キャンピングカー業界が迎えた激動期をチャンスに変える

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トイファクトリー 藤井昭文 代表インタビュー 2018

 キャンピングカーの取材・報道の仕事に24~25年携わってきて、今ほどキャンピングカーそのものが大きく変わろうとしていることを感じたことはない。

 その変化は、車づくりそのものからも感じ取れるし、国産メーカーのなかからグローバルな視野を持ち始めた企業が出てきたことからも感じられる。
 さらには、業界の一部で組織再編成の動きが始まっていることからも伝わってくる。
 
 しかし、いちばん大きな変化は、なによりもキャンピングカーのベース車の変化だ。
 「自動車が変わろうとしている」
 それがいちばん大きな問題なのだ。

 キャンピングカーも、しょせんは自動車である。
 それも、乗用車メーカーが供給するベース車に架装することでキャンピングカーが成り立つわけだから、ベース車の変化は必然的にキャンピングカーにも変化をうながす。

 自動運転化
 EV(電気自動車)化

 世界の自動車はものすごい勢いで、そちらの方向にシフトしている。
 そういう時代を迎えて、キャンピングカーはこれからどういうスタイルを身に付ければいいのだろうか。
 バンコンビルダーのトップを走り続けるトイファクトリーの藤井昭文代表へのインタビューから、キャンピングカーの未来を占う話題を中心に拾ってみた。

自動運転技術はキャンピングカーを変えるか?

【町田】 最近の乗用車のCMなどを見ていると、国産車の大半が自動ブレーキを搭載して、障害物や通行人あるいは他の車両との接触を避けるような車両であることをアピールしています。
 こういう乗用車の新しい方向性は、やがてキャンピングカーにも反映されてくるものなのでしょうか?

【藤井】 まだ今のところは難しいですね。というのは、キャンピングカーの場合は同じベース車でも、ビルダーによって架装重量も異なるし、家具を配置するバランスも異なります。さらに、乗車定員や就寝定員も車によって変わってきますし、なかには、ベース車をボディカットした車両もあります。
 そうなると、自動ブレーキを作動させるためのセンサーも、何に焦点を合わせればいいのか絞り切れないんですよ。
 そういう理由から、自動車メーカーさんも、まだ自動ブレーキシステムを載せたベース車をどこのビルダーさんにも供給できないんです。

【町田】 なるほど。それはそうですね。
【藤井】 しかし、自動車メーカーさんと共同開発できるような車両ならば、可能性は出てくると思いますよ。
【町田】 トイさんの場合は、それを可能にしているんですか?

【藤井】 一部の車両ではすでに実現しています。実は、このたび私たちが開発した「101 T-SR」というチューニングブランド名を持つ車は、トヨタさんの自動ブレーキシステムである「トヨタ・セーフティー・センス」を搭載しているんです。つまり、昼夜を問わず、歩行者や他の車両、自転車などの動きを検知して、衝突回避や被害を軽減できるようなシステムを搭載しています。

※ 詳しくは「キャンピングカースタイル」 https://camping-cars.jp/taidan/3937.html 参照

【町田】 なるほど。さらにおうかがいしたいのですが、現在外国の自動車メーカーを中心に、高速道路内に限定した自動運転技術を実用化し始めていますよね。さらに将来は一般道においても自動車の完全自動走行を実現させるための研究が進められています。
 それにはまだそうとうな課題が残されていると思うのですが、もしそういう自動車が出てきたとしたら、それはキャンピングカーも変わっていくことになりそうですか?

【藤井】 そうなればキャンピングカーも劇的な変化を遂げるでしょうね。たとえば、ベース車が自動運転化されれば、キャンピングカーの乗員はみな対面ダイネットをつくって移動中からくつろげるわけです。すでに多くのキャンピングカーメーカーはそういうイメージを未来の商品に投影していると思います。
 ただ、やはり自動運転システムも誤作動を起こす可能性がありますから、そういうときにどう対応するか。
 そこのところで、自動車メーカーさんと緊密な連携を取れるビルダーじゃないと、自動運転キャンピングカーはつくれないでしょうね。

【町田】 もし、そういうキャンピングカーが現実のものとなれば、われわれのキャンピングカーライフはまったく違った次元に移行するのでしょうね。
【藤井】 キャンピングカーに限らず、カーライフ全般が変わるでしょうね。昨年の「東京モーターショー」を見学して驚いたのですが、車を使う人間のライフスタイルそのものが変わってきたことを示すブースがものすごく増えてきているんです。

【町田】 どう変わってきたのですか?
【藤井】 「車」というよりも、「家が走る」というコンセプトを訴えたものが目立つようになってきたんですね。
【町田】 わぁ、“キャンピングカーだ” 。
【藤井】 そうです。たとえば、介護が必要な家族がいる部屋があって、その部屋が自動車として簡単に切り離されるようになっているんですね。そして、家族が運転すれば、介護を受ける人がベッドに寝たまま病院に行けるようになっている。

▼ ホンダ「家モビ」Concept

【町田】 今の時代にぴったりのテーマですね。
【藤井】 そういうように、自動車の「概念」そのものが大きく変わろうとしています。

【町田】 そうなれば、キャンピングカーにも大きな飛躍のチャンスが訪れることになりますね。
【藤井】 確かにチャンスでもありますが、同時にピンチであるとも考えられます。
【町田】 どういうことですか?
 
 
運転手の要らない車社会が、すぐそこまで迫っている?

【藤井】 ベース車がEV化したり、自動運転化したりするということは、自動車メーカー同士の開発競争が激化していくことになるんですね。そうなると、当然技術上の秘密事項というものがどんどん増えていくことになります。
 そうなった段階で、自動車メーカーがどこまでキャンピングカービルダーのことを信頼してくれるのか。メーカーが自分たちの秘密を守るために、われわれに供給するベース車をものすごく限定してくる可能性はあります。

【町田】 ああ、なるほどね。キャンピングカービルダーにとっては「試練の未来」
が待っているかもしれないと … 。
【藤井】 キャンピングカービルダーだけでなく、現在自動車を使っている仕事全般が見直されるようになるかもしれません。
 一般道における完全自動運転が可能になってからの話ですが、そういう世の中になると、まず「運転手さん」が要らなくなる。バスの運転手さん、トラックの運転手さん、タクシーの運転手さんという仕事がなくなることも考えられます。

【町田】 恐ろしいような変化が待ち受けているわけですね。
【藤井】 そうですね。そういうように、「運転手がいない」車というものが生まれてくれば、それはもう(従来の意味での)車ではなくなるわけですね。中心となるユニットはコンピュターの塊りによって占められるようになるでしょうから、車と呼ぶより、もう「家電」と呼んだ方がふさわしいかもしれない。

【町田】 そうなった場合、キャンピングカーはどうなるんですか?
【藤井】 今までのような “キャンピングカー屋さん” じゃなくてもキャンピングカーをつくれる時代がきてしまう。
 たとえば、どこかの大手工務店さんが、「うちは内装が得意だからキャンピングカー屋さんよりも安く請け負いますよ」などといってくれば、われわれはそういう業者さんに一気に仕事をとられてしまうかもしれない。

【町田】 そうならないためには?
【藤井】 そういう時代が来る前に、軽量化の問題とか、安全性の問題などで、しっかりしたキャンピングカーづくりのノウハウを確立し、乗用車メーカーさんから「このビルダーは使える」と認知されるような実力を蓄えておかないとならないでしょうね。
 
 
リチウムイオン電池ブームに対する懸念

【町田】 安全対策なども、これからはシビアなものが要求されるでしょうね。
【藤井】 そうですね。たとえば、リチウムイオンバッテリーがいまキャンピングカー業界で脚光を浴びていますよね。
 しかし、現在の段階では、ビルダーさんレベルが開発したもののなかには、まだ不安定な要素を抱えたものも混じっているんですね。もちろん日産自動車さんがキャラバンに搭載しているようなものは別です。あれは乗用車メーカーが絶対的な安全性を謳い、「メーカー保証を付ける」といっているくらいですから、製品的にも信頼できるものだと感じます。
 しかし、民間レベルのものはまだ安全面の課題を残したものも混じっていると私は思います。

▼ 日産自動車のリチウムイオンバッテリー

【町田】 そういうことは、なかなか私の立場としては言いづらいですね(笑)。

【藤井】 いいですよ(笑)。「藤井の個人的な意見だ」ということにしておいてください(笑)。
 私が注意して見ているのは、現在リチウムイオン電池の開発費に数百億円をかけている自動車メーカーですら、「積極的に採用するには、まだ課題が残っている」といって慎重な姿勢を崩していないところなんです。
 さらに、ヨーロッパのキャンピングカーメーカーも、もう一時ほどリチウムイオン電池にこだわらないようになってきました。実際にそれを搭載している車両も減っています。
 その理由の一つに、普通の鉛バッテリーの性能がどんどん上がってきていることが挙げられます。昔だったら2年ぐらいのサイクルで交換しなければならなかったものが、充電効率を見直せば4年くらいは持つようになってきました。普通に使っても3年くらいは持ちます。
 そうなると、高価なリチウムイオン電池を使うよりも、安価な鉛バッテリーを買い替えていった方が経済的だという計算も成り立つんですね。
 そういうことを総合的に判断して、トイファクトリーが自社製品にリチウムイオン電池を搭載するタイミングは、自動車メーカーが純正品として採用したときだと考えています。

【町田】 キャンピングカー業界の “常識” は次から次へと変わってきているんですね。

【藤井】 ユーザーさんの意識もずいぶん変わってきていますね。ユーザー同士の声がネット上で交換されるような場では、少し前ですと、みなキャンピングカーメーカーがいうことよりも、ネットの声の方が優先されていたんですね。たとえば、新しい電装品として話題になっている商品を自らDIYで取り付けた方が、「この電装品を付けたらすごく効果が出た」という意見を公開したとします。昔ならば、それに対して多くの人が飛びついていったわけです。
 しかし、最近はまた変わってきて、今の例においても、「素人の配線じゃ危ないよね」などという意見もすぐアップされるようになりました。
 つまり、情報発信者が素人であるかメーカーであるかを問わず、ユーザーさん自身が「信頼できる情報か、信頼できない情報か」を見極める力を付けてきているんですね。

【町田】 ずいぶんユーザーさんも成熟してきましたね。
【藤井】 そうなんです。だからキャンピングカーメーカーも常に努力して、正しい情報を提供できる力を付けておかないとならないんですね。
 
 
国産キャンピングカーに海外マーケットへ道は開けるか

【町田】 話は変わりますが、日本のキャンピングカーメーカーさんのなかには、最近海外マーケットを視野に入れたような商品開発を試みるところも出てきました。
 しかし、それをいうならば、トイさんはすでにアフリカなどに救急医療回診車などを出していますよね。
 さらに、発展途上国の要人たちのVIPカーを「自動車メーカー」ブランドで製作しています。
 日本のキャンピングカービルダーが、国際マーケットで通用するような車両づくりのコツというものが何かあるのでしょうか?

▼ トイファクトリーの救急医療回診車

【藤井】 私たちの場合は、「トイファクトリー」というブランドで出荷するわけではなく、あくまでも「自動車メーカー」のブランドを掲げた車づくりを進めているわけですね。
 そうなると、当然家具の仕上げから配線に至るまで「自動車メーカー基準」というものが要求されるわけです。これはキャンピングカービルダーのレベルではとてもクリアできないような、そうとう厳しい基準になっています。
 それをこなすために、私たちも何年という歳月をかけて苦労を重ねてきましたが、そこで得たノウハウが、けっきょくトイファクトリーのキャンピングカー開発力を高めることになりました。
 説明するのは難しいのですが、それが「コツ」といえば、コツになりますかね。

【町田】 つまり “自動車メーカー基準” を満たせば、海外マーケットでも通用する車両づくりが可能になるということでしょうか?
【藤井】 そうですね。自動車メーカーさんは、車両の安全面や装備の完成度においても完璧なものを要求されますし、家具などの質感においてもそうとう厳しいチェックを行います。
 たとえば、家具の表面やエッジの部分なども、品質管理の担当者が手のひらで入念に表面を撫でられるんですよ。そして、女性や子供が触っても違和感のないような手触りになっているかどうか、触感や視覚に関する部分まで綿密にチェックするんですね。
 
 
セブンシーズのクオリティは海外でも通用する
 
【町田】 そういうことなれば、またずいぶん洗練された商品になっていくでしょうね。
【藤井】 ええ。その域にまで達すると、ようやく海外マーケットに出しても恥ずかしくないものになります。
 この前の「ジャパンキャンピングカーショー2018」に出展したバスコンの「セブンシーズ」は、ヨーロッパで年間5万台のレンタル用キャンピングカーを扱っている方から、「この車をヨーロッパ仕様にしてくれれば3,000台買ってもいい」といわれました。

▼ セブンシーズ外形

▼ セブンシーズ内装

【町田】 ヨーロッパ仕様とは?
【藤井】 ECE基準の前突の問題が絡むので、規定上日本のマイクロバスのままでは使えないんですね。
【町田】 そうなった場合はどう対応することになるんですか?
【藤井】 たとえばフィアット・デュカトですね。それを使って、このセブンシーズのコンセプトとクオリティーを再現すればOKだというわけです。

【町田】 実際に検討されますか?
【藤井】 今のところデュカトは、まだシャシー供給の見通しが流動的なので、なんともいえませんが、魅力的な話であることは事実です。

▼ フィアット・デュカト バンボディ

【町田】 もし国産キャンピングカーが、今後海外のマーケットに出ていくことになったとしたら、そのときの日本のキャンピングカーの “武器” は何になりますか?

【藤井】 残念ながら、生産技術や量産化体制などの点で、現在のところ国内のビルダーが海外のブランドに太刀打ちできる条件は整ってはいません。
 ただ、勝機があるとしたら、それはやはり日本にしかない技術を搭載したキャンピングカーを仕上げたときでしょうね。
 たとえば、日本の家庭用インバーターエアコンを使う技術などは、まだ世界のどこにも生まれていません。そういう技術を効率よくシステム化するには、今度は家電メーカーなどとの綿密な連携プレーが要求されるんですね。
 トイファクトリーの場合は、シャープさんにご協力いただき、高効率のソーラーシステムを構築して、それをインバーターエアコンなどを駆動させる動力源の補助として使えるようにしています。
  
   
▼ シャープ製ソーラーパネル装着車

 
  
日本の電装技術をうまく採用すれば、日本の
キャンピングカーも国際競争力を身につける

  
【町田】 やっぱり電装技術が大きな “武器” になりますか?
【藤井】 そうですね。電装系に関しては、まだまだ日本の家電メーカーは世界のトップを走っています。日本のメディアは、たとえばシャープさんが台湾の「ホンハイ」に買収されたことを例にとって、「日本の家電メーカーの凋落」などと報道しますが、それは皮相的な見方であって、実際はシャープさんが従来の技術力を維持したまま、さらなる資金源を獲得したという方が事実に近い。
 そのシャープさんが、日本にしかない技術としてプラズマクラスターを持っていて、それがいま世界中の注目を浴びています。
 
【町田】 その技術をキャンピングカーに応用するということですか?

【藤井】 そういうアイデアも魅力的だ、ということですね。キャンピングカーにはペットを乗せる率も高い。そうすると動物の臭いが車内に沁みつく。また人が寝泊まりする空間ですから、知らず知らずのうちに生活臭がこもる。
 このようなことをヨーロッパのキャンピングカーユーザーは嫌うのですが、それに対して、外国のメーカーは対処しきれていない。トイファクトリーはすでに専用モデルにて対応していますが、外国のビルダーには、まだそれを解決する技術がないんですよ。
 そのような海外ユーザーのニーズに応える形で日本の電装技術を搭載したキャンピングカーが出荷されるなら、そこに商品価値が生まれる可能性は高いと考えます。

【町田】 なるほど。そのシャープさんと提携を結んでいるトイさんなら、ヨーロッパ市場で注目を浴びる国産キャンピングカーを開発できると。
【藤井】 あくまでも想定であり、アイデアの段階ですけれどね(笑)。まだ現実的なアクションを起こしているわけではありません。
 
 
プロパンガスの評価が海外でも変わりつつある
 
【町田】 ただ、いくら国産キャンピングカーの電装技術が発達したといっても、たとえばヒーターやコンロ、温水器などに関しては、海外の車両はみなLPGシステムを採用していますよね。充填設備もふんだんにあるから、ガスの補給に困るということもありません。
 だから熱源ことを考えると、海外の使用環境では、日本車の優位性はそれほど目立たないと思うんですが。
【藤井】 ただ、最近はLPGに関する向こうの評価も変わってきているんですね。たとえばヨーロッパのビルダーに上がってくるユーザーの不満のなかには、LPGに対する不満が増えてきているんです。

【町田】 どうしてですか?
【藤井】 日本のように、「充填に支障がある」とか「ガスは危険だ」とかいうことではないんですが、要は効率が悪いというんですよ。特に冬場などは2~3日でタンクが空になってしまう。そこに不満を感じるユーザーさんが増えているんですね。
 だから、日本の得意とする省エネ技術で、それに代わるエネルギーシステムを構築していけばいいと思います。
 
 
「少子高齢化」問題を乗り切る

【町田】 国内マーケットの話に戻りますけれど、日本の場合は「少子高齢化」という問題を抱えていますよね。どの産業もみな国内マーケットが縮小していくのではないかと心配しています。この問題はどう考えていらっしゃいますか?

【藤井】 確かに製造業にとっては大きな問題だと思っています。ただ、このままキャンピングカーの国内マーケットがしぼんでいくとも考えていないんですよ。まだまだ掘り起こしは可能です。 
 まず、若者マーケットについて。
 よくマスコミは「若者の自動車離れ」という報道を繰り返しますよね。あれはとんでもない間違いだと思っています。
 私たちの本社は岐阜県にあって、工場は沖縄にあるのですが、そういう地方で若者を声を拾ってみると、自動車を欲しがらない若者なんて一人もいません。
 ただ、一般的な若い方は “高い車” が買えないんです。さらに自動車ローンより高い首都圏の駐車場代なんて、とても払えない。
 そのため、マスコミがインタビューする首都圏内では、登場する若者がみな「車なんて要らない」と答えるようになりましたが、地方の若者は、移動手段がないとどうしようもありませんから、おカネを工面して、みな軽自動車を買ったりしています。そして、結婚して家族ができれば、安全面を考慮して少しだけ大きい車に買い替えています。
 
▼ 首都圏の繁華街で遊ぶ若者たち

 
【町田】 つまり、東京23区以外のエリアに住んでいる地方の若者は、みな車は必要だと思っているわけですね。確かにそうであるならば、当然車に興味を持つようにもなりますよね。
【藤井】 そうですね。車に興味を持てば、当然キャンピングカーにも関心が向くようになると思います。
 今ちょうど、若者の間にアウトドアブームが起こっていますよね。テントキャンプも盛んになってきています。そういうブームが広がり始めると、キャンピングカーに関心を持つ人々も増えてくることになります。

【町田】 ただ、高い乗用車が買えないという若者がいる以上、やはり高額商品だと思われがちなキャンピングカーも “遠い夢” ということになりませんか?
 
 
トヨタ・ハイラックスは何が若者に評価されたのか?
 
【藤井】 私は、それを「車が買えない」のではなく、「買いたい車が見つからない」というふうに捉えています。
 問題は、今のキャンピングカーが、若者の心を捉える商品になっているかどうかということですね。
 昨年の秋にトヨタが13年ぶりにハイラックスを発売しました。リサーチしてみると、20代から30代くらいの若者の90%がそれを歓迎しているんですね。あんな高いトラックをですよ。370万円台から400万円近い金額になるというのに。
 でも、彼らは「欲しい」という。
 ひとつはスタイルなんですね。そしてもう一つは、荷台があって、何か積めそうで、何か遊べそうだというイメージがある。
 
▼ 新型ハイラックス

 
【町田】 その延長線上にキャンピングカーはありますものね。
【藤井】 そうです。「何か遊べそう」というのは若者向け車両のキーワードになると思うんです。
 けっきょくわれわれキャンピングカー業界は、「何か遊べそう」というイメージを若者たちに発信する力が中途半端だったのではないか? それは、われわれ自身が遊んでいなかったからではないか?
 そう思って、トイファクトリーでは、「もっとみんなで遊ぼう!」という思いを声にするために、自分たちが管理するキャンプ場を2年前から運営することにしたんですよ。
 
 
「トイの森」で社員も遊ぶ

【町田】 「トイの森」のことですね。
【藤井】 はい。これはトイファクトリーの車を購入してくださったお客様に、プライベートキャンプ場のような気持ちで使ってもらうために開設した施設ですが、実はわれわれ自身も遊べるようにしたものなんです。
 そんなにしょっちゅう開いているわけではないですが、定期的に社員が集まって、自転車のトライアルレースをやってみたり、焚き火を囲んで酒を酌み交わしたりしています。

▼ トイの森

【町田】 お客様に遊びの提案をするためには、まずショップのスタッフが遊びを知らないと駄目だ … とはよくいわれますね。
【藤井】 そのとおりです。やっぱり星の下などで、焚き火の炎を眺めながら語り合うと、キャンピングカーに対するアイデアが無限に湧いてくるんですね。オフィスでテーブルを囲んでする会議とはまったく違う。

【町田】 一種のブレーンストーミングみたいなものですね。
【藤井】 そうです。楽しいアイデアというのは、楽しい時間からしか生まれないんですね。
【町田】 そういう時間をつくるには、キャンプなどがうってつけというわけですね。
 
 
人間教育の基礎は「自然観察」
 
【藤井】 要するに、人間に思考をうながすのは、「自然」ではないかと思っているんです。
 人類は、自然のなかに隠された情報を読み採る作業を繰り返しているうちに、今の文明にたどり着いたわけですよね。
 だから「自然観察」というのが、人間教育の基礎になるのではないかと。

▼ トイの森

【町田】 すごい話になってきた! でも、そうかもしれません。自然のなかにランダムに散らばった現象から共通のものを取り出し、それを仲間と確認し合う作業を通じて「言語」が生まれてきたわけですからね。

【藤井】 だとしたら、「トイの森」というのは、そういう人類がたどってきた知的作業を復習する施設なのかもしれません(笑)。
 今われわれは、このキャンプ場で「ネイチャースクール」というものを開催しています。そこでは子供たちを集めて、青、赤、黄、緑、白、茶などのプレートを渡し、「自然のなかで、これと同じ色をしているものを探してみて」というゲームを行っているんですね。
 大人がそううながすと、子供たちは実に真剣に考えるんです。
 自然のなかにある色は、人間がつくり出す色とはやはり微妙に違うんですね。そのため子供たちは、真剣になって自然の色を観察する。そのときに「人工物」と「自然」の違いを感覚で知ることになる。

【町田】 そうやって観察力が養われて、それが「知性」になっていくんでしょうね。
【藤井】 そうでしょうね。そういう作業の積み重ねによって養われた感性が、やがてキャンピングカーのなかに「遊び」を発見する力になるような気がします。
 遠回りかもしれないけれど、「ネイチャースクール」のような仕事も、キャンピングカーメーカーにとっての “未来の種まき” になるような気がしています。
 
 
※ 藤井代表インタビューにおける車両の話題や技術的な話題は、下記の記事をご参照ください。
https://camping-cars.jp/taidan/3937.html
(「キャンピングカースタイル」)
 
 

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