ナッツRV 荒木社長の企業戦略

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大量生産は「量」を増やすことだと思うと、
勘違いする。それは「質」の進化をうながすことだ

 
 
 今年2月初旬に開かれた「ジャパンキャンピングカーショー2018」の会場にて、国産キャンピングカーのトップビルダーであるナッツRVの荒木賢治代表から、同社の製造・販売の目標や将来の夢、車づくりの “哲学” などを聞かせていただいた。

 時間にして1時間を超える取材内容のなかには、なごやかな雑談も含まれたし、オフレコの話もあった。
 しかし、ナッツRVのフラッグシップモデル「ボーダー」への思いや、渾身の電装システムである「EVOLUTION SYSTEM(エボリューションシステム)」開発の狙いなど、現在のナッツを支えるすべてのプロジェクトの陣頭指揮を執った人の解説は、さすがに力がこもっており、聞いていても圧倒された。


 
 それらの技術的な話や、ナッツRV創業期から現在に至る歴史などについては、下記のWEBサイト(↓)に詳しく書いた。
 https://camping-cars.jp/taidan/3704.html
(※ キャンピングカー情報総合WEBサイト 「キャンピングカースタイル」)

 興味のある方は、そちらに飛んでいただくことにして、このブログでは、一般的な商品情報からは少し離れ、企業戦略および経営哲学といった、いわば思想性を帯びた話だけを抜き出すことにする。

 ナッツRVは、現在、北九州に敷地4千坪の本社工場を持ち、ほかに中国工場とフィリピン工場を稼働させている。また今年度には国内に大規模なパネル工場を建設する予定もあるという。
 従業員数は、国内だけで120名強。中国とフィリピンで働く従業員を加えると、総勢370人程度の規模だ。

 これらの数値を紹介するだけで、ナッツRVがこれまでの国産キャンピングカーメーカーに比べてケタ外れに巨大な生産システムを構築していることが分かる。
 そのような大規模生産体制を、耳慣れた言葉で「大量生産」と呼ぶ。
 
 これまでの日本のキャンピングカーメーカーの多くは、家族および少数の従業員による “家内制手工業” 的な生産規模を維持してきた。
 当然、そういう工場でつくられるキャンピングカーの台数は少ない。
 しかし、「日本のマーケットは小さいのだから、それで十分なのだ」という意見がいまだに大勢を占める。
 そこにナッツRVは、変革のクサビを打ち込もうとしている。
 その狙いはどこにあるのか?

 当日私との間に交わされた次のような会話から、荒木代表が考える “車づくりの哲学” のようなものが見えてくる。

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【町田】 ナッツさんの車の特徴といえば、ひとつにカラーリングの美しさがあります。これはやはりアルミパネルを効果的に使っているところからもたらされるものなんですか?

▼ アルミボディのクレア

【荒木】 アルミは平滑性がありますからね。ペイントした状態がものすごくきれいになるという特徴があります。さらにアルミを多用すると、軽量化が実現できるし、リサイクル性もある。もちろんエココンシャスである。
 しかし、アルミは仕入れる段階までが大変だったんですよ。実は、全ヨーロッパで使うアルミ素材の80%ぐらいのシェアを持つオランダの会社まで行って、何度も交渉したんですが、ほとんど相手にしてもらえなかったんですね。「最低でも10トン単位で買ってほしい」 というわけです。
 しかし、10トンといえば、200台分ぐらいの量となる。はたして、そんな量を買って大丈夫なのかと。
 ずいぶん悩みましたけれど、開発技術の将来性のことを考えると、今後の世界の趨勢はアルミ化の方向だろうと。その先行投資だと思って決断しました。

【町田】 やはり、大量生産ができるかできないかで、キャンピングカーづくりの根源的な部分が変わってきてしまうということですね。
【荒木】 そのとおりです。大量生産というのは、単に同じような品質のものを大量につくることではないんです。商品の質そのものが変わってくる。私たちのアルミボディもそうですが、部材を大量発注・大量生産できる体制そのものがキャンピングカーに質的な進化をもたらすんですね。

【町田】 そこのところが、なかなか日本のキャンピングカーメーカーさんには理解されにくいところですね。
【荒木】 そうかもしれません。けっきょく日本のキャンピングカーづくりと、欧米のキャンピングカーづくりの差を一言でいえば、日本のキャンピングカー業界には大量生産するノウハウがないということです。

【町田】 それがないと、どうなるのでしょう?
【荒木】 高品質を維持したまま安い価格の商品というものがつくれない。
 僕は、キャンピングカーを年間1万台ぐらいつくっている会社をいろいろ見てきました。ヨーロッパではハイマー、ホビー、デスレフ、クナウス、アドリア。オセアニアではオーストラリア・ジェイコとかね。 
 そういうところでは、もうパーツを全部ラインで流して、流れ作業で組み立てているわけです。そういう手法を採らないかぎり、製品の均質化も図れないし、コストを下げることもできない。
 コストが下がれば、販売価格も下げることができますから、多くの人が買えるようになる。
【町田】 それがキャンピングカーを普及させる早道というわけですね。
【荒木】 私はそう思っています。
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 以上のインタビューから読みとれるのは、「大量生産」システムの構築が、すでに荒木代表の商品開発哲学になっていることだ。
 理論的にいうと、これは1908年にヘンリー・フォードが確立した “T 型フォード” の思想である。20世紀の製造業は、すべてこのフォードの理論を踏襲して成長していったものばかりだ。
 だから、近代産業の歴史を知る者にとっては、ナッツの営為は「何をいまさら」と思えるようなものかもしれない。

▼ T 型フォードの生産ライン

 しかし、忘れてならないことは、T 型フォードが、あきらかに自動車の歴史を変えたことだ。
 いや、自動車の歴史を “つくった” と言い直してもいい。
 ヘンリー・フォードは、自動車の歴史をつくっただけでなく、同時に「自動車のマーケット」をつくったのだ。

 フォードが「大量生産」を打ち出す前まで、世界のどこにも「自動車マーケット」というものは存在しなかった。
 荒木氏は、それから110年経った極東の日本という地域で、ヘンリー・フォードにならって「キャンピングカーマーケット」というものを、はじめて掘り起こそうとしているのかもしれない。

 ただ、マーケットというのは、商品の供給体制が整ったからといって自動的に発生するものではない。当然のことだが、その商品を求める購入者があってはじめて成立する。

 日本RV協会(JRVA)の発表する『キャンピングカー白書』最新版によると、日本の国産キャンピングカーおよび輸入キャンピングカーの出荷台数や総売り上げはゆるやかながらも右肩上がりの成長を維持しているという。

 しかし、日本のキャンピングカーの総保有台数は、統計を取り始めて以来約10年経ったというのに、いまだに10万台を超えた程度にとどまり、2016年単年度のキャンピングカーの新車販売台数は、国産車・輸入車合わせて5,364台。2016年の日本の乗用車の新車・登録販売台数(4,970,260台)と比較すると、その1,000分の1程度でしかない。
 
 はたして、日本には、本当にキャンピングカーが根付く土壌があるのだろうか。

 荒木代表は、「土壌」というものは “つくり出す” ものだという。
 どうやって、つくり出すのか?
 それが「文化の力」だという。
 
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【荒木】 けっきょく「文化」という形にまで昇華させないと、キャンピングカーなどは普及しないんですね。
 日本の風土を考えると、ある意味、恵まれてすぎているんです。観光地の周辺にはホテルがいっぱい建っている。道中にはファミレス、コンビニ、高速のSA・PAなどというインフラが整備されている。
 そういう社会では、「寝泊り可能な空間」としてのキャンピングカーをいくら宣伝してもほとんど説得力がないわけですよ。乗用車でドライブしてホテルに泊まればいいわけだから。
 要するに、「車内で寝泊りする “楽しさ” 」を訴えないかぎり、誰の興味も引かない。
 その “楽しさ” を人々の心に上手にイメージ付けさせる力が「文化」なんですね。
 たとえば、車に泊まることによって得られる「非日常的な面白さ」とか、「車を止めてこそ見られる幻想的な光景」とか。
 そういうように、ユーザーの想像力を刺激することこそ「文化」なのであって、今のキャンピングカー業界の広報に欠けているのは、その部分だと思っています。
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▼ ナッツRV「京都店」

 つまり、日本には、「キャンピングカーを買って楽しもうという気持ちにさせる文化がないから、マーケットが未成熟のままなのだ」と荒木代表はいう。

 「文化」とは何か?
 
 「僕は “文化” という言葉を、ひとつの文物が人々の生活に根付いている状態をイメージして使っています」
 と彼はいう。

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【荒木】 たとえば、「車中泊文化」といった場合、現象だけ取り出すと、単に「車の中に寝る」という意味でしかないですよね。
 しかし、その「車中泊」が、旅行というトータルな楽しみの一部として成立し、車の中で寝るためのノウハウも生まれ、家庭でも職場でも車中泊の経験や情報が面白い会話として成立する。そうなれば、もうそれを「文化」とみなすことができると思っています。
【町田】 つまり、「ライフスタイルにまで昇華したもの」という意味ですね?
【荒木】 そうですね。そういった意味で「車中泊」はもう立派な文化であると。
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 「文化」という言葉のこのような使い方が正しいのかどうか、私にはよく分からない。
 ただ、一つ言えることは、荒木代表が、「文化とは人々をその気にさせるものだ」と理解していることは、100%当たっている。
 「文化」とは、知識のことでもなく、教養のことでもなく、人々を何かに駆り立てる物質的な力のことである。

 そのことを荒木氏がはっきりと理解していることが、今回のインタビューから非常によく伝わってきた。ナッツRVという会社が、国産キャンピングカーの頂点に立っていることの秘密も、このインタビュー(↓)にすべて集約されている。
 
https://camping-cars.jp/taidan/3704.html
 
 

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