トランプ暴露本から見えてきたもの

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 トランプ大統領とその側近たちの “赤裸な” 実態を追求した暴露本がアメリカで話題を呼んでいる。
 ライターは、ノンフィクション作家のマイケル・ウルフ氏。
 その彼が、トランプ政権が発足するまで関係していた重要人物や、現政権の側近たちに綿密なインタビューを重ねて書いた本とされる。

 書籍名は、『炎と怒り(Fire and Fury)』。

 同書が話題を集めた最大の理由は、本の出版が決まった後に、その内容を知ったトランプ大統領が猛烈に抗議し、出版社に差し止めを迫ったことにある。

 「トランプが怒ったからには、ヤバいことが暴露されているはず ‼」
 と消費者はかえって好奇心を持った。
 そのため、あっという間にアマゾンの「全書籍の1位」となり、一気に「品切れ」になってしまったという。

 暴露の内容は多岐に渡っているようだ。

 「トランプ氏のあの独特の髪型にはどういう意味があるのか?」
 「ハンバーガーのようなファスト・フードが好きな理由はなぜか?」
 「メラニア夫人(↓)とはほんとうに仲が悪いのか?」

 そういう週刊誌の小ネタのようなものから、トランプ陣営を支えた側近たちの反目、大統領選のときの極秘工作、ロシア疑惑の真相など、かなりきわどい政治的裏話のようなものまで含まれていると聞く。

 しかし、多くの読者にとって、ショッキングなのは、トランプ氏にはそもそも大統領になる気などさらさらなく、大統領の座が確実になってきたとき、予想外の事実に直面したトランプ氏は茫然自失状態になり、「ファーストレディー」という面倒な地位に押し上げられることになったメラニア夫人は、自由がなくなることを知り、泣き出したということだ。

 大統領になどまったくなる気のなかった人間が、きまぐれに大統領選に立候補し、そして選挙に勝ち抜いて大統領になってしまった。
 民主主義政治の歴史が始まって以来、これほど不条理に満ちた現実があるだろうか?

 では、彼はなぜ大統領選に出馬したのか?
 暴露本の内容を紹介したメディアがいうには、“ビジネスマンとしての知名度を上げるため” だったという。

 負けてもともと。
 逆に勝ったら、面倒くさいことになる。
 しかし、大統領選で自分の名前が連呼されることによって、「トランプ」という “ブランド” が徹底的に認知されれば、それによって一儲けできる。

 だから彼は、大統領選をあたかもテレビCM効果を狙った “ショー” として戦ったのだ。ライバルを口汚くののしるトークも、反対派を攻撃するときの無礼なパフォーマンスも、すべて自分の存在を強く視聴者の焼き付けるための宣伝だった。

 大統領選後、政権の人材や閣僚の顔ぶれがなかなか決まらなかったのも、トランプが大統領になることをまったく考えておらず、そもそも大統領の仕事に興味がなかったからだといわれている。

 トランプ氏のそういう気分を知って、側近たちも気楽に選挙戦を戦った。

 娘のイヴァンカ嬢と、その夫のクシュナー上級顧問(↓)は、選挙戦で顔が売れれば “セレブ” として世界的に有名にもなれるだろうと語り合い、もしかしたら、トランプの後任として、娘のイヴァンカがアメリカ初の女性大統領になれるかもしれない、とたわいない夢想を楽しんだ。


 
 側近中の側近として、早くから選挙運動に携わったスティーブン・バノン氏(↓)は、トランプが大統領にならなくても、彼の選挙戦で自分の顔を売ることによって、異教徒や移民を排斥する白人至上主義的なイデオロギーを全米に浸透させるよいチャンスだととらえた。


 
 本のなかに、次のような一節があるらしい。 
 
 「トランプには政治的な信念や政策はない。すべての政策は、そのときに誰の意見が頭に残っているかで決まる。それは誰にも予期できないし、(間違った方針を)強く是正しようとすると、かえって逆効果になりかねない」

 初期のトランプ政権においては、右翼で白人至上主義者のバノン氏と、ウォール街の意向を大事にするイヴァンカの婿であるクシュナー氏の勢力が対立し合い、当日そのどちらの意見を耳にしたかによって、トランプ大統領のツィッター内容が決まったとも。

 さらに、こういう報告も。
 「トランプ氏は、本を最後まで読まないことを自慢していた」

 彼には、本を “知性” だと受け取る感受性はなかった。
 それよりも、「ビジネスで鍛えた」(と自信を持っている)自分の直感だけを信じた。
 別の報道で聞いたことだが、彼が生涯に読んだ本はたったの2冊。一つは聖書で、もう一つは自分の自叙伝であったとか。

 このように思想も、知性も、信念もなく、瞬間的なひらめきだけで行動する人間でも、テレビの言動が刺激的であれば、大統領になれる時代になったのだ。

 逆にいえば、アメリカという国は、「思想」も「知性」も「信念」もないリーダーの方がうまく運営できる国家になったということなのかもしれない。

 それはどういうことか?
 そういうリーダーこそ、資本主義の先端をいく社会に適合するからだ。

 「資本主義」は、“主義(イズム)” という名が付いているため、イデオロギーだと勘違いされてきた。
 「社会主義」とか「共産主義」などといったイデオロギーに対抗する自由主義陣営の経済思想を意味する言葉だと思われていた。

 しかし、「資本主義」は、イズム(思想)ではない。
 強いていえば、その場その場において、目ざとく「利潤」を見つけ出し、それを貪欲に喰い尽していく怪物のような “運動体” である。

 だから、資本主義には、「博愛の精神」も「慈悲の心」もなければ、「理念」も「理想」もない。
 それは、統治理念を無視できない「政治」のコントロールの外にあるものであり、利潤の匂いだけが、その運動体の方向を決定する。

 その運動体の移動のあとに、経済格差や不平等社会が残されようが、その足取りがあまりにも力強いため、それを阻止しようとした「共産主義」のようなあらゆる思想を自壊に追い込んだ。

 そういう “運動体” の代表者として、トランプが君臨している。

 というか、アメリカの資本主義は、ついにそれにふさわしいリーダーを得たというべきなのかもしれない。
 きまぐれ、その場しのぎ、近視眼的な政策を繰り返すトランプ政治というのは、まさに資本主義の運動そのものだ。

 トランプが、ことごとく前大統領のオバマの政策をくつがえしていくのには理由がある。
 オバマは、反資本主義的だったからだ。
 オバマが関心を示した「パリ協定」や「核廃絶宣言」など、資本主義の利潤追求には何の得にならない。

 資本主義がめざすのは、地球の将来を見越した制度設計などではなく、目先の利潤なのだから、エコとか地球環境の保護などというものは、(それが壮大なビジネスチャンスを生むものではないかぎり)、意味がない。

 そのトランプが、大企業寄りとはいえ、税制改革を打ち出し、アメリカの経済に空前の好景気をもたらせている。
 その余波が日本にも押し寄せ、日本も好景気に沸いている。
 彼は、やっぱり資本主義精神を体現する “スーパーヒーロー” なのかもしれない。

 ちなみに、トランプ氏のあの髪型は、頭頂部の髪の薄さを隠すためのヘアスタイルであり、彼がハンバーガーを好むのは、毒殺を恐れてのことだという。

 大統領専用の食事ならば、暗殺者に毒を盛られる恐れもあるが、フラッと立ち寄るハンバーガーショップの店員ならば、まさか大統領が立ち寄るなど思いもしないから、毒など盛っている余裕はない。
 暴露本はそう伝えているらしいが、それが大統領の真実の声かどうかは分からない。
 
 

カテゴリー: コラム&エッセイ   パーマリンク

トランプ暴露本から見えてきたもの への2件のコメント

  1. Racet より:

    『トランプ大統領暴露本』の内容紹介有難う御座います。
    トランプ大統領の就任以来、状況に合わせて、言動がコロコロと変わるので、保守なのかリベラルなのか分からない不思議な大統領だと思っておりましたが、内容を読んで、ストンと腹落ちしました。

    トランプ大統領が誕生してしまった背景には、経済格差の拡大と、オバマなどのリベラルファシスト勢力による差別の横行がある様です。

    先日、報道番組で、米国の地方の白人にフォーカスしていましたが、意外とトランプ大統領を支持される方が少なく無い様でした。

    公の場で、『黒人はプライドを持とう』『ヒスパニックはプライドを持とう』と主張しても誰も批判しないのに、『白人はプライドを持とう』と主張すると、リベラルファシストから『偏見だ!差別だ!』と激しく弾圧されるそうです。
    また、クリスマスに『メリークリスマス』と公に言うと、『イスラム教徒への差別だ』と弾圧されるので、最近は、クリスマスの祝いの言葉は『ハッピーホリデー』と言わざるを得ないそうです。

    あまつさえ、公務員の採用に関しても、人種枠が設定されており、白人の場合、試験に合格しても採用されないのに、人種枠が空いているという理由で、黒人が試験不合格でも繰り上げ採用されたりする、白人に対する就職差別も行われているそうです。

    2016年の大統領選挙で、金融資本家、大手マスメディアに支援された、リベラルファシストの代表格・ヒラリークリントンが当選すると誰もが思っていましたが、リベラルファシストに差別され、弾圧されている『穏健保守派の白人達』の『声なき声』が、トランプ大統領を誕生させた要因の様です。

    • 町田 より:

      >Racet さん、ようこそ
      ご丁寧なコメント、ありがとうございます。
      Racet さんがおっしゃることは、『ワシントン・ポスト』などに代表される米国リベラルメディアが見ようとしなかったトランプ政策の別の一面を見事にいい当てていると思いました。
      アメリカでトランプを支持している人々の心情も具体的にレポートされており、勉強になりました。

      トランプ大統領の一番の特徴は、「理念」を持たないことですね。すなわち「イデオロギー」とは無縁の大統領だということでしょう。
      逆にいえば、徹頭徹尾「ビジネス」を意識した政権運営を目指していて、そういった意味では珍しい大統領かもしれません。

      アメリカの歴代大統領は、「まず理念ありき」で世界と対峙してきました。たとえば、「奴隷を解放して人間として認める」とか、「共産主義政権に対抗して自由主義を守る」とか、あるいは「地球温暖化の防止や核兵器の廃絶に取り組む」など “世界の盟主” としてのアメリカの思想を高く掲げて政権を運営してきました。
      しかし、トランプは違いましたね。

      彼は、「今この時点でアメリカが儲かるためには何をすべきか?」という視点でずっと動いています。
      だから、彼の行動は読めないのです。
      刻々と変化する社会や経済の動向に合わせて、どう商売するかと考えながら、次の手を打っていくから。
      それは、昨夜言ったことと今朝言ったことが違っていても、まったく気にしないということです。

      理念に縛られた政治家は、そのようにはできません。「北と南の民族融合」などという理念にこだわる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領など、自分の理念にがんじがらめにされて哀れなものです。

      ただ、トランプ大統領のやり方は、今は経済が好転しているため支持者もエールを送っていますが、いつまで通用するかどうかは、疑問ですね。

      経済が活況を呈しているといっても、その中心は軍需産業であり、これは戦争がなくなってしまえば儲からない産業です。
      したがって、常に戦争を煽り続けないかぎり、自国の繁栄を支え切れない。
      それは非常に “不安定な好景気” であって、それがために、アメリカのみならず、世界中が自国の政権運営に不安定要因を抱えていくことになるでしょう。

      また国内における支持者 … 「ラストベルト」といわれる地域に住んでいる低所得の白人労働者たち。この人たちが、いったいいつまでトランプを支持するか。
      現在のアメリカの好景気の恩恵が、もしこの人たちに及ばなければ、彼らは「裏切られた ‼」と思うかもしれない。

      現在のトランプの税制改革などはかなり大手企業寄りですから、低所得白人労働者層に仕事が回るまでにそうとう時間がかかるかもしれないし、仕事が回らないかもしれない。

      そういった意味で、トランプの進める政策は、かなり不安定な要素が多いので、今の状況がどれだけキープできるか分からないところがあります。

      ただ、人間は、合理的な経済保証とか理詰めの政治運営だけでは動かないものです。
      かなり感情に左右される動物です。

      そういった意味で、Racet さんがご指摘されたとおり、「不遇をかこってきた」と耐えてきた白人低所得層が、トランプ政権の誕生によって、“ウォール街” と繋がっていた民主党政権が潰れたことに溜飲を下げたことは事実ですね。
       

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