に据えた国家として教育してやらねばならない対象なのだ。
 
 「中国の徳」とは、かつては儒教的な統治理念であり、現在は共産主義の指導体制のもとに進められる開放経済である。
 
 清朝が滅びるまで、歴代中国の王朝は周辺の国をそんなふうに考えていたから、日清戦争で日本に負けたことは彼らにとっては青天の霹靂であったし、一生涯かけてもぬぐい切れない民族的汚点となった。

 そういうトラウマは、中国政府の一貫した対日感情として受け継がれており、最近になって、諸外国から経済大国とみなされることによって、ようやく彼らのメンツも回復されるようになった。
 
 
 現在、中国共産党は、「経済大国・軍事大国」としての自尊心を国民に植え付けることによって、国威高揚を図っている。

 そういう国民のナショナリズムを持続させるために、政府は天安門事件以降、政府を批判する国民の声を徹底的に弾圧するようになった。
 そのような言論統制は、新聞やテレビなどの既成メディアにかぎらず、現在はネット言論に至るまで徹底されている。

 日本人は、そういう中国政府の言論弾圧の姿を見るにつけ、中国政府を独裁的で、非民主主義的な政権であると思いがちである。
 しかし、それは統治理念の問題というよりも、むしろ歴史の問題である。

 日本人は、大規模な百姓一揆が起こったりして、政府が転覆するという経験を過去にほとんど持っていない。
 しかし、言語も違えば宗教も違う異民族が混在する中国では、昔からささいなことをきっかけに内乱が起こる率が非常に高かった。
 
 そもそも、歴代の中国王朝は、国境の外からやってきた異民族によって征服されるよりも、むしろ、腹をすかせた自国民の反乱によって転覆させられた方が多かったのだ。

 そういう危機的状況は、今も変わらない。
 中国共産党は、この膨大な人民がひとたび反乱を起こせば、大陸全土が四分五裂になることをよく知っている。

 だから、歴代の中国王朝は人民が権力に目覚めることを極度に恐れてきたし、現在の中国共産党も、「人権」などという思想が人民に広まることを極端に警戒している。
 欧米流の「民主主義」などというのは、中国共産党にとっては悪魔の思想である。

 もともと中国は、アジア随一の大農業国であったから、養える人口の数が周辺国とは比べものにならないほど多かった。
 そういう国では、逆に1人ひとりの「命の重み」というものは軽くならざるを得ない。

 モンゴル高原の騎馬民族「匈奴」と戦っていた漢の武帝は、匈奴の馬と同等の性能を有する西域の駿馬(汗血馬)を1頭を手に入れるために、500人ぐらいの兵士が命を失うことに何のためらいを持たなかった。

 今の中国政府にも、いまだにそういう思考は残っており、地方の工業化を推進するために、地域住民に環境的犠牲を強いるなどという例は相変わらず後を絶たない。

 こういう人命軽視の思想は、中国人民軍にも浸透している。
 人民軍の戦略は、常に人的消耗戦に持ち込んで、敵を圧倒することである。

 中国人民軍のある将校は、アメリカと戦争が始まっても、最後は中国が勝つと試算しているらしい。

 その根拠は人口の数。

 アメリカの人口3億。
 中国の人口14億。
 人民軍将校の試算によると、アメリカ軍の戦闘力によって、半数近い中国人が死んでも、半数の6~7億は残る。
 その6~7億の中国人が武器を手にアメリカ本土に渡れば、人口数でアメリカを圧倒し、最終勝利をものにすることができる。

 …… とかいう話もあると聞く。ウソかもしれないが、中国軍なら考えそうな話だ。

 こういう発想で戦争に臨む国を相手にしたら、絶対勝てっこない。
 だから、何が何でも戦争を回避する手段を考えなければならない。

 そうするには、どうしたらいいか?

 1人でも多く、親日気分になってくれる中国人を増やすしかない。
 彼らにはどんどん日本に来てもらって、寿司を食ってもらって、日本製化粧品や龍角散を大量に買ってもらいたい。
 そして、いろんな観光地を回ってもらって、「日本人はいい人多いね」と理解してもらいたい。
 
  
関連記事 「中国式世界帝国の未来」
 
 

カテゴリー: コラム&エッセイ   パーマリンク

米中戦争が起これば、中国が勝つ ? への4件のコメント

  1. 江草乗 より:

    中華思想に関してのくだり、なるほどと思います。

    実は私は自分のブログで、北朝鮮問題の決着の付け方について書きました。
    「北朝鮮の脅威を一瞬で解決する方法」
    http://www.enpitu.ne.jp/usr4/bin/day?id=41506&pg=20170916

    トランプと習近平が密約を結んで
    習近平に北朝鮮を占領させるという戦略です。
    中国にしたら領土拡張が実現し、北朝鮮の韓国による統一も防げるし
    しかも国連に対しても大きな顔をできるという一石三鳥の行動になる

    人民解放軍には実戦演習をさせられます。
    中越戦争以来の本格戦闘です。

    この決着に文句を付けるのは韓国だけでしょうし
    いずれ韓国は中国の軍門に降るでしょう
    北朝鮮は楽浪郡と呼ばれるのでしょうか。

    中国は世界を中国で統一したいと本気で思ってる気がします。
    インフレで崩壊したジンバブエでは人民元が流通してるそうだし
    中国のアフリカ支配はどんどん強まっています。

    もしかしたら日本も
    日米安保を解消して中国に朝貢するという屈辱外交をすれば
    案外うまくいくのかも知れません。
    まあ、それは30年後に本当に起きるかも知れませんが・・・

    • 町田 より:

      >江草さん、ようこそ
      江草さんの “北朝鮮論” たいへん面白く拝読いたしました。
      中国の北朝鮮への軍事介入論、ものすごく実効性が高そうです。

      メディアでよく言われるのは、「中国はアメリカの息のかかった韓国政府によって南北統一が実現され、朝鮮半島でアメリカ勢力とじかに向き合うことを警戒している」という見方です。そのために、「中国には、アメリカと敵対する北朝鮮という “緩衝地帯” が必要である」という結論になります。

      ただ、(いみじくも江草さんが提案されたように、)中国は伝統的に “陸の国家” であるため、領土的な野心がものすごく強い。だから、やっかいな政治的コントロールが要求される「緩衝地帯」より、より直接的な支配が及ぶ実効支配の方を望むようにも思えます。
      だから、アメリカよりも中国の方が先に軍事介入する可能性も十分ありますよね。

      今度の習近平氏の権力集中によって、富国強兵を実現するために、経済振興政策を前よりも進めるだろうから、日本企業にはチャンスだという見方を提示する経済評論家もいます。

      しかし、どういうジャンルの企業とタッグを組むか。
      それが非常に問題ですよね。
      なにしろ、北京の空気汚染のひどさから読み取れるように、今後の中国の経済強化は、下手すると地球環境汚染を進める方向に向かう可能性が非常に高い。
      だから、日本が中国系企業と手を結ぶときは、環境浄化ビジネス、あるいは省エネビジネスが良いのではないかと愚考する次第です。
       

  2. 稲妻捕り より:

    国家間のリアルな大戦争が、破壊を競い合う戦争であるのに対し、バーチャルな戦争は、破壊を抑止する戦争です。バーチャル戦争は米ソの核軍拡競争として戦われた東西冷戦から始まりました。両超大国による過剰な核の保有が核を使えない兵器にし、それが戦争をバーチャル化したのです。北朝鮮とアメリカは現在、その東西冷戦の歴史を反復しています。現在の冷戦、バーチャルな戦争は通常兵器による抑止の競い合いに移行しています。中国の国防費は一兆元を超えていますがアメリカの軍事力と拮抗するまで止めないでしょう。いずれにしろ、戦争の本質は、世界のどんな戦争であっても、国内政治的―権力闘争のヘゲモニーが基盤になっていることだけは間違いありません。

    • 町田 より:

      >稲妻捕りさん、ようこそ
      おっしゃるとおりですね。冷戦構造が崩壊して以降、核兵器を保有した大国間では、通常兵器による破壊的な戦闘よりも、物理的なダメージを回避するバーチャルな戦闘の方に向かっているというのは、そのとおりだと思いました。
      もちろん中国も、これからはそういう戦略で仮想敵国を迎え撃つ方法の精度を上げていくでしょう。

      ただ、世界のなかで、この国だけは通常兵器による “人的消耗戦” を可能にする過剰な人口を有しており、かつ歴史的にも、そうやって戦い抜いてきた伝統があります。だから、中国以外の国が、人命やインフラの損傷を避けて、バーチャルな戦略を打ち立てていくということに対して、中国は密かにそれを歓迎しているかもしれませんね。
      だからといっても、中国政府ももちろんそのへんはぬかりなく、バーチャル戦でも相手を出し抜く戦略を当然研究していると思いますが。
       

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