RVランド 阿部和英社長インタビュー

 
 キャンピングカー展示場としては国内最大級といわれる茨城県の「RVランド」。
 同社が広告で掲げる「キャンピングカーの楽園」というキャッチどおり、ここでは緑豊かな美しい空間のなかで、毎日掃除されてピカピカに輝く50台の展示車が来場者を待っている。 

 ここを統括しているのが、阿部和英社長(写真下)。
 1992年に先代(現・阿部和麿会長)が創設したこの展示場の運営を引き継ぎ、その事業内容を大幅に拡大・進化させて業界の発展にも大きく貢献。今やキャンピングカー業界をけん引する人材として将来を嘱望されている2代目社長だ。

 しかし、ここに至るまでの和英社長の歩んできた道は平坦ではなかった。
 一見、充実した資産を親から受け継ぎ、何ひとつ不安材料が見当たらない場所でスタートを切った人生だと他者からは思われがちだが、あまりにも大きな親の存在は、子供にとってはとてつもないプレッシャーになることがある。

 直接親から受ける厳しい叱咤もあっただろうし、その親の成功をねたんだ冷たい視線も業界の一部から放たれていたかもしれない。

 だが、それらを見事に跳ね除け、いまRVランドの2代目社長は、先代も、そしてキャンピングカー業界のこれまでの重鎮たちも果たせなかった大きな仕事をやり遂げようとしている。

 存在感のある人間のもとには、それを慕う人材も集まってくる。
 業界の若手グループの間で、いま和英社長に絶大な信頼と期待を寄せる人の輪は日増しに大きくなっている。

 このたび、その昇る朝日のような興隆期を迎えている同社長にロングインタビューを試みることができた。
 
 業界における現在のRVランドの “独走” は、先代が果たした偉業だけでは説明がつかない。
 そこには、2代目の和英社長の力が大きく関わっていたのだ。
 
 冷静に先を見つめ、慎重に情勢を分析し、果敢に決断する。
 経営者としての才覚をいかんなく発揮する同社長。
 その原動力となっているものはいったい何なのか?
 そこには、とてつもない波乱万丈のドラマが隠されていた。
 
 話の続きは、こちらで(↓)
 キャンピングカースタイル「メーカーインタビュー RVランド」
 
http://camping-cars.jp/taidan/2037.html
 
 
RVランドHP URL: http://www.rvland.co.jp/
 
 

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NTBの「SINOBI」と「ASAKAZE」

 
 
黒いボディの圧倒的な存在感

 2017年の2月初旬に幕張で開かれた「ジャパンキャンピングカーショー」の会場で、ひときわ来場者の視線を集めた1台の車があった。
 
 装甲車を思わせる直線基調のフォルム。
 精悍なフロントフェイス。
 闇よりも深い黒に塗られたボディが、旺盛なエネルギー感をはらんで見学者を圧倒する。
 見るからに、「ただものではない !」と思わせる威容だ。

 この “黒い悪魔” の名は「SINOBI (しのび)」。

 なるほど !
 日本の「忍者」をイメージした車名なのだから、黒装束なのはよく分かった。
 だけど、この黒 …… 、こっそり活動する忍者にしては、ちょっと目立ちすぎじゃね?
  
  
あえて内装を省いたモデルを展示
  
 「SINOBI」は、いすゞビィーカム(Be-cam)をベース車にして、従来のキャブコン製作とはまったく異なる開発思想で取り組んできたNTB(日本特種ボディー株式会社)の新型車である。
 つまり、「SAKURA(さくら)」、「ASAKAZE(あさかぜ)」に続くキャブコンの第3弾としてリリースされた車で、基本的には、先に開発された「ASAKAZE」の性格を受け継ぐ車だ。

▼ 「SAKURA」

▼ 「ASAKAZE」

 が、「ASAKAZE」ゆずりであるのは、そのベース車がビィーカムの2.0t ワイドであるというところまで。
 中身はまったく違う。
 というか、「SINOBI」には、中身がない !
 ショー会場でこのキャブコンの車内を覗き込むと、そこにはガランとした空洞が待ち受けているだけだった。

 ショーの開催までに内装が間に合わなった新型車の場合、ときどき室内がドンガラのまま展示される車がある。
 しかし、どうやらそれとは違うようだ。

 「SINOBI」に秘められた “忍術” の真意を、NTBの蜂谷慎吾社長(写真下)に尋ねてみた。

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完全オーダーメイドの「SINOBI」

【町田】 ずばりお聞きしますが、この「SINOBI」に内装が組み込まれていないのは、どういう理由からなのでしょう?
【蜂谷】 この車は、お客様から完全オーダーをいただいて、そこから内装を組み上げていく車なんです。
 つまり、完全ワンオフ車。住宅でいえば “注文建築” ですね。
 そのため、先入観を払しょくするために、あえて内装を省いているんですよ。

【町田】 それにしても、黒い塗装の外装がすごいインパクトをみなぎらせていますね。
【蜂谷】 ちょっとどぎついくらいのところを、わざと狙ってみようかと(笑)。ただ、厳密にいうと「黒」ではないんですよ。
 ショー会場のような屋内では「黒」に見えてしまうかもしれませんが、実はグリーンメタリック塗装です。明るい陽射しのもとに置くと、実に鮮やかなグリーンメタとリアルカーボンのコントラストが美しく映えます。


【町田】 それにしても、大胆な色使いですね。
【蜂谷】 目立つようなカラーにしたのは、外板色も自由に選べるということを訴求したかったんですね。現在の「SINOBI」は、オプションとなるグリーンメタの塗装仕上げになっていますが、標準色は「ASAKAZE」や「SAKURA」に使っている白です。またオプションでカーボンを貼ることもできます。

【町田】 カーボンを貼るとどうなるんですか?
【蜂谷】 強度が増すんですね。窯に入れて焼くドライカーボンにすると、さらに強度が上がるんですが、広い部分をカバーするとなると、釜で焼くことはできないので、一部だけになりますが。


 
【町田】 なるほど。ところで、なぜ “完全ワンオフ車” という設定にしたのですか?
【蜂谷】 やはり従来のキャブコンでは物足りないと思われるお客様がいっぱいいらっしゃるからなんですね。
 走行性能、安全性という車両としての基礎的なところから、レイアウト、電装系のシステム、種々の搭載機器など、キャンピングカーに対する自分の理想像を思い描いていらっしゃるお客様はけっこういらっしゃいます。
 そういう方々のニーズを汲むとなると、どうしても完全オーダー車にならざるを得ないんですね。

【町田】 御社が2年前に出された「SAKURA」は、そのあたりのニーズを満たそうという意図で開発されたものでしたよね。

▼ 「SAKURA」

【蜂谷】 そうです。「SAKURA」などは、それなりにお客様からの要望を受け入れるスタンスで臨んでいます。
 ただ、「SAKURA」などの基本レイアウトは、われわれNTBが考えるもっとも使いやすいものなんですね。「ASAKAZE」もそうです。われわれからすれば、それらの基本レイアウトや仕様は、ベストであるという自負はあります。
 それでも、ご自分の頭の中にすでに理想のキャンピングカーのイメージを組み立てていらっしゃる方は、既存のキャブコンの仕様では満足されないんですね。

【町田】 そういうリクエストに応えるために用意された車種が「SINOBI」であると?
【蜂谷】 そうです。「SINOBI」は、お客様自らが自分自身にとって使いやすいレイアウトや仕様を実現するためのモデルなんですね。
 われわれNTBは、そういうお客様のご要望をしっかり聞き入れて、車検上や安全性に問題がないかどうかを一点一点ずつ確認しながら、お客様の「夢の車」を実現させるサポートをさせていただくということになります。
  
  
内装サンプルは「ASAKAZE」を参考にしてほしい

【町田】 でも、まったく “叩き台” がないと、いくら理想の仕様が頭のなかにあっても、それを施行者にうまく伝えられない人もいるんじゃないですか?
【蜂谷】 そういう方に「ASAKAZE」の内装を見ていただきたいんですね。それをサンプルにして、具体的に「どこをどう変更したいのか」というリクエストやアイデアを頂戴できれば、われわれも作業しやすいですから。

▼ 「ASAKAZE」外形

▼ 「ASAKAZE」内装

 
【町田】 具体的にどういうリクエストが出てきそうですか?
【蜂谷】 「SINOBI」の全高を見ていただくとお分かりになると思うのですが、「ASAKAZE」よりもルーフが15cmかさ上げされているんですよ。
 それはなぜかというと、床を高くしたいというリクエストが出てきたときに対応するためなんですね。
 床を高くすれば、たとえば床暖房などを組み込むこともできます。
 現在のところ、まだどのような床暖房システムがいいのか検討中ですが、電気式のものや温水式のものなど、いろいろ試験を重ねている最中です。

【町田】 では、掘りごたつ仕様などもできそうですね。
【蜂谷】 できます。床を畳仕様にして、中央に掘りごたつを設定するなどということも可能です。 
 また、長旅になると、ランドリーなどない地方を旅しなければならないこともあるでしょうから、そういうときのために小型のドラム式洗濯機を搭載するといったようなアイデアもあります。
 
 
リチウムイオンバッテリーの実用化も間近
 
【町田】 そういう場合の電源は?
【蜂谷】 リチウムイオンバッテリーを計画しています。まだ公表できないのですが、マイナス20℃ぐらいの場所でも問題なく充電できるような高性能リチウムイオンバッテリーを考えています。すでにキャンピングカー以外の分野では実績のあるものですけどね。

【町田】 「SINOBI」は、「ASAKAZE」のスペシャルバージョンという位置づけだということですが、それに先行する「SAKURA」と「ASAKAZE」の関係は、どういうように考えればいいのでしょうか?
【蜂谷】 「ASAKAZE」は、「SAKURA」の “強化バージョン” といってもいいのかもしれませんね。

▼ 「ASAKAZE」外形

 
【町田】 どこが強化されたのですか?
【蜂谷】 一言でいえば、許容荷重ですね。同じいすゞビィーカムでも、「SAKURA」は1.5 t シャシーで、「ASAKAZE」は2.0 t ですから、「ASAKAZE」の許容荷重はそうとう増えています。

【町田】 どのくらい増えたといえるんでしょう?
【蜂谷】 500kgは増えてますね。その分、架装できる内容物がそうとう豊かになりました。
【町田】 たとえば?
【蜂谷】 鉛バッテリーなども、「SAKURA」では100Ahのものを四つ入れていたんですが、「ASAKAZE」では、190Ahのものを四つ入れられるようになりました。
 それもできるだけ床の下の方に搭載して、低重心を心掛けるとともに、左右に振り分けて、重量バランスを取るようにしてあります。
 
▼「ASAKAZE」外形

  
  
「ASAKAZE」の内装がハイグレードになった秘密

【町田】 そのようにしてバッテリー容量が上がってくると、電気の消費量にもゆとりが出てくるわけですね。
【蜂谷】 そうですね。バッテリーを普通に使っていれば、空になるまで使い切ることが少なくなるので、安心感は増したと思います。
 「SAKURA」の場合は、100Ahが四つでしたから、2日ぐらい使い込むと、少し走行充電して電気を溜めなければなりませんでした。しかし、「ASAKAZE」では2泊3日ぐらい大丈夫になりました。

▼「ASAKAZE」内装



 
【町田】 許容荷重が増したことによって、ほかにどんなメリットが生まれましたか?
 
【蜂谷】 家具などの質感を高めることが可能になりましたね。たとえば「SAKURA」では、いくらシャシーにビィーカムを使ったとしても、搭載機器で許容荷重がいっぱいになってしまったら意味がないわけですから、家具にもなるべく重いものを使いたくなかったんですよ。
 たとえば家具扉に「曲げ合板」などを使えば質感が高くなることは分かっていたのですが、「曲げ合板」は重量があるので、「SAKURA」では多用できなかったんですね。
 しかし、「ASAKAZE」ではビィーカムの2.0 t ワイドシャシーになったので、多少重量が増えても質感の高い家具を投入できるようになりました。

【町田】 いやぁ、ほんとうに「ASAKAZE」の内装は素晴らしいです。ものすごく高級感がありますね。

【蜂谷】 ありがとうございます。「ASAKAZE」では、家具類にどういうLED照明を当てていけば高級ホテルのようなグレード感が出るのか、そういうところにもかなり気をつかいました。
 たとえば、キッチンの人工大理石の天板を照明で透かせて、ほわっと浮かんで見えるように設定するとか。

▼ 「ASAKAZE」内装

【町田】 その試みは成功しているように思えます。「SINOBI」の内装を考えるときに、「ASAKAZE」がサンプルになるのだとしたら、「SINOBI」の内装デザインにもそうとうグレードの高いものが現れてきそうですね。

【蜂谷】 基本的に、この車はフルオーダーになりますから、お客様からご指定をいただければ、ヨットなどに使われるチーク材とか、後はほんとうに普通のルートでは入手が難しくなっている高級木材などで家具を作ることもできます。
 シートなども、高級車に使われるコノリーレザーを取り寄せることも可能です。
 また「SINOBI」1号車では、熱などに弱いといわれるPVC家具ではなく、自動車用に開発された現時点では最高と目される新素材による家具製作も試みるつもりです。

【町田】 いやか、ほんとうに楽しみにですねぇ。次の機会には、ぜひ内装を見てみたいと思いました。
 
 
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海外雄飛も射程に入れて

 「SINOBI」に関しては、その開発の陣頭指揮を執られたNTBの江田敏夫会長(写真下)にもお話をうかがうことができた。
 この車にかける江田会長の熱い胸の内を聞いた。

【町田】 「SINOBI」というのは、忍者のことですよね。忍者といえば、いま外国人観光客に絶大な人気を誇っています。NTBさんの場合は、これまで自社製品に、「SAKURA(桜)」、「ASAKAZE(朝風)」というように外国人にも解る日本語の名前を付けてきています。
 そこには、海外の人の目を意識したキャンピングカーを作っているというお気持ちがあるのでしょうか?

【江田】 いずれは海外マーケットに打って出てみたいという夢はあります。日本にも欧米のモーターホームに負けないしっかりしたキャンピングカーがあるよ、ということを、海外の人に訴えてみたいですね。
 もちろんハードの面で、外国製モーターホームと比べても遜色のないものを作っているという自信はあります。
 しかし、それだけでなく、私は日本の「文化」を売りたいんですね。
  
  
日本文化のエッセンスを盛り込んだキャブコン
 
【町田】 日本の「文化」を売るというのは、どういう意味でしょうか?
【江田】 たとえば、日本に来られた欧米の観光客を見ていると、みな浅草に行って、伝統的な日本の団扇とか、扇子だとか、人力車などを見て面白がっているんですね。
 要は、昔からある日本の風物がエキゾチックに感じられるのでしょうね。
 だから、この「SINOBI」に関しても、思い切って伝統文化のテイストを盛り込んだ仕様を作ってみて、それをプレゼンしたいと思っています。

▼ 「ASAKAZEI」内装

【町田】 それは、どんなデザインになるのでしょう?
【江田】 室内を畳にして、襖(ふすま)を置いて、そこに写楽の役者絵や広重の「東海道五十三次」のようなものを描いたっていいと思っています。
 そして、日本文化の神髄は「静けさ」にあるということを訴えてみたい。

【町田】 静けさ …… ?
【江田】 アメリカのモーターホームなどは、エアコンを駆動するときにジェネレーターを焚いたりしますよね。
 しかし、私どもが開発しているキャブコンに搭載しているクーラーシステムでは音がしない。そういう電装システムを確立しているからですね。
 そういった排ガスも出ないし、騒音も出ないエアコンシステムは、もちろん「エコロジー」という観点から訴求することも可能なんですが、私はそれを「静けさ」を尊ぶ日本文化の精神という点から訴えたい。
 「古池やカワズ飛び込む水の音」という、あの松尾芭蕉の句に込められた静寂と清涼感を外国人に感じさせたい(笑)。

【町田】 面白いですねぇ !
【江田】 そういう方向を目指して、より洗練されたキャブコンが誕生したら、私はそれに「MIYABI(雅)」というネーミングを授けて、そのときこそ海外に持っていきたい。そんな夢を抱いています。
  
NTB(日本特種ボディー)HP URL :http://www.ntbcamp.com/

 
 
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バンテック「シーダ(Cyda)」

 
バンテックブースのデザインに秘められた意味

 キャンピングカーに対する開発者たちの意識が変わってきている。
 ここのところ、ものすごくそれを感じる。
 それを一言でいうならば、「目に見えないものの深さ」に気づいてきた、ということなのだろうと思う。
 
 言葉を変えていえば、「スペックとして表現できる」ものから、「スペックとして表現できないもの」へ。
 すなわち、キャンピングカーメーカーが、いよいよ「物」の世界から人間の「心」の世界に迫り始めたのではないかという気がするのだ。

 そのことが象徴的に表れたのは、今年の2月初旬に幕張で開かれた「ジャパンキャンピングカーショー2017」のブースだった。
 バンテックのブース。
 人気車種を取り揃えたバンテックブースは、いつもながらショーの会期中を通して大盛況だった。
 

 しかし、ふと人波が途絶えたときにこのブースを眺めると、何もない空間が贅沢に取られていることが分る。(写真下)
 主催者側に支払うブース料は、車を置く “コマ数” で決まってくるわけだから、空間だけ確保して何も置かないというのは、とてももったいないことである。

 だが、バンテックのブース作りを担当したスタッフにいわせると、この “無駄な空間” には意味があるというのだ。
 それは、「何もない空間に雄弁に語らせたかった」ということらしい。
 つまり、そこに浮かび上がった “意味のない空間” こそ、開放感、快適感、贅沢感を演出するための “計算され尽くした舞台” だったのだ。
  
 
「リゾート」と「観光の違い」

 今回のバンテックブースのテーマは「バンテックリゾート」。
 つまり、このスペースは、バンテック車をただ展示するだけではなく、車と一体となったリゾート気分を感じてもらうためのスペースだったと担当者は語る。

▼ 「バンテックリゾート」を謳ったシンボルマーク

 「リゾートと観光は違います」
 と、ブースのコンセプトメイクを手掛けたバンテック広報課の露木伸也氏はそう述べた。

 「同じ旅行でも観光というのは、限られた時間のうちに訪問地をどれだけ消化できるかという性格を持っています。
 それに対し、リゾートに滞在するということは、訪問地をある程度限定してしまう代わりに、出向いた場所を心ゆくまで味わい尽くすという意味があります。
 つまり観光は、おカネを出して “訪問地の数を買う” こと。
 一方リゾートで遊ぶのは、くつろぐための “時間を買う” ことだというふうに私は思っています」

 露木氏によると、バンテックのブースを「バンテックリゾート」というテーマでまとめたのは、見学者にそこが贅沢な時間が流れる場所だと感じてもらいたかったからだという。
 そして、バンテックのキャンピングカーは、常にそういう時間を約束するツールとして存在していることを訴えたかったとも。

 前置きが長くなりすぎた。
 ここでは、実際にそのような思想から生まれてきた車を1台紹介したい。

 「シーダ」(写真下)
 バンテックが新型ボンゴトラックをベースに開発したライトキャブコンである。

 この車の狙いは、「お客様に贅沢な時間を味わっていただくこと」。

 開発者インタビューで、シーダを設計した同社の木嶋伸介氏(写真下)は、ショー会場でブース作りを担当した露木氏と同じことを言った。

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「シーダ」は「ジル」のダウンサイジング版

【町田】 「シーダ」は、いま激戦区といわれているライトキャブコンの分野に投入されたキャンピングカーですが、この分野は、昔からしっかり認知されている数々の競合他車がひしめきあっています。
 「シーダ」はそのなかで、かなり後発の部類に入ります。
 そこでお聞きしたいのは、バンテックさんは先行するたくさんの競合車に対し、この「シーダ」をどのように差別化したのか?

【木嶋】 確かに、「シーダ」はライトキャブコンのなかでは後発ですから、認知を得られるのまでに多少の時間がかかるかもしれません。
 しかし、これまでのライトキャブコンとは違う思想で造られた車だと思っていますので、後発であることはあまり気にしていません。

【町田】 今までのライトキャブコンと違うというのは、どういう意味ですか?

【木嶋】 早い話、これは当社の「ジル」あるいは「ジルクルーズ」とほぼ同じものなんですよ。それらの “ダウンサイジング版” と考えてくださると分かりやすいかもしれません。
 つまり、パーツ類などは、できるだけ「ジル」クラスで使われているものと同じ物を使用していますし、品質感においても、「ジル」系と比べて遜色のない仕上げを心掛けています。
 そういった意味で、「シーダ」はサイズ的にはライトキャブコンに入るのでしょうけれど、グレード的には高級キャブコンの範疇に入る車だと私たちは思っています。

【町田】 「ジル」と同じようなパーツ類というと、どういうものが挙げられるのでしょう?
【木嶋】 アクリル2重窓などがそうですね。エントランスドアも、ジルレベルでなければ採用しないヨーロッパ製のハイグレードな扉を付けています。
 断熱材の素材や封入の仕方も「ジル」と変わりません。
 さらに、ご希望があれば「ジル」のようなトリプルバッテリーも装備できるスペースを用意しております。


 
 
「室内が広く感じられる」という空間マジック

【町田】 なるほど。それで他のボンゴベースのキャブコンより多少価格が上がっているんですね。
【木嶋】 そうですね。これまでのライトキャブコンの世界では、どうしても価格が安いということが一つの “バリュー” になっていました。
 しかし、この「シーダ」に関しては、価格の安さは “バリュー” のなかには入りません。
 それよりも、他のライトキャブコンにはない新しいバリューを創造してみたかったんですね。

【町田】 たとえば?
【木嶋】 「空間の広さ」です。
 もちろん、カムロードクラスのキャブコンと比べると、ボンゴは小振りなので、実寸では「ジル」や「コルド」のような室内寸法は取れません。
 でも、この「シーダ」をお求めになられる方は、「本当はジルやコルドが欲しかったけれど、家の車庫が狭かったからシーダにした」という方が多いと思われますので、室内空間だけは「ジル」や「コルド」クラスの広さを感じられるような車にしたかったんです。

【町田】 確かに実寸としてはジルなどよりは狭いのでしょうけれど、スペースが広く取れていると思わせる秘密は?(笑)

【木嶋】 視覚的な仕掛けもけっこう採り入れています。たとえばエントランスから入ってきたときに室内を広く感じていただけるように、テーブル高を少し低めに設定しています。テーブルの実寸値は「ジル」と同じですが、そうすることによって、視覚的な広さが確保できるんですね。

【木嶋】 また、サードシートのひじ掛けにも工夫を凝らしました。
 ひじ掛けがあると、座っているときはとても楽なんですが、このひじ掛けがいつも持ち上がっていると、エントランスから入ってくるときに視覚的な圧迫感が生まれるんですね。
 そのため、ひじ掛けを埋め込み式にしてあります。

【町田】 なるほど。そういう緻密な設計によって、けっこうゆったりしたサロンが生まれているわけですね。マルチルームやクローゼットまで設けているというのに、そんな狭い感じがしない。まさに空間のマジック !(笑)
 
 
多目的ルームの意外な効用

【木嶋】 ライトキャブコンにおいても多目的に使えるマルチルームが欲しいといわれるお客様はけっこういらっしゃるんですね。
 やはり、家族で使うといっても、奥様やお嬢様は、着替えするときに扉の閉まる個室があった方がいいと思うでしょう。
 ここには緊急用のポータブルトイレを置くことができますが、緊急時にそれを使うとなったら、やはり扉が閉まる方がいいですよね。
 また、こういうマルチルームは収納庫としても使えますし、ヒーターのダクトを回してありますので、乾燥室としても使えます。

▼ マルチルーム

【町田】 これは自分の経験ですが、いくら仲が良い夫婦だといっても、同じ空間で寝泊まりしている期間が2週間を超えて3週間目ぐらいになってくると、さすがに息がつまってくるんですね。
 そういうときに、息抜きの空間として個室があるとすごく気分的に楽です。別にそこに閉じこもらなくたっていいんです。
 「いざとなったら、一人でこもれる空間がある」と心に思うだけで、ふっと気分が軽くなりときがありますね。

【木嶋】 なるほど。3週間以上の長期旅行ではそういうこともあるんですね。
 ま、個室に関してはいろいろな考え方もあると思いますので、今後この車のバリエーションを増やすときには、リヤのベッドスペースを広げる代わりに、個室を省いたレイアウトなども考えてもいいと思っています。
 
 
かなり欲張った就寝スペース

【町田】 現状でもリヤベッドはかなり広い方じゃないですか?
【木嶋】 以前、「アトム」というライトキャブコンを発売していた時代があったんですが、そのときには「リヤベッドが狭い」というお声をかなりちょうだいしましたので、今回はそれよりベッドを広くとっています。

▼ リヤ2段ベッド

【町田】 どのくらい広くなったんですか?
【木嶋】 このベッドは、頭の部分がゆったりしていて足先が狭くなっているという変形ベッドなのですが、以前のものと比べて最大50mm程度は広くなってますね。
 ベッドマットはすべて外れるように作ってあるので、マットを外せば背の高い荷物を入れることもできます。

【町田】 就寝定員は何人取れたのですか?
【木嶋】 リヤベッドが上下2段で大人2人。バンクベッドは縦横どちらの方向でも1860mm取れていますので、大人2人は大丈夫。お子様なら3人寝られます。
 さらにダイネットもベッドメイクすればお子様1名が寝られます。
 そういうわけで、子供を入れた6人家族の就寝スペースがあるのですが、構造要件上の就寝定員としては「大人4名」ですね。 

【町田】 このくらいコンパクトな空間ならば、エアコンも効率よく冷えるでしょうね。
【木嶋】 そうですね。かなり効率はいいと思います。インバーターエアコンなので、消費電力もそれほど大きくないですしね。
 
 
画期的なバッテリー残量計

【町田】 もしトリプルバッテリーにしたら、このエアコンは電源供給のないところでどのくらい持ちますか?
【木嶋】 外気温によって変わってきますけれど、だいたい4~5時間程度じゃないでしょうか。キャンプ場やRVパークで20Ah程度のAC電源が引ければ、まったく問題ないですけどね。
 また、寝るときには26℃か27℃ぐらいの温度設定にしていただければ、外気温と室内温が同じぐらい温度になったときに自動的に停止してくれますので、消費電力も少なくなると思います。
  
【町田】 夏場はエアコンの問題があるから、電気の消費に関しては皆さん神経をつかいますよね。特にバッテリーが弱っていると、FFヒーターをかけることすら心配になるときがある。
【木嶋】 でも、今はなかなか優れたバッテリー残量計出てきたんですね。それを使うと、車全体の消費電力を正確にチェックして、バッテリーがあと何時間電気を供給できるかということを具体的に表示してくれるんです。
 
▼ 新タイプのバッテリー残量計(右)

【町田】 それは便利ですねぇ !
【木嶋】 これはなかなか優れたバッテリー残量計で、ジル系などには標準で装備されています。安心して電気を使用していただくには欠かせない装備ですね。
  
  
ターゲット層はアクティブなヤングファミリー

【町田】 シートの分割式背もたれの部分の色を一部変えたりして、かなりお洒落なインテリアコーディネートを試みていらっしゃいますが、ずばりターゲットユーザーは?

【木嶋】 やはり、ジル系よりは少し年の若いご家族ですね。基本的に、まだ親と一緒に遊びたがるぐらいのお子様がいらっしゃる家庭をイメージして設計に臨みました。
 実は、私たちは、ショー会場にお越しいただいた方にアンケートを調査をしているんですよ。
 そのデータを分析していくと、かつては60歳代のお客様が圧倒的に多かったのですが、最近は50代から40代ぐらいの来場者が増えているんですね。
 そういう調査も踏まえた上で、ターゲットとするお客様の年齢を少し下げてもいいのかな、と判断しました。

【町田】 子供のいるヤングファミリーを想定したのなら、アウトドアユースも念頭におかれたんじゃないですか?
 
 
アウトドアでの使用も意識した装備
 
【木嶋】 そのとおりです ! 道の駅のコンクリートの駐車場で仮眠を取るような使い方も確かにいいんですが、できればこの車は、豊かな自然が広がるキャンプ場などで、親子が心行くまで遊んでくれるような使い方をしていただきたいと思っています。

【町田】 アウトドアを意識するとなると、装備内容なども違ってきますか?
【木嶋】 そうですね。たとえば車外でもシャワーを使えるように、ギャレーのフォーセットなどはエントランスの外まで伸びるようにしてありますし、マルチルームも、アウトドアで濡れたりした荷物をそのまま積んでもいいように防水仕様にしています。

▼ 伸縮型のギャレーのフォーセット

【町田】 子供が独立してしまったシニア夫婦だって、アウトドアは気分転換になりますよね。普段は道の駅や高速のSA・PAで泊まっていても、たまにキャンプ場などに泊まると、やはり気分がリフレッシュしますものね。

【木嶋】 そうですね。ましてやお子さんにとって自然に接するというのはものすごく感動的な体験になると思います。
 個人的なことですが、私も小さな子供をたまにキャンピングカー旅行に連れていくのですが、コンクリートの駐車場で泊まるときと、自然に囲まれた環境のなかで泊まるときでは、もう顔の輝きが違うんですね。自然に接するときは、体そのものから生気が立ち上ってくるのが分かるんです。

【町田】 それは素晴らしいな。いま学校も事故などが起きることを懸念するのか、昔のような臨海学校とか林間学校のような行事を取りやめてしまいましたよね。
 そうなると、子供を自然に親しませることができるのは親だけになってしまう。
 そのときに、「自然と出合うためのキャンピングカーライフ」という視点が再び注目されてくるかもしれませんね。


 
 
人間にとっていちばんの「贅沢」
は自然のなかで憩うこと

【木嶋】 最近、生活のなかで、いちばん贅沢なものとはいったい何だろう、とよく考えるようになったんですね。
 たとえば贅沢な時間、贅沢な遊び、贅沢なつきあい、贅沢な食事 … 。
 昔だったら、おカネをかけていけば、いくらでも贅沢の質を上げることができるように思っていたんですが、最近は、人間にとっていちばんの贅沢は「自然のなかで心地よい時間を持てることかな … 」などと考えるようになってきました。

【町田】 ああ … 分かります。どんなに美しい都会のネオンを眺めようが、空気の澄んだ場所で、空一面を覆う星空を眺めるときの贅沢にはかなわない。

【木嶋】 そういうことなんです ! キャンピングカーの外に椅子とテーブルを持ち出して、ランタンの灯りのもとで家族そろって食事を摂る。
 そういう家族のイベントは、今のサラリーマン家庭からどんどん消え去ろうとしている気がするんですね。


 
【町田】 それを、キャンピングカーライフで取り戻す !
 
【木嶋】 私がそんなことを考えるようになったのは、デュセルドルフのキャンピングカーショーを見学に行ったとき、ついでに向こうのキャンプ場を視察してからなんです。
 そこに来られていたキャンピングカーユーザーのサイト作りが素晴らしいんですよ。
 どのサイトでも、自分のキャンピングカーの周りをイルミネーションなどで飾り、その前には美しい花が咲いている小鉢を並べたりして、見事に自分たちのキャンピングカーライフを楽しんでいる。その姿を見ていて、「あ、贅沢とはこういうことだ」と気づいたんですね。
 
【町田】 そういう話を聞くと、キャンピングカー旅行にはもっと豊かな可能性が秘められているという気持ちになりますね。
 

繊細な間接照明がつくり出す
異次元の美的空間

【木嶋】 もちろん、キャンピングカーには “機動力を持ったホテル” という性格もありますから、目的地に行くまでの緊急仮眠場所として、高速道路のSA・PAや道の駅を利用される方は、今後も増え続けると思います。
 しかし、仮にコンクリートの “味気ない駐車場” で休むようことになったとしても、せめて車内だけは贅沢な空気に満たしてあげたいと思うんですよね。
 「シーダ」ではそのための快適装備はぬかりなくセレクトしているつもりですし、心理的な面での雰囲気作りにも神経を注ぎました。
 たとえば、メインライトを落とした後の間接照明の数、明るさ、位置などの調整。それにはそうとう試行錯誤を繰り返しました。
 
【町田】 確かに、間接照明がきれいですね。
【木嶋】 ありがとうございます。照明類では操作性も上げなければなりませんので、テーブルの上のダウンライトもタッチセンサー式にして、指先一つで3段階の調光を選択できるようにしています。
 
【町田】 確かに、キャンピングカー空間に安らぎを求めるとなると、間接照明はとても大事ですよね。
【木嶋】 そうなんです。この車には、エントランスから入ったときに足元を照らすように、キッチンカウンターの角に縦型LED照明も付けているんですが、実用性を考えると、ここは明るくしたいところだったんですね。しかし、光が強すぎるとまぶしくなる。
 そこで、管の中にわざと抵抗を入れて、照明の色を落としているんです。
 
▼ 縦型LEDライト

【町田】 ほぉ、芸が細かい !
【木嶋】 そのように光の効果を確かめながら、心地よい空間を演出していくというのは数値としては測りにくい作業なので、けっこう難しいですよね。調整する人間の感受性みたいなものも問われると感じました。
 
 
「価格」から「デザイン」へ移行してきた
キャンピングカー評価

【町田】 でも、時代はだんだんそういう方向に向かっていくんでしょうね。
 開発者の繊細な神経が要求される作業を通じて、ユーザーの方もようやくキャンピングカーの深い “味わい方” を身に付けていくということだと思うんです。
 要するに、これからは、キャンピングカーの評価も、スペックで表示しやすい世界から、スペックだけでは表示しきれない微妙な世界へ移行していくのではないかな。
 今がその過渡期だと思います。

【木嶋】 はぁ、なるほど。… そういうこと関連するのかどうか分かりませんが、私たちがショー会場で見学者の方々から行っているアンケート調査においても、今までとは違った傾向が出てきているんですね。
 
【町田】 それは?
【木嶋】 「キャンピングカーを買おうと思われたときに、何にいちばん関心が向きますか?」という調査なんですけれど、少し前までは「価格」という答がいちばん多かったんですよ。
 ところが、最近トップに上がってきたのは「デザイン」、あるいは「居住性」なんですね。
 
【町田】 そうか。ユーザーの方も「価格」というはっきり数字で表されるものから、「デザイン」のように、よりデリケートでセンシティブなものに関心を向け始めたということなんですね。
 下手をすると、私たちキャンピングカーメディア側の人間の方が、もうユーザーやビルダーの進化に追いつけない時代が来ているのかもしれない。うかうかしていられないですね(笑)。
  

 
 
《 シーダ 諸元 》

ベース車 マツダ ボンゴトラックGL(2WD・4WD)
エンジン型式 直4 DOHC 16バルブ
最高出力 75kW(102ps)/5,300rpm
最大トルク 147N・m(15.0kgf-m)/4,000rpm
ミッション 5速AT
乗車定員:7名 就寝定員:4名
全長 4,860mm/全幅 1,950mm/全高 2,820mm
車両本体価格 5,378,400円~(税抜き)
  
バンテックHP URL http://www.vantech.jp/
  
  
バンテック関連 過去ログ
※ それぞれの記事はその年度における “最新情報” ということになっています。
 
「新型ジル520誕生」(2015年)

「バンテック『ルネッタ』」 (2015年)

「CORDE BUNKS」 (2015年)

「バンテック京都店オープンとバンテック車の開発思想」 (2015年)
 
 

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テリー伊藤氏にシュピーレンを貸与

 
 キャンプやアウトドアが好きで、キャンピングカーにも強い関心を持っている著名人を一人選び、その人を表彰するという行事がある。
 毎年2月に開かれる「ジャパンキャンピングカーショー」の会場で行われる「キャンピングカーアワード」がそれだ。

 そのアワードも今回で5回目を数え、今年は2年連続でタレントのテリー伊藤さん(写真下)が選ばれた。


  
 テリーさんは現在7台の車を保有する大のカーマニアとして知られ、キャンピングカー遊びにも一家言を持っている “RV通” として、キャンピングカー業界やファンからも熱い視線を送られている。
 それだけに、テリーさんが登場する「ジャパンキャンピングカーショー」のイベントステージには多くの報道人が集まった。

▼ 「ジャパンキャンピングカーショー」のイベントステージ

 毎年、このアワードにおいて話題になるのは、表彰された人に副賞として1年間無償で貸与されるキャンピングカー。
 ここで選ばれる車は、いわばその年にもっとも話題になりそうな “旬” の車であることを意味し、選ばれた車に関しては、メディアもユーザーも熱い視線を注ぐことになる。

 その注目の車に選ばれたのは、長野県のキャンピングカーメーカー「フロットモビール」社が開発した「シュピーレン」(写真下)。

 同車が選考された過程においては、アワードの表彰を受けるテリーさんの意向も反映されたといわれ、いわばテリーさんが求める「この1年使ってみたいキャンピングカー」ということになる。

 同車がテリーさんに選ばれた理由は何だったのか。
 「シュピーレン」を開発した「フロットモビール」の高森裕士社長(写真下)に、アワードの対象車に選ばれた感想などをうかがってみた。

【町田】 アワードに「シュピーレン」が選ばれて、まずはおめでとうございます。
【高森】 ありがとうございます。
【町田】 テリーさんがこの車を好意を持った理由は何だと思いますか?
【高森】 テリーさんのお仕事先が主に都心なので、どんな駐車場にも入る気楽な街乗り用のキャンピングカーを希望していらっしゃったという話でした。

【町田】 じゃ、シュピーレンのサイズなどはぴったりですね。
【高森】 そうですね。実はテリーさんは2年連続アワードを受賞されたのですが、去年貸与されたのが軽キャンピングカーだったんですね。
 で、1年使ってみて、軽キャンピングカーの良さを十分ご理解されたようなので、今年は軽よりもう少し大きめのサイズの車を使ってみたいというご意向だったようです。
 さらに、私たちの車はベッド展開も楽だったことをご評価いただいたようで、それも選考理由の一つになったという話を聞いています。

【町田】 それはうれしい話ですね。ところでこの1年、テリーさんにはどんな使い方をしてもらいたいと思っていますか?
【高森】 やっぱりお忙しい方なので、そんなに長期間のキャンピングカー旅行は無理だと思いますが、お仕事の合間にでも、気分転換に海の見える場所などに出向いて、ゆったりとした気分になっていただきたいですね。
 また、野外ロケなどで、自分の出番が回ってくる間の休憩室として、ベッドで仮眠など取っていただければいいとも思っています。
  
 
シュピーレンに新レイアウト誕生
 
 高森社長にいわせると、テリー伊藤氏に限らず、最近は “軽キャンピングカー以上 & ハイエースキャンパー未満” というこの車のサイズに独特の価値を見出すユーザーがとても増えてきたという。

 キャンピングカーショーの会場で、主に軽キャンパーを見に来てお客さんが、実物を見て「狭い」と感じ、次にハイエースのバンコンを見て「大きすぎる」と感じ、迷っている間にこのシュピーレンのブースにたどり着いて、
 「あ、まさにぴったりの大きさだ !」
 と喜ぶ人が増えてきた、と高森氏は語る。

 同氏がシュピーレンを手掛けてから5年。
 生産累計でも100台を突破した。
 
 「うちみたいな小さな会社で100台を超えたというのは大変名誉な出来事なんです。やっぱりそれだけ多くのお客様に認めてもらったということが、我々従業員の励みになります」
 と、高森さん。

 そのシュピーレンに新型レイアウトが加わった。
 名称を「1+(プラス)1人掛けバタフライシート仕様」という。

 これまで同車には、主に三つのレイアウトが用意されていた。
 一つ目は、「1人掛けバタフライシート」(写真下)と呼ばれるもので、助手席の後ろに1人掛けシートを置き、その横に2名座れる横向きシートを置くというもの。乗車定員は前向きの3名までだが、いちおう最大5名分のシートが用意されることになる。
 
▼ 1人掛けバタフライシート仕様

 二つ目は、「2人掛けバタフライシート」(写真下)と呼ばれるもので、フロント席の後ろに大人2人が前向きに腰掛られるシートを配しているところに特徴がある。
 これだと乗車定員の4名全員が前向きに座ってドライブすることができる。

▼ 2人掛けバタフライシート仕様

 三つめが「3人掛けバタフライシート」(写真下)。
 これは2列目に、前向き3名が座れるシートを用意したもので、乗車定員が5名となる。

▼ 3人掛けバタフライシート仕様

  
 
1+1人掛けバタフライシートが追加
 
 上記の三つに対し、このほど「1+1人掛けバタフライシート」(写真下)というタイプが追加された。これは、セカンドシートが単座のバタフライシート2脚によって構成されるというもの。
 乗車定員は4名までだが、シートが1脚ずつ独立しているので、「2人掛けバタフライシート」に比べると、2列目に座る人たちの姿勢もかなりゆったりしたものになる。

▼ 1+1人掛けバタフライシート仕様

▼ 「1プラス1人掛け」では4人全員が前向き走行が可能になる

 さらに、このレイアウトの場合、シートアレンジの操作が楽。3人掛けバタフライなどと比べると、単座シートの方が軽くて操作性も良いのでベッドメイクなども楽にこなせる。

▼ ベッドメイクも簡単

▼ さらに、セカンドシート1脚だけ残して、もう一方はベッド状態にしてしまうことも可能

 この新しく加わった「1+1人掛けバタフライシート」の価格は、2WDのATで、3,180,000円(消費税8%込み)。
 詳しくは下記を。
 
 フロットモビールHP URL : http://flott-m.com/
  
 

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RVビックフット「スウィング W 4.7」

 
オリジナルハイルーフのおかげで
標準ボディで4人就寝


▲ 新しく出たハイルーフバンコンの「スウィング W 4.7」

 バンコン人気のもっともベーシックな部分を支えているのが、ハイエース標準ボディのロールーフ(写真下)である。

 その特徴は、普段使いができること。
 駐車場を選ばない。
 見た目も低重心でカッコいいので、遊び心をくすぐられる。
 そして、そこそこの装備を盛り込んだ車種が300万円代から出回っており、400万円代まで手を伸ばせば、そうとう充実したキャンピングカーが手に入る。

 というわけで、ハイエースナローボディのバンコンは、ガテン系の若者からヤングファミリーのお父さんまで、けっこうな人気を集めている。

 バンコン/バスコンのプロショップであるRVビックフットは、古くからこの分野で先行しており、スウィング N 4.7という標準ボディのロールーフバンコンの販売を好調に続けている。

▼ スウィング N 4.7

 しかし、ロールーフバージョンの場合は、「寝る」という機能を追求するとなると、やはり十分な満足が得られない。
 ダイネットをベッド展開して得られる就寝スペースは、せいぜい大人2人。
 独身男性や若いカップルが、たまに車中泊を楽しむ遊びグルマとしてなら十分に機能するが、子供ができたりして家族単位で使うとなると、とたんにキャパシティ不足を感じてしまうものだ。

 それを解消するために、RVビックフットがこの春に開発したのが、スウィング4.7のハイルーフバージョン。
 「スウィング W 4.7」と呼ばれるこのニューモデルは、人気商品の「N 4.7」と同じ全長・全幅を維持しながら、同社がオリジナル開発したハイルーフで屋根上げされているため、全高で520mmアップ。室内高1800mmを達成し、立ったまま着替えができる居住性を獲得した。 

▼ スウィング W 4.7外形

▼ スウィング W 4.7内装

 
 この全高アップで何が実現されたのか。
 ルーフの内側に2段ベッドが設定できるようになったため、大人4名就寝が可能になったのだ。

▼ 2段ベッドが展開できるハイルーフ

 前述したように、全高以外のサイズは「N 4.7」と変わらず。
 すなわち、長さが4690mm、幅が1690mmなので、高さ制限のある立体駐車場以外なら、コンビニだろうが、コインパーキングだろうが、どんなところにでも駐車が可能。

▼ コインパーキングに収まるサイズ

 つまり、これ1台で買い物、通勤、子供たちの送迎となんでもこなしてしまうほか、もちろん4人就寝が可能になったことにより、車中泊やキャンプにも絶大な威力を発揮する。

▼ 頭上が高くなったので、リビング部の圧迫感がなくなった

  
▼ 右サイドのカウンターにシンク、冷蔵庫。左サイドのカウンター下に電子レンジなどが収まるスペースがある

 ルーフ高があるので、将来的にエアコンなどの様々な装備を組み込むスペースも維持される。
 ハイエースを作り続けてきたRVビックフットらしい、素晴らしい着眼点を持った新バンコンだ。
 
 
《 スウィング W 4.7 概要 》

ベース車 レジアスエース ロングバン
      (+RVビックフットオリジナル スーパーハイルーフ)
エンジン 直4DOHC ガソリン
排気量 1998cc 
最高出力 100kW(136ps)/5600rpm
最大トルク 182N・m(18.6kgf・m)400rpm
ミッション 6速AT
駆動方式 2WD(FR)
乗車定員 6(7)名
就寝定員 4名
全長 4695mm/全幅 1695mm/全高 2500mm
車両本体価格 4,770,000円(税抜き)
  
 
RVビックフット HP URL http://www.rv-bigfoot.com/
 
 

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タコス「NV ジャック(NV jack)」

  
復活「男の美学」 !
 
 「タコス」というキャンピングカーメーカーは、増ひろ子さんという女性店長をスタッフの中軸に据えてから、とても商品バランスの良いショップになった。

▼ 「タコス」増ひろ子店長

 たとえば、現在同社の主力車種となっている「ハナ」シリーズなどは、彼女の発想がなければ、とても今のようなチャーミングな商品に育っていなかっただろう。
 女性に好まれる商品は、やはり女性の感性が発揮されなければ輝きが生まれない。
 そんな “当たり前のこと” が同社の「ハナ」などを見ているとよく分かるのだ。

▼ ハナ

 では、増ひろ子さんが店長になる前、社長の田代民雄さん(写真下)は一人でどんな車をつくっていたのか。
 ずばり、“男の車” ばかりだった。


 
 タコスというのは、どちらかというとキャブコン開発が得意なビルダーで、「ウィズ」、「ウィズ525」などという、アウトドアで使う遊びのギヤを積載できるスペースを持ったようなキャブコンが得意中の得意。
 
 この会社が、まだ「グローバル東京支社」を名乗っていた昔、グローバルのキャブコンに大型収納庫とバゲージドアを加えるというオリジナル車両を作りあげ、それに「タコス仕様」という名前を付けて売っていた。
 だから “タコス仕様” といえば、バイクや自転車、サーフボードや釣り道具が満載できるアウトドア仕様のキャブコンを意味した。

▼ タコスのキャブコン「ウィズ」

 田代氏ご本人の趣味もアウトドア。
 キャンピングカーを売りながら、時間があればバイクで放浪し、野山に張ったテントのそばで焚き火などを一人で楽しむ。

 とにかく “男の遊び” が好きなタコス社長の田代民雄さん。
 ここしばらくは「ハナ」などの売れ行きが好調なので、“男ぐるま” が前面に出てくることはなかったが、ついに我慢できなくなったらしい。
  
  
「NV ジャック」に込められたテーマとは?
  
 この春にデビューした「NV ジャック(NV jack)」は、久しぶりに田代氏の “男のロマン” が噴き出してきたことを感じさせるキャンピングカーである。

 といっても、この「NV ジャック」は、別に遊びのギヤを積んだりできるような車ではない。
 日産NV200バネットバンを使ったハイルーフ仕様のコンパクトなバンコンに過ぎない。

 だが、スタイルを見ると、男だけに分かるような “カッコよさ” が前面に押し出されている。

 鋭角的にスラントしたNV200のノーズに合わせるように、ハイルーフの前面が同じ角度の弧を描く。
 ルーフ部のリヤエンドも、直角に落とし込まれたリヤドアと同じ角度でストンと切れる。

 まさに、真っ直ぐな直線路を、空気を切り裂くようにひたすら走り抜くという意志がみなぎっているスタイルだ。
 バイクや自転車などを積み込むラゲッジスペースはないものの、このスタイルには、「走る喜び」をピュアに追い求める男っぽい嗜好が秘められている。
 
 
男は “艶消しの黒” だ !
 
 内装も、男の嗜好を満足させるような、渋い “艶消しの黒” 。
 もちろん内装色は顧客の好みに応じて、「ハナ」のような女性好みのファンシーカラーに替えることもできる。

 しかし、この “黒” の使い方に対するこだわりを見ていると、もう最初っから田代社長の頭には、「男のブラック」以外の選択肢は念頭になかったことが分る。

 装備類は、基本的にシンプルだ。
 キャンピングカーらしい装備といえば、ボディ右サイドに小振りなギャレーがあるのみ。

 ギャレーには、外部シャワーとして使える伸縮性を持ったフォーセット。浅めのシンク。そして鏡。あとはカセットコンロ。

 ここにあるのは、簡素であることを美学とするストイックな男のギャレーだ。

 … というか、まぁこれ以上大げさなギャレーを載せるのはスペース的にも無理であるという判断から生まれた工夫であるのだけれど、そういう構造的な要請を、あたかも “美学” であるかのように信じ込ませるのが田代社長の「タコスマジック」なのである。

 で、さらに “男っぽい” のは、そのギャレーがワンタッチ操作で格納されて壁側に折りたたまれ、ベッドメイクするときの邪魔にならない工夫が施されていることだ(写真下)。
 ここにも、「便利な道具を人に見せるのは恥だ」というストイックな男の美学が隠されている。



 … というか、まぁ、これも「ハナ」で女性たちから好評だった構造上の工夫の一つであるのだけれど、それを “渋い黒色” でコーディネートし、車を変えただけで、男の美学っぽく演じてしまうところが憎い。

 もともと、この「格納式シンク」は車中泊の朝など、女性が顔を洗ったりするものとして設けられたもので、だからこそ「鏡」も付いているのだけれど、男性だって車中泊の朝は鼻毛が伸びることが多いので、鏡は必要だろう。

 ちなみに、ギャレーを格納すると、フロアベッドの広さは1850×1350mmとなる。 
 
 
男同士で初恋の女を語ろう
 
 乗車定員は5名で、就寝は大人2名+子供2名。
 ハイルーフで屋根上げした分、そこに子供2人が寝られるルーフベッドが設けられるようになっているのだが、長さが1800以上取れているので、寸法的には大人でも問題ない。
 ということは、大人4名だって寝られないこともないのだ。

 オプションとなるが、運転席と助手性には、後ろ側に回転するシートを選ぶこともできる。
 そうなると、フロントシートとセカンドシートを向かい合わせる対面対座ダイネットも可能になる。

 奥さんとの2人旅もいいけれど、こういう車ならば、男の子との2人旅もいいだろう。
 あるいは、昔の親友を呼び出し、ダイネットテーブルにウィスキーグラスや氷などを並べ、淡く消えた初恋の女のことなど語り合うのもいいのではないか。

 この車のカタログのキャッチには、
 「疲れたら、JACKに寝かせてもらえればいい」
 というフレーズが書かれていた。

 男の “子守歌” になってくれるような車を目指した開発者のロマンが、その言葉からにじみ出てくる。
 
 
《 NV ジャック 諸元 》

ベース車両 日産NV200 バネットバン
エンジン種類 直4DOHC ガソリン
最高出力 80kW(109ps)/6000rpm
最大トルク 152N・m(15.5kgf・m)4400rpm
ミッション 4AT(5MT)
駆動方式 2WD FF
全長 4430mm/全幅 1700mm/全高 2330mm
乗車定員5名/就寝定員大人2名+子供2名
   
 
タコスHP URL http://www.tacos.co.jp/
 
   

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レンタルキャンピングカー「マクレント」

  
2017年は日本のレンタルキャンピングカー元年
  
 日本のキャンピングカー文化が大きく変わろうとしている。
 2017年という年は、後世そう記憶されるような年になるのではないか。

 2月初旬に幕張で開かれた『ジャパンキャンピングカーショー』では、車両開発においても、そしてインフラ整備においても、日本のキャンピングカーライフというものが大きく変化していくことを感じさせるたくさんの “兆候” が噴き出していた。

 その変化はよく観察しないと分からない。
 特に車両開発の部分では、一見、何も新しいものがなかったようにも見える。例年2月のショーをにぎわせていた、“あっと驚くような新車” というものがほとんど登場していなかったからだ。

 しかし、奇をてらった印象を伴う新型車・新機構が影を潜めた代わりに、目を凝らしていくと、どの車も、使い勝手の追求や装備類の精度アップ、さらにデザインの洗練度などにおいて驚くほどの進化を見せていた。
 個々の車両については、今後少しずつ紹介していくことになると思うが、今回はキャンピングカーそのものではなく、2017年度のキャンピングカーを使う環境面の劇的進化の一例を紹介したい。

 それは、レンタルキャンピングカー。

 今回のショーを特徴づけた大きな要素のひとつに、キャンピングカーをレンタルすることで広がる新しいキャンピングカーライフを提案する動きが、かつてないほどの活気を見せたことが挙げられる。

 イベントステージとフードコートが設置された館では、その半分がレンタルキャンピングカーを案内する業者のブースで占められていたし、その館外の駐車場では、実際に稼働しているレンタル車を並べた試乗会も催されていた。

▼ 「ジャパンキャンピングカーショー2017」でレンタルキャンピングカーのブースが集まった一角

▼ レンタルキャンピングカーでは、ペット同伴の旅行も可能なキャンピングカーを貸し出す業者の登場

 それらのレンタル事業を個々に紹介する記事も少しずつこのブログに取り上げていくつもりだが、ここではその初弾として、ヨーロッパのレンタルキャンピングカー会社「マクレント」の日本進出の情報をお伝えしたい。
 
 
欧州最大手レンタルモーターホーム会社「マクレント」
 
 「マクレント(McRent)」とは、2004年にドイツでスタートしてレンタルモーターホーム会社である。
 当初は8ステーション約360台のレンタル車で事業を始めたが、10年ほどのの間に大発展を遂げ、2016年には、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、オランダ、スペイン、ポルトガル、エストニア、フィンランド、アイルランド、アイスランド、ノルウェー、ポーランド、スウェーデンなど15ヵ国の68ステーションの拠点を構築する欧州最大手のレンタルキャンピングカー会社に成長した。

 そして、この2017年1月にはついにアメリカへ進出。
 さらに、この2月からは、日本でもレンタル事業が開始されることになった。
 
 実は、この「マクレント」の日本進出を日本のキャンピングカー産業が発展するための起爆剤にしようと考えている人がいる。
 このたび「マクレントジャパン株式会社」を立ち上げ、その会長として就任した高橋宣行氏(かーいんてりあ高橋社長)である。

▼ マクレントジャパン(株) 高橋会長

 氏は、レンタルキャンピングカー事業が日本のキャンピングカー文化に新しい血を流入させ、日本人のキャンピングカーライフを劇的に変えるものだという確信を持っている。
 幕張ショーの会場で、その高橋氏に、レンタルキャンピングカー事業にかける熱意のほどをうかがった。

▼ マクレントジャパンがリリースするレンタルキャンピングカー車のモデル(業者向け)

  
…………………………………………………………………………
キャンピングカーは「買う」から「借りる」の時代へ

【町田】 レンタルキャンピングカー事業を始めようとした動機は、どこにあったのですか?

【マクレントジャパン 高橋】 欧米のキャンピングカーの普及率というのは、日本に比べてものすごく高いわけですが、そこで稼働しているキャンピングカーの3割は、実はレンタルキャンピングカーなんですね。
 それに対し、日本では10万台弱といわれるキャンピングカー保有率のなかで、レンタルキャンピングカーの占める台数はやっと1,000台に届くか届かないかといったところです。
 つまり、日本は、レンタルの分野でまったく遅れをとっていると思ったことが、この事業を始めようと思った動機の一つです。

【町田】 高橋さんはキャンピングカービルダーとして、個々のエンドユーザーに供給される完成車を納品されているわけですよね。そういう従来から続けてこられた事業と、新しいレンタルキャンピングカー事業は、今後どういう連携を保っていくのでしょうか?

【高橋】 おそらく、その両者が上手に組み合わされることによって、われわれキャンピングカー業界の成長がより加速するのではないでしょうか。
 というのはですね、キャンピングカー業界というのは、確かに毎年右肩上がりで成長してきました。
 しかし、その伸び率は正直にいって、まさに “微増” という言葉でしか表現できないほどゆるやかなものなんですね。
 むしろ、私は飽和状態に近づいてきているんではないかという懸念すら持っています。
 たとえば、このショー(「ジャパンキャンピングカーショー2017」)でも、ご覧のとおりたくさんの見学者がいらっしゃるわけですが、こういうショーで実際に車を購入される方々というのは、いつも全体の1~2%程度。
 つまり、現状のままでは、キャンピングカーを購入される層はもう頭打ちになりつつあるのではないかと思っているんです。

【町田】 そういう状況を、レンタルキャンピングカー事業が打破していくと?

【高橋】 そうです。これまでのように、ビルダーとして完成車を売り続けていくことには限界があると。
 たとえばね、私はショーの開催中、休憩所などに行って、休んでいらっしゃるご夫婦の話などをそれとなく聞いているんですよ(笑)。
 すると、旦那さんはけっこう車を買う意欲が旺盛でも、必ず奥さんがこういうのね、「あなたね、こんな高い車を買ったって、年に何回乗ると思うのよ」って。

【町田】 なるほど。奥様というのは一般的に消費行動において慎重ですからね。
【高橋】 でも面白いのはね、キャンピングカーの購入に消極的な奥さんが必ずいう一言があるんです。それは、「使いたいときだけ借りることはできないの?」(笑)。

【町田】 はぁはぁ、そこに “勝機” があると !

【高橋】 そうなんです。テレビや新聞などのメディアを通じて、キャンピングカーの露出度が飛躍的に高まってきているために、興味を持つ人々は確実に増えている。
 ただ、まだ経済状況が先行き不透明なため、みな購入までに踏み切れないんですよ。
 だったら、まずレンタルキャンピングカーを利用することで、キャンピングカーライフの楽しさや面白さを実感してもらおうと考えたんです。そういう経験を積んで、もし奥様もキャンピングカー旅行を気に入られたなら、それこそ夫婦ともども気持ちよく購入に踏み切ってくれるのではないか、と。
 
 
海外のレンタル事業者がアドバンテージを持つ理由

【町田】 「マクレント」という海外のレンタルキャンピングカー会社と提携された理由は何ですか?

【高橋】 ひとつはインバウンドのお客様も考えたからですね。日本人の間にレンタルキャンピングカーという存在が認知されたとしても、それだけでは、稼働率の飛躍的向上は期待できない。
 なぜなら、日本人の休暇状況を考えると、盆・暮れ・正月・ゴールデンウィークに休みが集中するけれど、それ以外はまとまった休みが取れない。そうなると、休みの日以外にはレンタルキャンピングカーが稼働することもない。

▼ 「マクレント」のヨーロッパの拠点

【町田】 その点、外国人観光客は、日本の休暇システムには縛られないと?

【高橋】 そうです。彼らは夏・冬関係なく、日本を訪れてくれる。しかも、欧米などの観光客はキャンピングカーの扱いに慣れている。外国人が日本でキャンピングカーを借りる場合、比較的長期になるというデータがすでにあります。
 逆にいうと、インバウンドのお客様を取り込まないかぎり、このレンタル事業の大きな成長は期待できないと思います。

【町田】 なるほど。そのためには「マクレント」のようなワールドワイドでレンタル業を行っている業者さんのノウハウを採り入れた方がいいと?

【高橋】 そのとおりです。実際に海外のお客様を相手にする場合、たとえば英語表記の案内書や説明書を適宜用意しなければならない。そういう事業に慣れない私たちが、それを一から始めるのはけっこう大変なんです。
 しかし、外国のレンタル事業者なら、英語、フランス語、イタリア語などのさまざまな言語に分かれたパンフレット類の制作・配布にも慣れているし、レンタル車の使い勝手を説明する英語の動画のようなものもふんだんに準備している。
 さらに、日本の観光を計画している外国人に、「日本に行けばマクレントの支社があります」という形で大々的にアナウンスしてくれる。これが大きいと思います。

▼ マクレントジャパンのレンタルキャンピングカー専用車の内装

 
 
外国人に日本のレンタルキャンピングカーをどう説明するか?

【町田】 なるほど。海外の事業者と提携すると、実にさまざまなメリットがあるわけですね。
 ただ、日本の交通システムや交通ルール、またキャンピングカー泊を受け入てくれるインフラ面などで、外国と日本ではかなりの違いがあります。そのことに戸惑う外国人利用者もいると思うのですが、それに対する対応は?

【高橋】 まず、英語のビデオを作ります。そこに日本でキャンピングカーを使うときのノウハウを収録する。それを「マクレント」のネットワークを通じて、日本でレンタルキャンピングカーを使う計画を練っている人たちに事前に見てもらう。
 また、日本に来られた方々には、使い勝手を説明した動画をレンタル車に搭載してあるDVDプレイヤーで確認してもらうようにします。

【町田】 その場合、実際にレンタルキャンピングカーとして供用する車両はどのようなものになるのですか? 欧米の人向けの輸入車になるのですか? それとも国産のキャブコンとかバンコン?

【高橋】 そこがこのビジネスの要(かなめ)になるところなんですが、ずばり国産車をメインに回していくつもりです。
 しかし、これまで出回っている国産車とはまったく違うものが必要になると考えています。

【町田】 それはどんな車両なんですか?

【高橋】 実は、すでにそういう車両として案内できるプロトタイプのモデルが完成しています。
 それに関しては、「マクレントジャパン」の共同経営者であり、実際にレンタル用車両の開発を担当されたM・Y・S ミスティックの佐藤正社長が説明されるのがいいかもしれませんね。
 
 
レンタルキャンピングカー専用モデルの特徴
 
▼ MYS ミスティック 佐藤社長

 
【町田】 というわけで、「マクレントジャパン」が提案するレンタルキャンピングカー用モデルについて、少しお話をうかがいたいのですが。
【佐藤】 はい。
【町田】 まず、このモデルは、一般客が自家用車として購入したいと希望すれば買えるものなんですか?
【佐藤】 いや、今のところ個人に販売する予定はないです。あくまでも、これは「マクレントジャパン」が貸し出すレンタルキャンピングカー専用モデルです。
 
▼ マクレント専用車外形

【町田】 エンドユーザー向けに製作するキャンピングカーと、このようなレンタル用キャンピングカーでは、内容的にどこが違うのでしょう?

【佐藤】 最大の違いは、“規格” がバラバラか、それとも統一されているかということですね。
 つまり、エンドユーザー向けのキャンピングカーなら、そのお客様の要望に応じた自在なレイアウト、装備類が許されるわけですが、レンタルキャンピングカーの場合は、なるべく同じレイアウト、同じ装備類で統一されていた方がいろいろと便利なんです。

【町田】 どういうふうに便利なのでしょう?

【佐藤】 まず、お客様の立場から考えると、いろいろな場所でいろいろな会社の車を借りても、使い勝手がみな同じなら安心して使えますよね。
 車が変わると慣れるまでに時間がかかりますが、同じ車なら慣れるまでの苦労がなくなる。だから、楽しむ時間が増える。
 いっぽう、扱う側からすれば、同一規格の車ならば、マニュアルを統一化できますので、トラブルがあっても、どの部分が原因となったトラブルかすぐ分かる。パーツを用意するのも楽。
 そういうメンテナンス性・サービス性の効率化を図る上で、車両の規格が統一されていた方が断然いいんですね。
 
 
構造をシンプルにしてサービス性を向上させる

【町田】 よく分かります。… では、どういう特徴のある車なのか、簡単にご説明いただけますか。

【佐藤】 つくりは全体的にシンプルです。まず外壁はうち(M・Y・S ミスティック)が作り慣れているアルミのサイディングです。FRPキャビンを架装するという手法もあるのですが、アルミの方が部分補正しやすい。仮にどこかにぶつけても、その部分だけ取り外して修正し、また貼ればいいだけですから。
 
【町田】 ベース車にライトエーストラックを選んだ理由は?

【佐藤】 やはりキャブコンにした場合、日本の道路事情や駐車場事情を考えて、コンパクトな仕上がりを維持できるということが大きかったですね。
 これなら、全幅約1.9m、全長4.8m。まずどんな道にも入っていけるし、どんな駐車場でも停められるでしょう。
 それに、万が一転倒した場合でもフレームがありますから、車体の損傷をある程度防いで原型を保つことができると思っています。
 
【町田】 走りはどうなんでしょう?

【佐藤】 高速道路で100km巡航するならばまったくのストレスはないです。しかし、それ以上のスピード … たとえば120km以上になると「ちょっと怖い」と感じる程度のセッティングにしてあります。そうしないと、キャンピングカーの運転に慣れていない人にはかえって危険。そういう基準で足回りを組んでいます。
 
【町田】 内装の特徴を。

【佐藤】 内装もいたってシンプル。装備としては、バンクベッド、冷蔵庫、シンク、電子レンジ、FFヒーターといったところですね。、
 レンタルキャンピングカーは、キャンピングカーに慣れていない人が使うので、よく壊されるという話が多いんですね。そこで、壁や床も傷つきにくい部材を使い、壊れた場合でも簡単に補修できるようにしてあります。
 電気設備なども極力簡単にしてあるし、ヒューズの位置や配線などもメンテしやすいように分かりやすい場所に配置しています。

▼ 室内全景

このままではレンタル用キャンピングカーがすぐに足りなくなる

【町田】 この先は会長の高橋さんにおうかがいした方がいいのかもしれませんが、現在、「マクレントジャパン」の代理店さんを募集されていらっしゃいますが、その場合、代理店契約を結ばれた業者さんには、みなこの車両を買ってもらうということになるんですか?

▼ 高橋会長

【高橋】 いえいえ、そういうことはまったくないです。ここに用意した車両は一つのサンプルにすぎません。あくまでも、「レンタルキャンピングカー用車両として一番使い勝手がいいスタイルです」という提案材料の一つとして考えてもらえばいいです。
 だから、代理店になられた方は、それぞれご自分のお店の方針に適した車両をご用意いただいてもまったくかまわないわけです。
 ただ、その場合も、できれば規格だけは統一してほしいというのが希望なんですね。ベース車やグレードは異なっていても、統一マニュアルが使えるように、レイアウト、装備品、配線系統などは統一してほしい。その方が製造やメンテナンスの効率が飛躍的にアップしますから。

▼ キッチン周り

【町田】 確かに、そのとおりですね。でも統一規格を実現するというのは、現状ではなかなか難しそうですね。

【高橋】 でも、そこをクリアできるかどうかが、今後のレンタルキャンピングカー事業が発展するかどうかのカギになると思います。
 けっきょく、レンタルキャンピングカー業界が抱える最大の問題は、この事業が拡大していったときに、レンタル用の車両が圧倒的に足りなくなるということなんですね。
 この状態で推移していくと、もうすぐにでも “タマ不足” がはっきり見えてくると思います。

【町田】 そうなった場合、他のレンタル業者さんも困ることになりそうですね。

【高橋】 そうなんです。だから、今のうちに各ビルダーさんにレンタル用キャンピングカーの製作をお願いしたいんですよ。
 そして「マクレント」の趣旨にご賛同いただける業車さんの中で、製造能力を持っている企業さんには、ぜひとも統一規格のレンタル用キャンピングカーを製作してほしい。
 たぶん、キャンピングカーのレンタル事業がこの調子で推移していけば、500台1,000台という車両がすぐにでも必要になってくるでしょう。
 しかし、今のわれわれのようなビルダーの生産能力では1社がすぐに500台用意するなどとても無理な話なんです。
 でも、ビルダー1社がそれぞれの生産能力に応じて、プラス2台とかプラス3台増産していくのなら可能なんです。
 たとえば、国産ビルダー100社が5台ずつキャンピングカー専用モデルを作るとしましょうか。そうなると、あっというまに500台そろう。
 そういうことが実現して、はじめて国内のレンタルキャンピングカー事業の未来が開けてくるでしょう。
 そして、そういう事業が着実に進展していけば、日本のキャンピングカー産業全体が飛躍していくと思います。

マクレントジャパン専用モデル 詳細

【ベース車】 トヨタ ライトエーストラック
【排気量】 1.500cc
【最高出力】 97ps
【燃料】 ガソリン
【駆動方式】 2WD FR
【ミッション】 4AT
【乗車定員】 6名
【就寝定員】 6名
【全長×全幅×全高】 4,800×1,890×2,700mm
【主要装備】 収納庫/ルーフベンチレーター/遮光カーテン/給水タンク(19㍑)/排水タンク(19㍑)/電子レンジ/外部電源/サブバッテリー(105Ah×2)/コンバーター(100V → 12V)/インバーター(2.0kW)/冷蔵庫(40㍑)/FFヒーター(ベバスト)/ステンレスシンク/LED照明(4ヶ所)/走行充電/スライド式バンクベッド他
 
 

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ニートRV「ウィネベーゴ・フューズ」

 
「フューズ」に見る “融合” の思想

 北米モーターホームにまったく新しい風が吹き始めた。
 長らくアメリカンモーターホームのカットウェイシャシーとして使われていたフォード・エコノラインがフェイドアウトしていったなかで、その後継機種として位置づけられたフォード・トランジット(350HD)がいま圧倒的な存在感を示し始めている。

 そのトランジットをベースに開発された新世代モーターホームの筆頭が、「ウィネベーゴ・フューズ(Winnebago Fuse)」である。

▼ 「フューズ」エクステリア

 米国ウィネベーゴ社によって開発されたこのクラスCモーターホームがアメリカでデビューしたのは、今から1年半ほど前。
 日本においては、昨年12月に、ウィネベーゴ社の正規代理店である(株)ニートRVの内覧会にてお披露目され、2017年2月の「ジャパンキャンピングカーショー」(幕張)で国内デビューを飾った。

▼ 「フューズ」インテリア

 「フューズ」という車名に込められた意味は何だったのか?

 ジャズやロック、ソウル、ポップスなどが融合した音楽を “フュージョン” と呼ぶように、「フューズ」とは、異なるものが溶け合って融合した状態を指す。
 名前に込められた意味をたどっていけば、開発者たちがこのモーターホームに込めた “思想” のようなものが浮かび上がってくる。
 
 すなわち、「アメリカンモーターホーム文化」と、「ヨーロッパRV技術」の融合。
 「革新的テクノロジー」と、「伝統回帰デザイン」の融合。
 そして、「誠実なエコ志向」と、「奔放な遊び心」の融合。

 そのような、それぞれベクトルの異なる個性が、「ウィネベーゴ・フューズ」という一つの完成度の高い “作品” に収れんしていくのを見てしまうと、まさに目の前で奇跡が起こったような気分になる。

▼「フューズ」エクステリア スライドアウトルーム

 
 
ついにディーゼルエンジンを採用
 
 では、突出した個性同士が融合し、より高次な技術的表現に昇華した具体例を見てみよう。

 まず、エンジン。
 “パワーストローク” というニックネームを持つ高性能エンジンが採用されている。
 3200cc ・直列5気筒
 コモンレール・ターボディ-ゼルエンジン
 最高出力137kW(185ps)/3000rpm
 最大トルク474Nm(48.4kg-m)/1500~2500rpm
  
 スペックこそエコノラインに及ばないものの、注目すべき点が一つ。
 もうガソリン車ではないのだ。

 ここに至るまでの道のりは長かった。
 ヨーロッパでは乗用車から商用車、RVに至るまでディーゼルエンジンが主流になってきているというのに、これまでアメリカ人はずっとガソリンエンジンにこだわり続けてきたからだ。

 この「フューズ」が生まれる前、ウィネベーゴ社は、欧州車のフィアット・デュカトの派生形であるクライスラー・ラム・プロマスター3500をベースにした「トレンド」というクラスCと、「トラバト」というクラスBを発売していた。

▼ ウィネベーゴ「トレンド」

 「トレンド」、「トラバト」のエンジンはガソリン。
 本来がディーゼルエンジンのデュカトベースでありながら、わざわざガソリンエンジンに換装して使っていたのである。

 それは、長い間、原油を安価に手に入れることができたアメリカの消費構造がもたらした “習慣” であったが、たぶんに、快楽・快適を愛するアメリカ人の生理から来るものもあった。
 すなわち、アメリカ人は、「エコ」とか「燃費」を意識してディーゼルを選ぶヨーロッパ人の “我慢を強いられる文化” よりも、ガソリン車の “スカッとさわやか” な運転感覚の方を好んだのである。

 しかし、フォート・トランジットでは、ついにパワーユニットを、欧州のディーゼル車では当たり前となっているコモンレールディーゼルエンジンに替えた。
 このエンジンは、排気ガス規制への対応のために生まれてきたような性格を持っており、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)などの排出量を低レベルに抑えているところに特徴がある。
 
 
アメリカ人はやはりFR車が好き
 
 このように、環境問題にシビアなスタンスを取るヨーロッパ流エンジンを採り入れながらも、トランジットは、一方ではアメ車らしい豪快な乗り味を忘れなかった。駆動方式には、車体の下でプロペラシャフトが回転していく力動感をみなぎらせたFRが選ばれたのだ。

 やはり、アメリカ人は、前輪が大地を引っかいて前進するようなFFよりも、後ろから力強く車体を押していくFRの乗り味が好きなのだろう。

 また、コーチ部分の架装重量が増えすぎると、FF車はフロントタイヤに掛かるトラクションが減って路面との摩擦係数も少なくなるため、駆動力が不安定になりがち。
 そのため、雪道などではFRより不利になる場合もある。
 FR車にこだわったのは、自動車大国アメリカのこだわりでもあったのだ。

 ここにパワートレーンにおける「アメリカ人の嗜好」と「ヨーロッパ技術」の融合が見えてくる。

▼ 「フューズ」フロントフェイス

 それはトランジットの “顔” にも表れている。
 エコノライン(写真下)の角ばったボンネット形状に比べ、トランジットはノーズがスラントしているため、どこかセミキャブオーバー風のフロントマスクに見える。
 しかし、ボンネット内部にはしっかりと縦置きエンジンが貫かれている。

▼ エコノラインのエクステリア(ウィネベーゴ・アスペクト)

 「フューズ」の縦置きエンジンというのも、アメリカ人好みだ。
 それはFRとの相性が良いからだ。
 前述したことに関連するが、FRならばFFに比べて前後の重量配分が安定し、その分、自然な乗り味が得られる。
 これもアメリカ人らしい嗜好といえるだろう。

 また、後輪がダブルタイヤになっていることも、耐荷重性能を上げることにつながり、トランジットのモーターホームシャシーとしての信頼性を高めることに貢献している。
 
 
運転席はトラックではなく乗用車
  
 運転席まわりの “光景” も変わった。
 インパネのデザインは、トラックではなく、もう乗用車である。
 ステアリングなどは、スポーツカーを思わせるほど、小径だ。
 
▼ 「フューズ」のインパネデザイン

 
 さらに、助手席には回転ベースが採用され、23Tなどでは、ヨーロッパ車のように、テーブルを挟んでセカンドシートと向き合う対面ダイネットを形成することもできる。 

 トランジットに搭載された先進技術は、これにとどまらない。
 たとえば「レーンキーピングシステム」。
 これは、運転中、気づかぬうちに進路から外れ、うっかり道路の白線を踏むとステアリングが微振動を発して警告する安全装置だ。
 また、登坂中に、ブレーキペダルからアクセルペダルに踏みかえる際、ペダルを一瞬離しても、坂道における停止状態をキープする「ヒルスタートアシスト」も組み込まれている。
 
 
内装はアメリカントラディショナル
 
 繊細にして、大胆。
 アメリカ的な磊落(らいらく)さと、ヨーロッパ的な緻密さを “融合” させたこの「トランジット」というベースシャシーに、ウィネベーゴ社は、またそのキャラクターにぴったりの内装を創造した。

 一言でいえば「ネオ・クラシック」。
 ニートRVの広報媒体によると、
 「アメリカン・トラディショナル」。
“古き良き時代にさかのぼった” といってもよいくらいの復古調デザインが強調されているという。

▼ 「フューズ」インテリア

 このことは、アメリカンモーターホームでありながら、ヨーロッパデザインを強く意識した「ウィネベーゴ・トレンド」(写真下)などと比べると分かりやすい。
 「トレンド」では、プラスチック家具などを採用し、無機質な合理性を強調したデザインが採り入れられていたが、「フューズ」では、アーリーアメリカンカラーの木目家具を主体とした温かい内装テイストが復活した。

▼ 「トレンド」インテリア
 
 
 
クラシカルではあるが、レトロではない
 
 しかし、「フューズ」の内装はクラシカルではあるが、レトロではない。
 デザインにおける「アメリカ回帰」は、しばしばレトロの方向に走っていくことが多いのだが、「フューズ」はレトロの対極にある「格調」を重視している。

 「レトロ」のベースとなるものはポップ感覚(↓)である。

▼ ポップ感覚に満ちた愛らしい形のティアドロップ型のトレーラーなどの人気が復活しているのも、レトロ感覚

 しかし、デザイン上の懐古趣味にはもう一つあり、それが「ネオ・クラシック」だ。古代ギリシャ建築を模したホワイトハウスの建物のようなデザインといっていい。

 では、「フューズ」の伝統回帰は、具体的にどのようなところに現れているのか?

▼ オーバーヘッドキャビネット

 たとえば、オーバーヘッドキャビネット。
 扉が引き戸だ。
 日本人にはなじみのある家具形状といってもいいが、最近モーターホームの世界では、このようなスライドドアは影を潜めていた。
 従来のキャビネットドアは、ラウンドした扉部分をポンと押すだけで自動的に開く構造のものが主流であった。
 しかし、「フューズ」では、それをあえて昔風のスライドドアに戻している。収納作業の安定感を取り戻す意味と同時に、クラシカルな意匠の格調を重んじた配慮といえる。

▼ 「フューズ」のキッチン

 キッチン周りのデザインも、テーマは “融合” 。
 アートっぽい弧を描く不定形の2口コンロは、完全にヨーロッパ風。
 カランの首がフレキシブルに曲がるフォーセットの形状もヨーロッパ調。
 それでいて、実用的な深さを保ったシンクは、アメリカンモーターホームの美点をそのまま継承している。
 
 
個性的なフロアプラン
 
▼ ニートRVが導入した「フューズ」のレイアウトは2パターン。上が23A。下が23T。23Aは前側のリビング部分がスライドアウトして延長されるタイプ。23Tは、リヤ側のベッドスペースがスライドアウトして広がるタイプ。



  
 ▼ 23Aのレイアウトでは、リヤにスライディングドアで仕切られるトイレ・シャワーコンパートメントが配置される。シャワーパンが広いので、散歩から帰ってきた大型犬などの足を洗ったりするときに楽だ。

 ▼ 2ドア冷蔵庫はノアコールド製の静音型。モーターなどの可動部分がないRV専用タイプだ(3ウェイ 150㍑)。

 ▼ 23Aのリビング。ベッドメイクすると、幅810mmのベッドで二つ生まれる。左側のベッドは、延長マットを埋め込むと全長2030mmまでサイズアップする。

 ▼ マットレスの下には、「フロリー・デラックス・スリープシステム」と名付けられた “快眠を約束する” 構造のベッドシステムが採用されている。

 ▼ キッチンキャビネットと床の間に、空間が設けられている。この隙間に足の指先を入れられるようになっており、キッチンの立ち仕事が続いたときに生じる腰痛などの原因を取り除くようになっている。


 
 
Make America Great Again
  
 「フューズ」で追求されたクラシカル志向は、ウィネベーゴ社に限ったことなのだろうか。
 ニートRVの猪俣慶喜取締役によると、「伝統回帰」は最近のアメリカンモーターホーム全体の傾向だという。

▼ ニートRV 猪俣取締役

 「ウィネベーゴも “トレンド” においては、ヨーロッパ車を意識したFF車をベースのモーターホームに手を染めましたが、やはりアメリカ人は伝統的なFRのフォードシャシーに乗りたいんですよ。
 内装も、“トレンド” のような近未来的でクールな意匠よりも、人のぬくもりを感じさせる温かいデザインの方が好まれる。アメリカ人の生活感覚というのは、建国以来変わらないといえば変わらないのです」

 「アメリカ人の伝統回帰」といえば、すぐ連想されるのはトランプ大統領の掲げた「Make America Great Again(偉大なるアメリカの復活)」という言葉だろう。
 この言葉に共感した人たちが国民の半数近くにのぼったからこそ、彼は大統領になれた。

 このトランプ氏の掲げる “アメリカの復活” と、最近のモーターホームの伝統回帰は、どこかで通底しているものがある。

 われわれ日本人は、トランプ支持者の思想傾向を、ともすれば「保守化、右傾化、民族差別化」などというレッテルを貼って、あたかも政治現象のように捉えがちだが、アメリカ人の伝統回帰というのは、そんな尖ったものでも狂信的なものでもないのかもしれない。
 
 それは、かつてのアメリカ国民が、西部劇ヒーローのジョン・ウェイン(写真下)に憬れたような、ごくごく単純な「強いもの、頼りがいがあるものが好き」という悪意のないマッチョ信仰にすぎない。
 

 
アメリカのピックアップトラックブーム

 アメリカ人の無邪気なマッチョ信仰を示す例として、こんなものもある。

 2016年に、アメリカの女性を対象にし、「どういう車に乗っている男性が魅力的か?」と尋ねる調査が行われたという。
 その結果、「ピックアップトラックに乗った男性」という答が32%を獲得して、27%の「スポーツカーに乗った男性」を上回ったらしい。
 車がなければ移動も生活もできないアメリカでは、ピックアップトラックを持っている男は「頼りがいがある」と見なされる傾向が強いのだとか。

▼ アメリカのピックアップトラック

 ちなみに、「魅力的な男性が乗る車」をブランド別に集計すると、1位が「フォード」(16%)、2位が「シボレー」(13%)、3位が「ポルシェ」(11%)だったとのこと。
 
 リーマンショックによって壊滅的に落ち込んだアメリカの自動車販売は、その後順調に回復し、現在は年間1,750万台まで伸びてきたという。
 それをけん引したのはピックアップトラックであるらしい。2016年9月のデータによると、アメリカの自動車販売の51%がピックアップトラックを含むライトトラックだったそうだ。

 モーターホームシャシーにおけるフォード・トランジットの人気は、そういう “フォードトラックブーム” をも反映しているのかもしれない。
 
 
ウィベーゴ・フューズWF423A 概要
 
【ベース車】 フォード・トランジット350HD
【乗車定員/就寝定員】 4名/4名
【全長/全幅/全高】 7,350mm/2,320mm/3,110mm
【排気量】 3,200cc
【最高出力】  137kW(185ps)/3000rpm
【最大トルク】 474Nm(48.4kg-m)/1500~2500rpm
【ミッション】 6速AT
【駆動方式】 2WD FR
【燃料】 軽油
【車両本体価格】 13,500,000円(税抜き) 
【主要装備】 エアコン/冷蔵庫(3ウェイ)/ガス式FFヒーター/給水タンク(102㍑)/ブラックタンク(162㍑)/グレータンク(155㍑)/ビルトイン調理器具/温水シャワー/サブバッテリー/電動サイドオーニング/外部電源/ルーフベンチれーたー/ルーフエアコン/マリントイレ/遮光カーテン/ツインベッド/外部収納庫(654㍑)他

ニートRV URL:http://www.neatrv.com/

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キャンピングカーライフの新しい楽しみ方

 
「くるま旅クラブ」、
「車中泊パーク」、
「レンタルキャンピングカー」を徹底解析

 かつては、使いこなすにはそれ相当の知識や技量が必要だと言われてきたキャンピングカー。
 しかし、現在のキャンピングカーは乗用車の延長のようなものとして、購入したその日から気軽に旅行に出かけられるものが主流になってきた。

 それにはキャンピングカー技術の進歩も影響しているが、それだけではない。「RVパーク」や「湯YOUパーク」といったインフラの整備。「くるま旅クラブ」のようなユーザー組織によるサービスシステムの確立。
 さらにはレンタルキャンピングカーのようにキャンピングカーを試験的に体験できるビジネスが普及するなど、環境面での整備が進んできたことも大きい。

▼ RVパーク「道の駅・南きよさと」(山梨県)

 ここでは安全で快適なキャンピングカーライフを約束するそれらのシステムを徹底解析する。
 
 
キャンピングカーを購入したら
まずユーザークラブに入会

 
会員数6千5百人という日本最大の
キャンピングカークラブ「くるま旅クラブ」

 キャンピングカー旅行を「くるま旅」と表現することがある。
 観光旅行や温泉めぐり、あるいは釣り・スキーといった趣味を追求する車として扱うときの言葉だ。
 そのようなキャンピングカーに備わっている広がりのある世界をサポートするユーザー団体が「くるま旅クラブ」だ。

▼ くるま旅クラブ ロゴ

 現在、その会員数は約6千5百人。このクラブに入会すると、数々のキャンピングカー用施設が使えるようになるほか、JRVA(日本RV協会)が主催するキャンピングカーイベントに無料で入場できたり、フェリー料金の割引きが適用されるなど、数々の魅力的特典が得られるようになっている。

 さらに、昨年あたりから新しいサービスも加えられ、同クラブはまさに我が国のキャンピングカーライフを根底から支える大組織に成長。そのサービス内容の進化には目を見張るものがある。

▼ くるま旅クラブの会員に郵送される会報誌『旅楽』

 この「くるま旅クラブ」の会員システムには四つのタイプがあり、入会者はそれぞれ好きなものを選べるようになっている。

 いちばん手軽なのは「スタンダード会員」。
 年会費1800円/入会金1000円と基本料金も安い上に、主要都市で開催されるJRVA特別協賛イベントにも年1回だけ無料入場できるほか、フェリー料金の割引きがあったり、湯YOUパークなどが利用できるといった基本サービスが受けられるようになっている。

 この「スタンダード会員」のサービス内容に加え、ワンランク上のサービスを提供しているのが「プレミアム会員」だ。この会員になると、同クラブの会報誌『旅楽』などに添付されるプレミアムクーポンを利用することにより、RVパーク、湯YOUパークなどの施設でより魅力的な特典が得られるようになり、フェリー会社によってはお食事券やワインのプレゼントがあったりする。

▼ プレミアムクラブの会員証

 そのほかにも、キャンピングカーイベント会場に設定された特別休憩施設のプレミアムラウンジで、無料の軽食などを味わいながら優雅な休憩タイムを過ごすこともできる。
 プレミアム会員の年会費は5000円/入会金は3000円と多少高めだが、キャンピングカーイベントの会場にも会員証を提示するだけで何回も入場できるなどの特典がつくので、元を取るのも簡単だ。

 このように「プレミアム会員」と「スタンダード会員」ではそのサービス内容がガラッと変わってくるのだが、最初に入会するときは、はたしてどちらが得なのだろうか。
 
 
プレミアム会員はファーストクラス
スタンダード会員はエコノミークラス

 
 「くるま旅クラブ」の広報活動を手伝っている漫画家のさいばしんさんによると、「キャンピングカーの使用頻度によって異なってくる」という。

▼ さいばしん さん(ご自身が描かれた似顔絵)

 
 「プレミアム会員」はイメージとしては旅客機のファーストクラス。
 一方の「スタンダード会員」はエコノミークラス。
 すべてにおいてゴージャスで快適なのは「プレミアム会員」の方だが、キャンピングカー旅行はせいぜい年1回。キャンピングカーショーを見学するのも年1回程度の活動を予定している人ならば、料金の安い「スタンダード会員」で十分だという。
 
 一方、月に2~3回のキャンピングカー旅行を計画し、キャンピングカーショーも年に2~3回通うような人ならば、断然「プレミアム会員」の方がお得。
 プレミアム会員の場合は、先述したようにイベント会場に無料で入場できるほか、さまざまな “車中泊パーク” を利用する場合に料金割引きが適用されたり、特典が付いたりする。
 つまり、キャンピングカーの稼働率が高くなればなるほど、「プレミアム会員」のメリットが生まれてくる。

 この二つの会員タイプ以外にも、まだまだ魅力的なシステムがある。
 その一つが、キャンピングカーの購入を検討している人々に “お試し用サービス” を知ってもらうための「ビギナー会員」(年会費3000円/入会金0円)。
 
 また、キャンピングカーを持っていない人のための「ベーシック会員」というものもある。
 この「ベーシック会員」というのは、ミニバンやワンボックスカーのような乗用車ユーザーを対象にした会員制度で、昨年の6月に発足したばかり。
 年会費4000円/入会金2000円を払いさえすれば、キャンピングカーを所有していなくても「くるま旅クラブ」の諸サービスが受けられるようになっている。
 
 
キャンピングカーを買って
泊まる場所に困ったら、まずRVパーク

 このように数々の特典が設けられた「くるま旅クラブ」の会員制度だが、車中泊システムとしてはどのようなサービスが用意されているのだろうか。

 その代表的なものとして、まず「RVパーク」を挙げることができる。
 これはAC電源、お風呂、トイレ、ゴミ処理システムなどを備えたキャンピングカー向けの公認宿泊施設で、2012年7月に山口県・萩市に誕生した「RVパークたまがわ」を皮切りに、2016年12月現在全国に86ヶ所展開しているポピュラーな車中泊パークである。
 もちろん利用料金は発生するが、その金額は2000円程度に収められているケースが大半で、「お金を払っても電源やトイレが使える方がありがたい」と利用者からは好評だ。

▼ RVパークの電源システム(群馬のRVパークおおた)

 このRVパークができるまでは、キャンピングカーユーザーの多くは「道の駅」や「高速道路のSA・PA」の駐車場に車を止め、「仮眠をとる」という名目で夜を過ごしていた。

 しかし、それらの駐車場は特に “宿泊施設” として明記されたものではないためユーザーたちはどこか後ろめたい気分のまま休んでいた。

 RVパークはそのような道の駅や温泉施設の駐車場を有料を条件に「公認された宿泊施設」として解放したもので、そのおかげで、「誰にも気兼ねすることなく堂々と泊まれるようになった」とキャンピングカーユーザーからは大歓迎されている。
 
 
個性豊かなRVパークがぞくぞく誕生

 このRVパークも、最初のうちは「道の駅」の管理者たちの参入が目立っていたが、近年は旅館・ホテル、酒造メーカー、立ち寄り湯、バン工房、レストランなどさまざまな職種の管理者が参入し、それぞれの個性を生かしたユニークなRVパーク開発を進めている。
 
 たとえば、山梨県南アルプス市にある「やまなみの湯」は、12種類のお風呂を持った大型日帰り温泉施設で、富士山と南アルプスの山々を遠望できる雄大な景観を誇っている上、宿泊中のRVパーク利用者は何回お風呂に入ってもよいというシステムなので、なかなかの人気だ。

▼ RVパーク「やまなみの湯」の露天風呂

 
 愛知県犬山市にオープンしている「犬山ローレライ麦酒館」は、この地で地ビールの製造を営む酒造元の経営。
 ここに宿泊すれば、湯上りに作りたての地ビールを味わいながら、レストランで贅沢な料理を堪能することができる。 

▼ RVパーク「犬山ローレライ麦酒館」(愛知県)

▼ RVパーク「犬山ローレライ麦酒館」のレストランの食事

 
 昨年11月に、栃木県那須塩原市に生まれた「那須塩原エヅリン」は、隣にルアー&フィッシングが可能な釣り堀を構えたRVパークで、希望者があればプレミアムヤシオマスという貴重なマスを釣ることもできる。
 またここはゴミ回収業者が運営母体となっているため、不用になった自動車バッテリーや粗大ゴミなども回収するというサービスも行っている。

 西の方にいけば、「京都南鴨川RVサイト」がなかなかの人気。ここはJRVAメンバーの販売店である「バンテック京都」の営業敷地内にあるRVパークで、キャンピングカービルダー「バンテック株式会社」が経営母体となっている。
 
 ここの特徴は京都市内までのアクセスの良いこと。このRVパークに車を置き、バスなどを使って京都観光が楽しめるのが特徴だ。
 しかも敷地内にはランドリー、カセットトイレの汚水処理設備なども完備。さらに出入り口がパーキングゲート式なので24時間出入りが可能というこれまでのRVパークの常識を一歩超えたつくりになっている。

▼ 京都南鴨川RVサイト

  
  
湯YOUパークで「温泉&車中泊」
  
 このようなRVパークは、「くるま旅クラブ」の会員でなくても利用できるように、広く一般車両に門戸を開放しているが、「くるま旅クラブ」が用意している “車中泊パーク” というのはRVパークだけではない。
 他にも「湯YOUパーク」、「ぐるめパーク」、「とれいんパーク」、「民パーク」などといった「くるま旅クラブ会員」だけが利用できるさまざまな施設の整備が進んでいる。

 なかでも人気が定着したのが「湯YOUパーク」だ。
 これは日本全国の温泉旅館・ホテルの駐車場に自分のキャンピングカーを停めて車中泊し、お風呂はその旅館の入浴施設を使うというもの。

 RVパークと違って、必ずしもAC電源が整っているわけでもなく、ゴミなども原則持ち帰りとなるが、本来ならば旅館に泊まらなければ利用できないお風呂をゆったり堪能できるというメリットがあり、しかも事前に予約を入れれば、その旅館が宿泊客に供する食事が食べられることもある。

▼ 温泉は日本人にとって「魂の休憩所」だ

 この湯YOUパークのシステムを受け入れてくれる旅館・ホテルのことをJRVAでは「パートナー」と呼び、現在そのパートナー数が130件程度まで広がってきている。
 そのためキャンピングカー旅行中に「湯YOUパーク」を利用できる確率もそうとう高くなってきた。
 
 
新しい “車中泊システム” にかかる期待
 
 現在、「くるま旅クラブ」が力を入れているのは、RVパークや湯YOUパーク以外の新しい “車中泊システム” の開発だ。
 その一つに、レストランなどで食事をした後、その駐車場で車中泊できる「ぐるめパーク」がある。

▼ 料理を楽しめるRVパークもたくさんできてきた(画像はRVパーク犬山ローレライ麦酒館)

 
▼ RVパーク「やまなみの湯」の名物ラーメン

 キャンピングカー旅行の楽しみの一つとして、車内での晩酌を挙げる人たちも多い。
 その場合のツマミやサカナは、スーパーやコンビニで購入した惣菜などが多くなるが、「グルメパーク」ではシェフや板前さんの調理する本格的な料理に舌鼓を打ちつつ酒を楽しみ、酔った後は駐車場に停めた車でそのまま寝ることができる。
 このような「ぐるめパーク」は、現在全国で11ヶ所展開しており、今後はさらに増えていく予定だ。

 また、ローカル鉄道などの駅の施設内で車中泊し、車の旅と鉄道の旅を両方満喫できる「とれいんパーク」というものもある。

 この「とれいんパーク」はまだスタートしたばかりなので、現在認定されているのは茨城県ひたちなか市の「とれいんパーク磯崎駅」一件のみ。
 しかし、自分の車を「とれいんパーク」エリアに停めたまま2~3駅ほど電車に乗り、車窓から景色を眺めれば、ちょっとしたローカル線旅行の気分も満喫できる。鉄ちゃんにはうれしい車中泊パークといえるだろう。

 一方、のどかな農村、離れ小島、ひなびた港町など、普通だったら宿泊施設がないようなところでも車中泊ができる「民パーク」というシステムもある。

 これも新しく開発されたシステムなので、現在のところは佐賀県唐津市の「Glamping Cafe 3/16」があるのみ。
 しかし、ここは50平方メートルのアウトドアキッチンや16平方メートルのウッドデッキを備えた今流行のグランピング施設なので、施設内容はハイグレード。
 ロケーションも最高で、唐津湾、虹の松原などの眺望を楽しみながら食事もできるとあって早くも人気を集めている。
  
   
レンタルキャンピングカーという新しい楽しみ方が急浮上
  
 このような「くるま旅クラブ」のサービスが充実してくるとともに、キャンピングカーを持っていない人たちからも、キャンピングカーユーザーと同じようなサービス内容を享受したいという要望が高まってきた。

 そのような声に応えるために、「くるま旅クラブ」事務局が昨年の6月からスタートさせたのが「ベーシック会員」というタイプの会員制度だ。
 これはキャンピングカーではなく、ミニバンやワンボックスカーといった乗用車のオーナーでも入会できるようにしたものだが、受けられるサービス内容は「スタンダード会員」と変わらない。

 ただし、料金は多少高くなり、年会費4000円/入会費2000円となる。スタンダード会員のほぼ倍額となるが、もともと「スタンダード会員」や「プレミアム会員」の料金というのは、JRVAに加盟している業者からキャンピングカーを買ったことへの特典によって安くなっているために、この「ベーシック会員」の料金体系の方が入会金・年会費としては通常の額であると考えていいかもしれない。

 この「ベーシック会員」を設けた理由のひとつに、レンタルキャンピングカーを使った場合においても「くるま旅クラブ」が提供しているサービス内容を享受したいという要望が増えてきたことがあるという。
 前出の漫画家さいばしんさんはこう語る。
 
▼ さいば しん さん

  
 「くるま旅クラブというのは、基本的にご自分のキャンピングカーを持っていらっしゃる方々を対象としたクラブなんですが、キャンピングカーを持っていない方でも、レンタルキャンピングカーを使ってくるま旅クラブのシステムを利用したいと思われる方がおられたり、また1台のキャンピングカーで満足するのではなく、さまざまなレンタルキャンピングカーで気分転換を図りながらくるま旅クラブのサービスを受けたいという方もいらっしゃるんですね。
 ベーシック会員というのは、そういう方々にもお役に立てるプランだと思っています」
  
  
なぜレンタルキャンピングカー産業は元気なのか?

 さいばさんによると、このような形でレンタルキャンピングカーを利用している人々は確実に増えているという。
 その背景には、急なマーケットの拡大に対して、キャンピングカー業界の生産が追い付かないという状況が反映されているのではないかと、さいばさんは見る。

 「とにかく、現在キャンピングカーを買うとなると、人気車の場合は契約を結んでから1年ぐらい待たされるというケースも出てきています。
 待ちきれない人のなかには、“ならば中古車でいい” と思う人もいるだろうし、納車されるまではレンタルキャンピングカーでしのごうとする人もいらっしゃるでしょう。
 また、そういう流れとは別に、稼働率を考えると、キャンピングカーを買ってもそんなに運転しないだろうと思われる方もいらっしゃるでしょうから、そういう方は、“使うときだけレンタルすればいい” と合理的に考えるかもしれません。
 さらに、自宅の車庫が狭いのでキャンピングカーは入らないと判断された方もレンタルキャンピングカーを活用した方がいいと思うのではないでしょうか」
 
 
キャンピングカー利用者の意識変化が、
レンタルキャンピングカーブームをつくる

 このようなキャンピングカー利用者の意識の変化が「レンタルキャンピングカー市場」という新しいマーケットを生み出したと読んだ人がほかにもいる。
 日本全国のレンタルキャンピングカー情報をネットで展開しているアイビル株式会社の川田智志社長はこう語る。

 「レンタルキャンピングカーというと、今まではキャンピングカーを作ったり販売していた業者さんがメイン業務を補佐する事業として考えていたようなところがありました。
 しかし2年ほど前からは、これまでキャンピングカー事業に携わったことのない企業さんがどんどん参入してくるようになり、一種の “群雄割拠” 的な状況を呈するようになってきたのです」

▼ アイビルが管理している全国のレンタルキャンピングカー情報「レンタルキャンピングカーネット」。全国のレンタカー情報が集約されている便利なサイト

http://www.rental-camper.jp/
  
 そのようなレンタルキャンピングカー事業が活発化してきた理由の一つに、キャンピングカー利用者の意識の変化が反映していると川田さんは語る。
 つまり、これまでのキャンピングカーの利用法というのは観光旅行の足として使うかキャンプ場でキャンプすることが中心で、使用目的のメインは温泉巡りだった。

 「しかし、最近のキャンピングカー利用者は使用目的がとても広がっています」
 と川田さん。
   
   
今までとは違ったキャンピングカー
の使い方をする人が増えた

 たとえば最近多いのは市民マラソンに参加する人たちがその休憩や着替えをするための基地としてレンタルキャンピングカーを借りるというケース。
 また、アイドルの地方コンサートに行こうと決めた女性たちが、ホテル代わりにレンタルキャンピングカーを借りて、コンサート会場近くの駐車場に泊まるというようなケース。

 さらには、子供の誕生パーティーの会場として、家の庭に大型キャンピングカーを借りて、子供たちを喜ばせるというような使い方。あるいはお父さんたちがゴルフコンペに出かける際の宿代わり。

 そういうように、利用者の使い方が非常に多岐に渡ってきたことがレンタルキャンピングカーの需要に拍車をかけたと川田さんはいう。

 前出のさいばしんさんも、同じようにキャンピングカー利用者の意識の変化を指摘する。

 「最近キャンピングカーユーザーで増えているのは、1台のキャンピングカーを何人かで共同購入し、それをシェアリングするというケースなんですね。そうすればある程度の装備品を搭載した価格の高いキャンピングカーを買っても、各個人の出資額はリーズナブルなものになります。
 そしてその車を、仲間の誰も使用しないときは、レンタルキャンピングカー業者さんに貸し出す。そういう動きに呼応して、そのようにシェアされた車を活用するレンタルシステムを構築している業者さんも出てきています」
 とさいばしんさんは言う。
  
  
キーワードは “ゆるキャン”

 「キーワードは“ゆるキャン”ですね」
 とさいばさん。
 つまりは、ゆるい気分でキャンピングカー旅行を楽しむことだという。

▼ さいばしん さん

 「キャンピングカーだからといって、堅苦しい気持ちで使わずに、みんなでワイワイと楽しさを共有するという意識が利用者の間に生まれています。
 テントキャンプでも、今の新しい流れは “グランピング” に向かっています。
要は、手ぶらでキャンプに行き、豪華な施設で、ぜいたくな料理や宿泊を楽しむ。
 その分おカネもかかるけれど、気分は “楽ちん” 。キャンピングカー旅行でも、そういう “楽ちん” 志向が生まれていると思います」

▼ キャンピングカーによる温泉めぐりも大人気

 そういう時代の気分を反映して、「くるま旅クラブ」ならではのリッチなサービスを享受したいという人も増えているとか。
 そして、そういう旅のスタイルにはレンタルキャンピングカーが理想的。今後は「くるま旅クラブ」と「レンタルキャンピングカー」がコラボしたような新しいキャンピングカーライフが生まれてくる可能性が高い。

くるま旅クラブURL:http://www.kurumatabi.com/
レンタルキャンピングカーネット(アイビル)URL:http://www.rental-camper.jp/

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※ この記事は、(株)カー&レジャーニュースさんから原稿執筆のご依頼をいただき、2月2日発売の『週刊Car &レジャーニュース』(2536号)に掲載されたものを、同社のご許可をいただいて多少見出しや画像などを変え、blog用にリライトしたものです。

『週刊Car &レジャーニュース』

 「週刊Car&レジャーニュース」は1968年に創刊された由緒ある自動車専門紙。国内外の乗用車をはじめ、RV車 キャンピングカー、福祉車両、レーシングカーなど、車全般の最新情報に加え、カーエレクトロニクス商品や車載機器、自動車イベントなど、車を取り巻く幅広い情報を満載している人気メディア。
 発行は毎週金曜日。「東京モーターショー」、「東京オートサロン」などの自動車イベントはもとより、関東の主要キャンピングカーイベントの会場でも配布されている。

ホームページURL http://www.car-l.co.jp/ 
Car&レジャー 最新ニュース http://www.car-l.net/
 

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日産キャラバン リチウムイオンバッテリー搭載車

 
 2017年2月初旬に幕張で開催された「ジャパンキャンピングカーショー」では、キャンピングカーテクノロジーの最新の姿を伝えるプレゼンテーションがたくさん試みられた。
 その一つが、リチウムイオンバッテリーを搭載した「NV350キャラバン “グランピングカー” (キャラバン・キャンピング特装車ワイドボディ)」である。

 グランピングとは、「グラマラスなキャンピング」を意味する造語で、いわばゴージャスで快適な究極のアウトドア。
 すなわち、高級ホテルのような華やかさと贅沢さを備えた住環境を、満天の星がまたたく大自然のなかで実現しようという試みのことをいう。

▼ 今回の展示車両のベースとなったキャラバン・ワイドボディ

 日産自動車のブースで展示されたNV350キャラバン “グランピングカー” とは、そのような “贅沢キャンプ” を、まさにキャンピングカーの車内で満喫しようというコンセプトで開発された車だ。

 では、その中身とは、いったいどのようなものなのか?

 エアコン、テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、DVDプレイヤー、オーディオ、各種照明など、キャンピングカーで使用される電装機器はけっこう多い。
 しかし、一般住宅と違って、電力供給が安定しないキャンピングカーの場合は、それらの電装機器を使用する時間が限られてしまう。

 キャンプ場やRVパークのように、AC電源が供給される環境で泊まる場合は使用時間を気にすることなく安心して電気を使えるが、長旅になると、道の駅や高速道路のSA・PAといった電気の供給が受けられない場所で休まざるを得ないこともある。

 そうなると、搭載している電装機器を使うとき、その消費電力がどのくらい残っているかということを常に意識しなければならない。走行充電が不充分な場合は、電気がなくなる時間は意外と早く訪れる。
 
 そのような不安を解消するために、これまでサブバッテリーの増設やバッテリーを補充電するソーラーパネルの設置、あるいは発電機の搭載など、さまざまな工夫が試みられてきた。

 しかし、エアコンや電子レンジなどの消費電力の大きい家電品を駆動させようとすると、そういう従来型の電装システムは、どうしても克服すべき問題が多少残ってしまうのだ。
 すなわち、バッテリー増設といっても鉛バッテリーの場合は重量が増えるという問題が出てくるし、発電機の場合は騒音に対する配慮に神経をつかう。

 こういう問題を解消するために登場した救世主がリチウムイオンバッテリーである。

  ▼ 日産のリチウムインバッテリー

 これは従来の鉛バッテリーに比べ、
 ・重量が軽い
 ・充電効率がいい
 ・発電容量が大きい
 ・寿命が長い
 などといった数々のメリットを持ち、キャンピングカーが搭載する家電商品を、まさに家庭と同じように使えるレベルに引き上げる夢のバッテリーといっていいだろう。

 ただし、これまでキャンピングカー用に製品化されたものは、まだ開発されて数年しか経っていないために、いったいどの程度信頼できるのか、それを確かめる実証的データが乏しかった。

 もうひとつの問題は、価格が高いこと。
 リチウムイオンバッテリーの場合は、1システムで100万円代の半ばから後半までの価格帯を覚悟しなければならない場合もあり、いざそれを組み込んだ完成車を購入するとなると、さすがに躊躇する人もいた。

 もちろん、搭載家電のすべてがリチウムイオンバッテリーを軸として設計されてくるので、トータルで考えればリーズナブルな価格でもあるのだが、費用対効果を考えると、やはり二の足を踏む人もいただろう。

 そこで登場したこの「NV350キャラバン “グランピングカー” 」。
 この車が画期的なのは、自動車メーカーの日産がこの車両の保証を実現したところにある。
 つまり、バッテリー部分の点検、故障、メンテナンス、リコールなどもすべて日産自動車が責任をもって負うということなのだ。

 これが意味するものは大きい。
 すなわち、「保証を付ける」と言い切れるほど、製品が安定していることを意味するからだ。

 なにしろ、このバッテリーは、世界で23万台も走っているという電気自動車の「日産リーフ」に用いられているものなのである。
 世界中で23万台走っているということは、日産のスタッフが計算したところ、「約27億kmの走行テストを経験してきた」と言い直してもいいということになる。
 その間、不具合の生じたバッテリーはゼロ。
 当然、そのバッテリーを流用したNV350キャラバン・キャンピングカーは、絶大な信頼性を獲得したものであると断言していい。

▼ 展示車に搭載されたリチウム・イオンバッテリー。整然と3系統に分かれている。非常にコンパクトに収まっているが、架装メーカーが勝手にこの位置を変えることはできない。

 では、このバッテリーを搭載した車を使うことによって、いったいユーザーはどういう恩恵に与かることができるのだろうか。

 キャラバンを使った数々のキャンピングカーを開発している「日産ピーズフィールドクラフト」の畑中一夫社長(写真下)は、こういう。

 「このバッテリーの総電力量は12kWh。これはとてつもない電気容量を確保したことになり、一度充電しておけば、電源供給のまったくない環境でも、エアコン、IH 調理器、電子レンジ、テレビ、DVDプライヤー、冷蔵庫などの電化製品を、2泊3日から3泊4日ぐらいまで、まったくストレスなく使うことができます」

 しかも、1.5kWを出力するバッテリーが3系統に分かれているため、消費電力の多い家電を同時に使うことができる。
 つまり、一つの系統でエアコンを回したまま、もう一つ系統で電子レンジを駆動させるなどといった芸当もできるようになったのだ。

 ただし、走行充電はできない。
 走行充電を可能にするシステム構築も可能だが、そこまで組み込むとなると機構も複雑になり、コストも膨れ上がってくるため、今回は見送られたという。

 充電する場合は、家庭のコンセントを使ったり、キャンプ場やRVパークなどでAC電源を借りて行うことになるが、所用時間はだいたい8時間程度。
 しかし、一度充電してしまえば、前述したように、2~3泊ぐらいならまったく問題のない電化生活を堪能することができる。

 この車、さて、車内で惜しみなく電気を使えるというメリット以外に、どんな楽しみ方があるのだろうか。
 前出の「日産ピーズフィールドクラフト」畑中社長は語る。
 
 「100Vのアウトプットがあるので、アウトドアで使えば、車自体を巨大なバッテリーとして活用することができます。
 たとえば、アンプなどにつないで野外コンサートもできる。
 また、山奥などの建設現場で工事を指揮する場所などに使うことも可能でしょう。電気の来ない場所でも、この車を1台持っていけば、IH 調理器や電子レンジを使って食事を作ったり、パソコン作業をしたりこともできます」

 さらに、この車はシティユースにおいて絶大なる力を発揮すると、畑中社長は付けくわえる。

 「なにしろエアコンが自在に使えるので、夏の暑い盛りでも、出向いた先が冷房の効いた “オフィス” になるんですね。
 つまり移動事務所として使えば、快適な商談スペースや休憩室として活用できます。搭載した家電を使って簡単にお湯も沸かせますから、お茶出しなどもすぐにできますし、冷蔵庫で氷を作るのも簡単。景色の良い駐車場などに停めておけば、夜はバー代わりにお客様を接待できます」
 と同社長は語る。
 
 日産としては、この車を17年度のうちに実売に漕ぎ付けたいという。
 各ビルダーへデリバリするときの価格はまだ未定だが、ベース車両の価格に、バッテリー代として150万円程度を載せたものに収まりそうだ。
 国産キャンピングカーがまた一つ大きな飛躍を遂げそうなベース車の誕生である。
 
  
リチウムイオンバッテリー スペック
 
【総電圧】 360V
【定格出力】 2.0kW
【総電力量】 12kWh
【充電】 単層/交流/100V/50-60Hz
【充電時間】 8時間
 
 
参考記事 「キャンピングカーメーカー対談」(畑中社長ロングインタビュー)from 『キャンピングカースタイル』
 
関連記事 「リチウムイオンバッテリー搭載車 日産NV350キャラバン“グランピングカー”」from『キャンピングカースタイル』
 
 

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国産キャンピングカー用フィアット・デュカト シャシー

 
 2017年2月初旬に開かれた「ジャパンキャンピングカーショー」会場で、一般の見学者と、日本のRVビルダーの両方から熱い視線を集めた1台の車があった。

 イタリアフィアット社の商用車ブランドである「フィアット・デュカト(fiat Ducato)」のバンタイプボディである。
 写真で見てのとおり、中はがらんどうだ。
 

 この内装も組み込まれていないシャシーが多くの人の注目を集めたのは、「このボディを使って国産キャンピングカーを作ってみませんか?」という提案がFCAジャパンという輸入車ディーラーからなされたからだ。

 フィアット・デュカトといえば、1981年に導入されて以来、全世界で500万台以上生産されている商用車。
 スムーズで燃費のよいディーゼルターボエンジン(180ps)、乗用車ライクの運転感覚などに恵まれ、トランスポーターでありながら快適な操作フィーリングを実現した車として絶大な人気を誇っている。
 現在ヨーロッパにおけるキャンピングカーの4台に3台はデュカトであるといわれ、ベース車としての市場占有率は70%を超える。

, そのビッグブランドを使った “国産キャンピングカー” がついに誕生するのか?
 見学者の関心はその一点に集中した。
 
 その可能性はかなり高い。
 しかし、まだ決定されてはいない。

 というのは、輸入元のFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)ジャパンが採算ラインとして算出している台数が年間 “数百台” 。1社年間80台程度購入できるRVディーラーが5~6社ほど名乗りをあげないと実現が難しい数値なのだ。
 
 FCAジャパンとしては、契約台数や販売システムに関する取り決めは、購入を検討する日本のRVディーラー各社との相談によって決定するというスタンスなので、具体的な展開があきらかになるのは、1~2ヶ月先ということになる。

 しかし、この車両に対する日本のビルダーたちの関心はそうとう高い。
 数社に聞いてみたところ、「うちは名乗りを上げるつもりだ」と明確な答えを返してくれた会社もすでに登場しており、決定を保留していると言いながらも、魅力的なシャシーであることを認める会社が相当数にのぼった。

 ちなみに、国産ビルダーたちは、このフィアット・デュカトのベースシャシーを具体的にどう見ているのだろうか。
 A社のB社長はこういう。

 「デュカトベースの完成車も日本にはそうとう入ってきている。しかし、デュカトの欧州キャンパーは、基本的にシニア夫婦向けのレイアウトになっており、乗車定員はせいぜい4人で、就寝機能も大人2人がゆったり寝られるような構造のものが多い。
 しかし、日本にはミニバン文化が根付いているため、キャンピングカーにも6人乗車を求める人たちがけっこういる。
 デュカトの内装を国内で組むことができれば、そういう日本人マーケットを意識したレイアウトが可能になる。
 また、現在3タイプの車高が用意されているが、そのうちの超ハイルーフを使えば2段ベッドも楽に組み込めるため、商品力はそうとう高くなる」

 C社のD社長はこういう。

 「せっかく国内で設計できるのだから、ヨーロッパ車のスタイルを真似するのは面白くない。やるんだったら畳敷にするなど、徹底した “和のテイスト” を追求するのも面白いのではないか。
 そのように日本人でなければ作れないものを創造して、逆に海外のショーに持ち込んでみるという手もある。
 仮にそれが売れなくても、海外のユーザーに日本車の造形力をアピールすることはできる。そうすれば、日本のキャンピングカーの認知度も広がり、海外マーケットが開ける可能性も出てくる」

 E社のF社長はこういう。

 「バンボディながら、キャブコンと同じレベルの居住性が確保できそうだ。そうなると、走行性において、これまでの国産キャブコンよりもそうとう安定した走りを持つキャンピングカーが生まれることになる。アイデア次第で、これまでの国産キャンピングカーの流れを変える車になる可能性もある」

 かなり好意的な評価が大半を占めたが、なかには導入そのものを疑問視する声もあった。

 G社H社長の弁。

 「キャンピングカーベース車として魅力あるシャシーであることは間違いない。しかし、1社80台という台数が要求されることになれば、RVディーラーが抱え込むオーダーとしては、かなりリスクが高い。1年目はよいとしても、売れ残った場合、2年目がないのではないか?」

 このように正直に不安を訴える業者もいることにはいた。
 しかし、それでも1~2台なら手掛けてみたいというのが大半の声だった。
 
 
 今回、バンボディだけの展示となったが、フィアット・デュカトにはキャブコン用のシャシーもある。そのなかには、リヤフレームに、定評あるアルコシャシーを採用するタイプも用意され、キャブコンベース車としてのデュカトは、海外ではバンベース車以上に評価が高い。

 はたして、キャブコン用シャシーの国内導入はあるのだろうか。
 FCAのスタッフは語る。

 「RVビルダーさんのご希望があれば、当然それも考えます。しかし、キャブコンシャシーにキャビンを架装するとなると、現状ではキャブコン製作に慣れたビルダーさんに限られてしまうのではないかと考えました。
 そのため、とりあえず今回は、バンコンを製作されているビルダーさんにも関心を持っていただけるようにバンタイプを出展してみました。
 とにかく受け入れ窓口を広くして、多くのビルダーさんに購入を検討していただきたいというのが私たちの意図でした」

 デュカトを買ったあとのサービスシステムはどうなっているのだろうか。

 FCAでは、この車の導入が決定したならば、パートナーを組んでくれる国内のビルダー/ディーラーと提携し、サービスネットワークを構築していく予定だという。

 サービス工場の機能としては、5m以上の室内高を持ち、耐荷重3~3.5トンのリフトを有していることが条件。
 そのようなキャパを持った認証工場に専用テスターを配備し、種々の工具なども用意してテクニカルトレーニングを受けてもらうことになるそうだ。

 パートナーを組むときの条件は厳しいが、FCAではパーツの安定供給はもとより、車両の保証やリコールの対応も考えているというから、購入後の信頼度は高いかもしれない。

 はたして、フィアットベースの国産キャンピングカーは誕生するのだろうか?
 もし、この “物語” が実現したら、それは国産キャンピングカーの新しい歴史の始まりともいえそうだ。

フィアット・デュカト概要(ボディサイズ L )

【車両寸法】 全長5998mm×全幅2050mm×全高2524mm
【室内寸法】 全長3705mm×全幅1870mm×全高1932mm
【エンジン】 直4 マルチジェット インタークーラー付ディーゼルターボ
【排気量】 2287cc
【最高出力】 131kW(177ps)/3500rpm
【最大トルク】 400Nm(40.8kgm)/1500rpm
【ミッション】 ATモード付6速シーケンシャル(コンフォートマチック)
【ハンドル】 右ハンドル
【車両重量】 2055kg
【燃料タンク】 90リットル
【駆動方式】 FF
【サスペンション】 前 マクファーソンストラット/後 リーフリジット
【燃料消費率】 15.1km/㍑
  
 

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織田信長はトランプだった

 
 あまりにも型破りの政権運営によって、ワイドショーにおける人気キャラのポジショニングを不動のものとした米国トランプ大統領。

 日本人の間にも、「怖い」、「下品」、「傲慢」、「不気味」、「反知性的」などというイメージが定着したトランプ氏だが、たぶんこの人の顔が日々のニュースから姿を消してしまうと、みんなかなりさびしい思いに駆られるのではなかろうか。

 つまりは、この人は人気者なのである。
 「嫌われ者」というのは、実は、隠れた人気者であることが多い。

 「いやなやつだ」、「顔も見たくない」、「早く失脚してほしいものだ」とその当時の人間からは嫌われつつ、200~300年ぐらい経つと、歴史上の人気者として祭り上げられているような人もいっぱいいる。

 実は日本にも、400年ぐらい前に、今のトランプ大統領のような人が登場している。
 織田信長がそれだ。

 信長は、今では「戦国の革命児」とか、「一足早かった近代合理主義者」などと言われてもてはやされているけれど、信長が登場したころは、世間の人々はみな彼のことをトランプのような人物だと見なしていた。

 実際、信長が桶狭間の戦いで今川義元を破るまで、ほとんどの大名や公家衆や庶民は、信長なんて人物を知らなかった。
 “天下取りレース” ではまったくの泡沫候補だったのである。

 義元と信長の関係というのは、民主党のクリントンと共和党のトランプみたいなもので、当時のメディアであった京都の公家衆の風聞では、「信長のような泡沫候補は、義元の敵としてリングに上がる前に、尾張地区の代表選の段階で領内の推薦も得られないだろう」なんていわれていたはずだ。

 ところが、わずかな兵を率いただけでの奇襲で、信長は圧倒的な兵力を誇る名門武将の義元を倒す。
 公家衆も、諸大名も、みな「アンビリーバボー !」と叫んだとことだろう。
 町から町へと商品を売り歩く商人たちも、「まさかの大逆転劇が起こりましたなぁ」などととわめきながら、町に入って行ったことだろう。

 そのうち、信長は「天下布武」、すなわち武力による天下統一をスローガンに掲げる。
 まぁ、戦国大名はみな「天下を狙っていた」などといわれるけれど、実際はそれぞれの領地を守るだけで汲々としていたに過ぎず、「天下統一」というのは、お祭りのときの景気づけの文言のようなものだった。

 だから、信長が本気になって「天下布武」などと言い出したとき、公家衆、諸大名、庶民は、「メキシコとの国境に壁を造る」といったような仰天発言を聞いたような気分になっただろう。

 彼はそのあと一向宗などの宗派に宗教弾圧を加えていくことになる。
 これなども、今のトランプ大統領のやり方に即していえば、彼の「反イスラム政策」と同じである。

 信長は既成の仏教勢力を嫌った。
 彼は、「宗教は魑魅魍魎の力に頼る非合理的なもので、国家を転覆させる悪だ」と断定していた。
 実際、当時の比叡山などは宗教的堕落もはなはだしく、僧兵の暴力沙汰なども話題になっていた。
 だから、対宗教戦を始める前に信長は、「これはテロとの戦いだ」などと言ったかもしれない。

 信長にとって、一向宗や比叡山のような既成仏教はその存在そのものが「悪」であり、南蛮の珍奇な文物をもたらしてくれるキリスト教は「善」であった。
 ふ~む … 。こういう単純な「善・悪二元論」で世の中を分ける方法もトランプ的である。

 とにかく、信長の天下取りプロセスは「野蛮」、「残虐」、「不意打ち」、「裏切り」の連続。
 「信長政権は、次はいったい何を狙ってくるんだろう?」
 と日本中の人々が戦々恐々と次の信長の打つ手を見守ることになった。

 このまったく予測のつかない信長政権の行動に、各大名、寺社勢力、公家衆は、みな信長政権とのパイプ作りに奔走した。

 ところが、信長政権を支えるスタッフは、みな無名の新人ばかり。
 政治のプロなどひとりもおらず、いってしまえば、信長をボスとした “暴走族” チームの構成員のような人ばかり。
 百姓上がりの人間もいれば、諸国を放浪していた浪人もいたりして、家柄や経歴を頼りにコネをつくっていた諸大名家の実務官僚たちはみな戸惑いの連続であった。

 問題は、信長の政治理念がどこにあるのか、誰も分からないことだった。
 それまでの戦国武将は、京にのぼって、天下統一の号令をかけるときは、一様に天皇家や将軍家などのご意向を尊重し、礼節と徳をもって日本を治めるという理念を掲げなければならなかった。
 
 それまで争った相手であっても、自分が天下と統べるようになった暁には温情を持って敵を許し、仲良く手を携えて平和国家の建設に邁進する。
 それが政治の理想であったのにもかかわらず、信長の主張はあくまでも「自国優先主義」。
 ま、「織田家ファースト」なわけね。
 敵を倒したら、そのリーダーには容赦なく切腹や磔を申しわたし、その所領はことごとく織田家とそれを支える閣僚たちがむさぼり尽す。

 要は、人々が信じてきた世の中づくりの法則が、信長には通用しなかったのだ。
 そもそも信長自体がいったい何になりたいのか、公家衆も諸大名も検討がつかない。 
 後世の歴史家は、信長の狙っていたのは西洋に絶対王政を樹立した「国王」のようなものではなかったか? などと類推するけれど、当時の日本人からすれば「コクオウって何?」ってな状態だから、とにかく信長が不気味に見えてしょうがない。

 だから、信長の敵になっては大変だとばかり、それまで敵対していた勢力も、雪崩を打って信長にひれ伏すようになる。

 しかし、平和を目指す外交においても、信長が相手となると緊張を強いられる。
 なにしろ、信長という人は、脅しの名人である。
 相手が閣僚クラスの人間であっても、少しでも気に食わないことがあると、「お前は首だ !」と怒号を発し、ときどき自ら剣を抜いて、文字通り「首」をはねてしまうこともあった。

 しゃべることに知性は感じられず、発言の大半は暴言。
 世の中を運営していく視点も、まずはビジネス優先。
 信長が、足利義秋を将軍につけてやったとき、義秋は御礼として「そちに副将軍の位を授けよう」と信長に申し渡した。
 しかし、信長は「副将軍」などという一銭にもならない名誉職を断り、琵琶湖の大津と草津に関所を造る許可をもらうなど、日銭が入るシステム構築の方を選んだという。

 その琵琶湖に、信長はやがて絢爛豪華な安土城を築く。
 成金趣味的なピカピカ趣味は、まぁ今でいうニューヨークのトランプタワーのようなものではなかったか。

 天下統一を間近に控え、信長は自分の部下に暗殺される。
 クーデーターを起こした明智光秀の真意がどこにあったか。
 それは現代でも謎とされている。

 しかし、毛利氏のブレーンを務めた安国寺恵瓊などは、
 「あれだけ人に憎まれていたんだから、いつかは人の恨みをかうだろう」
 と、その失脚を予言していたという。

 最近、トランプ大統領に関するネットの話題に、「暗殺はいつだろう?」などという物騒なものが上がってきているという。
 ま、嫌われ者には、そういうウワサが付きまとうものだ。

 しかし、トランプ氏に対しては、ひょっとしたら「100年後のヒーローか?」という期待がないわけではない。
 100年経てば、人の評価は変わるのだ。
 現代的な感覚で評価すれば、やっぱり織田信長って、カッコいい。
 
 私は、今のトランプ氏は嫌いなんだけど、でも、もし私が100年後の地球に生を受ける人間だとしたら、「21世紀に登場したトランプって、カッコいい男だったじゃん !」と手放しで評価しているかもしれない。
 
 

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アネックス 2017新車情報

 
 いよいよ2月2日(木)~5日(日)にかけて、アジア最大級のキャンピングカーイベントである「ジャパンキャンピングカーショー2017」が開催されます。

 昨年のこの時期、自分はちょうど肺高血圧症で入院していたため、ショーを見逃してしまいました。
 しかし、今年は酸素ボンベを付けながらも外出できるようになりましたので、ぜひとも見学に行こうと思っています。

 このショーは、なにしろキャンピングカー業界の今年1年のトレンドを告知する大規模なイベントであるため、各社とも力のこもった新型車を投入するようです。

 その出展メーカーのひとつ関西の有力ビルダーであるアネックスさんより、ショーに出品予定の新車情報をいただきました。
 そこで、皆様にもご紹介しようと思います。

…………………………………………………………………………
RICORSO

 まずは、同社の看板車種のひとつ、「RICORSO(リコルソ)」の2017モデルから。

 リコルソは、同社を代表するバンコンのひとつで、その狙いは「大人の2人旅を演出するモダンデザイン・トラベルワゴン」。
 この2017モデルの特徴は、使い勝手の飛躍的向上です。
 たとえば、ソファー後部に左右独立のリクライニングギアが新設され、お茶やお酒を楽しみながら、リラックスした気分でテレビなどを鑑賞できるようになりました。

 後部カウンターにFRPシンクとコンロが設置され、8ナンバー条件をクリアしたまま横座り定員が確保されています。

車両価格(税込)は下記の通り
RICORSO 2WD 4,550,000円
RICORSO 4WD 4,853,000円

詳しい情報は下記を
http://www.annex-rv.co.jp/lineup/ricorso2017.html

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Family Wagon

 次はファミリーワゴンの2017年モデル。
 この車のキャッチは、「積める! 遊べる! 寝られる !」
 シートには、これまでよりも100mmワイドな1500REVOシートが採用され、よりゆったりした座り心地が確保されました。
 
 2段ベッドも拡大され、その最大寸法は1730mm×1660mm。なんと従来比では長さで330mm、幅で20mmサイズアップとなりました。これにより縦方向(進行方向)で寝られるようになったことも大きいでしょう。

車両価格(税込)は下記の通り
FamilyWagon 2WD  4,300,000円
FamilyWagon 4WD  4,603,000円

詳しい情報は下記を
http://www.annex-rv.co.jp/lineup/familywagon2017.html

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FAMILY WAGON-SS

 コンパクトで取り回しのよいファミリーワゴンSSも、使いやすい小変更が加えられています。
 なかでも一番の特徴は、テーブルサイズの拡大。
 なんと旧モデルに比べ、その拡大率は80%アップ。具体的には、900mm×400mmとなり、従来比では、それぞれ320mmアップと60mmアップという計算になります。

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NS-W

 スタイリッシュなロープロファイルボディを実現したキャブコンのリバティーNS-Wにも新しい仕様が登場します。
 それが、NS-Wのフロントシート回転仕様。
 これはオプション設定となりますが、これによって、まさにヨーロッパ型キャブコンのレイアウトが可能になりました。

 回転シートのオプション価格は、259,200円(税込)。

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COMPOSERのリフトアップ仕様

 COMPOSER with FAMILYに、アウトドアテイストを盛り込んだリフトアップ仕様が追加されます。

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Urban Country TRIAL Model

 アネックスというメーカーは、これまでキャンピングカーの属性の一つとして付加されてきた「豪華」とか「ラグジュアリー」という価値観にとらわれない新しいテイストの車両をたくさん開発してきましたが、今年のテーマは「アーバンカントリー」。
 正式な発表はこの秋となるそうですが、この幕張のショーでは、COMPOSER with DOGをベースとしたその試作車が展示されるようです。

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なお、「ジャパンキャンピングカーショー2017」の概要は次の通りです。

【2017年 開催日時】 
2月2日(木) 10:00~12:00(プレス・ビジネス)/12:00~17:00(一般)
2月3日(金) 10:00~18:00
2月4日(土) 10:00~18:00
2月5日(日) 10:00~17:00
【会場】 千葉県千葉市美浜区中瀬2-2-1 幕張メッセ国際展示場1~4ホール
【問い合わせ先】 ジャパンキャンピングカーショー2017事務局
【TEL】 03-5464-8010
【アクセス】 
《電車》
(1) JR京葉線「海浜幕張駅」より徒歩5分
(2) JR総武線・京成線「幕張本郷駅」よりバス
《車》
(1) 東京都心・羽田空港方面から約40分/習志野I.C.((東関東自動車道)
または幕張I.C.(京葉道路)から約5分
(2) 新東京国際空港(成田)方面から約30分/湾岸千葉I.C.(東関東自動車道)
から約5分
【主催】 ジャパンキャンピングカーショー2017実行委員会
【後援】 テレビ東京、J-WAVE、千葉県、千葉市、アメリカ大使館商務部、スロヴェニア大使館
【入場料】
《前売券》・一般(高校生以上)/800円(税込)
      ・小人(小・中学生)/500円(税込)
《当日券》 ・一般(高校生以上)/1,000円(税込)
      ・小人(小・中学生)/600円(税込)
   ※未就学児無料
    ※障がい者手帳のご提示でご本人様と付き添いの1名様無料
     ・ペットケア費:1頭 500円 2頭以上 1,000円
     ・くるま旅クラブ会員:イベント入場チケット引換券提出で2名様まで無料
      (会期中1回限り)
【 ホームページ】 http://www.campingcarshow.net/
【イベント内容】 キャンピングカーの展示・販売、初心者のためのキャンピングカーセミナー、 旅行情報コーナー、キャンピングカー関連商品・RVパーツ及びキャンプ用品の展示即売ほか

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もう一つの真実

 
 前回、このblogで取り上げた『嘘の戦争』というTVドラマでは、詐欺師を演じる草彅剛君が、これから騙そうとする人間に対して決めゼリフのように使う言葉がある。

 それは、
 「僕は、嘘が嫌いですから」

 その言葉を、彼はおだやかな笑顔を浮かべながら、相手の心に寄り添うように、そぉっと舌の上で転がす。
 騙される相手は、その言葉から草彅君の誠実さを感じ取り、すっかり信頼してしまう。


 
 相手の胸元にがっちりと食い込んだ草彅君は、これ以上の誠実さは表現できないだろうというほどの優しい微笑みを浮かべながら、
 「大丈夫ですよ、お互いに頑張りましょう」
 などと相手の手を取ったりしながら、親鳥がヒナの体を温めるように、じわっと自分の体温で包み込んでいく。

 嘘を信じ込ませるというのは、ものすごく洗練された “芸” だ。
 誰にもできるものではない。
 相手の気持ちを読み、言葉を選び、間合いを取り、誠実そうな表情を作り、まさに、蛇が音もなく小鳥の巣に侵入するかように、ヌルリと相手のふところに体を沈ませる。

 名うての詐欺師というのは、同時に心理学者でもあり、脚本家でもあり、もちろん俳優でもある。
 そして、さらにいえば、本職以上にそれらの役を立派に勤め上げなければならない。
 相手を信じ込ませる嘘というのは、それほど繊細なものなのだ。

 が、このような “芸術的な嘘” の時代が終わろうとしている。
 いま大手を振って世界を席巻している嘘は、ナタを奮ってマキを叩き割るような暴力的な嘘だ。

 すでに、あちこちのニュースで報じられ、もう旧聞に属するかもしれないトランプ米大統領の就任式の出来事。

 就任式の見物者がオバマ前大統領のときと比べ、明らかに少なかったという報道がなされた。
 下記の写真がそれを示すもので、この写真こそが、オバマ氏の就任演説に集まった180万人という人の数に比べ、トランプ氏の場合は25万人にとどまったという事実を厳然と示す証拠となった。

 

 しかし、トランプ氏はこの写真を公表したメディアに激怒した。

 「マスコミは嘘をついている。俺の見たところ、観客は少なくとも150万人はいた。この嘘つきメディアは高い代償を支払うことになるだろう」

 と言い放ち、自分の報道官を通じて、
 「トランプ大統領の就任祝いに集まった人手は過去最高だった」
 と発言させた。
 
 事実をまったく無視した報道官の暴言に記者たちは目を白黒させながらも、「何を根拠にそう言えるのか?」と解答を迫った。
 報道官はそれには答えず、「以上で終わり ‼ 」とばかりに背中を向けて退場したという。

 気分の収まりがつかなかった記者たちに対し、今度は大統領顧問の女性が登場し、
 「先ほどの報道官は嘘をついたのではない。alternative facts(可能性のあるもう一つの真実)を述べたに過ぎない」
 と弁明したと伝えられている。

 もちろん、記者たちは猛烈に抗議する。
 「まさにそれは “嘘” という意味ではないか !」
 記者たちがそう詰め寄っても、けっきょく彼らが納得できるような答は、この顧問の口からも一言も発せられなかった。

 詐欺師の「繊細で芸術的な嘘(?)」の域をはるかに外れた、粗雑で暴力的な嘘が、ついに一国の国家運営をたばねる閣僚たちの口から発せられるような時代になったのだ。

 もちろん、ドラマの中で、詐欺師の草彅君が使うような “芸術的な嘘” の方が優れているなどと言うつもりはまったくない。
 どんな手法を採るにせよ、人を騙すことが悪いことであることはいうまでもない。 

 しかし、天才的な詐欺師のつく嘘は、少なくとも、騙す相手の “知性” を前提としていた。相手が嘘を見抜く知性を持っていることを認めたうえで、騙す方の巧妙な嘘が練り上げられていった。

 それに比べて、トランプ政権のくり出してきた嘘は、もう相手の「知性」への敬意も、畏れも、配慮もない。
 徹底的に無慈悲で、尊大で、冷酷で、傲慢な嘘だ。

 世界の政治の第一線で、そういう暴力的な嘘で真実を押し切ろうとする力が台頭してきたことを、われわれはいったいどう考えればいいのだろうか。

 世界の範となるような理想を掲げてきた国の新大統領が、子供でも見抜けるような嘘を平然とつき通し、それを正そうとする人々を高圧的に威嚇する。
 われわれは、そういう時代を生きなければならなくなった。

 トランプ大統領の顧問が、嘘を「もう一つの真実」と言い換えた「オルタナティブ・ファクツ」という言葉は、昨年の国際的流行語となった「ポスト・トゥルース(post-truth)」という言葉とも重なる。

 「ポスト・トゥルース」とは、直訳すると「脱・真実」。
 すなわち、「客観的な事実や真実が重視されない」状態を意味し、政治的な局面でこの言葉を使えば、
 「客観的な事実や真実を提示するよりも、嘘でもいいから個々人の感情に訴えかける発言を繰り返して人気を集める政治手法」
 … という意味となり、すなわち、いま話題になっている政治上のポピュリズム(大衆迎合主義)を指す言葉となる。

 ポピュリズムは間違っているのか?

 多くの “良心的な” メディアは、このようなポピュリズムが台頭する政治を、民衆の「反知性主義」の表れだと批判する。

 だが、政治家の嘘が大手を振って大衆の支持を得るような時代は、もう「知性」とか「反知性」のレッテル貼りでは語り切れなくなくなっているのかもしれない。

 そもそも、人間が言葉を覚えた瞬間から、「嘘」と「真実」は双子でしかなかったのではないか。
 映画監督の森達也は、あるテレビ番組で、「真実は視点」だと言い切った。
 「視点」をどこに置くかで、一つの事象がさまざまな解釈に分かれるというのだ。

 すなわち、人間にとって、「何が真実で何が嘘であるか」は、その人がどちらを信じたいかによって決まるということなのだ。
 
 今回のメディアと対決したトランプ氏の発言も、トランプ支持者にとっては “真実” となる。
 
 ネットがそれを “保証” する。
 すなわち、トランプ支持者は、「トランプの方が正しい」とか「トランプこそ正義だ」という検索用語でネットにアクセスすれば、たちどころにそれに呼応したトランプ派の発言が画面上にドッと溢れ出る。
 それを見た人は「世論はトランプ派が抑えている」と錯覚してもおかしくはない。

 また逆に、トランプ嫌いの人が、「トランプは嘘つき」、「トランプは横暴」などという検索ワードでネットにアクセスすれば、これまた、たちどころにそれに呼応した意見が大量に浮かび上がってくる。
 そうなると、それを見た人にとっては「世論は反トランプの声に満ちている」ということになる。

 人間は、自分が見たいものしか見ない。
 信じたいものしか信じない。
 昨年の流行語となった「ポスト・トゥルース」も、今回取り上げられた「オルタナティブ・ファクツ」も、けっきょくはそのことを指している。

 先の blog で、自分は元SMAP のキムタクに対して、かなり批判的な批評を書いたが、ネットを逍遥してみると、同じ番組の同じシーンが、キムタクファンには「さすが木村拓哉 !」と称賛できるほどカッコよく見えて、アンチキムタク派には痛ましく見えてしまうというように、まったく観察が分かれていた。

 そのように、支持者にしても、アンチにしても、どのどちらかが巨大は発言権を持ってしまえば、それがメディア的には「真実」として流布していく可能性は大きい。

 「嘘」と「真実」は、自分が持っていた基準だけでは判定できない。
 そんな当たり前のことを、今さらながら突きつけられている気分でいる。 
 
 

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『嘘の戦争』 面白い ‼

 
 TVドラマって、なんかの拍子に偶然チャンネルを合わせ、「ひょっとして面白いかも … 」と感じたものでないと、なかなか観る機会がない。

 そんなふうに、出会いがしら的にチャンネルを合わせてしまい、その後ずっとハマってしまった最近のドラマに、『嘘の戦争』(フジテレビ系列 火曜日 21:00)がある。
 元SMAPの草彅剛君が主演する詐欺師の話だ。

 草彅君が演じるのは、少年の頃に自分の家族を殺され、犯人たちへの復讐に燃える青年の役。

 敵は大財閥の一家。
 その会長というのが、若い頃そうとうな “ワル” で、自分の利益を守るため、人を使って草彅少年の父・母・兄妹を殺させておきながら、巨額の報酬で刑事や弁護士を手なづけ、殺人事件を「父親が起こした一家心中」に見せかけて、自分自身は頬っかぶりをしたまま、逃げ込みを図ったという男なのだ。

 草彅君は詐欺師としての腕を磨きつつ、巧妙な騙しのテクニックを使って、自分の家族を殺した連中への復讐を開始する。 
 … というストーリーで、第三話まで観たけれど、なかなか面白いわけ。

 ま、そうとう強引なシナリオで、“作り物っぽい” 粗雑さがすぐ露呈してしまうドラマなんだけど、にもかかわらず、ハラハラドキドキ感が途切れないのは、ひとえに草彅剛の演技力だと思った。

 いや、「演技力」という言葉が正しいかどうかは分からない。
 それほど上手い役者でもないからね、彼は。
 ただ、ミョーな存在感がある。

 そんなに美男子でもないし、立ち居振る舞いに迫力が伴うこともなく、SMAP 時代もキムタクの後ろでただ踊っているだけの地味な存在であった草彅君ではあるけれど、役者としてドラマや映画に登場すると、なんともいえない不思議な雰囲気をまき散らす人だなと、昔から思っていた。

 その奇妙な魅力を漂わせる草彅君が、このドラマでは一層存在感を増した感じだ。

 とらえどころがないのだ。
 彼が演じている詐欺師の「一ノ瀬浩一」という人物が、いったい何を考え、何をもくろみ、何を面白がって生きているのか、そういうキャラクター的な嗜好がまったく浮かんでこないという、まさに “詐欺師” の役ぴったりの演技を見せてくれる。

 その表情は、ときとして、茫洋として、とりとめもなく、
 ときに、仏や菩薩のごとく深い慈愛に満ち、
 ときに、人間の感情を失った無機質な人形のようになり、
 ときに、優しさだけが取り柄の、気の弱い青年の顔になり、
 ときに、地獄の釜をひっくり返して激怒する夜叉、羅刹のような形相を見せる。

 そのどれもが “復讐に燃える一ノ瀬浩一” という人物の素顔であり、同時に、どの表情にも、彼の本心は宿っていないようにも見える。
 そこから、「ははぁ … 詐欺師ってのはこういう雰囲気なのかぁ !」と思わせる説得力のようなものが浮かびあがってくる。

 そういう不思議な空気感が、草彅君の演技力から来たものだとしたら、草彅剛という “アイドル” はいつの間にか、そうとう熟練の役者に成長していたということになる。

 このドラマは、草彅剛が主役を務める『嘘の戦争』と、木村拓哉が主役を張る『A LIFE~愛しき人~』(TBS)のSMAP 決戦だという声もある。
 同じ時期に始まって、放映時間帯も似たようなものだからだ。

 なるほど。
 確かに、SMAP 解散後のキムタクと草彅の初のドラマ対決だから、メディアが面白おかしくとりあげるのも分かるような気がする。

 で、ネット情報によると、その第一回目の対決においては、『嘘の戦争が』の視聴率が11%ぐらいで、『A LIFE … 』が14%ぐらいとか。
 いちおうキムタク側の勝利ということになっているらしいが、どうもキムタク番組の方が評判が悪い。
 「キムタク主演なんだから、もっと視聴率が取れて当たり前。14%の視聴率では惨敗に近いのでは?」という言い分もあるらしいのだ。
 
 そういう世間的な裁定がどれだけ正しいのか、よく分からない。
 なにしろ、キムタクドラマなんて最初からまったく観る気が起こらないからだ。

 そのため、ドラマとしての魅力はどちらが上かという評価は私にはまったくできないけれど、「役者としての魅力」ということで限定的に論じるならば、これはもう断然草彅君の方に軍配が上がるのではないか。

 草彅君は「アイドル」を脱して、「役者」の領域に足を踏み入れつつあるけれど、キムタクは「役者」に成長しきれずに、いまだに “トップアイドル” でなければ自分は満足できないという駄々っ子の精神構造にとどまったままだ。

 実は、この『A LIFE … 』というドラマの番宣のために、キムタクは二つのバラエティー番組に出演している。
 一つは、『関口宏の東京フレンドパーク2017新春ドラマ大集合SP』(TBS)という単発のバラエティー。
 もう一つは人気長寿番組になりつつある『モニタリング』(TBS)。

 たまたまこの二つを私は観ていた。
 ひでぇんだ、キムタクの “俺さま” ぶり。

 『東京フレンドパーク』では、ドラマ『A LIFE … 』の番宣のために、共演する竹内結子や松山ケンイチらとチームを組んで、ホンジャマカの恵・石塚組とエアホッケーに興じた。

 恵・石塚チームと対戦するキムタクのパートナーは松山ケンイチ。
 たかがゲームなのに、キムタクは異常なほどの集中力を発揮し、エアホッケーのルールギリギリの戦術を駆使して、連続得点をあげた。
 その間、松山ケンイチは、ホッケー台から少し離れたところに立たされたまま、ゲームの成り行きを傍観させられただけ。

 で、ゴールをあげたときのキムタクのスタジオ全体を揺るがすかのような雄叫び。
 サッカー選手が得点したときのような誇大なパフォーマンス。
 他の出演者たちは、お義理でキムタクに拍手を送っていたけれど、その表情はみな困惑ぎみで、キムタク一人が出演者の中で浮きっぱなしだった。

 『モニタリング』でも、キムタクは “天皇” だった。
 彼が登場したのは、ドラマにおける寿司屋で撮影するシーン。
 その撮影スタッフの中に、小道具係に変装した仕掛け人の笹野高史がおり、わざとキムタクに変な形で絡んで、視聴者の笑いを取るという設定。

 ところが、実はキムタクの方が本当の仕掛け人で、笹野の存在に気づいていながら、知らない素振りを見せつつ笹野のちょっかいを誘い出すというカラクリになっていたのだ。

 それを知らずに、笹野は、キムタクが自分のために買ってきたシュークリームを、スタッフからの差し入れだと思い込んで、一つつまんで食べてしまう。
 シュークリームが一つなくなったことを知って、「誰が食ったんだ?」と不機嫌な表情になるキムタク。
 もちろん演技なのだが、その不機嫌振りがほんとうに怖いのだ。
 他人に対して、しょっちゅうこんな風に怒っているという感じが如実に伝わってくる。

 俳優としてははるかにキムタクの先輩格に当たる笹野だが、さすがにこれには緊張する。自分が仕掛けられているとも知らない笹野の表情には、リアルな怯えが走る。

 笹野は映画でキムタクと共演しているから、怒り出すと収拾がつかなくなキムタクの厄介さを知っているのだろう。
 「申しわけありません、私が食べてしまいました」と膝を折って神妙に謝る笹野。

 それを見たキムタクが苦笑いしたところで、「モニタリング終了」となったわけだが、観ている私はちっとも笑えなかった。
 笹野の怯えた表情は、もうお笑い番組の域を超えていた。

 なんで、キムタク風情にそんなに神妙に謝らないといけないわけ?
 たかがシュークリーム一個で。

 つまり、それだけ、撮影現場ではキムタクが独裁者として振舞っているということなのだろうと思った。

 こういう怒りん坊のキムタクを、「カッコいい」と評価する一部のネットの声がある。
 私には、そういう評価を与える人たちの神経が分からない。
 自分をカッコよく見せたいがために、他人をピリピリと緊張させ、怯えさせるような人間のどこが「カッコいい」といえるのか。

 もしかしたら、「カッコいい」という概念を勘違いしている人たちが増えているのではなかろうか。
 他人を威嚇する怖さがあったり、震え上がらせる力を持った人間が「カッコいい」というように。
 でも、そういう「カッコよさ」って、絶対それに反発を感じる人たちの反感を誘う。
 たぶん、晩年のキムタクの人生は寒々としたものになっているだろう。
 
 がんばれ、草彅、中居、香取、稲垣 !
  
 
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日産ピーズフィールドクラフト 畑中社長インタビュー

 
 キャンピングカー情報を集約する総合ポータルサイトとして、最近にわかに話題を集めている『キャンピングカースタイル』(運営会社アイビル株式会社)。

 キャンピングカーの購入を検討している初心者から、次期購入車を検討しているベテランまで、キャンピングカーに興味を抱く幅広い人々を満足させる情報を集約していることがこのサイトの魅力となっている。

 運営者の話によると、今後魅力的なコンテンツをどんどん増やし、キャンピングカー情報を求めている方々が最初にノックする “ドア” の役目を果たしていきたいとか。
 つまり、このサイトを起点として、より詳しいキャンピングカー情報にアクセスしたいと思っている人たちの “案内人” を務めたいという。
 
 その『キャンピングカースタイル』さんからのご依頼をいただき、今回「キャンピングカーメーカー対談」というコーナーで、日産ピーズフィールドクラフトの畑中社長にインタビューをする機会を得た。
 
 以下は、その『キャンピングカースタイル』さんの記事から一部を抜粋したものである。
 詳しい全文は「メーカー紹介 株式会社 日産ピーズフィールドクラフト」をどうぞ。

 以下、一部抜粋

日産ピーズフィールドクラフト
代表取締役 畑中一夫さんに

キャンピングカーライフの将来的展望を聞く

 
 乗用車において、EVや自動運転車などの開発に拍車をかけている日産自動車。躍進目覚ましい日産車の一翼を担うキャンピングカー部門として、日産ピーズフィールドクラフトにかかる日産本社やユーザーの期待も大きい。
 同社のキャンピングカーの人気の秘密は何か。また自動車革命ともいえる大変革期を迎え、今後の日産キャンピングカーはどういう方向に進もうとしているのか。同社の畑中一夫社長に夢を語ってもらった。

これからのキャンピングカーライフスタイルはどう変わる?

【町田】 いま日産は2020年に一般道路でも自動運転できる車両を開発すると宣言していますよね。EVもそうとう台数を増やしている。
 そういった自動車の大転換期を迎え、キャンピングカーも今後は変わっていくのでしょうか?

【畑中】 難しい問題ですけれど、ベース車が変われば、当然キャンピングカーも変わります。ただ、自動車交通の歴史をたどってみると、自動車だけが変化するということはなかったんですね。自動車が変化したときというのは、それにともなってインフラも変化している。自動車の安全な高速走行が可能になったのは、やはりハイウェイの整備と一体となっていたわけです。
 そのように、インフラと自動車の両面の変化によって、われわれのライフスタイルも変わっていくことになります。

▼ 畑中 社長

【町田】 現在のキャンピングカーのライフスタイルが変わったのも、インフラの力によるものですよね。

【畑中】 そうです。やはり「道の駅」と「立ち寄り湯」の普及。それが現在のキャンピングカーライフスタイルを完成させましたものね。
 その二つに、いまJRVA(日本RV協会)が進めているRVパークが加わってきました。現在のキャンピングカーを取り巻く環境は、われわれがこの商売を始めた20年前とまったく変わっています。
 
 
キャンピングカーのレンタルやリースが活発になる時代

【町田】 今の若い人のなかには、あまり自動車に興味がない人もいます。若者の “自動車離れ” は、キャンピングカーにも影響を及ぼしそうですか?

【畑中】 やはり、なんらかの影響は出るでしょうね。ただ、私はそれほど悲観していないんですよ。
 今の若い人たちは、昔の人のように自動車をフェティシズムの対象としては見ていないかわりに、仲間と一緒に楽しむツールと見なすようになってきました。
 昔はエンジンをボアアップして排気量を上げたり、サスペンションを固めて箱根のターンパイクを駆けまわったりした人たちがいたじゃないですか。休日は1日中ワックスがけしているとかね(笑)。
 そういう若者が減った分、仲間といっしょにキャンプ場に行ってバーべーキューを楽しんだりする若者が増えている。そのとき使っている車がミニバンやワンボックスであっても、もうその先にはキャンピングカーがあるんですよ。
 だから、キャンピングカーを使いたいと思う若者が今よりさらに増えていくのは間違いないことなんです。
 問題は価格だけなんです。現在のキャンピングカーは、まだ若い人が買えるような価格帯を実現していない。

【町田】 ただ、1個人としては所有できなくても、シェアするという方法がありますよね。最近は住居でもなんでも、若者たちはみなシェアリングするのが流行りとなってきましたが … 。

【畑中】 そういう動向には注目していいでしょうね。だから、これからはキャンピングカーをみんなで使う知恵がたくさん生まれてくるように思います。おそらく、キャンピングカーのレンタルやリースも、今よりもさらに一般的になっていくんじゃないでしょうかね。
 
 
人口減少社会になっても、キャンピングカーは生き残る

【町田】 もう一つの問題として、人口減少の問題もありますよね。日本は少子高齢化時代を迎え、自動車だけでなく、すべてのマーケットが縮小していくという不安を抱えていますが。

【畑中】 それに関しても、私は楽観的なんですね。確かに日本の自動車マーケットは人口減少にともなって縮小していくかもしれません。
 しかし、キャンピングカーは自動車ほどには落ち込まない。
 なぜなら、キャンピングカーというのは趣味のツールだから。
 自動車は生活必需品ですから、それを必要としている人が少なくなければ売れなくなっていくかもしれません。
 でも、キャンピングカーは生活を楽しむための道具。そういうものはそう簡単には減らないんですよ。
 こういうことを言うと誤解されるかもしれないけれど、キャンピングカーって、本来は必要のないものなんですよね。それがなくたって、特に生活に困るわけじゃない。
 だけど、逆にいえば、そういう存在だからこそキャンピングカーは強いともいえる。
 生活にほとんど必要のないものというのは、“生活以外”のものなら何でも実現してしまう魔法のツールになるわけです。
 趣味というのは、そういう “生活以外の世界” に生きるということでしょ? そのとき、キャンピングカーというのは史上最強の趣味のためのツールに生まれ変わるわけですね。
 
 
キャンピングカーが実現してくれる夢

【町田】 畑中さん自身が、キャンピングカーを使って、そういう趣味の世界にさまよい出ることはあるんですか?

【畑中】 あります、あります! 自分自身で「キャンピングカーってどんな夢を実現してくれるんだろう?」と考えるときがあるんですよ。
 答はね、「眺める世界が普段と違ってくる」ということなのね。
 つまりね、普通私たちが生きている社会って、みな「人と人」が向き合う世界じゃないですか。仕事していれば、部下や上司やお客様と向き合う世界ですよね。家に帰れば家族と向き合う世界。
 でもね、キャンピングカーを使っていると、向き合う世界ががぜん広がっていくことが実感できるんですよ。
 たとえば、釣りをするために、キャンピングカーに乗ってポイントを探しているとするじゃないですか。
 そのとき自分が向き合っているのは「人」ではなくて、「自然」なんだよね。
 キャンピングカーでキャンプ場に泊まって、焚き火などしながら星空を見るとする。そのとき向き合っているのは「宇宙」なんですよ。

【町田】 なるほど。キャンピングカーをオーディオルームのように改造して、音楽を楽しむ空間として使っているユーザーもいますもんね。

【畑中】 そう。そのとき、その人が向き合っているのは「音」。
 物書きさんで、自分の書斎にいるときより、キャンピングカーにいた方が原稿がすらすら書けるという作家さんがいるんですよ。その人はきっと、「物語」と向き合っているんでしょうね。
 そのように、人によってさまざまな世界を見せてくれるのがキャンピングカー。

【町田】 へぇ、畑中さんが感じていらっしゃるキャンピングカーって奥が深いですね。今日は面白いお話をいろいろとありがとうございました。

『キャンピングカースタイル』

 
 

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ポスト・トランプがむしろ危ない

 
 昨年の下半期から今年にかけて、国際ニュースの最前線には常にトランプ大統領の名前が上がっていた。
 それだけ、この人は、マスコミがこぞって喜びそうな話題を次々と提供し続けたのだ。
 
 そして昨日、ついに新しいアメリカの大統領に就任。
 さっそくメディアはこれに飛びついて、最近の歴代大統領のなかでも支持率が最低(40%)だとか、就任式に集まった見学者の数が、前オバマ氏の半数の90万人ぐらいだろうと予測していたところ、さらにそれを下回る25万人だったなどとその不人気ぶりを報道している。

 メディアにとっては、トランプ氏の支持率が上がっても “事件” 。支持率が下がっても “事件” なのだ。
 それだけ、この人の言動はこれまでの政治報道のあり方を根底からくつがえすほど型破りであったということなのだろう。

 アメリカでは、6割の人が反対していながらも、とにかく「トランプ大統領」が誕生したわけだから、アメリカ国民でも何でもないわれわれは、ただその成り行きをじっと見守るしかない。

 しかし、見守ったとしても、はっきりしていることが一つある。
 それは、このトランプ政権は一期(4年)ももたないということだ。
 下手すると、もう一期目の終わりを待たず、国内世論も国際世論も反トランプ運動の勢いがマグマのように沸騰し、収拾のつかない状態に追い込まれるのではなかろうか。

 その理由の一つに、この大統領には政治的理念がまったく欠けているということが一つ挙げられる。
 トランプ氏の発言は、すべて政敵やマスメディアや、特定の国を攻撃することに終始する。

 政治アナリストのなかには、そのようなトランプ氏の言動を「自国に有利な取り引き材料を引き出すためのブラフ(はったり・威嚇)だ」という人が多い。つまり、外交交渉の戦術だというのだ。

 しかし、そんな戦術が成功したためしはない。
 国際政治の世界では、オバマ前大統領のように、ウソでも「核廃絶」とか、「温暖化阻止」とか、「軍縮」などといった政治理念を掲げる必要がある。
 「理念」が掲げられるからこそ、はじめて本音と建前を見せ合いながらの交渉が始まるのだ。

 だが、トランプ氏の場合は、「理念なき交渉」であるために、本音と建て前を探り合う駆け引きが成立しない。
 つまり、「落としどころ」がない。
 そうなれば、むき出しの利害が衝突し合う格闘技の世界になってしまう。

 こういう交渉術が成功することは、まずありえない。
 仮にそういう手法を “ビジネス的” といったところで、それは仁義なきビジネスとなり、力で押し切られた方が、復讐に燃えるだけである。

 トランプ政権が早晩崩壊するもう一つの理由は、国内にある。
 現在トランプを支持している4割の人々、すなわち “白人没落中間層” (プアホワイト)の人々が、「自分たちが裏切られた」と思う時期がそうとう前倒しにやってきそうだからである。
 彼らの支持がなくなれば、もうアメリカ国内でトランプを支持する層はなくなってしまうのだ。
 
 そのとき、何が起こるか。
 怒りをあらわにしたトランプ支持者たちは、これまでとまったく反対の精神状態に追い込まれる。
 すなわち、失望のあまりに極度な精神主義に陥り、一気に過激な宗教原理主義者か精神的な社会主義者になるか、もしくは虚脱感のあまり隠遁者のような精神状態になる。
 
 トランプ支持者たちというのは、第二次大戦後に、地球初の物質的パラダイス(楽園)を手に入れた人たちである。この世に欠けたるものなしという “アダムとイブの世” をアメリカの富がもたらしてくれたと信じている人たちともいえる。

 しかし、戦後70年経ってみると、自分たちは失楽園への道をたどってきたことを彼らは知った。
 低賃金で働くメキシコの不法移民たちに職を奪われ、家族は非白人系の人種が持ち込むドラッグ汚染の脅威にさらされる。
 自分たちが誇りに思っていたアメリカの産業は衰退し、道路を走る自動車もいつのまにか “トヨタ” や “ニッサン” ばかりになってしまった。

 富もプライドも失った「アメリカ没落白人労働者層」は、トランプ氏の掲げる「アメリカファースト」のキャッチに元気づけられ、「偉大なアメリカを取り戻そう」という呼びかけに共感し、彼の発した「私の職務はアメリカの労働者とその家族を守り抜くことだ」という宣言に涙したと思う。

 しかし、そもそも、アメリカの没落白人層をつくったのは何だったのか?

 それこそ、アメリカで生まれて世界に進出していったアメリカのグローバル企業ではなかったのか。
 トランプ氏は、アメリカと中国との貿易不均衡を指摘するが、中国の安い人件費に当て込んで、中国に工場建設を進めてきたのはアメリカを中心としたグローバル企業であった。

 メキシコの不法移民が米国内の白人の仕事を奪ったというが、そもそも不法移民を雇い始めたのもアメリカ企業である。その方が自国の白人を雇うより人件費を買い叩けるからだ。

 さらにいえば、今後世界の工場が IT 化・ロボット化を進めていけば、工場労働のようなルーティンワークから人が排除される可能性はますます高くなる。

 だから、トランプ氏が進めなければならないのは、ロボットでも代行できるような工場の復活ではなくて、いま職を奪われつつある没落白人層が参入できる新たな雇用の創出である。
 それこそ、現在ボランティアに任されている世界の難民の救出活動のような、いまだ「人間の優しさと勤勉さ」が必要となる作業を、給料を出して “仕事化” することだ。 
 それは、きっと正義感に燃えやすいアメリカ人の心を熱くする仕事のはずだ。

 そのときの賃金こそ、いま世界中の大半を資産を占有しているといわれる上位何十社かのグローバル企業の経営陣が供出すればいいのだ。 

 もし、トランプ氏がそういうことに機転を利かせられない人だったら、彼はそうとう知的レベルの低い大統領ということになるが、トランプ氏は実は、それらに十分気づきながら選挙戦中から自分の人気取りのために、支持母体となる白人没落層を煽り続けてきたのだ。

 つまり、トランプ支持者は、もうじき自分たちが裏切られていたことを知る。
 もちろん、海外に予定されていた工場建設をアメリカ国内に召喚することによって、何千人規模の国内雇用は達成されるだろう。
 でも、それは現状の生活に不満を持っている没落白人層のすべてを納得させる数にはとてもならない。

 逆に、金融エリートたちを自分の政権に据えることで、業界におけるビジネスエリートたちの権益はさらに増大し、今以上の経済格差が広がっていくだろう。
 そのとき、庶民たちが信じていた「アメリカン・ドリーム」は、「アメリカン・ニヒリズム」に変わる。

 最後の頼みの綱であったトランプ氏に裏切られたと知った支持者たちは、どういう態度に変わるのか?

 もうアメリカ的物質文明の豊かさは戻らないと知った彼らは、前述したように、一気に逆に振れて、極度の精神主義に向かうか無気力な隠遁者になる。

 精神主義に向かった場合は、共和党のクルーズ議員が主張するような過激な宗教原理主義か、もしくは民主党のサンダース氏が説いたような社会主義を志向するだろう。
 彼らは、若い頃から「共産主義は悪である」と教わり続けてきたから、社会主義思想には生理的に拒否反応を示すはずだが、現政権に対する失望の強さがあえて “駄々っ子” のような心境に向かわせる。

 ただ、サンダースを支持したアメリカの学生たちのように、プアホワイト層はそれほど知的訓練を受けていない。
 そうなると、そこから生まれてくるのは、実際の政治を無視した情緒性の強い社会主義である。

 トランプ大統領の誕生で、今後の世界情勢に不安を抱く人々は多いが、問題は、トランプ失脚後に広がる過激な精神主義思想の方である。
 それは宗教原理主義の方向に向かうのか、それとも過激な社会主義の復活になるのか分からないが、… というか、この両者が「平等」をキーワードに心情的に融合することも考えられる。

 いずれにせよ、“暗黒の中世” がふたたび世を覆い始める。

 「暗黒の中世」というのは、世の中が暗くなるという意味ではない。
 世の中を、光(正義)と闇(悪)の対立としてとらえるチョー単純な世界観が復活するということである。

 そういう世界観は、日本の政治の世界にも侵食し始めている。

 たとえば、今度の新しい都知事の都知事選の戦い方など見ていると、自分の主張をきわだたせるために、とにかく、対立陣営を一方的に “悪者” に仕立て、善と悪の対立軸で政治を動かそうとしている様子が見て取れる。

 国際政治も日本の都政も、そんな単純な色分けでは収拾がつかないはずなのに、こういう「善悪二元論」は、マスコミの関心を集めやすい。
 そのため、政敵を「悪」と決めつけて、間違っていようが強引に自説を繰り返した人が世論に支持されるようになる。
 
 このような善悪二元論で政治を進めようとする人たちは、敵を作るときに、往々にして「味方の利益を優先する」というキャッチを使いたがる。
 トランプ氏の場合は、「アメリカン・ファースト」、つまりはアメリカ第一主義である。
 日本の今の都知事は「都民ファースト」というキャッチを掲げている。
 “ファースト” という言葉を口にしたとき、そこには「ファーストが実現されなかった理由」、すなわち敵対勢力の存在が想定されるのだ。

 日本の都政に見られる新しい動きは、そのままアメリカ政治の新しい動きと重なっている。
 
 

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古代史のロマン

 
 日本の古代史にはロマンがある。
 特に、大和政権が生まれる前の混沌たる時代は多くの謎に包まれていて、どのエピソードも推理小説を読むかのようなときめきがある。

 「ロマン」と「謎」は同義語である。
 すなわち両者は、推理小説のように、“謎をはらんだ物語” を指す言葉だといっていい。

 「謎」という字は、“言葉が迷う” と書く。
 つまり、謎と出遭うということは、言葉では説明し得ないものに直面するということだ。
 だから、トートロジー(同語反復)になるけれど、「ロマンというのは言葉では説明し得ないもの」に出遭うことなんだな。 

 その古代史最大の “ロマン” は、邪馬台国の卑弥呼の正体ではあるまいか。

 邪馬台国論争というのは、邪馬台国の位置をめぐって、もう300年以上も続いている論争であるが、いまだに決着がついていない。

 結論が出ないからこそいい。
 「結論の出ないもの」は、いつまでも考えるヒントを紡ぎ続ける。
 結論を出すことよりも、思考を持続させることの方が大事であることはいうまでもない。
 
 正月に観ていた番組のひとつに、『英雄たちの選択新春スペシャル』(NHK-BS)というのがあった。
 テーマは「“ニッポン”の古代人のこころと文明に迫る」。

 そのなかで、ゲストの一人である漫画家の里中満智子が、邪馬台国の女王「卑弥呼」は、単一の人物と考える必要はないのではないか、と言っていた。
 すなわち、女系リーダーを意味する “ヒメミコ” という一般名詞を、魏志倭人伝の作者が「ヒミコ」と聞き取り、それを単一人物だと思い込んだまま記述したとも考えられるとか。

 そういう説はすでに他の研究者たちからも言われていることかもしれないけれど、そのこと以上に印象に残ったエピソードは、「卑弥呼」には弟がいて、その弟が祭りごとの実務を請け負っていたという話。
 つまり、姉の卑弥呼は呪術にいそしみ、弟が政治を担当したという2系統の統治がこのときすでに始まっていたという指摘が面白かった。

 日本の権力機構の特殊性は、天皇という「権威」と、政治の実務を取り仕切る「権力」が分かれているところにある。
 貴族政権においても、武家政権においても、日本の権力者たちは「天皇」を廃止して、自分たちが天皇にとって代ろうとは一回も考えなかった。
 天皇という「権威」を利用する形で、自分たちの「権力」の正当性を主張しようとしたのである。

 そういう統治形態の原型はどこにあったのか?
 それが卑弥呼の時代に始まっていたという指摘は面白かった。
 つまり、日本においては、女系リーダーの “ヒメミコ” が呪術的祭儀による象徴的権威を維持し、男系リーダーが実質的な政務を取り仕切るという日本独特の二重権力構造の起源を「卑弥呼神話」は語っているというわけだ。
 
 
 同じ番組で、蘇我氏の正体を探るという企画もあって、こちらも楽しかった。
 蘇我氏というのは、天皇家から政権を強奪しようとしたため、天皇家を守ろうとする中大兄皇子と中臣鎌足によって暗殺された逆賊といわれ続けてきた。

 しかし、蘇我氏はけっしてそのような非道の豪族ではなく、むしろ律令制を進めて天皇家の権威を高め、日本の文化レベルを上げようとした開明的な一族であったというのが、近年ではほぼ定説になりつつある。

 蘇我氏にそれを可能にさせたものが、半島系の渡来人との太いパイプである(蘇我氏自身が渡来人であるという説もある)。
 この時代、文化においてもテクノロジーにおいても渡来人の力は圧倒的であり、彼らの持っている情報とテクノロジーを使いこなせた蘇我氏は、「今でいうネットにアクセスできるリテラシー(活用力)を持っていた」ということになるらしい。

 当然、蘇我氏はグローバル社会を理解していた。
 当時のグローバル社会というのは中国、インド、朝鮮であったから、インドで起こった仏教が中国経由で朝鮮に渡り、それが当時の世界的イデオロギーになっていたことを知っていた。

 当時の日本で仏教を採り入れるということは、グローバリズムを背景に “IT 革命” を起こすようなものであった。、
 視覚的にも聴覚的にも、仏教に触れた日本人は、それまでとはまったく違った世界を見ることになった。

 まず寺院や五重塔といった仏教的建築物や仏像のようなアートの出現は、GGによる新しい映像文化が登場したようなものであったかもしれない。

 この頃を境に、日本では重厚長大な「前方後円墳」という墓地の形態が廃れ、四隅を四角く切り取ってコンパクトに収めた「方墳」に変わったという。

 これは何を意味するのか?
 すなわち、「前方後円墳」のような墳墓が権力者の権威の象徴ではなくなってきたのだ。

 面積として広大な土地を擁する「前方後円墳」も、横から見ると、単なるなだらかな丘陵に過ぎない。
 それより、少ない面積ながら天に向かって垂直に伸びていく寺院や五重塔といった仏教建築の方が、新しい時代の権威として見栄えがする。

 蘇我氏は、「前方後円墳」を権威と見なしてきたそれまでの古代天皇家の意識改革を行ったのだ。
 
 そこにはコスト意識も働いていた。 
 大量の労働者を必要とする一大土木工事の「前方後円墳」より、仏教建築の方が建設コストが安くなるのだ。
 コストが安いだけでなく、その建立には技術を持った専門家集団が必要となるから、付加価値も生まれる。

 蘇我氏は、この仏教建築を造れる専門集団を育成し、天皇家と距離を置こうとする地方豪族と交渉し、「天皇家を敬えば、あんたの地に寺院を建立してやってもいいぞ」という取り引き材料に使ったという。

 こう考えると、蘇我氏が大化の改新で滅亡しなければ、古代の日本はもっと違った社会になっていた可能性がある。
 
 そういう想像を惹起させる物語が、すなわちロマン。
 古代史が面白いのは、考古学的発見や文献の新発見によって、そのロマンの形が次々と変わっていくからだ。
 
 

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女のいない男たち

   
 病院というのは、本を読むのに最適な空間だ。
 読書という行為は、ある程度 “退屈な時間を持て余す” という気分に支えられるようなところがあるから、運動も外出も制限される入院中のやるせない気分を紛らわせるには、読書は理想的な時間のつぶし方といえる。

 昨年は肺血栓症の手術を受けるために、1月、6月、7月、10月と4回入院した。
 長いときは2ヶ月近く。
 じっくり本が読めた。

 入院中に読んだ本の1冊に、村上春樹の『女のいない男たち』がある。
 2014年に単行本として発刊され、2016年の10月に文庫化された。

 私が買ったのは、2年後に出た文庫の方である。
 昨年秋に、私が入院する前に寄った書店では、その文庫が平積みになっていた。
 村上春樹がノーベル文学賞を受賞すれば それを記念するフェアの目玉として準備されたものだったのだろう。

 春樹ファンには残念なことに、ノーベル文学賞はボブ・ディランのもとに去った。

 私は、村上春樹を少しは読んでいる方だと思うが、彼がノーベル文学賞に値するような作品を書いているのかどうかということに関しては、正直、よく分からない。
 私のイメージでは、村上春樹という人は世界の文芸史に名を残す “大文豪” というようなタイプではなく、本来は、少数のごくセンスのいいファンたちがこっそり評価し合うような作家に思えるのだ。
 そして、その方が、愛読者にとっては、かえって安心して「村上ファン」を名乗ることができるような気がする。

 で、『女のいない男たち』。
 六つの短編で構成されている。
 そのどれもが、基本的に、女に振られたか、女に死なれたか、女に自分の思いをうまく伝えられなかった男たちの話になっている。

 村上春樹は、なぜそのような男たちを取り上げる気になったのか。

 もしかしたら彼は、これからは男にとって、恋愛が不可能な時代が来ると踏んだのではなかろうか。
 つまり、男の恋心を受け入れてくれる女性が次第に少なくなりつつあると感じたのだ。
 『女のいない男たち』という一連の物語は、そういう状況を伝えようとしているようにも思える。

 六つの短編において、主人公たちから去って行った女たちは、いずれも男と一緒に迎える “ハッピーエンド” を拒否する。
 女たちは、他の男と不倫するにせよ、自殺するにせよ、いつの間にか姿を消すにせよ、みな男が用意したハッピーエンドの<外>に流れ出していく。
 そして、男たちは女が去っていく理由も分からず、途方に暮れるか、いつまでも懊悩するのである。
 それは、そのまま現代社会の男女関係をぞっているように思える。

 なぜ、男たちにとって、これほど恋愛が難しい時代がやってきたのか。
 
 その理由を、社会状況の変化に求めるならば、答はいくつでもすぐに見つかるだろう。
 リア充の生活を放棄したオタク系男子の増加。
 恋愛にチャレンジして、成就しなかったときのショックを回避したがる男たちの増加。
 要は、男の自閉である。

 そういうイマドキの男性心理は、たとえば「若者の経済的貧困」などという言葉を使えば説明できるかもしれない。

 しかし、そのような経済的視点や社会学的視点からだけでは、男たちの恋愛不可能性のすべてを語ることはできない。
 結論を先にいえば、それは現代社会が、「男の恋愛文化」を失ったからだ。
 すなわち、恋愛からセンチメンタリズム(感傷的情緒)が失われたのである。

 これまでの古典的な男の恋愛観は、すべて女に対する男の片思いやら女に振られたときのセンチメンタリズムをベースに構成されてきた。

 こういう言い方もできるだろうか。
 センチメンタリズムが保証されていたからこそ、男たちは孤独な片思いやら辛い失恋に耐えられたのだと。
 つまり、これまでの男たちは、思いを遂げられない心の痛みをセンチメンタリズムで濾過(ろか)できたからこそ、傷をしのぐことができたのだ。

 そのようなセンチな男文化が生き延びられたのは、(日本でいえば)せいぜい「昭和」の時代までではなかろうか。
 それも、ニック・ニューサの『サチコ』が生まれた昭和56年(1981年)までだったように思える。   
 
 

 この年(1981年)、『サチコ』のように男のセンチメンタリズムを強調した歌謡曲がヒットチャートで全面開花する。

 『ルビーの指輪』(寺尾聰)
 『もしもピアノが弾けたなら』(西田敏行)
 『みちのくひとり旅』(山本譲二)
 『帰ってこいよ』(松村和子)
 『スローなブギにしてくれ』(南佳孝)

 そのどれもが、恋を成就させることのできなかった男の自己憐憫を美化した歌である。

 1960年代から1970年代の半ば頃までの歌謡曲は、藤圭子の演歌に代表されるような、「騙された女/捨てられた女」の世界だった。

 しかし、1978年に杏里が『オリビアを聴きながら』を歌った頃から、男女の形勢が逆転し、80年代からの歌謡曲は「泣く男」の世界となった。
 80年代というのは、マッチョな言動で女たちを口説いていた一部の精力の強いバブル男たちの影で、大勢の泣く男たちが誕生した時代だったのだ。

 しかし、それは逆にいえば、1980年代までは、男のセンチメンタリズムを許容する余裕を日本社会全体が持っていたということになる。

 高度成長からバブルに向かっての一時期、日本はつかの間の “一億総中流社会” を実現する。
 その時代に、男が会社勤めに出て、女が専業主婦として家事を切り盛りできるような社会が誕生した。

 専業主婦というのは、女性の「無報酬労働」である。
 つまり、女が無報酬で家事というシャドーワークに専念できるほど、日本の家庭は見かけ上の豊かさを維持することができたのだ。

 この余裕が、男のセンチメンタリズムを育てた。
 専業主婦たちは、会社勤めのような “社会” を経験せずに暮らせたから、男の身勝手な甘えの文化に無頓着でいられたのだ。

 しかし、外で働き始めた女性たちは、次第にそういう男のセンチメンタリズムを許容しなくなっていった。
 そのようなセンチメンタリズムは、男の自己完結的な自意識の産物だから、それ自体に生産性がない。
 当然、バブル崩壊後に生まれてきたせちがらい世の中は、そういう情緒性のはびこる文化を許さなくなっていく。

 日本経済が津波に吞み込まれるように崩壊していくなかで、企業倒産が続出。男の安定した雇用が消滅していく過程で、男たちも「女に振られた悲しさ」を歌や酒や旅でまぎらわすといった情緒的な方法で処理できなくなっていく。
 つまり、女から受けた恋の痛手を、もっと即物的なストーカー行為などではらさなければならなくなっていく。

 そういう流れに呼応し、社会に出て行った女たちも、男の身勝手なセンチメンタリズムに付き合うバカバカしさに気づくようになる。
 

 村上文学とは、こういう時代が始まる前に成立した文学である。
 すなわち、男が女を失うときのセンチメンタリズムがまだ機能していた時代の文学なのだ。

 村上春樹が『風の歌を聴け』で群像新人賞を取ったのは1979年。 
 『1973年のピンボール』が芥川賞の候補になったのは1980年。
 つまり、村上春樹の初期作品は、日本社会が男のセンチメンタリズムを許容していたぎりぎりの年に生まれている。

 それらの作品に登場する “僕” と呼ばれる主人公たちは、女の理不尽な行動にも取り乱すことなく、ただ「やれやれ」とつぶやいて耐えている。
 しかし、それは見かけ上の冷静さであって、彼らの本心を占めているのは女々しさである。

 その女々しさが、あまりにも洗練された筆致で処理されるために、センチメンタリズムの上澄みが浄化され、そこにドライでクールな空気感が生まれている。
 それが、村上流 “喪失の文学” の正体である。

 
 そう考えると、村上文学の構造というのは、案外シンプルである。
 それほど奥行きのある世界ではない。
 ただ、そう思わせないテクニックを村上春樹は持っている。
 それは、「肝心なことは描かない」というテクニックだ。

 彼の小説作法を解き明かした名著のひとつに、『若い読者のための短編小説案内』があるが、そのなかで、彼はこんなことを書いている。

 「優れた作家はいちばん大事なことは書かないのです。優れたパーカッショニストがいちばん大事な音は叩かないのと同じように」
 
 まさに、これは村上春樹の小説作法そのものを表現した言葉であり、彼の全作品がこの作法に則って作られているといっても過言ではない。

 この『女のいない男たち』においても、その手法は貫かれている。
 たとえば、『シェラザード』という短編では、施設に閉じ込められた主人公の男性のもとに、身の回りの世話をする女が一人通ってきて、冷蔵庫のなかに食材を詰め、退屈しのぎのために読む本を用意し、主人公を相手にルーティンワークのような情事をこなし、そのあと、ベッドに寝たまま魅惑的な話を披露して去っていく。
 主人公にとって、その女の話の続きを聞くことが一番の楽しみになる。

 しかし、ある日主人公は、その女性がもう姿を現わさないのではないかと予感する。もちろん女性の言動からその兆候を読み取ったわけではない。あくまでも、予感にすぎない。

 しかし、その予感は、主人公を茫洋と霧が立ち込めるような哀しさのなかに沈ませていく。
 
 この短編には、けっきょく最後まで何も描かれない。
 主人公がどのような施設に閉じ込められているのかも語られず、彼がなぜそこから抜け出ようとしないのかも説明されず、主人公のもとを訪れる女性の正体も明かされない。

 実は、何も説明されないということが、ここでは “詩” になっているのだ。
 この短編には「情感」だけがあって、「ロジック」がない。
 つまり、物語自体が、壮大な “余韻” に包まれているのである。

 毎回楽しい話を続けてくれるはずの女性が、もしかしたら来なくなるかもしれないと、主人公はおびえる。
 そして、彼女が来なくなったとしても、その理由を主人公は永遠に知ることができない。

 何もかもがはっきりと描かれないからこそ、切ない。
 村上春樹のセンチメンタリズムというのは、そういう形で提示される。

 私はそれをとても心地よいと思うけれど、この先、この村上春樹的センチメンタリズムがどこまで通用するのか、それはまったく分からない。 
 
 

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トランプ氏はビジネスマンなどではない

 
 日本時間の早朝に開かれた米次期大統領トランプ氏の記者会見で、そうとうな暴走発言があったと各報道機関が伝えている。
 私も、その記者会見の画像を見た。

 各メディアの質問に対し、ケンカ腰である。
 トランプ氏の表情も険悪で、下品。
 その言動は、傲慢さと威嚇と満ちていた。

 アメリカ大統領の記者会見というものが、こんなに荒涼とした殺伐なものであったことをはじめて知った。
 もっとも、その責任の9割方は、トランプ氏側の問題なのだろうが。

 この記者会見で、トランプ氏は選挙運動中に掲げた暴走発言をより一層明確な態度で繰り返したという。
 すなわち、メキシコ国境との壁を早急に建設し、その費用をメキシコ政府に払わせる。
 中国、日本、メキシコとの貿易では、アメリカは多額の損失を出しており、(これらの国に対しては)貿易の不均衡を是正する処置を取る。
 
 そういう発言を聞いていた報道陣の感想によると、トランプ氏は大統領就任後に、きっとイスラム教徒の入国拒否や、日本や韓国に対する核武装の勧めなど、基本的に選挙活動の際に発言していた内容をほぼそのまま推し進めていくだろうとも。

 このようなハチャメチャな政治発言が繰り返される一方、減税や公共投資、インフラ整備などの話題にはほとんど触れられず、それらを期待して値上がりしていた株価も、会見以降は急落したという。

 他国の大統領のことだから僕らに発言権はないけれど、おそらくアメリカ国民は、建国200年の歴史のなかで史上最悪・最低の大統領を選んでしまったのではなかろうか。

 選挙戦さなかでも、トランプ非難の声は絶えなかった。
 しかし、一方では、「トランプ氏は実業家だから、これまでの政治家とは異なり、ビジネス感覚で斬新な政策を進めていくだろう」と期待する声もあった。

 それは甘い期待だったかもしれない。
 これまでのトランプ氏の発言内容を見ていくと、彼にはほんとうの意味での “ビジネスセンス” など微塵もないことが伝わってくる。
 むしろ、ビジネス的なバランス感覚とはまったく無縁の、頭の固い差別主義者としての面があらわになってきた。

 「中国、日本、メキシコとの貿易不均衡を是正する」

 彼のそういう発言の根拠は何か?
 これは経済分析などではない。
 その意味は、
 「肌の黄色い人種や、肌の茶色いラテンアメリカ人は嫌いだ !」
 ということなのだ。

 一方、ロシア人は同じ白人種で、しかもキリスト教徒であるからいいようだ。
 それに対し、イスラム教徒は断固拒否。
 なんと単純な “分断思想” なのだろう。

 だが、残念なことに、われわれ人間は、「分断」を煽られた方が感情を刺激されるようにできている。
 他者への共感や愛を説かれるよりも、恐怖心を煽られ、憎しみをかきたてられ、他者との「分断」を呼びかけられた方が、われわれはエモーショナルになれる。

 現に、トランプ政権の成り行きに不安を感じている自分だが、トランプが中国に対して強硬姿勢を打ち出すなどという報道に触れると、
 「そうだ ! そうだ ! 生意気な中国をやっつけろ」
 などと、思わずトランプの “分断思想” に共感を感じている自分を見つけたりする。

 「融和」よりも「分断」を煽った方が、人間の共感が増幅されるのは何万年もの間、人類が競争と戦争の圧力に苦しみながら生き延びてきた結果なのだ。

 だから、「憎しみ」を共有し合うと人間は簡単に結束できる。
 「憎しみ」の共有には、「知性」が介在しないからだ。

 「知性」というのは、憎しみを軸に生まれた結束が、結局は悲劇しか生み出してこなかったという反省から生まれてきた能力だ。
 そういう能力を得るために、人類はそうとう長い努力を重ねてきた。

 その辛い努力の蓄積を、「憎しみ」は、いとも簡単に踏みにじることができる。
 なぜなら、人類には「憎しみ」の歴史の方が圧倒的に長いから。

 「分断思想」というのは、その「憎しみ」を煽るところから生まれてくる。
 トランプのやろうとしていることは、人類が長い間努力してようやく手に入れた「知性」を葬り去ろうとするものである。
 
  

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ちあきなおみのアンニュイ

 
 ここのところ、ちあきなおみの歌が気に入って、YOU TUBEにアップされたものを何度も聞いている。
 直接のきっかけは、1月6日にBSジャパンで放送された『孤高の歌姫伝説~ちあきなおみの歌の世界』という歌番組を観たせいであったが、昔から日本の歌謡曲歌手としては好きな人であった。

 私たちの世代(60代)が知っているちなきなおみというと、やはり『喝采』や『矢切の渡し』というヒット曲のイメージが強すぎて、どちらかという “演歌歌手” のジャンルに収めてしまいがちだ。
 しかし、どっこい、ちなきなおみは、とてもそんな一つのジャンルでくくれるような歌手ではない。

 もし知らない人がいたら、次の曲を聞いてほしい。
 石原裕次郎の持ち歌として知られる『夜霧よ今夜もありがとう』である。

▼ 『夜霧よ今夜もありがとう』

 裕次郎の歌う歌謡曲が、見事なジャズ風のバラードになっている。
 ちなきなおみファンの間では有名な『夜霧よ今夜も有難う~ ちあきなおみ~石原裕次郎を唄う』 というアルバムの1曲目に収録された曲だが、このたゆたうようなリズム感は、もう演歌や歌謡曲のものではない。
 メロディーやコード展開は日本人が聞きなれた歌謡曲ながら、間奏で響く楽器類の音は洋楽そのもの。

 もちろんアレンジの力が大きい。
 ちなきなおみの後期の音楽活動に深く関わったピアニストで音楽プロデューサーである倉田信雄の編曲が功を奏し、もう裕次郎の原曲とはまったく変わった内容の曲となっている。

 何よりも、この曲のいちばんの魅力は、ちあきなおみの “ため息” のようなセクシーボイス。
 それがピアノとサックスのけだるい演奏に乗って、たなびく煙のように流れ出してくると、まさにカクテルラウンジでジャズライブを聞いているような気分になる。
 

 
  今のポピュラー音楽に欠けているのは、このようなディープなアンニュイ(けだるさ)だ。
 これぞ大人の音楽。

 “アンニュイ” というのは、非常にゴージャスで贅沢な感覚である。
 人生に疲れちゃった…、恋に飽きちゃった…、とかいう気分は、ある意味でゴージャス感につながる。ガツガツしているものの対極にあるからだ。
 言葉をかえていえば、満ち足りた状態をいう。

 「アンニュイ」はもともとフランス語で、この言葉の響きからは、すべてに満ち足りた生活を送ってきた貴族文化の気配が漂ってくる。
 フランスは18世紀から19世紀にかけて、一度は世界制覇を成し遂げた国で、イギリスと並んで、アジア・アフリカの富を収奪し尽くした国だ。
 
 いやらしい言い方だが、アンニュイとは、こういう強奪の結果によって得た富に飽きた人々の生活感覚といっていい。 
 食べるために必死に働かなければならない文化からは、アンニュイは生まれない。

 必死で生きている人たちが必要としているものは「元気」、「勇気」、「感動」であり、音楽でいえば行進曲のようなもの。
 しかし、行進曲というのは、軍隊でも、運動会でも、人々に号令をかけて集団の統制を図るものだから、基本的に貧しい音楽だ。

 今のJ ポップには “応援ソング” のような曲がけっこうあるけれど、基本的にそれは “子供のための行進曲” である。
 ちあきなおみのアンニュイに満ちた歌からは、大人の文化の香りがする。

 もう1曲、ゴージャスなけだるさを持った曲を。

▼ 『時の流れに』

 この曲は、1991年に発売された『百花繚乱』に収録されたもの。
 激しい恋も経験してきた女性が、ふと生活の疲れを感じて独り言をつぶやくような世界が広がる。

 歌の中には、こんなフレーズが出てくる。 

 ♪ 時の流れに、流され流れ
   気づけば疲れた、女がひとり
   命までもとおぼれた恋も、
   今では遥かな、雨降り映画

 この心地よいけだるさに満ちた大人のフレーズは、やはり歌のうまさに加え、ちあきなおみぐらいの私生活の経験の深さがないと歌いこなせない。
 
 作詞は、『喝采』、『紅とんぼ』、『冬隣』などといったちあきなおみの代表作を作った吉田旺。
 作曲は『夜霧よ今夜もありがとう』をアレンジした倉田信雄。
 歌手のちあきなおみを交えた最強トリオによる “大人のアンニュイ” の代表作。
 独りで酒を飲んでいる空間に、こういう曲があると助かる。
 

 
  
 

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正月はテレビ三昧

 
 今年も正月はテレビ三昧。
 居間のソファに腰を下ろし、ポテトチップスなどかじりながら、ウィスキーや日本酒などを舐めつつ、体を動かすことなく、終日じっとテレビモニターを凝視。
 体に悪いよなぁ、1月末に控えている糖尿病検査の日が来るのが怖い。

 で、正月が来ると、毎年楽しみにしている番組のひとつがテレビ朝日系の『芸能人格付けチェック』。
 ワイン、牛肉、盆栽、バイオリンの音色などを吟味しながら、呼ばれた芸能人たちがどれが本物かということを見極めていく番組で、現在個人としての連勝記録を43勝まで伸ばしているGACKTが、今年はどれだけその記録を更新するかが焦点だった。
 結果、その連勝記録は48までに。
 味覚、聴覚、視覚におけるGACKTの審美眼には敬服せざるを得ない。

 今回、GACKTとチームを組んだのはホリエモン(堀江貴文)。
 起業家として辣腕を奮ってきたセレブ男だけに、グルメにおいても音楽やアートの鑑賞においても “一流?” の生活を送ってきたはずだが、GACKTの “一流ぶり” にはまったく届かなかった。

 ホリエモンがGACKTチームを代表して問題に向き合っている様子をモニターで見守っていたGACKTが、間違いそうになったホリエモンに一言。
 「あいつ、今まで何に金をつかってきたんだ?」
 真贋を見極める生活に徹してきたGACKTの経済感覚を一瞬だけ垣間見ることができた言葉だった。
  
…………………………………………………………………………

 2日目はハードディスクに録画していた『スターウォーズ/フォースの覚醒』を観た。
 レイ役で出ていたデイジー・リドリー(↓)が可愛いので、この作品だけはどうしても観ておきたかったのだが、まぁ、見終わった感想は、「あいかわらずだな」の一言。

 結局、スターウォーズ・シリーズはどの作品を観ても変わりばえがしない。
 基本は、善と悪が対立するシンプルな勧善懲悪ドラマ。
 しかも、善玉(共和国側)も悪玉(帝国側)も、それぞれの善悪の根拠(思想的背景)を示さない。
 つまり、それはお互いが「自分こそが善であり、相手は悪である」と決めつけていることを意味するにすぎない。

 スターウォーズのファンの中には、「ここには人間が経験するあらゆるドラマが詰まっている」と豪語する人もいる。 
 たとえば、この「フォースの覚醒」においては、ギリシャ神話以来の “父殺し”のテーマがある、などと。

 しかし、たとえ “父殺し” がストーリーに取り込まれようが、結局は「善・悪」二元論の構図にきれいに収まってしまい、最後は予定調和のハッピーエンドが待っているだけ。
 それでは “人間が経験するあらゆるドラマ” などとはいえない。

 SF映画ファンには、「ブレードランナー派」と「スターウォーズ派」がいると思うが、私は不条理感に満ちたブレードランナーの方が好きだから、単純構造のスターウォーズには点が辛いのだ。

…………………………………………………………………………

 正月2日目の夜は、「BS朝日新春討論スペシャル『いま、日本を考える』 」という番組を観る。
 田原総一朗(ジャーナリスト)/井沢元彦(作家)/三浦瑠麗 (東京大学政策ビジョン研究センター講師)/川村晃司(テレビ朝日コメンテーター)/東浩紀(批評家)/上念司(経済評論家)/谷口真由美(大阪国際大学准教授)/飯田泰之(明治大学准教授)という面々が4時間にわたって、2017年以降の世界情勢と日本が抱えている政治・経済の難問を語り合うという番組だった。

 面白かったのは、この手のトーク番組でありがちな悲観論が影を潜めていたこと。
 いちおう多方面にわたって問題点は抽出されたが、参加者たちの意識は、それぞれの問題点を現実的に解決する方向に向いていて、番組全体のトーンは明るくポジティブなものだった。

 たぶんそれは、今の日本が、安倍晋三による異例なくらいの長期安定政権を維持していることとも関係しているかもしれない。
 概して、参加者たちの安倍内閣への評価は好意的だった。
 もし、ここに共産党や民進党系の議員でも混じっていたら、話し合いは紛糾したかもしれない。

 だが、今回討論に参加した論客たちの大方の意見としては、今の日本をダメにしているのは、そういう共産党などの既成政党も含めた “進歩的知識人” などといわれるリベラル派だという。

 かつて、「左翼」という言葉がしっかり機能していた時代のリベラル派は、現政権の行き過ぎをしっかりチェックする能力を備えていたが、今「護憲」を訴えたり、「安保法案を軍事法」と断定するリベラル派は、もう左翼精神すら失った既得権益者にすぎないのだそうだ。
 
 彼らは、資産的にも身分保障的にも、すでに現体制下における既得権をしっかり確保し、その安定した基盤の上にあぐらをかいた状態で、言葉だけ「リベラル」を訴える。
 それが今の政治が抱える問題を相当ややこしくして、解決困難な方向に誤誘導しているというのだ。

 その指摘はある程度当たっているように思えた。
 現に、『朝まで生テレビ2017』などでしゃべっていた共産党の小池晃などは、見苦しいほどのアナクロニズムと精神の硬直化を示していた。
 
 それ以外の感想としては、田原総一郎(82歳)の見事な仕切りぶりが印象に残った。
 今回、田原はMCという役割を降りて、1コメンテーターとしてこの討論に臨んだのだが、議論の焦点を明瞭にしてほとんどの討議の流れをつくったのは、田原総一郎であった。

 もうひとつ印象に残ったことは、三浦瑠璃(↑)の成長ぶり。
 彼女は、今の日本で政治を語る女性の筆頭論客になりつつある。
 この討論会には歴史作家、経済学者、政治コメンテーターなどさまざまな肩書を持つ論客が集められたが、全分野においてよどみなく自分の知見を披露できたのは、三浦瑠璃一人であった。
 
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 ドラマでは『冬のソナタ』の再放送(BSフジ)の一部だけ観た。
 2002年に制作されたドラマで、世界的な韓流ブームをつくるきっかけとなった作品である。
 実は、これがNHKで放映されていた頃、毎週楽しみにして観ていたことがある。

 いま改めて観ても、あいかわらず美しくて切ない。
 “冬” という季節を、これほどロマンチックに仕上げた作品というのは、ほかにないのではなかろうか。

 人の心を小さく縮こませてしまう冬。
 冬という季節は、どちらかというと、「耐え忍ぶ」とか「心を閉ざす」という印象が強く、早く終わってほしい季節の筆頭であったが、この『冬のソナタ』は、“冬が終わる” ことのさびしさをはじめて描いたドラマになった。「春が来るとミニヨンとユジンの恋は終わるのだろう」と予測させる気配をどこかに漂わせているのだ。
 
 「冬よ終わらないで !」
 という気分にさせるドラマなんて、考えてみればすごいことだ。

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 3日の夜には、『英雄たちの選択 新春スペシャル』(NHK BSプレミアム)という番組も観た。
 テーマは、「ニッポンの古代人のこころと文明に迫る」。

 最近は、先端技術を使った発掘調査などにより、それまでの日本史の教科書を書き換えるような新しい情報が次々とアップされるようになったらしい。
 この番組では、そのような最新情報をもとに、これまで単純な稲作民と見なされてきた弥生人が、稲作だけでなく、さまざまな生活スタイルを試みており、世界観においても、独特の精神文化を持っていたことを明らかにした。

 途中から観たので、最初の展開は分からなかったが、印象に残ったのは銅鐸(どうたく)の話。
 これまで、銅鐸という道具は祭儀に使われるものであることだけははっきりしていたが、それがどのような使われ方をしていたかは、まったく謎に包まれたままだった。

 しかし、近年の研究によると、それは釣鐘(つりがね)のように打ち鳴らすことで、祭儀の場を演出していたことが判明した。
 スタジオには、その精巧に作られたレプリカが持ち込まれ、専門家の手によって、いくつかの鳴らし方が試された。

 はじめて聞く音であったが、なんとも玄妙な音であった。
 後世の寺の鐘などと違って、もっと軽やかで涼やかな音なのである。

 解説者がいう。
 「おそらくこのような金属音は、それまでの弥生人が聞いたこともなかった新しい音に聞こえたはずです。それは、弥市人の精神文化に深い影響を及ぼす音になった可能性は高い」

 それを聞いて、番組のMCを務める磯田道史氏がすかさず、「自分がはじめて電子音を聞いたときのような衝撃があった」と告白する。
 彼がいうには、「この音は、田んぼに植えられた稲を生育させるための “栄養剤” のように思われていたのではないか」とも。

 私自身の乏しい体験に照らし合わせていうと、ビートルズのギター音とコーラスをはじめて聞いたときの感覚に近い。
 1960年代初期に、まろやかなアメリカンポップスに馴染んでいた私の耳に届いたビートルズサウンドは、まさに“荒ぶる神の啓示” であった。

 人間が文化概念を獲得する一つの道具として、まず「言語」というものがある。
 しかし、「音響」には、その「言語」よりもさらに深い根源的な文化概念を創造する力がある。
 銅鐸の音響が、当時の弥生人たちにどんな文化概念を与えたかは不明だが、レプリカの銅鐸がもたらした風雅な金属音には、確かに古代の神々のつぶやきが混じっていそうな気配があった。

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 同じく3日の夜、NHKのEテレで放映された「名著スペシャル『100分de手塚治虫』」を観る。
 これは、2016年11月12日に放映されたもの再放送らしい。

 タレントの伊集院光が司会を務め、女装エッセイストのブルボンヌ、映画監督の園子温、精神分析医の斎藤環、宗教学者の釈徹宗などがそれぞれの観点から手塚漫画の魅力を語った。

 話題は、鉄腕アトムのエロスに向かった。
 本来は無機質なロボットであり、かつ造形的には男の子を志向したアトムが、なぜあのような両性具有的な色っぽさを漂わせるのか。
 MCの伊集院は、そのアトムの容姿に、子供ながら奇妙な色気を感じて心がざわついたことを告白する。

 アトムのエロスというのは、基本的に、手塚治虫の描く線の色っぽさに帰着する。
 手塚の線は丸っこい。
 それは容易に女性のたおやかな乳房や豊饒な尻を連想させる。
 
 しかし、そういう即物的な色っぽさを超えて、手塚自身が「丸い形状」に生命力としてのエロスを感じていたことが明らかになっていく。

 手塚は、太陽系の惑星の動きや、水面に広がる波紋、さらに葉の上に溜まる雨の滴などの円運動に、自然そのものが持っているエロスを感じていた。
 彼にとっては、円を描くことそれ自体が、すでにエロチックな行為だったとも。

 手塚の漫画の原点には、ディズニー漫画があるらしい。
 彼はディズニーの作画に憬れて、自分の画風を作り上げていった。
 
 実は、昔のディズニーのキャラクターにもエロスがある。
 私は、ディズニーのアニメなどに登場するピーターパンに、いつも妖しげな色気を感じて、一人でどきどきしていた。
 

 彼はいわゆる “美少年” ではない。
 トランスジェンダー的な、両性具有のエロスがあるといった方がいい。

 こういう存在は、男女の性別を超えた正体不明のなまめかしさを持っていて、ときに少年の読者を不安に満ちた恍惚感に満たす。
 鉄腕アトムもピーターパンも、罪作りな主人公たちである。 
 
 

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『ニッポンのジレンマ』は面白い

 
 正月のテレビは、年末あたりから作り置きしているバラエティー番組と討論番組が多い。
 だいたい観るのは、討論番組の方。
 今年も、大晦日の深夜の『朝まで生テレビ』(テレ朝)と、元日の夜の『ニッポンのジレンマ2017』(Eテレ)を観た。

 『朝まで生テレビ』は退屈だったが、『ニッポンのジレンマ』には興奮した。
 両方とも、日本の現状と未来、日本の政治や経済をテーマにした討論番組なのに、この差はいったいどこから来るのだろう?

▼ 朝まで生テレビ

 はっきりいうと、それは出演者の年齢から来る。
 『朝生』の出演者は、みな老人である。

 まずMCの田原総一朗が82歳。
 パネリストとして参加した自民党の山本一太が58歳
 共産党の小池晃が56歳。
 民進党の細野豪志が(少し若くて)45歳。
 元防衛大臣の森本敏が75歳。
 漫画家の小林よしのりが63歳。
 東大教授の井上達夫が62歳。

 これらの人たちは、確かに専門的な知識を習得した論客で、発言内容も鋭いのだけれど、寛容性がないというところで、精神が硬直している。
 それは年齢から来るものだ。
 
 だいたい人間は50歳を過ぎると、他人の意見に非寛容になるし、60を超えると、非寛容を通り越して、もう相手が言おうとする話の内容すら理解する力をなくしてしまう。

 だから、『朝生』の出演者たちは、相手の議論を途中で遮り、声高に自分の主張を繰り返すことだけに終始し、結果的に、何が論点になっているかということすら不明瞭にしてしまう。
 その突出した例が、たとえば共産党の小池晃とか、東大教授の井上達夫あたりである。
 こういう “自分の弁が立つ” ことにうぬぼれている連中の顔を見るだけで、暗い気持ちになる。
 
▼ ニッポンのジレンマ

 それに対して、『ニッポンのジレンマ2017』の参加者は若者が中心。
 進行を務めた作家の古市憲寿が31歳。
 パネリストは、最年長がアーチストの福原志保で41歳。
 一番年下の参加者が詩人の文月悠光で26歳。
 あとは、だいたい20代と30代。

 『朝生』との最大の違いは、みな笑顔があったこと。
 かなりきわどい議論の応酬になっても、意見を戦わせている者同士の表情には、相手をリスペクトする真摯な表情と同時に、言い過ぎた自分の発言内容を照れるようなはにかみの笑顔があった。

 『朝生』のジジイたちは、ケンカ。
 『ジレンマ』の若者たちは、意見交換。
 もうそれだけで、番組としての出来に決定的な差がついてしまう。
 
 もう一つ、両方の番組を観て感じたことは、老人たちが気が短くなってきているのに対し、若者たちは結論を急がずに、一つの問題を前にして、そこで立ち止まろうとしていることだった。

 たとえば、彼らの討議から次のような議論が提出された。

 「民主主義というのは、本来は長い討論を重ねて少しずつ意見をすり合わせていくものなのに、今の社会はその時間を “無駄” なものとして排除しようとする。
 その結果、人々が瞬時に “YES” か “NO” かを判断しなければならないような短絡的な思考が蔓延するようになる」
 
 たとえば、アメリカのトランプ大統領の答弁や、ヨーロッパで台頭してきた極右的な政治集団のリーダーたちの演説。
 そこには、「正義」か「悪」かの二元論しかない。
 世界中の政治の言葉が、複雑な思考を拒否する単純で力強い言葉に置き換えられつつある。
 『ニッポンのジレンマ』で討議をしていた若者たちは、そのことへの警戒心を強めている。

 何事においても、瞬時に結論を出さなければならないような風潮は、いったいどこから生まれてきたのか?

 世界中に広まりつつある思考の短絡化。すなわち反知性主義。
 批評家の大澤聡(39歳)は、そこに今のメディアのあり方が反映されていると見るし、数理哲学者の丸山善宏(33歳)は、世界が再び中世の魔術的世界観に覆われ始めてきたと見る。

 彼らは、人間が結論のなかなか見えない時間のかかる思考を放棄し、YESかNOかを瞬時に判断する思考回路に染まってきたことと、世の風潮がアートや文学を軽んじてきたこととはパラレルな関係にあるという。

 すなわち、アートや文学は、「正義」とか「悪」や、「正しい」とか「間違っている」という単純な二元論では片付かない問題を扱うものである。
 それは、現代社会がもっとも苦手とするものだ。
 だから、ここで人間が踏みとどまらないかぎり、世の中は、再び「神と悪魔が闘争を繰り返すという神話的世界」へと逆行しかねない。
 私は、彼らの議論を聞いていて、自分の頭の中でそうまとめてみた。

 若者たちは、複雑な世の中に対峙することを恐れてはいない。
 そして、複雑な世の中をクリアに捉える明晰な視線を大事にしようとしている。
 
 確かに、「シンプルであることの方が美しいし、力強い」と主張する意見が、世の中の一部にはある。
 しかし、それは間違いだ。

 「シンプルである」ことと、「シンプルに見える」こととは違う。
 われわれが感じる「シンプルであることの美しさとか力強さ」というのは、往々にして、「シンプルに見えている」だけであって、実際にはかなり複雑な処理を経て洗練された結果であることが多い。

 「シンプルに見える」ものは、やはり時間をかけて生み出されてくる。
 われわれは、どうして時間をかけることを「悪」のように思い始めてしまったのだろう。
 スピードが価値概念の上位にあがってくるような社会を、いつ築いてきたのだろう。

 それについて、経済学者の水野和夫氏は、「より速く」という精神は、資本主義という経済システムそのものが生み出したものであるという。

 つまり、資本主義が、他者を出し抜いてより多くの富を独占するというモチーフによって支えられてきた経済メカニズムであるかぎり、「より速く」というのは、“他者を出し抜く” 資本主義の根幹をなす原理にならざるをえない。
 水野氏は、その競争原理が、地球上から地理的なフロンティアが消えていくことによって、限界に直面していることを示唆しようとしている。
 つまり、競争の “ゴール” の姿が、おぼろげながら浮かび上がってきたのだ。

 これに関して、(話は急に飛ぶけれど)人気ブロガーの池田信夫(経済評論家)は、「水野和夫は資本主義を批判するだけで、それに代わる経済システムを提案していない」と非難する。
 「資本主義よりましな経済システムが存在すると証明しない限り、社会主義のような地獄になるだけだ」と。

 この池田信夫(63歳)という人も、『朝生』に登場する精神の硬直した老人たちと同じような存在だ。
 彼は水野和夫が語ろうとした世界が、単に経済システムの問題として片付けられるようなものではないことを見逃している。
 
 水野氏は、(先ほどの『ニッポンのジレンマ』の議論に引き寄せていうと)アートや文学(さらにいえば哲学)の問題を語ったのであり、そのことを感受する感受性が池田信夫には欠けている。

 ≫「資本主義よりましな経済システムは存在しない」
 当たり前だよ、そんなこと。
 すでに社会主義経済という実験に人類は失敗しているのだから。
 
 しかし、人類の歴史は、資本主義などという経済システムがない時代の方がはるかに長い。
 その間、人類は不幸せだったのか?
 資本主義という経済システムが生み出した幸せと同じくらい、資本主義が産み落とした不幸というものだってある。

 資本主義が生み出した「幸せ」と「不幸」が、それ以前の社会が持っていた「幸せ」と「不幸」とどう違うのか。
 その答を見つけるには、いったん資本主義の<外>に立ってみなければならない。
 <外>に立つということは、想像力を働かせるということだ。
 その想像力は、アートや文学からやって来る。
 
 今日思ったことを一つ。
 「答が簡単に出ないものを恐れるな」
 
 

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賀正 2017

 明けましておめでとうございます
 謹んで新春のお慶びを申し上げます。

 先ほどまで、メス犬のふっくらしたお尻を撫でつつ、日本酒を飲みながら紅白歌合戦を見ているうちに、新年を迎えました。
 サカナは、数の子と、ハムとポテトサラダ。
 日本酒の銘柄は、月桂冠の糖質ゼロカロリー。

 最近はメス犬がなかなかお尻を触らせてくれません。
 こちらを振り返ってジロッとにらみ、
 「いつまで触ってんだよ、スケベ」
 といって、牙をむきます。
 昼間、お風呂に入れてやったのに … 。

 それでは皆様、今年もよろしく。
  
 

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ノスタルジック街道ルート66

 

 「ルート66」という言葉を聞いて、なにがしかの感慨を覚えるのは、主に今60代の人々だろう。

 ルート66は、1920年代頃にアメリカを横断する国道として整備され、1980年代に廃線となるまで、60年にわたってアメリカの大動脈として利用されていた道だ。

 1960年代に、コルベットに乗る2人の若者が、そのルート66をたどって冒険ドライブを繰り返すテレビドラマが大ヒット。日本にも上陸し、当時の日本人にも、広大なアメリカを自分の車で横断してみたいという夢を与えた。


 ドラマの放映に呼応して、タイトル曲も大ヒット。
 ナット・キングコールのほか、ジョージ・マハリスの歌も大当たり。
 さらには、ザ・ローリングストーンズのレパートリーにも加えられるなど、ジャズ系、ロックンロール系などさまざまなバージョンが生まれた。

▼ George Maharis 『Route 66』

 そんなこともあって、60代のシニアのなかには、この「ルート66」という言葉の響きからとても懐かしいものを感じる人も多いのではなかろうか。

 歌にドラマに取り上げられたルート66は、まさに近代アメリカの繁栄の象徴であったが、より便利なインターステート・フリーウェイの普及によって幹線道路としての役割を終えることになり、1980年代中頃に廃線となった。

 しかし、近年観光道路として再整備され、再びノスタルジックな気分をよみがえらせる観光施設として脚光を浴びている。

 私は、2008年にレンタルモーターホームを借りて、こルート66の一部を走ったことがある。
 そのとき、キングマンの町などでは、すでに “ルート66観光” を意識したミュージアムや土産物店がたくさん並んでいた。

▼ キングマンの『ルート66』ミュージアム

 つい最近、NHKのBS放送で、そのルート66が観光道路として再評価されてきた様子を伝えるドキュメントビデオが放映された。
 番組そのものは、2001年に制作されたものらしい。

 しかし、トランプ次期大統領の登場などで変貌を遂げているアメリカを考えるきっかけとなりそうだと判断したのか、NHKはこの番組を再度取り上げる気になったようだ。
 タイトルは、
 『ノスタルジックハイウェイ ~アメリカ ルート66をゆく~』。


 
 とても美しいドキュメント番組であった。
 何よりも、ルート66が走っているアメリカ大陸の光景が素晴らしかった。

 しかし、それだけでなく、ルート66が現役バリバリの時代に、そこを行き来した古いアメ車の映像が素敵だった。





  
 このルート66の沿道には、少年時代に、この道路を行きかう車を見ながら成長していったたくさんの人々が今も暮らしている。
 当時、西へ向かう大排気量のスポーツカーの雄姿や、東へ向かう長距離トラックの群れを目で追うことは、繫栄するアメリカの生きた姿を眺めることだった。

 その時代に活躍したアメ車を集めてきては、販売する人(↓)がいる。

 その中の1台(↓)をきれいにレストアして、今でもルート66を走るのが唯一の楽しみだとか。

 別の町では、ルート66を観光道路として復活させようと、地元民とバンド(↓)を結成し、週末に自分たちの演奏を披露する老人たちがいる。

 さらに別の町では、映画『バクダッド・カフェ』に感動し、このエリアでカフェを開業して、地元民との交流を図る女性店主も登場。
 休日ともなると、近所の住民がその店に集まり、昼間からビールを飲みながら、ドミノゲームに興じる。



 ルート66が通っている州は次の八つ。
 イリノイ
 ミズーリ
 カンザス
 オクラホマ
 テキサス
 ニューメキシコ
 アリゾナ
 カリフォルニア

 アメリカ中西部といっていいのだろうか。その多くは海を持たない内陸の州である。
 いわば、我々日本人が昔 “西部劇” の舞台として馴染んだ州。
 住民の多くはいまだにカウボーイのようなテンガロンハットをかぶり、西部劇に出てくる町のバーを思わせるカフェで、昔なじみの友人たちと談笑する。

 彼らの腕は頑丈で太い。
 そして、胴回りも大きい。
 それはハンバーガーのようなファストフードの日常的摂取やコカ・コーラの大量吸収が生み出した体形のようにも思える。
 

 2000年代に入った頃、アメリカ人たちは食生活を見直し、ダイエットに励んでいるという情報を耳にしたことがあったが、それは東海岸の大都市に住む一部の人々の話だったのかもしれない。
 2008年に私が渡米したとき、実際に目にした中西部の住民たちは、男女とも、太鼓腹を鷹揚に突き出して町を闊歩する人々ばかりだった。
 そして、みなけっこうタバコも吸っていた。

 それを見ただけでも、彼らが、東海岸の知的エリートたちや西海岸の進歩的な風土に馴染んだ人々とは異質の生活を送っていることが分った。

 ある意味、彼らこそ、生粋のアメリカ白人。
 そして、今回の大統領選挙で、トランプ氏を支持した人たちの原型でもある。

 番組のなかで、彼らは口々にこう言った。
 「昔はよかった。ルート66が繁栄していた時代はね」

 そのルート66がさびれていく光景と、彼らの仕事がなくなり、生活が厳しさを増していく様子は、彼らの頭のなかではセットになっている。
 
 日本の自動車産業の興隆を背景に、斜陽になっていくアメリカの自動車産業。
 それに伴い、ルート66を行き交っていた鉄鋼などの資材配達のトラック便も少なくなる。

 利用客でにぎわったドライブイン、モーテル、カフェなども客足が遠のき、沿道の町は、ドアも窓も閉めたままのゴーストタウンに近づいていった。

 しかし、2000年代に入ると、若い頃にテレビドラマの『ルート66』を観て育ったベビー・ブーマーたちが、リタイヤ後の遊び方の一つとして、なつかしの “ルート66ドライブ” を始めるようになった。

 沿道の町でも、それらの客を対象に観光整備に力を入れる自治体が登場するようになる。
 このドキュメントビデオが撮られた2001年頃というのは、ちょうどそういう時期に当たる。

 だから、このドキュメントに登場する人々の表情は明るい。
 往年の輝きが戻ることを信じて疑わない人たちの笑顔はチャーミングだ。
 彼らは口々に、ルート66が昔の繁栄を取り戻す夢を語る。

 それは、「偉大なアメリカの復活」を謳うトランプ氏のキャッチである「Make America Great Again」に呼応している。

 事実、ルート66が通るアメリカの八つの州のうちの5州、すなわちミズーリ、カンザス、オクラホマ、テキサス、アリゾナは、大統領選のときにクリントン氏ではなくトランプ氏を支持し、その勝利に貢献している。

 われわれ日本人の多くは、来年からスタートするトランプ政権に不安を感じている。
 だから日本の知識人たちは、トランプの政策を「保護主義」だとか「反知性主義」だとか、「差別主義」、「非寛容」などと非難しているが、アメリカのトランプ支持者たちの素顔を見てしまうと、そのような一面的な理解でレッテルを貼ることにためらいが生まれる。

 少なくとも、NHKドキュメント『ルート66』に登場し、ルート66にノスタルジックな思いを馳せる人々の純朴そうで、優しそうで、温かい表情を見ていると、仮に彼らが熱烈な「トランプ支持」を口にしたとしても、たぶん面と向かって反論などできないはずだ。

 「Make America Great Again」

 この言葉がはらむ本当の意味を、われわれ日本人は実感できない。
 トランプ氏の魔法の言葉の真意は、まさに、ルート66の喪失を心の空洞として捉える人々の胸に内に分け入っていかなければ分からない。

 だが、このことは、日本で今起こっていることと照らし合わせてみると、案外見えてくるものがある。

 今の日本にも、昭和30年代(1950年~1960年)を理想の時代だと捉える風潮が生まれている。
 たとえば、ACジャパンの『ライバルは、1964年』というCMでは、屈託なく笑っている植木等(クレイジー・キャッツ)の白黒写真を掲げ、
 「笑顔でも、夢の大きさでも。人を思いやる気持ちでも。あの頃の日本人に、ぜったい負けるな」
 と謳っている。

 これは、平成20年代に生きる我々を応援しているようで、実際には昭和30年代へのオマージュになっている。
 そして、そのことに対し、当時の生活を知っている年寄り世代だけでなく、当時を知らない若い世代も共感している様子が見て取れる。

 「過去は偉大だ」
 とする風潮は世界的に広まっている。

 私は、そのことの是非をここでは問わない。
 ただ、過去を称賛することが “ウルウルする” ことの条件になりつつある今の風潮は、いったい何を語ろうとしているのか。
 私自身は、そのことを注意深く見守っていきたいと思っている。
 

参考記事 「ルート66伝説 (モーターホームでアメリカを走る 5)」
 
 
  

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